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女王国葬で判明した…新英国王室を背負って立つ2人の「体育会系女性ロイヤルメンバー」の存在感

プレジデントオンライン / 2022年9月22日 11時15分

国葬後、ウィンザー城に向けて市中心部を進むエリザベス女王のひつぎ=2022年9月19日、イギリス・ロンドン - 写真=時事通信フォト

海外から多くのVIPが駆け付けたエリザベス女王の国葬で見えてきたものは何か。英国王室ウオッチャーの東野りかさんは「葬儀などの段取りなどで多忙なチャールズ新国王はカメラの前で失態を演じた一方、存在感を見せつけたのはともにタフで体育会系ロイヤルメンバーであるカミラ妃や国王の妹のアン王女でした」という――。

■God save the Kingを歌う王妃、歌わない国王

エリザベス女王の国葬が終わった。民衆が女王とお別れをする「公開安置」(聖堂や寺院に安置された女王の棺のすぐ近くで追悼すること)の日数が多く、埋葬されるまでの期間が長かった。

国内のさまざまな場所で行われた葬列の行進や棺の警護などを、チャールズ国王夫妻だけでなく、女王の他の3人の子供達や孫達が担った。ロイヤルメンバーは心身ともにタフな時期を送っただろう。

その中で疲れを見せない体育会系ロイヤルメンバー2人が、一層の存在感を放った。一人はカミラ妃、そしてもう一人は……。

女王の崩御から国葬までの一連の追悼行事は「ロンドンブリッジ作戦」というコードネームで、1960年代から用意周到に計画されたもの。全てが完璧に行われた後、棺はウインザー城の聖ジョージ礼拝堂に運ばれて埋葬された。王室のために作られたこの礼拝堂には、父ジョージ6世、母のエリザベス皇太后、妹のマーガレット王女、そして最愛の夫フィリップ王配が眠っている。先に天に召された家族が女王を温かく迎えているだろう。

国葬が始まる前に鳴らされた追悼の鐘の回数は、女王の年齢と同じ96回。会場となったウエストミンスター寺院は、女王の結婚式や戴冠式が行われた場所であり、彼女の幸福や栄光の日々を刻んだ特別な場所だ。

BBCによると、棺の上にアレンジされた花はチャールズ国王が選んだもので、ローズマリー、イングリッシュオーク、マートルが使われた。マートルは女王の結婚式のブーケに使われていたものから育てたものだという。アレンジのそばに置かれたチャールズ(以下、敬称略)が書いたメッセージカードには「愛と献身の記憶に」と記されているそうだ。

葬儀の間に歌われた賛美歌はやはり結婚式や戴冠式に流れたもので、女王自らが選曲したものも含まれる。そして式の終わりに女王専属バグパイププレイヤーが奏でたのは「Sleep, dearie, sleep」(愛しい人よ、眠りなさい)。バグパイプのなんともいえない哀愁を帯びたメロディが、女王が永遠の眠りについたことを改めて実感させた。

National Anthem(賛歌)は「God save the Queen」から「God save the King」に変わった。王妃となったカミラは歌っていたが、チャールズは歌わず、悲しげな眼差しで母が横たわる棺を見つめていた。彼の胸に去来するものは何だったのだろう?

■カメラの前で思わずブチ切れたチャールズ

女王崩御直後から、チャールズはとにかく多忙を極めた。

スコットランドで臨終に立ち会い、ロンドンの評議会で即位宣言をした後、再びスコットランドのエディンバラに移動。さらには北アイルランドへ赴き、ロンドンで冒頭の葬列を見届けた後にウェールズを訪れるなど、短期間で連合王国4つを回った。女王の追悼を行い、弔問に訪れた大勢の一般市民と言葉をかわし握手もし続けた。それもありえないほどの近い距離の中で。

73歳の新国王は、よほど疲労していたのか、北アイルランド・ヒルズバラ城での記帳時、ペンのインクが漏れて手が汚れ、カメラの前で「うんざりだ!」と叫んでしまう。しかも、それはまたたく間に世界に拡散されてしまった。このイラっとシーンは2度もあったので、SNS上では「短気な男」というレッテルをはられる。生前の女王は、いかなるシーンでもそのような行動を見せなかったというのに。その一方でカミラは、キレる夫に冷静に対処していた。

あなたの旗の波
写真=iStock.com/vm
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vm

■足指の骨折をこらえて同行するも、休養は夫婦別々に

イギリス高級紙の「デイリー・テレグラフ」によると、カミラは女王崩御の前につま先の足指を骨折し、激痛をこらえながら夫に随伴していたそうだ。女王の棺が公開安置のためにウエストミンスターホールに運び込まれたとき、彼女は驚くことに中ヒールを履き、直立不動だった。なんと気丈なことか。かつてチャールズと不倫をして国中から嫌われていた“性悪女”は、今や賢夫人との評価が高い。

