「あなたの言う『自己肯定感』とはどういう意味ですか?」東大に推薦合格した高校生が面接で出した答え
プレジデントオンライン / 2022年9月24日 10時15分
※本稿は、黒田将臣『ビジネスとしての東大受験 億を稼ぐ悪の受験ハック』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
■面接で嘘をついたり知識をひけらかしたりしてはいけない
大学受験の面接で重要なことは、「嘘をつかないこと」です。
なんていうと、読者のみなさんの反応は2種類に分かれるかと思います。
「何を当たり前のことを言っているんだ。嘘なんてつかないよ!」
という人と、
「いやいや、自分のことを大きく見せないと合格は難しいんだから、嘘ついてナンボでしょ」
という人。個人的には、後者の人が多いかなと思います。なんてったって『悪の受験ハック』なんて読んでいる人なわけですから、ストレートなものではなくて自分を大きく見せるコツを求めている場合が多いように感じます。
ですが、そういう人は1つ忘れていることがあります。
それは、「嘘はバレる」ということです。
何を当たり前のことを、と思うかもしれませんが、これが結構難しいんですよね。
まず、推薦でもAOでもよくあるダメなやり方として、「教授に対して知識をひけらかしてしまう」というものがあります。「私はこんなことを知っています」ということを、必要以上に教授に見せてしまうということです。
■面接で減点になる可能性のあるやり取り
例えば、何か自分のやりたいことを語る自己推薦の文章を書いている時に、「○○という本に書いている通り、自分はこういうことに対して問題意識を持っています」と必要がないのに本の情報を載せてしまったり、あるいはグループディスカッションの際や面談の際に「アフォーダンスが……」とか「エスニシティが……」とか、専門用語を必要以上に使ってしまったりする行為です。
これらは実は、減点になる可能性があります。
もちろん、ちゃんとその知識をわかっていて使うのであればなんの問題もありません。しかし大抵の場合、試験の直前に軽く読んだ本の受け売り程度で語っている場合が多いのではないでしょうか。
そういう姿勢で面談に臨む場合、多くの受験生は1つの重大な事実を忘れています。それは、相手はその道のプロであるということです。あなたが「これがわかっているのはかっこいい/自分を大きく見せられるはずだ」と思う知識は赤ん坊が大人と会話を試みるようなものでしかなく、相手は専門用語に対する感度も非常に高く、言葉の正しい使い方についての基準は常人の何十倍も高いのです。
■その道のプロによく知らない専門用語を多用するとしっぺ返しをくらう
例えば、こんな話があります。自分には東大教育学部に推薦で合格した友達がいるのですが、プレゼンで「子供の自己肯定感を育めるような教育が必要だ」ということを軸にして、自分の高校時代の活動に立脚して語ったそうです。質問もある程度事前に想定していた通りのものが来て、うまくこなすことができたそうなのですが、後半に入ってからの東大教授からの予想外の質問に驚愕(きょうがく)したのだとか。
「あなたはプレゼンの中で、『自己肯定感』という言葉を使っていましたが、あなたのその言葉の使い方と一般的に認知されている定義との間に、違う部分があるかもしれないと考えたことはありますか?」
20個以上質問を想定していた彼女でも、この質問は完全にノーマークだったそうです。
確かに言われてみると、「自信」という意味で「自己肯定感」という言葉を使う人もいれば、「前向き」という意味で使う人もいるでしょう。また、「期待」とか「信頼」とか「信用」とか、微妙に意味が異なっているけれど使い分けることが難しいさまざまなニュアンスがあったりもしますよね。
東大の教授のこの質問は、その部分を聞いたものだったわけです。彼女はこの質問に対して、自分の使っている言葉の意味と一般的な解釈で、共通な部分と異なっている部分を説明し、どう異なっていたのかを示し、合格することができたと言います。
みなさん、「自己肯定感」なんて普通の言葉ですら、教育学部の教授から見れば立派な専門用語であり、その言葉の使い方については一家言あるわけです。そんな人を相手にして、「アノミーが……」「シンギュラリティが……」とか語るのは、もはや自殺行為だと思いませんか?
