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「野菜はいくら食べてもいいが、フルーツの食べ過ぎは要注意」健康寿命を延ばす"適量"の見きわめ方

プレジデントオンライン / 2022年9月24日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Promo_Link

野菜やフルーツはどれくらい食べればいいのか。聖路加国際病院循環器内科医の浅野拓さんは「野菜は基本的に食べれば食べるだけ疾病リスクが下がるという研究データがある。一方、血糖値の高めの人には『食後のフルーツ』はおすすめできない」という――。

※本稿は、浅野拓『健康寿命を延ばす「選択」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■甘いものやご飯・パン・めん類には中毒性がある

ほぼ糖質になりやすいのが間食です。血糖の上がりやすい私自身は、新型コロナウイルス感染症が流行したときに、糖尿病があると重症化リスクが上がることがわかり、それをきっかけにHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー/2~3か月の血糖値の平均を表す指標)を本気で下げようと思ったのですが、そのときに最初に取り組んだのが間食をやめることでした。

煎餅やポテトチップスといったしょっぱい系が好きで、間食に食べていたのです。

間食が常になっていた頃はフリースタイルリブレ(注)を使っていなかったので、当時のグラフをお見せすることはできませんが、おそらく食べるたびに血糖値がバーンと上がって、インスリンがたくさん出ていたのだと思います。

(注)グルコース値の測定器

煎餅やポテトチップスもそうですが、甘いものは食べはじめると、つい食べすぎてしまうことがありますよね。それは「報酬系」という脳内の刺激伝導回路が働いて、中毒性があるからです。脳内でドーパミンが出ているということ。このメカニズムはタバコやアルコール依存、ひいては薬物中毒の機序と同じということが分かっています。

ですから、「つい食べすぎてしまう」人はすでに糖質中毒に陥っている可能性があるので、私と同じように、まずは間食をゼロにすることをおすすめします。

■間食は「減らす」のではなく「ゼロにする」

間食をやめられない、たくさん食べてしまう人ほど、「ゼロは難しいから、少なくしよう」と考えるかもしれません。でも、それではせっかくルールを作ったものの、それを違反したかどうかがわかりにくいので、続きません。その点、「間食をゼロにする」と決めたら、「食べたか、食べていないか」でルール違反がすぐにわかります。線引きがわかりやすいので、かえってルールを守りやすいのです。

最初のうちは口寂しくなることがあると思いますが、数週間も経てば糖質への執着心はなくなります。不思議と「食べたい」と思わなくなるはずです。私自身もそうでしたし、患者さんにもこの「ゼロルール」をお勧めし、そのような感想をよく聞きます。これは禁煙に成功した際に見られる現象にとても似ており、「まさに中毒なのだな」と感じます。

間食が原因で太ってしまう人はたくさんおられますが、私もその一人でした。ですがこの「ゼロルール」をやるだけで事実私は体重を10kg減らすことができました。

■慣れれば「賢く間食する」ことに挑戦

そうして糖質と少し距離が取れるようになれば、「ゼロ」ではなく、「賢く食べる」ことも選択肢になります。私も、仕事の終わり間際など、お腹が空くことがよくあります。空腹を感じると集中力がなくなったり、イライラしたりしますよね。そうしたことを避けるためにも、軽く間食をとることは良い選択だと思います。

私は普段から患者さんに「間食をスマートに(賢く)食べましょう」と言うことがあります。では、「スマートに」とはどういうことかというと、間食の種類と量、食べるタイミングを選ぶということです。私のおすすめは、ナッツ、高カカオのチョコレートと、次に紹介するフルーツです。

フルーツは糖質が多いので、自分も含め血糖値の上がりやすい体質の人にとっては食べる量やタイミングに注意が必要ですが、食べ方さえ選べば、ビタミンやミネラルが豊富で間食におすすめです。

フルーツについてはとても面白い研究結果が2021年に出ています。『Circulation(サーキュレーション)』という循環器の分野で非常に権威のある医学雑誌に掲載された論文で、フルーツと野菜の摂取量と死亡率について複数の研究をまとめて解析したものです。つまりは、メタアナリシスというものですね。

