残業をやめられないのは「仕事量が多い」からではない…残業中毒な人が知らない「パーキンソンの法則」とは
プレジデントオンライン / 2022年9月21日 18時15分
※本稿は、伊庭正康『できるリーダーは、「これ」しかやらない[聞き方・話し方編]』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■常に締め切りに追われている部下に効く“問いかけ”
あなたの部下に、いつも時間に追われ、締め切りもギリギリ、そんなバタバタしている部下はいないでしょうか。本人は「間に合えばいい」と思っているかもしれませんが、周囲はやきもきしているもの。上司としては放置できないでしょう。
そんな彼らには、ぜひ、この質問をしてみてください。
「バッファ、取っている?」
バッファとは「余裕」のことを指します。
たとえば、10日までの締め切りであれば、その前日に締め切りを設定する。その余裕がバッファです。
「ギリギリでも、間に合えばセーフ」という考え方もありますが、「提出物にミスがあったら?」「電車が遅延したら?」と、想定外のリスクにも対処できるようにしておくことが、社会人としての責任です。
そんな彼らをたとえるなら、ハンドルに遊び(余裕)がない自動車のようなもの。路面にちょっとした凹凸があるだけで、ハンドルがとられてしまい、事故を起こしかねません。自動車も仕事も余裕があるからこそ、まっすぐに走ることができるわけです。
■大事なのは「本人に宣言させる」こと
もちろん、単に「バッファ、取っている?」と問いかけるだけでもいいのですが、より効果的なのは「本人に宣言させること」。それも、改まった場を設けるのが効果的です。
以前、私のところに、いつもギリギリでバタバタな部下がいました。その部下が担当するお客様に上司として営業同行することがあり、先方のロビーで待っていたのですが、なかなか本人が現れません。電話をしてもつながらない。すると、ギリギリになって遠くから走ってかけ寄ってきました。
「お待たせしました。すみません!」
本人は間に合ったつもりでしょうが、どう考えてもベストパフォーマンスが出せる状態ではないのは一目瞭然でした。
そこで、会社に戻ってから、会議室で、真剣に話すことにしたのです。
部下 「はい。そのつもりで予定していたのですが、乗り継ぎに手間取りまして……」
上司 「それを含めたバッファは取っていた?」
部下 「いいえ……」
上司 「今後、どうする?」
部下 「え……」
上司 「正直、やきもきした。もう、こんなストレスを味わうのは避けたいんだよね」
部下 「すみません……」
上司 「大事なのは今後。どうしよっか?」
部下 「え……、それも含めたバッファを取ります」
上司 「というと?」
部下 「待ち合わせ……提出期限……出社……準備……」
上司 「OK。約束できる?」
部下 「はい」
上司 「信じていい?」
部下 「はい」
上司 「信じるね」
この会話を見て「そこまで追い込むの?」と思われたかもしれません。ですが、これくらい追い込んだ質問ができないと、上司は務まりません。これ以降、彼女は職場での仕事を確認する限りではありますが、きちんとバッファを設けるようになりました。
■いつも残業する人が抱える2つのリスク
要領が悪い人は、当然、残業も多くなります。今の私は「残業とは甘えであり、企業にとってのコストであり、リスクである」と断言できます。しかし、以前の私はまさに、残業まみれの生活を送っていました。
もちろん、早く帰りたいとは思っていましたが、当時の私は「仕事があるので、残業も仕方がない」と、残業をすることを正当化していたのです。
まず、ここが大きな間違いです。残業を良しとするとどうしても時間管理が甘くなりますし、体調面でのリスクもあります。もしリーダーである自分が倒れたら、誰かが代行せざるを得なくなります。それでも、残業をやめようとしない。それが当時の私でした。
昔の私のように残業を前提としている部下がいたら、一刻も早く、残業をやめさせたいと思いませんか。ならば、次の質問をしてみてください。
「残業を前提で仕事していない?」と。
部下 「でも、残務があるので仕方ないのです……」
上司 「ということは、残業を前提で仕事している、ということかな?」
部下 「まあ、そうなります……」
さらに続けましょう。本人が何を言おうが、こう尋ねてください。
「仕事を終える時間を決めない?」と。
残業はやっかいなもので、いくらでも言い訳ができますし、理由の正当化もしやすいもの。最初に「終える時間」を決めてしまわないと、対話を前に進められなくなります。
■早く帰る必要がない限り常態化してしまう
「パーキンソンの法則」をご存じでしょうか。
「仕事の量は、与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という法則です。これに則れば、早く帰る必要がない限り、残業が常態化してしまうことは自然の摂理とも言えるのです。
だから、最初に「仕事を終える時間」を決めてから対策を考えるのが、得策です。そして「仕事を終える時間」を決めたら、すぐに手帳(スケジュール)にその時間を記載することを提案してください。
![ノートにメモを取る女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/a/1200wm/img_ca1c133ff024520caaa650255d109859408555.jpg)
コロンビア大学のモチベーション・サイエンスセンターのハイディ・グラント・ハルバーソン氏によると「具体的な計画にすることで、実行力が3倍になる」といいます。やらない手はないでしょう。
![伊庭正康『できるリーダーは、「これ」しかやらない[聞き方・話し方編]』(PHP研究所)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/2/1200wm/img_22e1fad68af02cd01702d80455a55de8197808.jpg)
私自身もこの効果を実感しています。私も上司に言われたことをきっかけに、手帳に「終える時刻」を記載するようになりました。でも、まだ安心はできません。残業の習慣を断ち切るのは、そう簡単ではありません。だからこそ、さらにこう尋ねてください。
「もし、残業しそうな時は、どうしようか?」
おおむね、このような答えが返ってくるはずです。
「事前に、相談するようにします」
ここまでやって、やっと根深い残業習慣を断ち切ることができるのです。
元・残業中毒だった、私の偽らざる気持ちです。
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らしさラボ代表
1991年、リクルートグループ入社。求人事業の営業に配属。営業部長、(株)フロムエーキャリアの代表など、重要ポストを歴任。2011年、企業研修を提供する(株)らしさラボを設立。営業マンや営業リーダーを対象に年間200回にのぼるセッション(営業研修・営業リーダー研修・コーチング・講演)を自ら行っている。著書に、16万部ベストセラーとなった『できるリーダーは、「これ」しかやらない』『できる営業は、「これ」しかやらない』(以上、PHP研究所)、『超効率的に結果を出す テレアポ&リモート営業の基本』(日本実業出版社)、『できるリーダーは「命令しない」「教えない」』(大和書房)ほか多数。
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(らしさラボ代表 伊庭 正康)
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