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「子どもが言うことを聞いてくれない」という親に伝えたい…池江選手の母親が子を叱るときに使う言葉

プレジデントオンライン / 2022年10月3日 15時15分

競泳女子100m自由形決勝を制し、喜ぶ池江璃花子選手=2022年8月31日、東京辰巳国際水泳場 - 写真=時事通信フォト

子どもをしつけるには、どうすればいいのか。水泳の池江璃花子選手の母親で、東京経営短期大学特別講師の池江美由紀さんは「子どもを叱れなかったり、ただただ厳しく接したりするのは、親自身がしつけの苦痛から逃れたいから。親が毅然とした態度を取れないと、子どもはどんどん聞き分けがなくなっていく」という――。

※本稿は、池江美由紀『子どもの心と才能が育つ【池江式】魔法の言葉』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■子どもの人間教育は親の責任

人間は、ただ生まれてきただけでは人間になれません。人間としての教育を施されるから、人間になれるのです。

では、誰が教育を施すのでしょうか。

幼稚園・保育園や学校の先生?

いえいえ、入園・入学するまでに何年もかかります。その間、教育しなくていいわけではありません。

幼児教室の先生? たしかに、うちの教室では0歳児から受け入れています。でも、幼児教室でレッスンを受けるのは、1週間に1〜2時間程度。そのほかの大半の時間を子どもと一緒に過ごすのは親です。

親が、家庭で子どもを教育すること。それが人間教育の出発点です。

あらゆることを最も吸収できるのが乳幼児期です。この大事な時期に、人間としての基本、社会で生きていくときの原則を、しっかり身につけておきたいものです。

■しつけで楽をしてはいけない

子どもをしつけるには、大きなエネルギーが必要です。面倒で、大変で、忍耐が不可欠です。

また、最近はそれぞれの個性を重視したり、自由に振る舞うことを良しとする風潮があります。我が子の個性を認めてやりたい、自由を尊重してやりたい……。

個性や自由は大切です。でも、そのことと、子どもに自分のしたいことを優先させがまんを教えないことは別です。この社会は、何でも自分の思うとおりに動くわけではありません。

親がしつけをおろそかにして、子どもの言いなりになってしまうと、その子が大人になったとき、自分で自分を律することができなかったり、社会的なルールを守れなかったりして、子ども自身がとても苦労します。

親がしつけで楽をすると、そのツケは、将来子どもが支払うことになるのです。

■「子どもを叱れない親」の問題点

今、子どもを叱れない親が増えています。

「叱ると、泣かれたりぐずられたりして、そのあとが面倒」
「子どもの機嫌を損ないたくない」
「子どもに嫌われたくない」

といった理由です。

でも、「叱る」ということがなければ、子どもは自分の誤った行動を直すことができません。正しくないことをしたとき、ルールに反することをしたときは、「それはいけないことだ」「行動を改めなければならない」と知ることが必要です。

子育てには「厳しさ」が必要なのです。

こう言うと、お母さん、お父さんのなかには、子どもをきつく叱りつけることが厳しさだと誤解される方がいます。

これは「厳しさ」の意味を取り違えています。

大事なのは、「子どもに厳しくするということは、それ以上に親が自分自身に厳しくあらねばならない」ということです。そのことが忘れられています。

子供を叱る母親
写真=iStock.com/chameleonseye
叱れないのも、逆に厳しすぎるのもNG - 写真=iStock.com/chameleonseye

■ぐずる子どもは「親自身の問題」

たとえば、子どもが「あれが欲しい」「これがやりたい」と言ってぐずることがあります。

親もはじめは、子どものわがままだと思って「ダメよ」と言います。

ところが、「ダメよ」と言われたくらいで、子どもはあきらめてくれません。親の言葉などまったく耳に入らないかのように、ぐずり続けます。

それでも親が言うことを聞いてくれないと、泣くという手段に打って出ます。しかも、次第にそのボリュームを上げていくという……。

こうなると、親も手の施しようがなくなり、

「仕方ないわね。今日だけよ」
「もう、全然言うこと聞かないんだからー」

などと不満を漏らしながらも、欲しがるものを買い与えたり、子どもの言うとおりにしたりして親が折れてしまいます。

結果、子どもは何を学ぶでしょう。

「欲しいものがあれば、ねだればいい。『ダメよ』と言われるのは最初だけ。何を言われても欲しがり続け、聞いてくれなくても泣き続ければ、最終的に欲しいものは手に入る」ということではないでしょうか。

親がなぜ根負けしてしまうのかといえば、子どもに泣かれるのが嫌だから、ぐずられるのが面倒だからです。自分が早くこの苦痛から逃れたいからです。

子どもの問題というよりも、じつは親自身の問題なのです。

たとえ自分はつらくとも、子どもの将来のためには、今、何を選択すべきなのかを考える。

そして、これが最良の道だと思ったら、泣かれようがぐずられようが、毅然(きぜん)と決めたことを貫く。子どももそのうち、必ずあきらめます。

「子育てに厳しさが必要」とは、親自身に求められていることなのです。

嫌がる子供に食べさせようとする母親
写真=iStock.com/skynesher
子どもがぐずっても毅然とした対応を - 写真=iStock.com/skynesher