■足が地面から離れるほど自分を大きく見せてはいけない
ここで先ほどの話に戻りましょう。
嘘は、ばれます。
虚飾で塗り固めて自分のことをコーティングしたところで、教授先生には通用しません。
もちろん、等身大の自分を見せろ、なんていう気はありません。背伸びしていいですし、みなさんが「今の言葉が一般的に認知されている言葉の定義と違う部分があるかもしれないとわかっていますか?」なんて聞かれたら「いいえ!」なんて答えず「私はこういう意図で使っていました」と伝えるべきです。
しかし、決して嘘にならないように話さなければなりません。背伸びをしてもいいけれど、足はちゃんと地面についている状態をキープするのです。足が地面から1ミリでも離れたらゲームオーバー、というゲームだと思って準備する必要があります。
■面接では「予防線」を張る癖をつけよ
そして、自分自身が嘘だと思っていなくても、相手からすると嘘だと思われてしまうことがあると自覚して、コミュニケーションを取るようにしましょう。
より具体的に言うなら、常に「予防線」を張る癖をつけましょう。自分の発言に対して、常に逃げ道を作り、いつでもそこに逃げられるようにするのです。
例えば、枕詞を作っておくのです。「こういう言い方が適切かはわかりませんが」とか「付け焼き刃の知識なので正直自信がないのですが」とか、そういう言葉を頭に付けておくことで、多少の間違いに目を瞑ってもらえるようになります。
また、ちょっと生意気だと言われてしまうような話し方をしている人もこの考え方は役に立ちます。
「現在のこういう考え方を正したいと思います」という意見を言いたいなら、「まだまだ不勉強な自分の意見ではあるのですが、僕はどうしても、現在のこういう考え方は間違っているように感じるのです」と語るのです。
大切なのは、ただ批判に備えるためだけに予防線を引くだけでなく、ここからの将来性を感じさせる内容につなげることです。
ただ「まだまだ甘いのですが……」と語るのではなく、「まだまだ甘い考えなので、ここからこの考えをしっかり整理していこうと思います」なんて具合に、自分がこれから進んでいくことを明示するのです。こうすることで、ただ謙遜しているだけではなく、自分の至らないところを自覚しながらも前に進もうとする、「いい子」であるように見せることができるのです。
■炎上リスクのある学生は学力が高くても一発不合格
最近は、この予防線が非常に効果を発揮するようになってきました。というのも、SNSの発達で大学側が学生の炎上を恐れるようになったからです。とある大学の事例ですが、性格や精神性に問題があると判断された場合は、他のどの項目の点数がどんなに高くても一発でアウト、絶対に合格させない、と決まっているそうです。
なぜこんなことになっているのかというと、SNSが発達し、教授が面談して合格させた学生が炎上した場合、その大学のブランド価値が大きく毀損(きそん)される可能性が生まれてきたからです。というか、何件かそういうことが実際に起こっています。だからこそ、昔よりも今の方が大学は「その学生に炎上リスクがないか」を確認するようになっているのです。
そしてもう1つ重要なのは、素直であることです。
例えばみなさんは、教授にどうしても答えられない質問をされた時や、どうしても知識の量的に難しい質問を投げられた時にどう対応しますか?
こういう時、多くの学生はわからないということを隠そうとすると思います。しかしこういう場合、わからないことはわからないとはっきり言って、不勉強であることを認めた方がいい場合もあります。それを下手に知ったかぶってしまうと、それこそ嘘になってしまうことがあるのです。嘘にならないコミュニケーションを取るためには、素直に相手の言うことを受け入れる必要があるのです。
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現役東大生
東大合格者0人の高校で、高校入学当初は下から数えた方が早い順位だったが、東大受験に合格するためのテクニックをハックし、2浪して東大に合格した。いまだに努力神話の建前が根強い一方で、進学校や予備校などの高額な教育産業が受験ノウハウを独占している受験の世界を変えるため、東大生集団「カルぺ・ディエム」に所属して、自分で受験のゴールを設定し、自力で東大合格できる受験生を一人でも増やすために活動している。
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(現役東大生 黒田 将臣)
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