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動機は怒りでも情熱でもない…身の危険を冒してまで教団を追及する鈴木エイト氏の意外な動機と悪癖

プレジデントオンライン / 2022年10月6日 12時15分

オンラインで対談するひろゆき氏(左)と鈴木エイト氏(右)(2022年9月9日)

20年以上にわたりカルト集団を取材し続けている鈴木エイト氏。「日の目を見ない問題を地道に取材してきた孤高のジャーナリスト」などと紹介されることに違和感があると言う。取材や情報発信の際に怒りや情熱をあまり前面に出さないというエイト氏に対し、ひろゆき氏が「モチベーションは何か?」と聞いたところ、二人の意外な共通点が見えてきた――。(第4回)

■かつてカルト宗教の取材は命がけだった

——エイトさんは20年以上、カルト団体の取材を続けてきて、相当なリスクを負っていると思うのですが、身の危険を感じたりはしないんですか?

【エイト】今日も変なメッセージが来ましたよ。鍵垢(非公開アカウント)で「あなた、紀藤(正樹弁護士)、有田(芳生)は結構ヤバめの武闘派団体から狙われとるで。お互い用心しましょう」と。取りようによっては脅迫っぽいですよね。

【ひろゆき】実際に海坊主風の男に刺された事件などもありましたからね。

そういうことがあっても、エイトさんは活動を控えようとは、ならないんですか?

【エイト】でも、おそらく80年代にカルト団体を追いかけていた人たちはもっと危険だったと思うんです。ジャーナリズムを暴力で抑えようとする動きが、いまよりも激しかったので。

実際、世界日報の一部の人が統一教会の暗部を暴こうとしたため、その動きを抑えようと、現在の勝共連合会長の父親の梶栗玄太郎らが世界日報の本社を襲撃した事件や、世界日報の元編集局長・副島嘉和氏が路上で全身をメッタ刺しにされた事件もありました。その後、89年にはオウム真理教による坂本弁護士一家殺害事件などもありましたからね。

そうした時代に命がけで取材していた人たちに比べると、多少気楽にやっているところはあるんですよね。さすがに命までは取られないだろう、と。

【ひろゆき】その頃に比べたら。

【エイト】先人の積み重ねのおかげというか。今回、ある程度有名にならせてもらったので、逆にそういう点では以前よりは安心かなと。

■エイト氏を殴った勧誘員は10年後、教団イベントで歌っていた

【エイト】自宅では一応、防犯カメラを設置してずっと撮っているんですが、たまに変な人は来ますね。政治家の追及をしていたときは、カメラでこちらを隠し撮りしている人が何人もいたり。だから、地元の警察署にはずっと重点的にパトロールしてもらっています。

【ひろゆき】エイトさんは、そういうことをリスクだとは思っていないんですか?

【エイト】嫌ですけどね。ただ、それで活動をやめようとは思わないです。殴られたこともありますしね。

【ひろゆき】そうなんですか?

【エイト】血気盛んな勧誘員がいて、少し揉めたときに殴ってきたので、これでこいつを現行犯で捕まえられる、ラッキーと思って追いかけたんです。

【ひろゆき】はい、はい(笑)。

【エイト】渋谷だったんですが、駅の周りを3周ぐらい追いかけて。途中でだんだん楽しくなってきて、わざとスピードを緩めたりして。

【ひろゆき】どこまで逃げるのか、みたいな。

【エイト】それで取り押さえて組み伏せたんです。でも、反撃されて、結局逃げられてしまって。

【ひろゆき】さすがにもう現れないでしょうね。

【エイト】じつはその勧誘員は、旧統一教会が摘発を受けた2009年の新世事件の時に新世のメンバーだったんですが、その時は逮捕されなかったんです。その後、あの勧誘員はどこに行ったのかなと思っていたら、2019年に細田博之さんたちが出席した愛知県で開催された大規模イベントの4万人集会のステージで歌っていました。

【ひろゆき】幹部になっていたんですか?