■主導権を渡してはならない

「子どもが、言うことを聞いてくれなくて……」

と言うお母さんの悩みを耳にすることがあります。

たしかに、何でも親の思いどおりにはいきませんから、子育てにそんな悩みがつきものであることはわかります。

でも、ちょっと考えていただきたいことがあります。それは、親と子の、どちらが主導権を握っているのかということです。

子どもに対して、いつも場当たり的な対応をしていると、子どもは自分のペースに巻き込もうと、あの手この手で親を試すようになります。

泣く、ぐずる、大声でわめく、かんしゃくを起こす……などなど。これらは親を困らせることで、結果として自分の要求をかなえようとしているのです。

それに負けて子どもの言いなりになったり、親が言うことを曲げてしまったりすることは、親が子どもに主導権を渡していることを意味します。

■子どもの態度は親の態度の反映

たとえば、我が家では、食事はきちんと席に座って落ち着いてするものだと教え、もしもそうしなかったら、食事はすぐに下げる、という約束をしていました。

仮に子どもたちが食事中に歩き回ったりしたら、叱ったりせず、すぐに食器を片づけて、次の食事時間まで何も食べさせませんでした。

ところが、主導権を持っていない親は、口先だけで叱ったり、小言を言ったりはしても、結局は子どものペースに合わせてしまいます。

結果、食事の途中で歩き回ったり、遊び始めたりしているにもかかわらず、なんとか食べさせようとして、よけい混乱に陥るのです。

子どもは何の先入観もなく生まれてきます。そして、生まれたあとの環境をすべて受け入れます。親がいけないと教えたことはしませんし、こうするのが正しいと教えたことは必ず理解するものです。

子どもの態度は、親の態度の反映です。

親がぶれるから、子どもは聞き分けがないのです。

楽しそうに食事をする親子
写真=iStock.com/Satoshi-K
子どもの態度は親の態度の反映 - 写真=iStock.com/Satoshi-K

親が、「食事中は座りなさい」と言ってはいても、実際の態度では歩き回ることを許していれば、子どもは自分の好き放題にしてかまわないのだと学習します。

主導権が曖昧だから、こんなことが起こるのです。これは子どもが大きくなればなるほど修正が難しくなり、子育てが難しくなります。

親が主導権を持つことは、子育てで最も大切なことです。

正しいことは正しい、いけないことはいけないと、子どものためには心を鬼にしてでも教えなければなりません。それは親にしかできない務めなのです。

■しつけとは「がまんを教える」こと

親が主導権を持たなければ、子どもに「がまん」を教えることはできません。

「がまん」は、子どもが小さいうちは、ほんの少しの努力でできます。

大きくなればなるほど、「がまん」を教えるのは難しくなってきます。

がまんのできない子は、家のなかではそれが通用しても、外でも同じようにやることはできません。

誰もが自分の言うことを聞いてくれるわけではないし、わがままな子とは、ほかの友だちが遊んでくれません。結果、本人が一番ストレスを感じることになるのです。

子どもはお母さんのことが大好きですから、とくに小さい頃は、母親の言うことをそのまま受け入れてくれるものです。

がまんができたときは、「いい子ね」「よくがんばったね」と、お母さんがいっぱいほめてあげましょう。そうやって小さながまんを積み重ねていくことがとても大事です。

■同じ土俵に乗ってはいけない

ところで、2歳前後に、何でも「嫌だ」と言う時期があります。

それは「反抗」というよりも、「嫌だ」という言葉を覚えた喜びとか、なんとか自分でできるようになったことを親やまわりに認めてほしい、という思いから始まっています。

池江美由紀『子どもの心と才能が育つ【池江式】魔法の言葉』(PHP研究所)
池江美由紀『子どもの心と才能が育つ【池江式】魔法の言葉』(PHP研究所)

それに対して、お母さんが「反抗期」と大げさに受け止める必要はありません。

「そうなのー。嫌なのねー」とそれも含めて、おおらかに受け止めましょう。

たとえば、外に出かけようとしているのに、靴をはくのを嫌がる場合、

「何言ってるの! 早くはきなさい!」

と、感情的になったり、無理やりはかせようとしたりすると、かえって大変です。

「そうなのー。嫌なのねー。嫌だけど、靴はこうかー」

と子どもの気持ちを受け止めてから、親のペースに持っていって靴をはかせたり、

「じゃあ、はかなくてもいいけど、ママはお散歩に行くからね」

と、子どもが無理を言うことに取り合わない姿勢でいたりすると、子どもはぐずっても通用しないんだと学ぶのです。

親が過剰反応して、子どもと同じ土俵で言い争わないことです。

子どもの成長のために必要なことを親が示しているのですから、余裕を持って子どもと接することが大切です。

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池江 美由紀(いけえ・みゆき)
東京経営短期大学 特別講師
1995年、子どものための能力開発教室を開校。約30年間子どもたちの指導に携わり、才能を引き出し、本番力、人間力、何があってもあきらめない強い心を育む指導に取り組むほか、子どもの親の子育て相談や指導を数多く行う。長年の経験に基づいた講演活動も行っている。次女は、競泳の池江璃花子選手。著書に、『子どもの心と才能が育つ【池江式】魔法の言葉』(PHP研究所)、『あきらめない「強い心」をもつために』(アスコム)がある。

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(東京経営短期大学 特別講師 池江 美由紀)

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