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「茶色いお肉弁当」がずっと続く子は要注意…ベテラン塾講師がお弁当に注目する栄養問題ではない理由

プレジデントオンライン / 2022年10月14日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yajimannbo

ベテラン塾講師は子供のどんな様子に注目しているのか。学習塾STUDYHOUSE代表の須合啓さんは「たとえば『茶色いお肉弁当』がずっと続く子は要注意だ。子供の好みにあわせてお弁当をつくっているのだろうが、そうすると難しい問題から逃げるクセがついてしまう。親の行動は子供に深い影響を与えてしまう」という――。(第1回/第3回)

※本稿は、須合啓『自分で考えて動ける子の育て方 「早くして!」「勉強しなさい!」「片づけなさい!」はもう言わない』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■心配されているのは子供ではなく保護者

私の塾に来るお母さんから、次のような悩みが毎日のように寄せられています。

「うちの子って、全然自分から動こうとしないんです。進んでやることといったらゲームくらいなので、私もついカッとなって『早くして!』『自分でやりなさい!』なんて怒鳴ってしまって、いつも自己嫌悪なんです……。どうしたらいいでしょうか?」

きっとあなたもこの気持ち、よくわかるのではないでしょうか。

まずお伝えしたいのは、「心配いらないですよ!」ということです。子どもは、まだまだいろんな経験を積み重ねている最中です。だからこそ、新しいことに挑戦する勇気が出なかったり、自分から動けなかったりしても、それは当たり前です。

私たちおとなが何も言わなくても、パッとお手伝いができたり、玄関の靴をそろえられたり、最初からそんなに物わかりのよい子はいません。ですから、もしあなたの子どもが多少おっとりしていたり、行動力がないと感じたりしても、思いつめる必要はまったくないのです。

先ほどもお伝えした通り、私は子どもたちのことは本当に心配していません。むしろ、子どもの才能や能力のすばらしさに、日々驚かされているばかりです。じつは私が心配なのは、お母さんやお父さんのほうです。なぜなら「子どもが自分で考えて行動できるようになるチャンスを奪ってしまっている」と感じることが少なくないからです。それはどういうことでしょうか……? これからじっくりお伝えしていきますね。

■子供は親の振る舞いを誰よりも観察している

子どものちょっとした行動や言葉に毎日イライラしてしまう……。旦那が休日に家でごろ寝をしている姿や、ごはんの食べ方、トイレの入り方などもいちいち気になってカッとなってしまう……。

つい気持ちに余裕がなくなると、あれもこれもイライラの原因になってしまうことってありますよね。だれだって人間です。ときには腹が立ったり、頭にきたりすることもあります。

ただ、そんなネガティブな感情が、あまりにひんぱんだと要注意です。というのも、子どもはあなたの姿をだれよりもよく見ているからです。じっと見て、聞いて、すべてを吸収しているといっていいくらいです。すると、学校や塾で、先生や友だちに同じことをしてしまいます。たとえば勉強や友人関係で、つらいことやイヤなことがあると、相手のせいにしたり、攻撃的になったりすることがよくあります。一方的に「人を責める子」になってしまうんですね。

こうなると、子どもは必要以上に自分のガードを固めてしまい、身のまわりにいる人から「素直に学ぶ成長の機会」をなくしています。このままでは子どものためにもいけませんよね。でも大丈夫。私たち親の、日ごろの「意識」を変えていくことができれば、しっかり改善できます。ほとんどは「習慣」を変えることによって意識は変えていけるので安心してください。

■「うちの子は○○に行かせたい」と決めつけてはいけない

子どもの勉強への意識、進学への希望を聞いたことはあるでしょうか。

また、勉強以外にどんなやりたいことがあるか、本当にやりたいことは別にあるのではないかなど、気になる疑問はたくさんあるものです。ところが多くのお母さんと話をしていると、「うちの子は○○に行かせたい」「うちの子は、こんなものです」など、親が決めつけているような言葉に出合うことが多くあります。親の決めつけによって、したくもない努力を強いられた子は、先々大きな挫折を味わってしまう心配があります。

小学生を叱る親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

自分で進んでやった努力ではないため、努力することを嫌うようになってしまうことがあるんですね。一方で「うちの子はこんなもの」と厳しい環境を避けてしまうと、それはそれで自分が進んで努力する機会や、努力のしかたを学ぶ機会そのものを奪うことになり、こちらも問題です。決めつけ言葉は、子どもが「自分の考え(価値観)」をつくるチャンスを奪ってしまいます。親の価値観を押しつける形になるからです。

子どもの持つ価値観は、自分の内側から自然にわいてくる「こういうことをしてみたい!」という思いから、実際に行動してみて、あれこれ悩み、試行錯誤をしながら少しずつ育まれていくもの。このプロセスがすごく大事なんです。

■大切なのは親の「言葉」ではなく「行動」

親からなんでもかんでも押しつけられて育つと、子どもは「自分で考える」機会がなくなってしまうことになります。すると、「みんながそうしているから」とか、「はやっているから」とか、なんでも「自分の外」に理由づけして行動してしまうわけです。これでは、何も自分で決められない人になってしまいます。

