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「海外MBAホルダーだから大丈夫」は大間違い…履歴書で落とされる人が根本的に勘違いしていること

プレジデントオンライン / 2022年10月4日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

どんなことを履歴書に書けば、転職を成功させられるのか。人材コンサルタントの井上和幸さんは「海外MBAなどの資格が有利だと思う人もいるが、転職活動を有利にする資格は存在しない。企業が高く評価するのは、資格よりも、実務での経験と実績だ」という――。

■転職で有利に働く資格はない

転職対策で資格取得を目指す人が増えています。

大手資格学校TACによると主要25資格(公務員・教員除く)の2021年度の受験申込者総数は253万人で前年度比1.43倍に増加しています。特に申込者数の伸びが大きいのがビジネス系の中難易度資格で、中小企業診断士や宅地建物取引士が人気です。メディアなどでも「転職に効く資格」「儲かる資格」といった特集が頻繁に組まれています。

しかし、人事や採用の現場からすれば、「転職がかならず成功する資格」というものは存在しないと断言できます。

受験者が求められること・評価されることは、現職(まで)での実務経験であり、それを通じて獲得しているスキルや専門性です。

キャリアアップで言えば、社内の昇格条件に特定の資格の取得が必須となっている会社があります。しかし、それ以外の資格取得が社内のキャリアアップにつながることはほとんどありません。

■MBAホルダーが優遇されることはない

仕事に関する資格で、最も難易度の高いビジネス系資格は「MBA(経営学修士)」でしょう。

特に海外MBAは学力的にも経済的(学費+留学中の渡航費・生活費)にも取得には高いハードルがあります。それだけに、MBA取得後のキャリアや転職における直接的な役立ち度合いは誰しもが注目するところでしょう。

MBAホルダーには続々とヘッドハンターから声が掛かり、並み居る有名企業から戦略部門の責任者や経営幹部候補として登用される……。このようなイメージをもつ方がいるかもしれません。

ところが実際に、日々、経営幹部・エグゼクティブの採用と転職に関わっている私からしますと、MBAホルダーだからヘッドハントされるということは、こと一般事業会社のマネジメント職・経営職においては一切ありません。

(コンサルティングファームや一部の金融機関のプロフェッショナルでは、MBAホルダーであることがクライアントに対するブランディングになり、優遇されるケースはあります)

■資格よりも大事なこと

ひとつの例をご紹介しましょう。ある企業でグローバル戦略に関わる戦略部門のマネジメント候補としてヘッドハントの依頼があり、次の2人が最終候補となりました。

秘書が持っている書類を読む部長
写真=iStock.com/Edwin Tan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edwin Tan

Aさん:大手メーカーで経営企画部門に従事し、社内留学制度で米国MBAを取得。卒業後、日本の本社に帰任し、留学前の経営企画部門でグローバル事業統括セクションにてマネジャーとして海外法人の経営管理に従事。

Bさん:大手メーカーで事業部の現場を経験後、事業統括セクションに異動。その後、海外現地法人に出向し、現地会社の事業テコ入れに従事。そこで成果を上げ、別の海外現地法人の立ち上げを経験。その後、本社に帰任し、経営企画部門でグローバル事業統括セクションにてマネジャーとして海外法人の経営管理に従事。

Aさん、Bさんともに現在、日本本社の経営企画部門でグローバル事業の統括をされています。

ここでヘッドハント先の企業が「ぜひ採用したい」と選択されたのは、Bさんでした。

もちろんこうした職歴だけでなく、その人の人物(性格、人柄)や地頭などの要素も実際には絡んでいます。

ですが、概ね、同じような年齢と現在の職種・ポジションであった場合、MBAを取得したというよりも、実際に事業現場でどのような経験と実績を積んでいるかの方に、企業側の評価と期待値は重きが置かれます。

■面接官が見るのは、その資格が仕事とどう関係するか

「どの資格を取れば転職に有利になりますか」

昔からいまに至るまで、特に不況期になると、転職ご相談者からよく質問されます。私の答えはいつも変わらず、「資格自体が転職に有利になることはありません」。

もちろん資格勉強を通じてその知識をつけることや、MBAなどで同窓となった人たちとのネットワーク・人脈が、その後にいきることはあり得ます。資格自体が役立つのではなく、その取得過程で得られたことのほうに価値があるのです。