【エイト】いや、大勢で歌っているおじさんコーラス隊の1人でした。俺を殴ったやつがここにいたと驚きました。

【ひろゆき】教団に居続けたんですね。

【エイト】そうなんです。アゴが特徴的な人だったので、10年越しでもわかりました。

【ひろゆき】感動の再会(笑)。

【エイト】感動はないんですが(笑)。

■エイトさんが生きている限り僕は大丈夫

【エイト】政治家が絡んでくると、やはり気をつけたほうがいいなという場面はあります。有名になったがゆえに危ないという部分もありますよね。ひろゆきさんはよくご存じかと思うんですけど。

【ひろゆき】僕も統一教会のことを発信していると、「身の危険を感じないんですか?」と聞かれることがあります。そういう時は「有田さんと、エイトさんが生きている限りは大丈夫でしょう」と返しています(笑)。

【エイト】そうなんですね(笑)。

【ひろゆき】僕は日本に住んでいないのでリスクを感じないんですが、エイトさんや有田さんはそこそこリスクがありそうなのに、変わらず取材し続けているからすごいですよね。

【エイト】ちょうど今日、久しぶりに有田さんとテレビ局でバッタリ会いましたけど、元気にされていました。僕も有田さんが生きてるから、まあ大丈夫かなと思っています。みんな、ほかの人を基準にしているという(笑)。

【ひろゆき】「この人が生きてる限り大丈夫」ってお互いに思っている。

【エイト】紀藤弁護士も、やはりよく脅迫を受けているそうですからね。脅迫で済んでいるうちは本当に危なくはないのか、わかりませんが。とりあえず家に帰ると一応、周囲は気を付けますね。誰か潜んでいるんじゃないかと。

注 2022年9月29日、旧統一教会は紀藤弁護士ほか弁護士2名、および読売テレビ、TBSらに対して、計約6600万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。

【ひろゆき】でも、誰かが本気で攻撃しようと思ったら、民間人が逃げ切るのはかなり難しいじゃないですか。

【エイト】そうですよね。

【ひろゆき】調べれば家もわかってしまうだろうし、向こうに捕まってもいいという覚悟があれば、一人になるタイミングを狙えますからね。

■目の前で怒っている人を見ると笑ってしまう

【ひろゆき】エイトさんはテレビとかでこの問題の解説をしていても、あまり怒りとかを出さないで、淡々と話すじゃないですか。中立な視点で、統一教会が許せないから潰してやるとか、怒りみたいなものは見えないんですよね。

その点、紀藤弁護士とかは、こういうの許せないんだろうなって、見ていてすごくわかりやすい。もちろん、ずっと被害者に寄り添ってやっているから当然なんでしょうけど。

そういう意味では、そこまでのリスクを負ってカルト団体の取材を続けているエイトさんのモチベーションって、外からわかりづらいですよね。エイトさんのモチベーションは、どのあたりにあるんですか?

【エイト】僕は、あまり嫌いなものってないんですよね。山本(朋広)議員とか、虚偽の建造物侵入で訴えてきた菅原一秀議員も別に嫌いじゃない。

【ひろゆき】そうなんですね。

【エイト】むしろ、ネタを提供してくれる面白い存在だな、と思っています。

じつは僕、自分でもよくないなと思っている癖があって。

【ひろゆき】何ですか?

【エイト】目の前で怒っている人を見ると、なぜかニヤニヤしてしまうんです。

——それ、ひろゆきさんと共通してませんか?

【ひろゆき】僕もそれあります(笑)。

【エイト】自分ではその癖にはまったく気付いていなくて。あるとき新聞社の人と取材現場でトラブルになって話をしていたら、突然相手に激怒されたことがあったんです。「なんでお前、ニヤニヤしてんだよ」と。

そこで初めて、自分が人と話すときに笑っていることに気がつきました。今、ひろゆきさんがニコニコしながら喋っているように。

【ひろゆき】同じ穴のムジナですね(笑)。

【エイト】「この人、なんでこんなに怒ってるんだろう」と思ってしまって。

【ひろゆき】たしかに。見たことのない面白いものを見ていると、ワクワクしてしまうんですよね。

【エイト】「なんでこんなに怒ってんだろう。おもしれー」となる。

【ひろゆき】ちょっとスッキリしました(笑)。

■ひろゆきが旧統一教会問題を発信するワケ

【ひろゆき】僕が旧統一教会がらみで発信し続けているのも、要は「その後どうなるか」が知りたいんですよね。

国民の大多数はこの問題を「マズいよね」と思っているけど、政治家はこの問題をなかったことにしたいと思っている。だから、その綱引きでどっちが勝つのかを知りたいんですよね。

