これが「世界一の投資銀行」の思考法…ゴールドマン・サックスの採用面接で出題された忘れられない質問
プレジデントオンライン / 2022年9月30日 9時15分
※本稿は、野原秀介『投資思考』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
■就職先、結婚相手……意思決定の積み重ねが人生をつくっている
今日はどのスーツを着て出社するか、どこのお店でランチを食べるか、仕事が終わったら何をして過ごそうか。
このような些細な事柄から、どの会社に就職するか、どんな人を結婚相手に選ぶかといったインパクトの大きい事柄まで、私たちは毎日数えきれないほどの意思決定を行っています。
そして、意思決定には常にその答え合わせが付き物です。今日あなたが食べることを選択した食事は明日のあなたの身体を作り、あなたの選んだ就職先はあなたの経歴書となり、あなたの選んだ結婚相手はあなたの家族を構成します。
言い換えるならば、これまで行った意思決定とその答え合わせとが積み重なったものがあなたの人生そのものであると言えます。
このようにして考えると、意思決定がいかに重要であるかおわかりいただけるかと思います。それではどのようにすれば良い意思決定を行うことができ、ひいては良い人生を送ることができるのでしょうか?
本書ではより良い意思決定を行うための原理・原則について、私のこれまでの経験を交えつつ皆さんにご紹介していきます。
■ゴールドマン・サックスが世界一の投資銀行であり続ける理由
私は東京大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券(FICC部門)に入社しました。ゴールドマン・サックスはニューヨークに本社を持つ外資系投資銀行で、世界を代表する金融機関です。
また、社員への報酬が非常に高額であることでも有名で、学部卒の新入社員で年収1000万円を超え、部長職ともなれば数億円単位の年収が支払われると言われています。当然ですがそこで働く社員は非常に優秀な方ばかりでした。
私は当時、日々彼らが優れたパフォーマンスを安定して生み続ける秘訣を探りながら働き、遂に一連の原理・原則を発見するに至りました。
その答えは単なる地頭の良さや勤勉さ、はたまた運などではありません。その秘訣は“物事の捉え方”にあります。彼らは皆、金融市場に身を置いています。
金融市場に国境はなく、世界で最も賢い人々が知恵と経験を総動員して、0.01%でも高いリターンを求めて24時間争っています。彼ら、そして私も、そのような環境に身を置く過程で、投資の世界における原理・原則、いわば“投資思考”を身につけていたのです。
皆が投資思考に基づいて考え、行動し、会社自体が投資思考を共通言語として運営される。これにより、細かいディレクション不要で、正解に向かって皆の足並みが自然と揃う。だからこそゴールドマン・サックスは、非常に長い期間にわたり世界一の投資銀行であり続けることができたのです。
■“投資思考”により高い精度で判断を下し続ける
これに気がついた私は、“投資思考”のなんたるかを習得すべく精一杯働きました。その後私はゴールドマン・サックスを退職し、2018年に株式会社X Capitalを創業しました。
現在はコンサルティング事業を中心に行い、将来的には自己勘定での超長期投資により企業体を構築し、日本の企業価値向上に資することを目指しています。
![野原秀介『投資思考』(実業之日本社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/b/1200wm/img_1b85f75a24bdf981b549a08f7a4d319e174155.jpg)
創業以来現在まで代表を務め、日々多くの意思決定を行っていますが、振り返るとゴールドマン・サックスで投資思考を学び取っていたからこそ、高い精度で判断を下し続けることができていると感じます。
誤解のないように説明しておくと、ゴールドマン・サックスでは、全員が投資家として働いているわけではありません。私自身の仕事の内容も機関投資家を対象とするセールスであり、直接投資業務を行っていたわけではありません。
皆さんが本書を通じて投資思考を身につけ、投資思考を実践することで、世の中を誤りなく認識し、誤りのない意思決定が行えるようになっていただければ幸いです。そしてそれさえできれば、誤りを犯してしまう多くの人のパフォーマンスを大きく上回る成果を残すことができるはずです。
■ゴールドマン・サックスの採用面接で投げかけられた「ある質問」
今から、すこし昔話をしたいと思います。自分が大学生時代、ゴールドマン・サックスの採用面接に参加した時の話です。
いわゆる一次面接にあたる段階で、何千通もの書類選考から厳選された100名程度の就活生が、日本の本社である六本木ヒルズ46階の応接フロアに集められました。静かに待機する100名は順番に名前を呼ばれ、5人ずつのグループに分けられると、AからMまでの番号が振られた会議室を所定の順番で回るように指示されました。
ノックして会議室に入ると、そこには2名の面接官が待機しており、15分程度、いくつか質問に答えてから次の会議室へ移動します。この工程を繰り返し、総合評価で一次面接の結果が決定する、という段取りでした。
10年も前の話になるので、どんな質問を受けたのかはほとんど忘れてしまいましたが、その中に1つだけ、今でも忘れられない質問があります。
“今からあなたと私がゲームをします。この丸いコースター(※)が無限にあると仮定して、それをあなたと私が交互でこのテーブルの上に置いていきます。ただし、それぞれが重なることのないように置かなくてはいけません。
ゲームの勝敗はこれ以上テーブルの上にコースターが乗らなくなった時に決し、先に置けなくなった方が負けとします。さて、このゲームにおける必勝法はありますか? そして、あるとすればそれは何ですか?”
