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「アダルト雑誌が見つかり父親に殴られ血まみれのまま監禁」同級生宅へ布教活動を強いられた宗教二世の黒歴史

プレジデントオンライン / 2022年10月1日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Paul Gorvett

小1の時に両親が新興宗教に入信した、宗教二世の男性。通信制の高校を卒業後、2歳下の女性と交際していたことが発覚し、大問題に。教団との決別を心に決めた男性は集会で、神の組織の上部メンバーと直接対決した。現在40代で妻と3人の子供と幸せな時間を送る男性が語る「地獄の日々」とは――。(後編/全2回)
【前編のあらすじ】小1の時に、両親がある新興宗教に入信した現在40代男性・桜木瞬さん(仮名・中部地方在住)。入信してから父親は暴力的になり、母親はうつに。幼い桜木さんも信者勧誘活動に駆り出され、週3回の集会では長時間の講演に飽きてくると、お仕置き部屋で叩かれた。

■後輩には「嫌だったら無理にしなくていいよ」と教える

両親やベテランの信者たちから何度マインドコントロールされても、桜木瞬さん(仮名・40代)に芽生えていた疑問や違和感は消えなかった。

「新興宗教を辞めたいとは思っていましたが、まだまだ高校生。親の立場もあります。家族の中で孤立したら、行く場所もありません。そんな葛藤の中、私が出した答えは、『今まで中途半端だった裏表生活を、完璧にやりこなそう!』でした」

勧誘活動をしやすいようにと無理やり通わされた通信高校の最終学年4年生になると、運転免許を取得し、母親(当時44歳)からお下がりの自動車をもらった桜木さんは、まず奉仕活動(勧誘活動)をやめた。

親に「奉仕に行く」と言って車で遊びに行き、適当な時間に帰るのだ。どうしても参加しないといけない時は、訪問家庭の呼鈴を押したフリや留守だったフリ・断られたフリをし、月末に報告する伝道(奉仕)時間は、デタラメを書いて提出。

次に桜木さんが手を付けたのは、研究生の洗脳を解くこと。高3で3人の子の指導を任された桜木さんは、その子らとの奉仕活動のときはただの散歩をし、「嫌だったら無理にしなくていいよ」と教える。そのせいか桜木さんの研究生は、一人も儀式を受けなかった。

「神は信者一人ひとりを見ていて、『背教的な行いは見逃さない』と教えられていたので、検証しようと考えましたが、結果は言うまでもなく、神はいませんでした」

どんなに背教的な行いを続けても、教団での桜木さんの立場は変わらなかったのだ。このことは、長年教団の教えが染み付いていた桜木さんにとって、衝撃だった。

ショックを受けながらも桜木さんは、次々に水面に小石を投げ入れ続ける。

禁止されている音楽や本に手を出したり、小さなポータブルテレビを購入して自分の部屋で深夜番組を見たりし、影響を受けた曲の歌詞を少し変えて集会時に話したりした。

ところがある日、隠していたアダルト雑誌が両親に見つかる。父親に殴られ、胸ぐらを掴まれて階段を引きずり下ろされると、血まみれのまま、1階の物置部屋に4時間ほど閉じ込められた。出してもらった後も、「お前は悪魔だ!」とののしられ、口を聞いてもらえない。

桜木さんは2日間だけ家出。車で知らない土地へ行き、公園で寝た。

「それでも父を嫌いにはなれませんでした。遊園地のお化け屋敷で私を驚かせたお化けに、『子供が泣いてんだろ! やめろや!』と怒鳴った父。私が友達を泣かせたときに、必死に頭を下げてくれた父。神輿を担ぐカッコいい父……。信者になる前の父との楽しかった記憶が私を苦しめました」

桜木さんが幼い頃のことを鮮明に覚えているのは、それだけ信者になってからの変化が大きかったということ。そして入信後の生活に彩りがなくなったことを意味しているのだろう。

「悪いのは父じゃない。そうさせたのは教団だ」「いつか昔の父にもう一度会いたい。自分に子供ができたときに会わせてやりたい」そんな思いが桜木さんを教団内にとどまらせた。