ただ、放っておくとおそらく政治家が勝ってしまう。なので、「これおかしいよね」とずっと言い続ける人がいたときに、それでも国民は忘れるのか、それともこの問題を考え続けるのか、その答えを知りたいというのがあって。

【エイト】ひろゆきさんが、この問題を当初から発信してくれているのは、めちゃくちゃ大きいです。この問題が社会問題であり続けるための養分を、ずっと供給してくれている。これだけ影響力のある人が、この問題をずっとやってくれているのは、とてもありがたいです。

【ひろゆき】とは言え、僕はあくまで、エイトさんや有田さん、チューリップテレビなどが頑張って取材してる情報を流すという、あくまで仲介役なので。

【エイト】先日、ABEMA Primeで現役2世信者の子2人と話したじゃないですか。その時、ひろゆきさんが矢継ぎ早に疑問をぶつけてましたよね。

それを見ていて、自分でも見えて来たことがあったんです。

彼らもひろゆきさんの質問に答えることで、自分たちが社会からどう思われているのか、改めて対象化できたと思うんです。

やっぱりこの人は、頭の回転が速くて頭いいんだなと感じました。うちの妻はひろゆきファンなんですけど、すごく感心していました。

【ひろゆき】マジですか。たぶん奥さんは、怒っている人を見るとニヤニヤする系の人が好きなんでしょうね(笑)。

■孤高のジャーナリストと言われることへの違和感

【ひろゆき】でも、エイトさんは、その取材力と情熱を別のテーマに向けてみようと思ったことはなかったんですか?

【エイト】そもそも僕は、あまり情熱を前面に押し出すタイプではないですからね。最近は、「日の目を見ない問題を20年間も地道に取材し続けてきた孤高のジャーナリスト」みたいな扱いをされたりするのですが、なんか違和感があって。

鈴木エイト『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)
鈴木エイト『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)

別にそんなつもりでやってきていないし、けっこう気楽に楽しみながらやってきたので。結果として、自分は変わっていないけど、周りが変わっただけなんですよね。

だから、そういう扱いされると、「そういうふうに見てくれているんだ」という嬉しさはあるんですが、どこかで「これでいいのかな」と思ったりもします。街を歩いていて、知らない人からいきなり「頑張ってください」と激励されると、「いや、別に俺、頑張ってないけど」などと。

【ひろゆき】たとえばビジネス書とかだったら、読む人も多くて、当たればバカ売れするじゃないですか。仕事的には、そちらのほうが報われそうな気もしますけど、カルト系以外に広げたりはしないんですか?

【エイト】どうなんですかね。まあ、この問題をきちんと本にまとめたいとは、ずっと思っていました。いくつかのノンフィクションの賞に応募したり、企画を持ち込んでは落ち続けていました。今年の始めぐらいには、この問題は全然日の目も見ないし古びてきているし、もう自分の役目は終わったのかなと思ってさえいました。一時はかなり過疎っていたんです。

西村博之『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)
西村博之『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)

【ひろゆき】そうなんですか?

【エイト】そのころは取材もあまりできていないくらいだったのですが、本当にこの2カ月で、あらゆることが急激に変わってしまいましたね。

【ひろゆき】基本的にエイトさんは、傍観者的なスタンスですよね。

【エイト】僕は国葬などに関しても、自分の意見を言うつもりはまったくありませんでした。インフルエンサーでもないですし、何かを引っ張っていく存在ではないですからね。

僕は有権者の投票判断に必要な材料を提示するという立場なので、それ以上のことはやらなくてもいいかなって思っています。

(第5回に続く)

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ひろゆき(ひろゆき)
2ちゃんねる創設者
東京都北区赤羽出身。1999年、インターネットの匿名掲示板「2 ちゃんねる」を開設。2015年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。YouTubeチャンネルの登録者数は155万人。著書に『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)、『なまけもの時間術』(学研プラス)などがある。

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鈴木 エイト(すずき・えいと)
やや日刊カルト新聞主筆
滋賀県生まれ。日本大学卒業。2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め『週刊朝日』『AERA』『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき、やや日刊カルト新聞主筆 鈴木 エイト)

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