※コースターは歪みのない丸で直径5cm程度。机は長方形で、表面の平らなもの。机の大きさは一般的な8人掛け用のものでしたが、これは今回の問題の答えに影響を及ぼしません。
![コースター](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/2/1200wm/img_72994472663ae12a97e9e2de218d708a1279512.jpg)
いかがでしょうか。制限時間を1分として、是非考えてみてください(次の小見出しに答えがあります)。
■ゲームも人生も非対称なリソースを見極められるか
答えは、
●必勝法は存在する
●必勝法は①先攻を選び②一手目でテーブルの真ん中にコースターを置く③その後は、常に相手が置いたコースターと点対照の位置にコースターを置き続ける。
というものでした。
そして、そのとき答えと考え方を解説してくれた社員の言葉が非常に印象に残っています。
それは「両プレイヤーに対し、コースターも机のスペースも十分な数が与えられているこのゲームにおいて、非対称なリソースが1つだけあります。それは『テーブルの中心』です。
このことに気がつき、これをどう活かすかという観点から考えを始めることができれば、自然と先攻を選ぶことができ、テーブルの中心を抑えることが鍵を握ると気づくことができます。そうすれば必勝法に辿り着いたも同然と言えるでしょう」という言葉でした。
ここからが本題です。では、生きる人全てに共通する、人生において非対称なものとはなんでしょうか?
それは“時間の進み方(過去から未来へと一方向に進む)”です。仮に人生に必勝法があるとするならば、コースターの問題と同様、この非対称性をどう活かすかという考え方は良い人生を作る上で非常に重要になってくるでしょう。
また、投資の世界には“Compound interest is man’s greatest invention.(複利は人類最大の発明)”という言葉があります。
これもつまり同じ意味合いですが、何かわかるでしょうか? それは一方向にしか進まない時間の流れを味方につけ、時間の経過が自分にとって有利に働くような意思決定をし続けることが重要だ、ということに他なりません。
■人生の必勝法は「複利での成長のループ」
例えばですが、この考えを活かすとあなたの行動は以下のように変わってきます。
●実のところプロジェクトの背景をよく理解しておらず、日常の業務に忙殺されているため、背景理解や学習に時間を使うことができていない。
→1カ月間土日を返上して、普段触れる余裕のない過去のドキュメントや議事録を読んだり、同じ業界の事例調査などを行ったりして本質的な理解に努める。
●日々、〆切の近い仕事に追われ懸命に働くものの、気づいたらこれといった成果がないまま1年が経過している。
→資格の勉強、仕事のポートフォリオ作成、起業準備など、重要だが緊急でない仕事に取り組む時間をまず確保(例えば毎日AM7時~AM9時など)した上で、残りの時間でその他の仕事を完了することができるような段取りを組む。
●主力事業が順調に伸びているから、羽を伸ばして旅行や趣味に精を出す。
→主力事業に手がかからないからこそ、生まれた余剰時間で新しい事業アイデアを探したり、次の成長のタネを仕込んでおいたりする。
決して平等とは言えないこの世の中で、時間だけは誰にとっても平等に分け与えられたリソースです。それを自分の成長に投資して昨日よりも今日、今日よりも明日、と常に自分を高みへと押し上げることで視野が広がり、より幅広いリソースにアクセスが可能になる。
それによって今までは見えなかったさらなる高みを目指すことが可能になり……という複利での成長のループに入ることが人生の必勝法だと言えるでしょう。
![進歩のブロブ、右/未来に大きい](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/e/1200wm/img_cef34f1bfac507bb27b24e910d4ba287137632.jpg)
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X Capital代表
1991年生まれ。東京大学卒業後、新卒でゴールドマン・サックス証券に入社、債券為替コモディティ営業本部にて数多くの金融機関とのディールを経験。その後2018年に株式会社X Capitalを創業、現在まで代表を務める。「日本経済に、パラダイムシフトを。」というビジョンを掲げ、日本に経営人材を創出すること、プリンシパル投資により中長期的な企業価値を増大させることを目指して事業を拡大し、創業以来増収増益を達成している。
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(X Capital代表 野原 秀介)
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