「ウェールズに行く前に、国王夫妻に休みがあり、チャールズ国王はグロスターシャーのハイグローブ邸で、一方、カミラ王妃はウィルトシャーのレイミルハウスで、と別々に過ごしたそうです。この2つの家は車で数十分ほどの距離で、彼女はストレスがたまると、レイミルで乗馬を楽しむなどしているほど大好きな別宅です。今回は骨折したこともあり、夫とは離れてゆっくり休養したかったのでしょう。気難しい夫との付き合い方もよく心得ています」

そう語るのは塩田まみさん。英国在住30年、イギリス公認ガイド、シティー特別区ガイド、ウエストミンスター宮殿のガイドを務める。

チャールズとカミラが初めて出会ってから50年以上経つ。とても相性が良いカップルだったにもかかわらず、若かりし頃はいろんな事情や障害があって結婚ができなかった。しかし不倫スキャンダル、ダイアナ元妃の死による壮絶な世間のバッシングも2人で乗り越えた。ただし、国王夫妻の未来への道のりは必ずしも明るいとは言えない。

■王室不要論が再燃か?!

30歳以下の若い世代をはじめ、国民の一部の人々によって支持されている「王室不要論」が、偉大な女王の死によって拡大する可能性があるからだ。

「血税を使って王室メンバーが贅沢するのは許せないとか、アンドリュー王子のセックススキャンダルやハリー王子とメーガン妃の王室離脱など揉め事だらけでけしからんとか、そういった感情的な理由がメインになった王室不要論は本質的な問題ではありません。王室はイギリスの“安定”のために必要だということを、ちゃんと理解している人が少ない気がします」(塩田さん)

実際に、王政を廃止して君主がいなくなったら、国家元首を誰が担うのか、新しい元首を中心とした代替システムをどうやって構築するのか。このプロセスは容易なことではない。さらには軍隊など君主の名のもとに編成されている国家の機関がとても多い。こちらの君主なき後の新しいシステムへの移行にも時間がかかるのは必至で、相当の混乱を招くに違いない。

また、現時点で56カ国が加盟し、世界の人口の3分の1を占めるという英連邦諸国との経済同盟も重要だ。20世紀前半の宗主国と植民地という主従関係ではなく、物的人的両面での交流を目的とした友好関係を築いている。

イギリスがEUから強気で離脱できたのも、これらの国々との緊密な関係性があるからだろう。特に人口が爆発的に増えているインドやアフリカ諸国のマーケットは、貿易面で特に重要だ。EUとは違い、イギリスが莫大な投資を行った結果、リターンも多く望める。

「英連邦の長はこれまでエリザベス女王でしたが、そのままチャールズ国王が引き継ぎました。また、オーストラリアやカナダなど一部の国はイギリスの君主を国家元首とした王国です。これらの関係性を持続させるためにも、王室は必要ではないでしょうか」(塩田さん)

バッキンガム宮殿
写真=iStock.com/johnkellerman
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/johnkellerman

■ガイドに配られた紙にはロイヤルの公務がびっしり

SNS上で「短気な男」という不名誉なレッテルを貼られてしまったチャールズだが、今後の任務時にもそうした言動が見られるかもしれない。

なぜなら、ロイヤルメンバーの公務量が多いからだ。数えきれないほど膨大な数の慈善団体の長、大学の総長などを務めながら、イギリス全土の公共機関や学校のセレモニーにも出席する(もちろん報酬はなし)など、この面でも国への貢献度は高い。高位の王族がバックについていると、チャリティでの寄付金の集まり具合が全然違うそうだ。塩田さんには職業柄知り得た情報があった。

「私たち公認ガイドはお客様を観光スポットにご案内する場合、今ならネットを使っていろいろな情報を得ます。でもデジタルが普及する以前は、公式ガイド協会が発行する紙情報に頼っていたのです。それと一緒にロイヤルメンバーの公務の情報もカレンダー形式で配布されていました。なぜかというと、公務が行われている場所周辺の警戒態勢や交通規制を把握できるので、その時間を避けてスケジュールを組めるからです」