■「お前、Mちゃんと付き合ってるのか?」

1997年に高校を卒業した桜木さんは、自営業の父親(当時49歳)の手伝いを始めた。5月ごろ、21歳になった桜木さんは、教団で2歳年下のMちゃんにこっそり告白。一度はフラれたものの、数週間後には交際に発展。しかしこの交際も、長くは続かなかった。

交際が始まって約3カ月後のこと。父親から「お前、Mちゃんと付き合ってるのか? 近く審理委員会があるからきちんと申し開きをするように」と言われたのだ。

桜木さんによれば、審理委員会とは裁判のようなもの。集会所に呼び出され、2人別々に聴取される。審理委員会ではまず、「神の前で真実を語ると誓いますか?」「私たち教団の結婚前のお付き合いの仕方や、不純な性行為を禁じていることを理解していますか?」と訊ねられ、「はい」と答える。

するとトップが、「ここに書かれていることは事実ですか?」と一冊のノートを出した。それは、Mちゃんとその親友が交換していた日記。どうやら、親友のお母さんが盗み見て長老に提出したのが、交際がバレた経緯だったようだ。

机の上に手帳とペン
写真=iStock.com/Plateresca
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Plateresca

桜木さんは「はい」と答え、「でも結婚を前提に真剣に付き合ってます」と続ける。

しかしここで必要なのは、「今までの行為を悔い改めるか改めないか」の選択だった。「悔い改めません」と言えば即排斥となる。

桜木さんによると、組織は排斥者とは一切の関わりを断つよう教えており、親きょうだいでも一切接触できなくなるという。結婚式に来てもらえない、生まれた子供をを両親に会わせられない、といった話はザラであり、家族であっても被災者が排斥者だった場合、信者たちは助けず、安否確認もできない。だから桜木さんは、徐々に組織との距離を置く「自然消滅」を狙っていた。

「今排斥されれば、『私たちが悪いから排除された』で終わる。でも、どうせ辞めるなら、『組織が悪い』ことを他の信者にも気付いてもらえるようにして辞めたい」

桜木さんはこう考え、「悔い改めます。今後は第三者のいる所でお付き合いします」と答えた。

■教団への憎悪を募らせる

数日後、審理委員会から結果が通達されたが、桜木さんは、まさかの“お咎めなし”。

しかしトップはこう続けた。

「今回の件はMさんが瞬さんを誘惑したことが問題の発端と考えます」

びっくりして桜木さんは反論する。

「違いますよ⁈ 告白したのも、デートに誘ったのも、手を出したのも私からです! 先日そう話しましたよね?」

だがトップは、「そうさせてしまったMさんに問題があると、私たちは判断しています」と聞く耳を持たない。

桜木さんは、音を立てて自分の気力がなえていくのを感じた。

「トップは狂信的な信者。人として良識のある回答を求めても無駄でした。おそらく、私の父親がトップのひとりだから、もみ消そうと根回ししたのでしょう。『もう嫌だ、もうたくさんだ』と思いました」

その次の集会で、Mちゃんに与えられていた責任ある役割がすべて別の人に変わったことが発表されていた。

帰宅するなり桜木さんは、「親父! Mちゃんの裁定、親父が口出したんだろ⁈」と言って父親に食ってかかる。

「私は父親だから今回の件はノータッチだ。審理委員会でちゃんと真実を話したんじゃないのか? お前は自分が悪いと認識しているなら、これ以上Mちゃんに迷惑をかけるな。相手は18歳だぞ。男ならキッパリ結論出せ」

正邪を測るはずの天秤
写真=iStock.com/DNY59
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DNY59

桜木さんは、これまで事あるごとに「信者なら○○しなさい!」と言ってきた父親が、初めて「男なら」と言ったことに驚いた。

「父が絡んでないなら、父に対するトップたちの媚び売りだったのでしょう。私とMちゃん、いなくなるならどちらが教団の被害が小さく済むか、天秤にかけたんだと思います。これが神の組織のやり方です。それでも、私のせいでMちゃんがつらい立場にあるのは耐えられませんでした……」

桜木さんは、信者を辞めることを決意し、Mちゃんに別れを告げた。

■脱会を決意し、教団へ逆襲した

それから桜木さんは転職。集会や奉仕活動に出ない口実を作るため、シフトを入れまくり、仕事の後は同僚たちと飲み歩く。禁止されているタバコを吸い、車を改造し、聖書や教団の書籍を処分。自分が講演する日だけは集会に行き、自分の言葉だけで、二世に向けた話をした。

