ここに住めば真の成功者になれる…中国・深圳のサラリーマンが35歳までに家を買う切実な理由
プレジデントオンライン / 2022年10月5日 10時15分
※本稿は、ヤンチャン『33地域の暮らしと文化が丸わかり! 中国大陸大全』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■深圳、香港、マカオを束ねる巨大経済地域
広東省は中国南部にあり、特別行政区の香港とマカオは広東省の南にあります。
広東省を流れる珠江の河口にある三角地帯は「珠江(しゅこう)デルタ(珠江三角洲)」と呼ばれ、広州、深圳、東莞(とうかん)、珠海(しゅかい)、香港、マカオなどの都市がここに含まれます。
珠江デルタには多くの外資系企業も進出しており、一大都市圏を形成しています。
広東省でもっとも注目を集めているのは深圳です。広東省に限定することなく、中国でもっとも注目を集めている都市だと言っても過言ではありません。深圳は香港と接している経済特区で、北京や上海と並ぶ世界都市になっています。経済特区とは、外国資本の導入など特別な経済政策をとることが認められた地域です。わたしも深圳に行ったときにはとにかく衝撃を受けました。
北京や上海と並ぶというより、すでに北京や上海を超えている印象だったのです。
■オシャレする暇もないほどとにかく忙しい
深圳では街にいるのは若者ばかりなのに、男の子はダサく、女の子は化粧もろくにしていないことにも驚きました。ダサいというと言葉は悪いのですが、見た目をまったく気にしていないようです。
どうしてかといえば、彼らはみんな“とにかく仕事”だからです。
深圳には「996」と呼ばれる奮闘文化があります。朝9時から夜9時まで週6で働くことからそう言われます。でも実際は996どころではありません。夜の11時や12時まで働くのも当たり前のようになっています。
夜の11時を過ぎても、スーパーやレストランなど多くの店は普通に営業しています。レストランの壁などには「深圳人、加油(ジャーヨー)!(頑張れ、深圳人)」といったポスターが張られています。そして、地下鉄やバスには育毛剤の広告がやたらに目立ちます。深圳で働いている人たちの大変さがしのばれます。
■「中国一、家が高い」のも納得
深圳は「中国一、家が高い」とも言われます。それでも深圳の人たちは、深圳に家を買い、そこで子どもを育てたいから、必死で働いているのです。
中国では学校の周辺に家がないと、子どもをその学校に行かせるのが難しくなるので、学校の周辺は、家や土地が高くなる傾向があります。深圳の学校周辺となれば、なおさらです。それにもかかわらず、そこに家を買おうとしているわけです。そういう目標があるからこそ遊んでいられないのですね。
深圳で頑張っている人たちのことを中国人は敬意をもって見ています。彼らが頑張ってくれているので中国のIT産業は世界レベルで発達していて、国民の暮らしが豊かになっているからです。
■35歳を過ぎるとリストラされる
深圳は、もともと小さな漁村でしたが、中国初の経済特区に指定されてから急速に発展した移民都市です。それ以来、若くて能力がある人が集まってきました。
ただし、深圳では35歳くらいで失業してしまうことも多いです。歳を過ぎれば「戦力外」とみなされやすいということなので、野球やサッカーなどプロスポーツの選手寿命なみです。失業すると、広州に移ったり地元に帰ったりする場合が多いようです。そうならないうちに深圳に家を買えたとすれば、真の成功者です。
こうした事情があるため、長期居留民の平均年齢は32.5歳で、60歳以上の人は人口の6~7%くらいにしかなりません。
経済特区になる以前から深圳に住んでいた人たちは開発時に大金を渡され、マンションに住めるようにしてもらっています。言葉は悪いですが、成金になっています。
■“働く人たちの街”でも見どころはたくさん
深圳は“働く人たちの街”でありながら、住んでいる人たちのマナーが良くて、観光などで行っても気持ちがいいのがうれしいところです。近代的な高層ビルが建ち並ぶ未来都市なのに、緑も多くて街全体が美しい。気候も良く、空気もきれいなので、過ごしやすいです。
中国らしい歴史遺産や景勝は楽しめませんが、ユニークなテーマパークがあります。紫禁(しきん)城や万里の長城などのミニチュアが展示されている「錦繍中華(きんしゅうちゅうか)」。少数民族の暮らしが再現されていて、民族舞踊などを見ることもできる「中国民俗文化村」。地球上の名所がジオラマ化されている「世界の窓」がそうです。言葉にすると陳腐なようでも、それぞれの施設はしっかり楽しめるものになっています。
■ユニクロ、イオン、スシローが並ぶ広州
省都の広州も、もちろん発展しています。広州を本拠とする自動車メーカーの広州汽車集団はトヨタやホンダと合弁事業を展開していて、広州周辺には日本の製造会社の下請けをしている工場が多いのも特徴です。
そのため広州には日本人が多く、日本の商業施設もずいぶん進出しています。ユニクロやイオンモールなどがそうです。
2021年にはスシローの中国1号店がオープンしてニュースになりました。
2018年には広州と深圳、そして香港を結ぶ高速鉄道「広深港(こうしんこう)高速鉄道」が開通しました(広州―深圳間は2011年の開通)。広州南駅と福田(ふくでん)駅(深圳)は35分ほど、福田駅から西九龍(にしきゅうりゅう)駅(香港)は15分ほどで移動できるようになっています。
■ネズミやワニ、サソリや蛇の料理も…
広東料理は日本でもよく知られていると思います。
横浜が開港した頃から広東人が通訳などでやってくるケースが多かったこともあり、日本の中華料理は広東料理を中心に広まりました。
チャーシュー、酢豚、シュウマイ、フカヒレの姿煮などが代表的な広東料理です。飲茶も広東省で発達した文化といえます。中国では「早茶(ザオチャ)」という言い方をするのが普通です。
朝食として食べる、バリエーション豊富な点心を早茶と呼びます。
広東省は“食の天国!”で、「食は広州にあり」、「広東人はテーブル以外、足が4本ついているものはなんでも食べる」などと言われます。
いわゆる“ゲテモノ食い”をすることが多いのは広東省と雲南(うんなん)省です。
広東省ではネズミやワニ、蝉、サソリや蛇なども食べます。広東省の大部分は亜熱帯気候に属することもあって生物の種類が多く、かつては食糧が豊かな地域ではなかったからだとも考えられています。医食同源の意識が強いようです。そのため薬膳のような意味合いでいろいろな生きものを食べているみたいです。
■同じ中国語でも方言が多すぎてわからない
広東省では広東語が使われているイメージですが、東側の福建省に近い地域では客家語や潮州(ちょうしゅう)語を話す人が増えます。
広東語は、広東省だけでなく香港やマカオなどでも使われています。客家語は広東省梅(ばい)県地方や中国南部に話す人がいて、潮州語は広東省の潮州市あたりや東南アジアなどで使われます。
他の地域の中国人からすると、広東語も客家語や潮州語も区別がつかず、すべて超難解方言と言えます。広東語を学ぼうとするなら塾に通う必要があるくらいで、ほとんど外国語に近い感覚です。広東語を話す人と客家語を話す人のあいだでも、互いの言葉がよくわからないそうです。
広東人は、知らない人に対して、男性には「靓仔(レンツァイ)(イケメン)」女性には「靓女(レンヌイ)(美女)」と呼ぶことでも知られています。
そう聞くと、日本の人は、おべんちゃらのように思われるかもしれませんが、そういう意図はないです。名前がわからない人に対して「お兄さん」、「お姉さん」と呼びかけるのと同じ感覚のようです。
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(ヤンチャン)
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