「駅前タワマンの最上階に引っ越そう」妻に離婚を切り出されそんな決め台詞を吐く夫が"捨てられる"理由
プレジデントオンライン / 2022年9月25日 11時15分
※本稿は、岡野あつこ『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■どんなときも明るい未来が見える言葉をかける
私は相談者のファーストインプレッションで、この人は修復できそうだな、この人はむずかしいかもしれないなどと感じます。両者の違いは表情。笑顔で「こんにちは」とおっしゃる方と、俯(うつむ)いたまま挨拶もままならないという方に大きく分かれます。
もちろん私がよい予感を抱くのは前者です。
悩みを抱えているのだから暗いのは当たり前なのでは? と思う人がいるかもしれませんが、私が着目するのは、自分の気持ちをしっかりコントロールできるかどうかということ。
本当はつらいのに明るくふるまえる人は、相手軸に立っているのです。一方、ドンヨリしている人は、自分のつらさを理解してほしいと自分軸で押し切ろうとしている。相手の心を揺さぶることができるのは、もちろん相手軸に立っている人のほうです。
自分の感情を制御できず、人前で落ち込んでいる人が、相手との距離を縮めるのはなかなかむずかしいなと感じます。
関係がうまくいっていないということは、そうなるだけの暗い過去があるわけですが、ただでさえそういう状況のときに、ドンヨリとした表情でいくら「やり直したい」といってみたところで、その言葉は相手の心に入っていきません。
「これまでは、傷つけてしまってごめんね、でもこれからは心から反省して支えていくから、一緒に歩んでいこう」といえば、相手の心にも光が差してきます。
どんなときでも、人は「明るい未来」を見せてくれる人に心惹かれるもの。まして相手の心も暗くなっているときなので、努めて明るい言葉で希望に満ちた未来を感じさせてあげることです。
そのためには、過去への反省だけでなく、自分はこのようにしていきたい、一緒にこうなっていこう、という具体策やビジョンを示してあげることです。
もちろん、未来のことはわかりませんし、この世に絶対はありません。だからこそ、言葉で明るい気持ちにさせてあげるのです。
いまは離れて流れる小川になっているけれど、やがてまた合流し、大海原へ向かう。そんなポジティブなイメージを抱いて、相手に「いつかまた一緒に初詣に行きたいな」「老後は二人でのんびり過ごしたいね」といった具合に、明るい未来が見える言葉をかけ続け、雪解けのときを迎えましょう。
■何があっても押しつけや決めつけはNG
明るい未来が見える言葉をかけるという話をしましたが、それが一方的な押しつけや決めつけになってしまっては、逆効果です。
相談者Fさんは妻から、ある日突然「離婚したい」と切り出されました。Fさんにとっては思いもよらぬ言葉で、まさに「青天の霹靂(へきれき)」だったようです。
「離婚なんて考えたこともない。家族のために懸命に働いてきたのに……」と訴えるFさんに「奥さんが明るい未来を描けるような言葉がけをしてみましょう」と提案し、「わかりました!」とやる気になったところまではよかったのですが、やり方を間違えてしまったようでした。
Fさんは「駅前の高層マンションの最上階に引っ越そう」「ハワイで一緒にゴルフをしよう」「有名なステーキ屋があるんだ、行ってみよう」などと妻に矢継ぎ早に伝えたというのです。これに対して妻から「全部あなたの夢でしょう? そういう自己中なところが耐えられないの。私には私の夢がある」と言い返されてしまったのだとか。
「やっちゃいましたねぇ」というのが、私の率直な感想です。敗因は、自分はいいことを提案していると妄信していることから押しつけがましいこと、「彼女も望んでいるはずだ」と決めつけていることの二点です。
そもそも妻はハートの話をしているのに、金にモノをいわせるという時点でお門違いもいいところ。妻は、「夫は何もわかっていない」といらだちを覚えたのに違いありません。
本来なら「悪かった。これからは君を大切にする。僕のどこが悪いかいってくれ、直すように努めるから」と切り出すべきでした。そのうえで「家族の幸せのためなら何でもする覚悟だ。何か要望があればいってほしい」と伝え、妻の夢を引き出すようにすればよかったのです。
実はこれ、夫が犯してしまいがちな失敗の一つ。幸いにしてFさんは「そうだったのか!」と気づき、すぐに軌道修正したことで事なきを得ました。けれど「何がいけなかったのでしょうか?」と首をひねる人が多いのです。そこで私は、妻に伝える前に、女のきょうだいや女友達に感想を尋ねてみることをおすすめしています。
ただし、付け焼刃では修復できたとしてもまた同じ失敗をくり返さないともかぎりません。どういう視点に立って妻と接すればいいのかを学ぶ機会だととらえ、しっかりと学習していただきたいと思います。
多くの場合、妻は減点法で夫を見ています。結婚をスタートさせた時点での夫が百点満点だったとして、夫は私の話を聞いていない十点マイナス、出産に立ち会わなかった二十点マイナス、記念日を忘れている、束縛が激しい、自分勝手だと何かあるごとに減点していくのです。減点がかさむと、そのぶん夫のよいところが目にとまらないようになるため、点数が加算されることはなくなります。
Fさんの妻は点数がゼロになったか、あるいはマイナスになった時点で離婚となったのでしょう。事あるごとに不満や要望を何らかの形で伝えていたはずなのですが、そのことに気づかないほどFさんは傲慢だったといえるのです。
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夫婦問題研究家・パートナーシップアドバイザー
NPO日本家族問題相談連盟理事長。株式会社カラットクラブ代表取締役立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。これまでに25年間、3万件以上の相談を受ける。『最新 離婚の準備・手続きと進め方のすべて』(日本文芸社)『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)『離婚カウンセラーになる方法』(ごきげんビジネス出版)など著書多数。
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(夫婦問題研究家・パートナーシップアドバイザー 岡野 あつこ)
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