履歴書に、これでもかと取得してきた資格を列挙される人がいます。

もちろんそれだけの資格を取得したこと自体はすごいのですが、それといまの仕事との関係はどうなのかに、採用側の目は行きます。

それが現職業務と関係ないものばかりだと、逆に「資格だけ持っていても実務経験がないじゃないか」「資格取得する時間があるなら、現職でしっかり成果を出していて欲しい」と見るのが、企業の人事や事業責任者、社長なのです。

■会社が副業を推奨する本当の理由

国も副業を奨励する時代となりました。大手企業では副業を自社の人事制度などに組み入れるところも出ています。

もちろん専門性を身につけた人が、それを活かして副業でプロフェッショナリティを発揮することは非常に良いことです。一方で、中途半端な副業は、自身の成長や社内評価、転職時の評価を落とすことになることに、皆さん、お気付きでしょうか。

会社が副業を奨励することの「真の意味合い」のひとつに、その人はわが社ではこれ以上の活躍を期待できないからというものがあります。

果たして幹部や中核社員として期待している人に対して、会社は副業を奨励するでしょうか? それらの人たちは本業で成果を出すことに邁進しており、当人も副業など考えもしないでしょうし、副業する時間もないでしょう。

まんまと会社の奨励にしたがって副業に踏み出すことで、会社の中核社員としての期待値や候補者プールから自ら離脱することになるケースがあることに気を付けてください。

■転職で副業を求める人の末路

転職活動において「副業を前提とさせてください」という人も増えてきました。転職検討先の企業が募集ポジションにおいて副業を奨励している場合はよいでしょうが、そうでない場合、「この人は、転職してきても当該職務に100%コミットしてくれないな」と判断されるでしょう。面接結果は言わずもがなです。

副業とは本来、本業において独り立ちできるレベルのプロフェッショナリティに達したのち、本業以外に自分の時間の余裕があるならば、その範囲内でやるべきものです。

本業が中途半端なままでやる副業など、たいしたこともできませんし、リターンも見込めません。

そもそも、副業で提供できることがそのレベルにまで達しているのであれば、そちらがとっくの昔に本業になっているはずではないでしょうか。

■最もリターンの見込める投資とは

先行き不透明な時代に、何に投資をするか。結論としては、本業である現職の業務で成果をあげ成長することが、最もリターンの見込める投資です。

現状に不満があり、将来が不安だからといって、「安心できるほかの何か」を探すようでは、不安感は永遠になくならないでしょう。本業がうまくいかないから、つまらないから、で資格勉強や副業をやっても、双方ともに中途半端になるのはある意味当然です。

まずやるべきことは、何か逆転を狙った資格取得や副業探しに時間を使うよりも、本業である勤務先で結果を出し評価される。そして社内だけではなく、転職市場における自分個人の「売り」「評判」「バリュー」を確立するということです。

その上で、本業と関わりのある分野で、資格や副業で多角化を図る。資格取得や副業を希望する人には、この順番・戦略しかありません。

急がば回れ、です。現職でしっかり経験と実績を積み重ねている人は強く、転職市場でも買われるのはその人です。そうした実績があれば、そこまでの経験をいかしてほかの分野でも活躍できる可能性も高まります。

■仕事において本業よりも大事なことはない

不況期に雇用不安・生活不安から流行るものがあります。それがまた繰り返し始めているのを、私も人材コンサルティングや転職支援で感じています。

資格商法、副業商法に乗らされて、大切な時間とお金を使った挙げ句、キャリアや転職で逆に失敗してしまうという落とし穴にはまらないよう、くれぐれも気を付けていただきたいと思います。

不安だからと言って、「安心できる他の何か」を探しても、そんなものは存在しません。不安を払拭するような本業での実績を出す。それがいちばんリターンが見込め、また中長期的に自分の安心を得られる自己投資戦略なのです。

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井上 和幸(いのうえ・かずゆき)
株式会社 経営者JP、人材コンサルタント
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。著書は『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)など。

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(株式会社 経営者JP、人材コンサルタント 井上 和幸)

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