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これから「メルカリ離れ」が起きる…起業家・國光宏尚氏がインターネットの未来をそう予測する理由

プレジデントオンライン / 2022年10月4日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KanawatTH

インターネットはこれからどうなるのか。起業家・投資家の國光宏尚さんは「分散型インターネットであるWeb3が注目されている。これまでは、GAFAMやメルカリといった一部の企業がデータや利益を独占してきたが、Web3ではこうした中間のプラットフォーマーがいらなくなる」という――。

※本稿は、國光宏尚『メタバースとWeb3』(MdN)の一部を再編集したものです。

■インターネットを取り戻すムーブメント

國光流のシンプルな定義として、仮想通貨、暗号資産、ブロックチェーン、クリプト……、これらをリブランディングしたのがWeb3です。

2021年はアメリカを中心としてWeb3関連のスタートアップへの投資が目立ち、日本でもWeb3を視野に入れた企業やサービスが誕生しはじめています。

なぜ今、Web3がこれほど話題になっているのか――。

シリコンバレーを含めてホットになってきているのは、“power to the people(人々に力を)”ともいうべき、インターネットを人々のもとに取り戻そうというムーブメントが強まっていることが発端にあるのですが、何から取り戻そうとしているのか、解説のためにこれまでのウェブの流行の歴史を振り返ってみましょう。

■そもそもWeb1、Web2とは何なのか

まず「Web1(1.0)」とは、インターネットが普及しはじめた初期段階を指すのが一般的で、情報の発信者と受け取り手がはっきりと分かれていた時代のことをいいます。つまり、ユーザーは情報をただ受け取るだけで、ニュースサイトを見たり、ホームページを見たり、“Readの時代”でした。

Web1(1.0)は、HTMLを利用したテキストサイトが主体で、画像・動画コンテンツは少なく、コミュニケーションの手段はメールが中心でした。

その次に来たのが「Web2(2.0)」です。

2005年ごろから語られることが急激に増えた新しいインターネットの形で、UGCが一般化した時代です。ブログに加え、みなさんが日常で使っているSNS、動画共有サービスなどの普及により、Readだけの時代から“Read+Writeの時代”になりました。

Web2(2.0)のわかりやすい特徴は、TwitterやYouTube、Facebook、InstagramなどSNSの普及です。誰もが気軽に発信者になることができ、画像や動画コンテンツのシェアも容易になりました。

一方でWeb2(2.0)の発展で大きな課題が生まれてきたのです。GAFAMなどに象徴される巨大IT企業がプラットフォームとして君臨し、SNSの投稿もUGCも、個人情報までもが集約され得る状態になったことです。つまり、データの所有権が自分自身にはない状態になってしまったのです。

データの寡占、プライバシーの独占的利用が起きやすい状態といえます。

大統領のSNSアカウントですら、プラットフォーマーによって一方的に停止されてしまう。アイデンティティーの一つともいえるSNSのアカウントやデータも、もはや利用者が所有しているわけではありません。

もちろん、プラットフォーマーの存在によって秩序や安全性が保たれる面もありますが、自身のアイデンティティーがプラットフォームの一存で消滅する可能性があるという点は、このWeb2(2.0)時代の最大の問題といえます。

これに対してWeb3では、所有する権利がユーザーに戻り、自分のデータは自身のものとして持てるようにする動きが加速しているのです。

Web1.0→Web2.0→Web3.0の変化を図で表すと…
出所=『メタバースとWeb3』

■新規事業、スタートアップに投資する必勝法

私は、これまで多くの新規事業を立ち上げたり、投資をしたりしてきました。モバイルゲーム、モバイル動画、VR/AR、ブロックチェーン。新しい事業をつくる際には、私なりの必勝法というものがあります。

まず3年から5年後に来る市場はどこかというのを見定めて、次に市場が立ち上がってきたらそこで成功する会社はこういう会社だという仮説を立てて、最後にファンドを設立してさまざまな会社に投資をしながら、投資先間で情報共有を徹底して、仮説検証を高速に回していくという戦略です。

gumiが上場したのは2014年ですが、そのとき、次の新しい事業の軸を作っていこうと考え準備したのがモバイル動画でした。

当時、いまから3年から5年後にモバイル動画が来ると考え、そのときに勝つ会社というのは、スマホファースト、つまりスマホ「ならでは」の動画コンテンツ、体験、UI/UXを一から作ったところと仮定して、gumi venturesという20億円規模のファンドを通じて投資をしました。ここからは動画レシピアプリ「クラシル」など多くの成功したスタートアップが生まれました。

■「ブロックチェーンならでは」を発明するのはどこか

ブロックチェーンの話にも繋がるのですが、私が信じているのは、新しいテクノロジーが出て来ると、そのテクノロジーじゃなければできないコンテンツ、体験、UI/UXというものを一から構築したところが成功するのだろうということです。

スマホゲームのときも、多くの企業は最初、家庭用ゲームやガラケーのゲームをスマホに移植しようとしましたが、そういったものは成功せず、結局ヒットしたのはスマホの機能を最大限に活用したパズドラや「モンスターストライク」のような、スマホでなければできないゲームでした。

私はブロックチェーンでもまったく同じことが起こると考えていて、重要になってくるのはブロックチェーンファーストで、ブロックチェーンならではのコンテンツ、体験、UI/UXを一から発明したところが成功していくと思っています。