約2カ月が経った頃、父親がトップを降りた。めったに来なくなった桜木さんが、たまたま来た集会で発表されたのだ。桜木さんを悪者に仕立てようとする教団の魂胆が見え見えだったが、桜木さんの決意を揺るがせるには十分だった。

たばこをくゆらす男性
写真=iStock.com/Nopphon Pattanasri
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nopphon Pattanasri

しかしその日、別れたMちゃんと偶然コンビニで再会。

「いろいろやってるみたいじゃん。お母さんから聞いた。他の人はどうだか知らないけど、私は応援してるから頑張って! 早く彼女作りなよ!」

と笑って手を振る。

桜木さんはMちゃんに背中を押され、揺らいだ心が定まった。

次の集会の日、桜木さんの両親と姉は出張のため不在。家族の制止が入ることは避けたかったため、この日を選んだ。集会後、その日の講演者に感謝や感想を言うために列ができる。桜木さんもその列に並んだ。そして順番が来る。

「講演ありがとうございました。どうしても聞きたいことがあります。Mちゃんの件で、私がしたことなのに、彼女が責任ある役割から降ろされていたのはなぜですか?」

他の人にも聞こえるように声を張る。すると慌てる講演者。

「瞬さん! 皆さんがいるので第2会場で話を聞きますから移動を……!」

「皆さんに聞かれたらマズイんですか? それは裏でマズイ取引があったってことですか? 組織とあなた方の裁定で苦しんでいる人がいるんです! 悔い改めると言った人が役割から降ろされて、行き場を失うのは納得がいきません! 神の組織が聞いて呆れますよ!彼女だけ無慈悲に降ろされた理由を皆さんの前で説明してください。できないのなら私もすべての役割から降ろしてください!」

講演者は絶句。代わりにトップが出てきて、

「それに関してはトップで話し合いの機会を設けますから……」

と騒ぎを収めようと必死だ。

「不幸な人を生み出す話し合いなんていりません! 今結論が出せないなら、私はすべての役割から降ります! 以後の手続きは適当にやって下さい! 神の組織でどうして不幸な人がいるんですか!? あんたらのせいで彼女は来れなくなったんだよ!」

いつしか桜木さんは泣いていた。すると、Mちゃんの母親が近くに来て、「瞬君、ありがとう。もう娘は大丈夫だから」と声をかけた。桜木さんは、「お母さん、Mちゃんのこと、本当にごめんなさい……」と頭を下げた。

「さよなら」

そう言って玄関へ足を向けると、講演者が「瞬さん! もう一度話し合いませんか?」と駆け寄ってきたが、「もう遅えよ!」と振り払って出ていった。これが、桜木さんが信者として活動した最後の日となった。

■「俺は何をしたんだ…?」途端に涙が溢れてきた

騒ぎの後、桜木さんは家族に、「何やったのあんた⁈」と詰められたが、それ以上のことはなかった。

それから3カ月ほど経った1999年冬。22歳の桜木さんは、家を出た。会社の同僚のAさんと交際を始め、同棲することになったのだ。Aさんは5歳年上で、5歳と3歳の娘がいるバツイチ。このAさんとの生活で、桜木さんが長年新興宗教の信者だったことによる呪縛が露呈することになる。

Aさんと暮らし始めてから、桜木さんは数多くの戸惑いを経験。道端で手をつなぐだけでも、また子供たちがクリスマスソングを歌い出しても、周りを気にしてしまう。正月の過ごし方も、2人の子供との接し方も分からない。子供のしつけなど、桜木さんにはお仕置き部屋の記憶しかなかった。

半年ほど経った頃、2人の子供は保育園で桜木さんの似顔絵を描き、「瞬パパの顔!」と見せてくれた。桜木さんは幸せだった。

ところがある晩のこと。「久々に友達と飲みに行きたい」と言うAさんを快く送り出し、2人の子供と留守番をしていると、上の子がなかなか寝てくれない。「早く寝かさなきゃ」と焦っていた桜木さんは、上の子が起き上がって遊び始めた瞬間、お尻を叩いていた。上の子が泣き叫ぶと、桜木さんはハッとした。