よく「主体性や積極性を育みましょう」と言われたりしますが、真逆のことをやってしまっているんですね。私の塾に来ている子どもたちは、学校以外の時間でもかなりハードな勉強に取り組んでいるため、どうしても親子の会話の時間が短くなってしまいます。

たとえば、中学受験に挑戦中の子なら、朝30分、夜30分くらいになってしまうものです。そこで大事になるのが、親の「言葉」だけでなく、「行動」です。親の行動によって、子どもが強く励まされたりひどく落ち込んだり、あるいは大きく成長したり成長を邪魔されたりするからです。

行動を通じて、親子のあいだには、常に「心のおしゃべり」が交わされています。無言のコミュニケーションと言ってもいいでしょう。「親の行動」は、すべてがメッセージとなって、子どもに深く影響を与えているのです。たとえば、私は塾に通ってくる子の「お弁当」をよく見るようにしています。親の行動がそのまま現れているからです。

自宅で働く親の周りではしゃぐ子ども
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■「茶色いお肉弁当」が発しているメッセージ

家庭によって、お弁当は本当にいろいろです。彩り豊かで栄養バランスのとれたお弁当を見ることもあれば、おかずがお肉ばかりで、子どもが食べないという理由で、野菜が一切入っていないものに出合うこともあります。そういう「茶色いお肉弁当」がずっと続く子もいます。

ところで、小学校6年生と中学校3年生の最後になると、「算数」と「数学」にはそれぞれ図形問題が出てきて、一気に難しくなります。このとき、「茶色いお肉弁当」を食べ続けた子は、こうした難しい問題を避けがちです。とっつきやすい教科に逃げてしまうことがあるんですね。

どういうことかというと、自分の嫌いなおかずがなく、好きなものだけのお弁当を食べている子は、勉強の場面で、親の考えをマネすることがあります。つまり「嫌いなものは避けてもいいんだ」ということを学んでしまうのです。

毎日のお弁当という「心のおしゃべり」によって、「親の価値観」はしっかりと子どもに伝わっているのです。「イヤなことから安易に逃げない心」を育むためには、私たちおとなの「行動」や日頃の習慣も、きちんと整えていく必要があります。

■「自分の居場所」ではなく「みんなの居場所」を意識すべき

「親のした通り」「言われた通り」に育った子は、気分しだいで突然行動がルーズになる傾向があるようです。

たとえば、男の子、女の子に関係なく、授業の最中に緊張感が抜け、いきなり足をイスの上に乗せるなんて子もいます。友だちに対して、言葉が一方通行になることもあります。決めつけ言葉になったり、相手に押しつけるような態度になったりすることも。かと思うと、がんばりがきかず、それまでやっていたワークを突然やめてしまい、さっと家に帰ってしまうこともあります。見かねた親御さんや先生から叱られても、行動はなかなか変えられないものです。

こういう子は、うまくコミュニケーションがとれず、残念ながら周囲から「愛されない子」になってしまっています。自分の立場、つまり「自分の居場所」に安住してしまい、そこから出てこようとしないので、大きく成長することもなく、たいていは勉強の成績も落ちていきます。成績が落ちれば人から抜かれ、抜かれると今度はまわりを攻撃し始めます。するとますます周囲から敬遠され、孤立していきます。悪循環になってしまうんですね。

いくら話しじょうずでも、相手の気持ちがわからない「一方的な話し方」では、「いいコミュニケーション」とは言えません。

須合啓『自分で考えて動ける子の育て方 「早くして!」「勉強しなさい!」「片づけなさい!」はもう言わない』(明日香出版社)
須合啓『自分で考えて動ける子の育て方 「早くして!」「勉強しなさい!」「片づけなさい!」はもう言わない』(明日香出版社)

キーになるのは「相手の気持ち」、そして「相手のおかれた状況(居場所)」に配慮したコミュニケーションがとれるかどうかです。「思いやりにもとづくコミュニケーション」が大事なのです。そもそもコミュニケーションとは、単なる情報のやり取りではありません。情報のやり取りが行われる「みんなの居場所」そのものをつくる活動でもあります。

一方的な押しつけによるコミュニケーションは、「自分の居場所」にもとづく会話で、「みんなの居場所」を育むことはできません。でも社会に出てからのコミュニケーションは、それでは成立しません。だからこそ私たちおとなは、「子どもの気持ち」や「子どものおかれた状況(居場所)」に配慮したコミュニケーションをとるように、日ごろから意識していく必要があるのです。

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須合 啓(すごう・けい)
学習塾STUDYHOUSE代表
秋田県生まれ。城西大学卒業。20歳から塾講師をスタートさせ、教員生活25年。これまで指導した生徒数は延べ1万人を超える。2012年、自宅の机1つでオンライン教員採用試験受験予備校「教採スクール」を起業。2015年、地元秋田で、小中高を対象にした塾経営をスタート。自らも指導を開始して3年目の2021年3月には、医学部、難関公立大学、大学推薦組、中学受験組、高校推薦入試組、高等専門学校(高専)受験組、高校私立組が全員合格。中学3年生の秋田県模試で3年連続総合順位1位の生徒を輩出中。

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(学習塾STUDYHOUSE代表 須合 啓)

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