ベンチプレスより腕立て伏せのほうが効く…米軍特殊部隊がやっている「最強の自重筋トレ」のコツ
プレジデントオンライン / 2022年9月29日 9時15分
※本稿は、マーク・ローレン、ジョシュア・クラーク著、山田雅久訳『マッスルエリート養成バイブル』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■普段の生活に役立つ体をつくる
さまざまなトレーニング器具やシステム、ダイエット方法が流行っては廃れていく。これらはすべてマーケティングの産物であり、体型を崩しやすいこの社会において、より高いレベルのフィットネスや健康を手に入れるための純粋な試みとは、お世辞にも言えないものだ。
しかし、その甲斐あってか、フィットネスに関心を持つ人の家の中、そしてジムの中にも、フィットネス玩具が溢れかえっている。
強くなるだけでなく、脂肪を落とすうえでも、もっともシンプルで効果的な方法が見落とされている。自分の体重を負荷にして体を鍛えるボディウェイトエクササイズ(自重筋トレーニング)だ。
スペックオプス(特殊作戦部隊)の外でも、ボディウェイトエクササイズの効果は何度も証明されてきた。たとえば、マドンナ、ブルース・リーなどのスターや、オリンピック選手、プロフットボール選手なども、ボディウェイトエクササイズでつくり上げたその偉業に見合う肉体を持っていた。
彼らをはじめとするたくさんの人が、主に自分の体重を使って、究極の体型とフィットネスを手に入れてきた。
ほとんどのウェイトトレーニングは特定の筋肉を分離して鍛えるが、普段の生活に役立つ体をつくるには、普段の動き方にできるだけ近い動作を使って鍛える必要がある。
■ウェイトを上げることもできる
平均的な人の1日は、主に自分の体重を操作することで成り立っている。日常生活に役立つ力を身につけたいとき、体重を使ったトレーニング以上に機能的なものがあるだろうか?
ソファで横になっているカウチポテトだけでなく、仰向けに寝てベンチプレスをやっているトレーニーも機能的弱者の国にいる。まじめな話、座ったり寝転んだりしながら体を激しく動かした最後の経験を思い出せるだろうか?(パートナーと一緒にいるときを別にしてだが……)
ボディウェイトエクササイズは、長い間、大衆向けのフィットネス文化の陰にいた。現代人のほとんどは、ランニングと水泳以外に自分の体を使って運動するようには育ってきていない。
ヨガとピラティスの爆発的な人気は、自分の体重を移動するエクササイズの価値を示す好例だが、それら単独では、総合的なフィットネスを開発する体系的アプローチにはならない。
ボディウェイトトレーニングをやることには、究極の財産であるこの体を自由に使いこなせるようになるという利点がある。筋力、パワー、筋肉と心肺機能における持久力、スピード、バランス、筋肉の協働力と柔軟性のすべてを開発できる。
そこに、良い食事と一貫性を加えると、より自由に動くようになっていく体と、それに続く新たな挑戦がどこまでも続いていく。
ボディウェイトトレーニングは、いつでもどこでもできるので、高価なジムの会員権が不要になる。とはいえ、のちほど紹介するエクササイズの中にはウェイトを上げることを生き甲斐にしている人たちにも価値を見出せるものがあるはずだ。
トロイの戦いに備えてアキレスが自分を鍛えたように――ボディウェイトトレーニングが最高の訓練法であることを古代戦士たちも知っていた――あるいは、ネイビーシールズやグリーンベレーが、戦地で敵と出会ったときに備えるようにトレーニングすることになる。
なぜ“それ”なのか? 単純な話になるが、機能する体をつくるからだ。
■自由自在に難度を調節することができる
プッシュアップ、プルアップ、シットアップ……ボディウェイトエクササイズでは、できることは限られており、特定の筋肉を鍛えることができないと考えている人もいる。それは誤解だ。
体重を使えば、体の中にあるどんな筋肉であっても、そこにあることを知らずにいる筋肉であっても負荷をかけることが可能になる。鉛筆のような首を太くすることから、すねにある筋肉を使ってふくらはぎを丸くすることまでが視野に入ってくる。
ジムにあるマシンと違い、私が紹介するエクササイズは考え方一つで無限に変化させることができる。ウェイトリフティングで行う動作のすべてを模倣したり、難しくしたり簡単にしたりすることすらできる。
これからの人生を快適に過ごせるようになる機能的な体をつくり、さらに、それをどこまでも進化させたくはないだろうか?