ぬいぐるみを抱えた少女が、やめて、と手をこちらに向けている
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

「俺は何をしたんだ……?」

途端に涙が溢れてきて、「ごめんね! ごめんね! 痛かったよね! ママがいなくて寂しかっただけなんだよね!」と上の子に謝る。泣き疲れた上の子は、眠ってしまった。

翌朝、Aさんから、「叩いたの?」と聞かれる。桜木さんがうなずくと、「信じてたんだよ? 私、もうダメかも。明日出て行って」と取り付く島がなかった。

Aさんが離婚したのは、前夫のDVが原因だったのだ。娘に暴力を振るわれたAさんは、もう二度と桜木さんを信じなかった。

「この時初めて子供を叩いてはいけないことを知りました。私が今でもお仕置き部屋とそこにあった道具が許せないのは、この出来事が理由です。自分が知っている常識は世間の常識ではないのか。自分が何を知って、何を知らないのか。知らないことで誰かを傷つけたりしないのか……。私はこの時、“教団の教え”という“殻”の存在に気付き、ヒビが入った所。『根っこの部分に張り付く教団の教えを取除かないといけない!』そう思った瞬間でした」

Aさんと気まずくなった桜木さんは、仕事も辞めてしまった。ホームレスのような生活をしたり、キャバクラのボーイをしたりしつつも、やっとアパートを借りて暮らし始める。

インターネットができるパソコンが、漫画喫茶の付属設備のひとつとなって間もない2000年春のある晩、桜木さんは漫画喫茶に入り、自分が入っていた新興宗教について調べ始めると、涙が止まらなくなった。朝まで過ごした桜木さんは、自分が入っていた新興宗教に関するサイトの管理人に電話をすると、意気投合。管理人も、かつての信者だった。

その後すぐに、「教団は間違っている」と言いたくて、約3年ぶりに実家に電話をする。母親に話し始めると、「それ以上言ったら背教者よ! もう二度と電話しないで!」と切られ、以降、電話に出てもらえなくなった。桜木さんは、猛烈な怒りを組織に感じていた。

■「死にたいなら止めない。ただ大事な友達を失うんだ」

その後、桜木さんは小さなカーショップに勤め始め、車の整備士として、草レースの車両を作ったり、客の車を改造したりといった日々を過ごす。

初めての作業が多く、毎日叱咤(しった)激励を受けながらの仕事だったが、桜木さんは、信者時代に受けた「信者以外は悪魔なので、話を聞かないこと」という教えがこびりついており、先輩たちからの注意やアドバイスを攻撃と受け取ってしまい、苦しい毎日を送っていた。

ボンネットを開けた車、レンチやペンチなどの工具も並ぶ
写真=iStock.com/standret
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/standret

そんなある朝、突然布団から起き上がれなくなり、涙が溢れ出して止まらず、とてつもなく死にたい衝動に駆られる。死ぬ前に最後に友人に別れを告げようと電話をすると、「死にたいなら止めない。ただオレは大事な友達一人失って生きなきゃいけないんだぞ! わかってんのか?」と友人。桜木さんは目が覚め、心療内科に駆け込むと、抑うつ状態と診断。幸い軽い状態だったため、1年ほどの服薬と通院でほぼ寛解した。

「車って、たくさんボルトやネジがありますが、一つひとつ締め付ける力が決まっていて、それ以上の力で締めるとねじ切れるし、それ以下だと走行中に緩むんです。だから“トルクレンチ”という工具を使って適正な締め具合にするんですが、私は信者時代、組織に必要以上に締め付けられていました。壊れて当たり前なんですよね。車の整備をしていて、締め付け過ぎてネジを壊した時そう思いました。壊したネジって取るのが大変なんですが、コツを掴めば上手に取れるんです。だから、教団のせいで壊れた私や私の人生ですが、きっとキレイになおる。そう思いました」

22歳のときに音信不通になった家族だが、その3年後に母親から電話があり、交流が復活。桜木さんが家を出、姉が信者の男性と結婚した後、父親の暴力はなくなり、両親はすっかり仲の良い夫婦に戻ったという。