この研究では、フルーツも野菜も1日の摂取量が多いほど死亡率が低くなることがわかりました。

■フルーツは「1日2サービング」くらいがベスト

では「どのぐらい食べれば良いのか」を表したのが図表1です。

フルーツ摂取量と死亡リスク
出所=『健康寿命を延ばす「選択」』

縦軸は死亡率、横軸は1日のフルーツの摂取量を「サービング」という単位で表しています。グラフを見ると、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)による死亡率だけはフルーツの摂取量と無関係ですが、トータルの死亡率も、がん、心血管疾患、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)による死亡率も、1日の摂取量が増えるにつれて下がっています。

ただ、1日の摂取量が増えすぎると、リスクが横ばいか、やや上がっていくので、ベストは「1日2サービング」ぐらいです。

とくに、心血管疾患は、食べすぎるとリスクが上がります。フルーツは甘いので、糖質が多く、血糖値を上げやすいからでしょう。フルーツに含まれている糖質のうち、果糖(フルクトース)は血糖値を上げませんが、フルーツには同時にブドウ糖(グルコース)やショ糖(ブドウ糖+果糖)なども含まれているので、食べるとやっぱり血糖値が上がります。

■バナナであれば2本、キウイであれば4個ほどが目安

さて、推奨される「1日2サービング」とはどのぐらいかと言うと、1サービングの目安がりんご1個、オレンジ1個、バナナ1本、キウイ2個なので、その倍です。かなり多いですよね。

血糖値が上がりやすい人は、工夫して食べましょう。まず、食べるタイミングは、血糖値が下がったタイミングを狙うこと。フリースタイルリブレで測定すると、私の場合、りんご3分の1、みかん1個を食べただけでも、ふつうの食事1食分と同じぐらい血糖値が上がります。そのため、食事と一緒に、あるいは食後すぐにフルーツを食べると、血糖値が上がりすぎてしまいます。

食後のデザートとしてフルーツを食べる習慣のある人もいると思いますが、とくに血糖値の高めの人にはおすすめできません。食後しばらくして血糖値が落ち着いたタイミング、つまりは食後3時間ぐらい経ってから間食として食べるといいでしょう。ちょうど3時のおやつのタイミングに良いと思います。

あるいは、早起きの人は、朝一にフルーツを食べたあと少し活動をして、血糖値が下がってきた2、3時間後ぐらいに朝食を摂るという方法もあります。朝が早い人にはおすすめです。

そして量は、血糖値に問題のない人は「1日2サービング」を目安にしてもらっていいのですが、血糖値が高い人、上がりやすい人にとっては少し多いので、主治医に相談するか、フリースタイルリブレでチェックしながら血糖値スパイクを起こさない量を探りましょう。さらに理想を言えば、血糖値が下がっているタイミングでフルーツを食べて、その後、体を動かすと血糖値の急上昇を抑えられるのでベストです。

キウイのスライスのボウル
写真=iStock.com/voltan1
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/voltan1

■食物繊維は高血圧や生活習慣病の予防になる

食後高血糖を起こさない食べ方でおさえておきたいポイントの1つに、食物繊維があります。

食物繊維は糖質の吸収を抑えてくれるので、食後の血糖値の急上昇をゆるやかにしてくれます。だから、糖質を摂るときには「食物繊維もセットで」を意識しましょう。

食物繊維の豊富な食べものの代表が、野菜、海藻、全粒粉パン、玄米、ネバネバ系など。ネバネバ系とは具体的に何かと言えば、オクラ、納豆、長芋、モロヘイヤ、なめこなどです。ワカメ、コンブ、メカブ、モズクといった海藻も、ネバネバ系ですね。

ネバネバの正体は、水溶性食物繊維です。食物繊維には水に溶ける水溶性食物繊維と、溶けない不溶性食物繊維があり、水溶性食物繊維には、糖質の吸収を抑えるだけではなく、食べたコレステロールをネバネバに取り込んで体外に排出してくれる働き、さらにはナトリウムを排出する働きもあります。