その紙にはロイヤルメンバーの公務予定がびっしりと書き込まれていた。

「当時一番多くの公務を行なっていたのはエリザベス女王の長女・アン王女。彼女がダントツです。その次は女王の夫・故エディンバラ王配殿下でした。ほとんどが名誉職とはいえ、アン王女の多忙ぶりは今後も変わらないでしょう。私の夫の兄が通っていたロンドン大学のカレッジでは、学位授与式で総長のアン王女が賞状を学生一人ひとりに手渡していましたね。それだけでなく式の後のパーティにも最初から最後まで列席して、卒業生の親御さんたち全員と気さくに話していたのです。王女はエディンバラ大学総長でもあるので、授与式のシーズンになると、カレッジごとに1日何回も繰り返していたそうです」(塩田さん)

■元オリンピアンのアンには軍服が似合っている

アンは王室の中では長らく目立たない存在だった。少女時代は笑顔を振りまくタイプでなかったので、メディアからは“無愛想な王女”とも言われた。

しかし、兄とは違って活発で男性っぽいキャラクターの持ち主で、次第にアクティブな行動を披露して世間を騒がせる。カミラのかつての夫アンドリュー・パーカー・ボウルズと一時期交際しており、チャールズ、カミラ、アンドリュー、アンという“四角関係”の一人になるなど、なかなかの発展家だった。

そんなアンには“武勇伝”もある。1974年にはアンを狙った誘拐未遂事件が起きたが、現場で犯人と対峙して冷静に対処し、事なきを得たのだ。

アンは馬術のイギリス代表として1976年のモントリオールオリンピックの出場経験があるほどスポーツ万能。その後、自分と同じように馬術のオリンピアンであったマーク・フィリップスと結婚するも、破局。結婚当時から不倫をしていたティモシー・ローレンスと再婚した。女王が首長を務めていたイングランド国教会では、当時、離婚経験者が元配偶者の存命中に再婚することをタブーとしていたため、当然世間から大バッシングを受けた。しかし再婚に寛容なスコットランドの教会で式を挙げて、自分の意志を通した。

その後のアンは“お騒がせ”ロイヤルの悪名を返上とばかり(その意図はないかもしれないが)、中年期以降は落ち着いて公務に邁進している。同じ洋服を何度も着回すなど質素倹約に励んでいるのも好感が持てる。

今回の一連の追悼儀式で、女性の王族としては初めて君主の棺を守る一員として、軍服を着て兄弟とともに葬列を行進した。アンは1974年に王立婦人海軍の最高司令官に就任するなど、英国軍とゆかりが深い。故女王は第二次世界大戦では英国女子国防軍に入隊して後方支援をしていたし、フィリップ王配もバリバリの海軍軍人。兄弟皆軍人経験があるので、女性といえども軍務のキャリアは自然だったのだろう。足長のスレンダーな体型なので軍服がよく似合い、背筋をピシッと伸ばして行進する姿は、かなり勇ましいものがあった。

教会
写真=iStock.com/Paphada Tulyaanukij
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Paphada Tulyaanukij

■新国王が頼りにするのは、妻カミラと仲良しの妹

アンは女王の一人娘として母のよき話し相手であったし、チャールズと一緒に母の臨終の場所に駆けつけた。幼少時は多忙な女王の不在に泣いたこともあったらしいが、年の近い兄と寂しさを分かち合ったことで、今も2人は仲がいい。チャールズの短気で面倒くさい性格も理解し許容している。前にも増して新国王は妹を頼りにするだろう。

亡き女王に次いで絶大な人気を誇っているのは、ウィリアム皇太子の妻キャサリンだ。これまでの行動にほとんど落ち度がないし、公務も完璧にこなしている。庶民的なファストファッションが好きでSNSの使い方もうまい。今回の国葬でも、夫と一緒に最前列に並び、子供のジョージ王子やシャーロット王女を伴って参列。次期国王夫妻、さらに次の継承者一家としての堂々たる存在感を放った。

しかしジョージ、シャーロット、ルイの3人の子供がまだ小さいため、公務はもちろん育児にも注力してほしいという声が世間には上がっているようだ。ウィリアムの弟のハリー&メーガン夫妻が王室を離脱し、アンドリューが引退同然の存在となると、チャールズの頼みの綱はやはりアンということになるだろうか。

アンは若い頃の無愛想な表情はほとんど影を潜め、近年は満面の笑みでメディアに登場することが多くなった。カミラも再婚前はボサボサ髪のごつい“男顔”だったが、最近は白髪がツヤツヤのプラチナヘアーになって顔を彩り、美女風オーラを醸し出している。彼女らは、顔のシワさえも人間性の深みと自信の表れのように見える。

カミラとアン、この2人の体育会系ロイヤルが、今後の王室人気の鍵を握りそうだ。

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東野 りか フリーランスライター・エディター
ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。

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(フリーランスライター・エディター 東野 りか)

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