2007年、桜木さんは30歳で結婚。現在桜木さんは3児の父となり、妻の実家の近くに家を建て、家族5人で幸せに暮らしている。しかし桜木さんの両親は今も、孫の誕生日やクリスマスにプレゼントを贈ることも、正月を共に過ごすこともできないままだ。

■同級生の家へも布教で訪問「お前何やってんの?」

筆者は、家庭にタブーが生まれるとき、「短絡的思考」「断絶・孤立」「羞恥心」の3つがそろうと考えている。

桜木家の場合、両親が入信したときが、タブーが生まれた瞬間だった。桜木家は入信後、家族の笑顔が消え、父親が暴力的になり、夫婦仲も悪化したという。はじめは、両親は家族のために良かれと思って入信したのかもしれないが、最終的には両親が宗教に妄信的になり、現実の子供たちと向き合うことができなくなった結果だと思えてならない。

もちろん教団によるマインドコントロールの巧妙さも見過ごせない。外部との接触を絶つよう仕向けられ、情報が遮断されたうえ、社会から孤立した状況だった両親は、自分たちが正しいのか間違っているのかを正常に判断することが難しい状況だったのだ。

脳が操り人形のように、操られている=マインドコントロール状態のイメージ
写真=iStock.com/SvetaZi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SvetaZi

「一家で信者になってから、社会から取り残されたような感覚がありました。周りの友達と話が合わず、自分は他の人とは違うんだと感じました。近所の人からも変な目で見られるので、疎外感がありました。ただ、『周りと違うのは正しいこと』で、『神から選ばれた特別な存在』と教えられるので、それを信じていました。教団は、信者を『温和な羊』、一般の人を『悪魔の山羊』と教え、明確に人間を二分割しているので、マインドコントロールされている信者は、自分たちは救われる羊だとして、その疎外感すら満足してしまうようですよ」

桜木さんは学校生活の中で、恥ずかしさとともに寂しさを感じていたと話す。

「一番嫌だったのは、親に連れられての奉仕活動(布教)です。自分が住んでいる地域を回り、もちろん同級生の家にも行きます。そのため翌朝学校で、『お前何やってんの?』と面白おかしく噂されていることがあり、本当に恥ずかしかったです。学校にいづらくなると、必然的に集会が居場所になってしまっていました」

桜木家のような家庭のタブーの発生は、どうしたら防げたのだろうか。

「親御さんが宗教に入信した場合、その子は通常、二世として自動的に入信することになります。子供の力ではどうすることもできません。だから私が親御さんたちに願うのは、まず知ること。せめて入信する前に、その宗教がどのようなものか調べてほしい。そして被害者の人には、声を上げてほしい。私は、人間を狂わせる組織が今も存在することが問題だと思っています。それだけ巧妙なロジックで人の心を入れ替えているんでしょう……。あとは、子供が親の宗教について気軽に相談できる窓口があったら心強いと思います。私の子供の頃は、変だと思っていても、相談できる場所がありませんでしたから……」

家庭で弱い立場の子供にはなすすべもない。せめて家庭の外で子供の声に気付いてくれる大人の存在があれば、桜木さんのように1人でもがき続ける子供を救うことができたかもしれない。

「変だ」「おかしい」と感じたとき、それを正直に口にできない家庭には多かれ少なかれタブーがある。あなたの家庭ではどうだろうか。

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旦木 瑞穂(たんぎ・みずほ)
ライター・グラフィックデザイナー
愛知県出身。印刷会社や広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターなどを務め、2015年に独立。グルメ・イベント記事や、葬儀・お墓・介護など終活に関する連載の執筆のほか、パンフレットやガイドブックなどの企画編集、グラフィックデザイン、イラスト制作などを行う。主な執筆媒体は、東洋経済オンライン「子育てと介護 ダブルケアの現実」、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、産経新聞出版『終活読本ソナエ』、日経BP 日経ARIA「今から始める『親』のこと」、朝日新聞出版『AERA.』、鎌倉新書『月刊「仏事」』、高齢者住宅新聞社『エルダリープレス』、インプレス「シニアガイド」など。

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(ライター・グラフィックデザイナー 旦木 瑞穂)

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