そのため、食後高血糖対策だけではなく、コレステロール値を下げる、高血圧を防ぐ意味でも大事です。生活習慣病予防には欠かせない栄養素なのです。

■なぜ「食事はまずは野菜から食べる」が良いのか

「まずは野菜から食べましょう」と、よく言われますよね。これは、「食物繊維を先にとりましょう」ということです。

「食べる順番を変えただけで本当に効果が出るの?」と思うかもしれませんが、ちゃんとエビデンスがあります。

ある研究では、食物繊維とたんぱく質が多く含まれた栄養バーを食事の前に食べたときと食後に食べたときで、血糖値の上がり方はどう変わるかという実験が行われました。糖尿病患者さんと健康な人でそれぞれ実験を行ったところ、どちらも食物繊維とたんぱく質のバーを先に食べたときのほうが、食後の血糖値の上昇はゆるやかになったのです。

健常者のグラフのほうは、もともとそんなに血糖値が上がっていないので、差はあまりないように見えるかもしれませんが、統計学的には「有意に差がある」という結果が出ています。食物繊維には(この実験ではたんぱく質も一緒に摂っていますが)、糖質の吸収を抑えるクッションのような効果があるということです。

私も、食事の順番は「必ず野菜から」を習慣にしています。そして、サラダはできる限り必須にして、量もかなり食べます。まずはたっぷりのサラダを食べて、おかず、そして少量の炭水化物(ごはんやパン)という順番で食べるようにしています。

サラダを食べる若い女性
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■野菜は1日3カップほど食べても問題ない

ところで、「野菜はたくさん食べましょう」とよく言われますが、「その『たくさん』ってどのぐらいなの?」と思いますよね。

浅野拓『健康寿命を延ばす「選択」』(KADOKAWA)
浅野拓『健康寿命を延ばす「選択」』(KADOKAWA)

これにも、ちゃんとエビデンスに基づく答えがあります。

先ほど、フルーツの適量について紹介しましたが、同じ研究で、野菜の摂取量と死亡率についても、複数の研究結果を取りまとめた結果が出ています。これを見ると、全体の死亡率も、心血管疾患、呼吸器疾患、神経変性疾患による死亡率も、食べる量が増えるほど低下する傾向にあります(がんだけは、横ばい)。

そして、どのぐらいまで食べれば食べるほどリスクを低下する効果があるのかと言うと、呼吸器疾患や神経変性疾患あたりは、1日4、5サービングまで、食べれば食べるほどリスクが下がっています。

心血管疾患だけは4、5サービングになると少しリスクが増えていますが、これは、カリウムの問題かもしれません。カリウムは高血圧予防に大事な栄養素ですが、すでにお伝えしたとおり、腎機能が弱っている人は摂りすぎると問題が生じます。

野菜(とくに生野菜)はカリウムが豊富なので、そのために心血管疾患では1日4サービングあたりを超えるとリスクが増えているのだと思います。

腎機能に問題のない方の場合、具体的にどのぐらいの量の野菜を食べるとベストかと言えば、心血管疾患のグラフを見たところ3サービングです。

1サービングの野菜の目安は、次のとおり。

・葉野菜のサラダ 1カップ(75g)
・生野菜(野菜スティックなど) 1カップ(75g)
・冷凍野菜 2分の1カップ(75g)
・加熱野菜 2分の1カップ(75g)
・豆サラダ 2分の1カップ(75 g)

1日3サービングはこの3倍ですから、葉野菜、生野菜だと3カップです。かなり意識しなければ摂れませんよね。ですから、毎食、サラダはお腹いっぱいになるぐらい食べてもいいということです。

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浅野 拓(あさの・たく)
聖路加国際病院・心血管センター 循環器内科医
1979年生まれ。2006年3月浜松医科大学医学部卒業後、聖路加国際病院の初期臨床研修を開始。心血管センターにて主に冠動脈疾患や弁膜症の診療に従事し、これまで術者として500人以上のカテーテル治療に当たる。急性心筋梗塞など緊急疾患の救命を目的とする診療を行う一方で、チーム医療、個々人のリスクに見合った治療選択、実践的な生活習慣を患者に提案することを重視している。2020年アムステルダム大学(University of Amsterdam)にて博士号取得。日本内科学会専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本循環器学会関東甲信越支部予防委員会委員。

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(聖路加国際病院・心血管センター 循環器内科医 浅野 拓)

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