たとえば、270キロの体重がある男性や70歳の高齢女性でも可能なプッシュアップがあり、それを詳しく紹介している。プランシェ・プッシュアップといった、プロのボディビルダーであっても死ぬほど練習しなければできないものも用意している。
私がつくった10週間プログラムには、ベーシックからエリートレベルまでの4つのフィットネスレベルに合わせたエクササイズが用意してある。そのため、どんな人もボディウェイトトレーニングに入門できる内容になっている。
■エクササイズの難度を変える4つの方法
ボディウェイトエクササイズの難度を変える、4つの簡単な方法を紹介したい。
■ エクササイズを不安定な対象物の上で行う。
■ 動作の開始時、終了時、および/または、動作の途中で一時静止する。
■ その動作を、片側の腕や脚だけを使って行う。
これも、プッシュアップを例に説明しよう。
プッシュアップは、胸、肩にある筋肉、上腕三頭筋、腹筋、腹斜筋、下背部を鍛えるエクササイズだ(ベンチプレスだと、このうちの半分しか鍛えられない)。
プッシュアップは、立ったまま約60〜90センチメートル前にある壁に手をついてやると、とても簡単にできる。低いタンスや窓台の端などの、壁より低いところに手を置いてやると少し難度が上がる。
机からソファ、さらに、コーヒーテーブルから電話帳へと、手を置く表面が低くなっていけばいくほど難度が上がっていく。
クラシック・プッシュアップ──手を地に置いて行う通常のプッシュアップ──はさらに難しい。手を地に置いたまま、足をコーヒーテーブルの上に置くと、極端にハードなエクササイズになる。
以上は、レバレッジを変えることでエクササイズの難度を上げる方法だ。
![プッシュアップのバリエーション](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/c/1200wm/img_7ce30cfd44a264e75260553cb022fc3b413487.jpg)
![プッシュアップ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/1/1200wm/img_81eceabe351b39a5dba0fae7ed2c2034292978.jpg)
■さらに難度を上げたいなら
これで終わりではない。左右の手を1つまたは2つのバスケットボールの上に置いてみよう。こうすると、不安定な対象物の上で体を動かすことになって難度がさらに上がる。
もっと難しいものにしたいなら、バスケットボール・プッシュアップのボトムで一時静止する。まだ足りない? だったら、手を低いところへと移していき、次に両足を高いところへと移していく。
さらに、地につけていた手を不安定な表面に移していく。そこに、一時静止を入れて……。すべてアイデア次第だ。
<バスケットボール・プッシュアップ(強度3)>
安定筋と体幹に追加の負荷を加えるエクササイズ。バスケットボールの上に置いた片手でバランスを取ること以外は、クラシック・プッシュアップと同じだ。
バスケットボールを持っていないほうの腕の肩を、地にできるだけ近づける。バスケットボールを持っている腕の肩は、バスケットボールに向かって下りていくだけになる。セットごとに、バスケットボールの上に置く手を替える。
■ワンランク上を目指す
1個のボールの上に両手とものせると上腕三頭筋への負荷が大きくなる。レップごとにバスケットボールを手から手へと転がすやり方もある。片腕ずつ別々のバスケットボールの上にのせ、胸が完全にストレッチされるまで体を下ろしてもいい。
![バスケットボール・プッシュアップ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/5/1200wm/img_1583f0360649619dd72136dd4d68fbdc330483.jpg)
![マーク・ローレン、ジョシュア・クラーク著、山田雅久訳『マッスルエリート養成バイブル』(かんき出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/2/1200wm/img_f2c728902cbf9f4ac07799e2c8bcd56b157675.jpg)
誰でもできるエクササイズから、難度が高いエクササイズへと変えていく方法を説明してきた。ここで言いたかったのは、体重を使えば、その人のニーズに合わせて、ウェイトよりもはるかに自由に難度を調節できるということだ。必要に合わせて抵抗を完全にコントロールできる。
それがボディウェイトエクササイズの特徴の一つなのである。
『マッスルエリート養成バイブル』で、私は125種類以上ものエクササイズを紹介しているが、それらにこういったバリエーションを含めば、エクササイズはさらに多種類になる。
ぜひ、自分に合ったエクササイズで心身を鍛えてほしい。
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1972年アメリカ生まれ。米軍の特殊作戦トレーニングスペシャリストとして、自重を使ったトレーニング法を考案。空軍特殊作戦部隊、グリーンベレー、ネイビーシールズなどで1000人近くのエリート兵士を育て上げた。著書に『マッスルエリート養成バイブル』(かんき出版)などがある。著者ウェブサイト:Mark Lauren Bodyweight Workouts
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フィットネスセンターで指導しながら、多くの新聞や雑誌に寄稿している。
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(米軍の特殊作戦トレーニングスペシャリスト マーク・ローレン、認定パーソナルトレーナー ジョシュア・クラーク)
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