でも、いま改めてプロジェクトを見渡すと、ブロックチェーンでなくてもできるプロジェクトが多く見受けられます。

■Web3で重要な概念は「トラストレス」

Web3の未来がどうなっていくのか。それを考える上で重要なのがブロックチェーンにしかできない、ブロックチェーンならではの特徴を考えることです。

私は大きく次の3つの特徴があると考えています。

①トラストレス×自律的×非中央集権
②NFT
③DAO

本稿では、①について解説していきます。

まず、はじめに重要になるキーワードが、「トラストレス」です。

その言葉の通り、トラスト(信用)を担保する主体がいないということです。暗号資産が大きな盛り上がりを見せた数年前からしきりに挙げられるキーワードですが、これがまさにWeb3、分散型インターネットを構築する重要な概念といえます。

ビットコインを例に解説すると、そもそも法定通貨の場合、政府や中央銀行が信用を保証しています。また、ポイントの場合、発行している企業が信用を保証しています。それに対して、ビットコインやイーサリアムなどは、信用を担保している中央集権的な主体がありません。

単一のサーバーやデータベースに依存せず、多数の参加者がネットワーク上の取引を検証、承認する仕組みで、一人ひとりが参加するネットワークがサービスの基盤となっているのです。

■自分の利益のために自律的、非中央集権で動く

日本円の場合、日銀や日本の政府が通貨の信用を保証しています。同じように楽天ポイントは楽天、ヤフーのポイントはヤフーが信用を保証しています。これに対して、ビットコインは信用を保証する主体がいません。

これがトラストレスです。ビットコインの信用保証は、多くのマイナーがマイニングをする形で行っているのですが彼らは誰から指示を受けるわけでもなく自分の利益のために、自律的に動いている。楽天、ヤフーは、完全に中央集権ですが、ビットコインは非中央集権で動いている。トラスレスで自律的に動く非中央集権的なネットワークというのが、ブロックチェーンでないとできないことの本質の一つではないかと思っています。

もし、本当にブロックチェーンというテクノロジーが世の中を変えていくのであれば、この本質はすさまじく重要です。

ここで紹介したいのが、中央管理者を必要としない、分散型取引所(DEX)のUniswap(ユニスワップ)です。従来の仮想通貨取引所とは異なり、中央集権的な主体が存在がおらず、ユーザーはプロトコルにより自動化された取引所内でユーザー自身がトークンの取引を行うことができます。

DEXは、Uniswap以外にもいくつか存在していますが、Uniswapはその中でも特に分散的であり、その高い流動性から人気を誇っています。

ブロックチェーンは、誰もが使えて誰も支配しないパブリックな台帳を歴史上初めて実現しました。しかし、実際は多くの中央集権的な交換所がハッシュパワーとプライベートキーを支配しているのが現状です。中央集権的な交換所は法定通貨と暗号通貨を交換するのには不可欠なのですが、その存在は当初のビットコインの哲学とは反しています。そのなかで私が注目しているのがUniswapなのです。

■経済の足かせだった「中間業者」は今後なくなる

インターネットは、そもそも個人をエンパワーメントさせる、“Power to the people”という世界を目指してきました。

ただ現状はGAFAMなど一部の企業がプラットフォーマーとしてサービスやデータをコントロールしています。

いまは、「結局は信用保証が必要だから」とプラットフォーマーが独占的な利益を得てしまっています。

CtoCマーケットプレイスのメルカリ、配車や宿泊ならばUberやAirbnb、仮想通貨交換業者などもプラットフォーマーとして大きな利益を稼ぎ出しています。

しかしよく考えれば、売りたい人と買いたい人がいて直接つながれるなら、中間のプラットフォーマーが必要あるのかという話です。直接つなぐことをトラストレス(信用不要)にできれば、中間はいらなくなります。つまり彼らが提供しているのは「トラスト」そのものともいえます。

■「分散型ビジネス」が一般化する時代が来る

ビジネスサイドからみたインターネットの歴史は「中抜き」の歴史でした。今後はそれがさらに加速していきます。

生産者と買い手、アーティストとファンがよりダイレクトにつながれるようになってきます。

國光宏尚『メタバースとWeb3』(MdN)
國光宏尚『メタバースとWeb3』(MdN)

強大すぎる力は暴走するリスクを保持します。分散型なDecentralized(非中央集権)のプロトコルは彼らからユーザーに力を戻します。多くのブロックチェーンプロジェクトが巨大プラットフォーマーからのdecentralizationを目指しています。

通貨だけでなく、通信もクラウドもコマース、メディア、マーケットプレイスも、ネット業界はこれまで既存産業をdisruptされることで事業拡大を続けてきました。今度はdecentralizedなプロトコル、サービスによってプラットフォーマー側がdisruptされる側に回る可能性が出てきているのです。

世界中のどこにいるユーザーでも、仲介者なしで暗号資産を取引することができるUniswapような、「分散型○○」という事業は今後さらに注目され一般化していくことでしょう。

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國光 宏尚(くにみつ・ひろなお)
起業家・投資家
1974年生まれ。米Santa Monica College卒業。2004年にアットムービーに入社。同年に取締役に就任し、映画・テレビドラマのプロデュースと新規事業の立ち上げを担当する。2007年にgumiを設立し、代表取締役に就任。2021年8月よりThirdverse代表取締役CEO、およびフィナンシェ代表取締役CEOに就任。2021年9月よりgumi cryptos capital Managing Partnerに就任。著書に『メタバースとWeb3』(MdN)がある。

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(起業家・投資家 國光 宏尚)

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