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「あれだけ勉強したのに模試の点が1点しか上がらなかった」そう話す母親を塾講師がキツく諭したワケ

プレジデントオンライン / 2022年10月16日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

子供の勉強意欲を高めるにはどうすればいいのか。学習塾STUDYHOUSE代表の須合啓さんは「結果より過程に目を向けてあげてほしい。極端な結果重視は、子どもの学ぼうとする意志や意欲をくじいてしまう」という――。

※本稿は、須合啓『自分で考えて動ける子の育て方 「早くして!」「勉強しなさい!」「片づけなさい!」はもう言わない』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■「1点」だとしても、それは偉業である

「うちの子は、あれだけ勉強して模試の点数が1点しか上がりませんでした」

あるお母さんからこう言われ、ついキツい口調で、「それは、子どもと同じように、週65時間勉強してから言ってください。勉強の難易度も上がり続けています。すごい1点なのです。心からねぎらってあげてください」とお答えしたことがあります。

私の塾に通いながら週65時間勉強している子たちは、ふつうに学校にも行き、勉強以外のさまざまなこともしながら、懸命のやりくりで時間をひねり出しています。言うまでもなく、これは人から「させられて」続くような甘いものではありません。自分で掲げた目標に向けてひたむきにがんばる、そのことに心の底から喜びと手ごたえを感じていなければ絶対に無理なことです。

自分を奮い立たせ、力を尽くすための子どもたちの血のにじむような努力と工夫。そのすべての「過程」を、私は本当にすばらしいと思っています。ところが、「1点」という「結果」が、かえってその偉業を見えなくしていたのです。

私たちおとなは、「結果のよし悪し」だけに気をとられがちです。でも、極端な「結果」重視は、子どもの学ぼうとする意志や意欲をくじいてしまいます。

「結果」重視な人は、アメリカの心理学者のアダム・グラントが「テイカー(taker)」と呼んだタイプの人、自分が望む「結果」を「もらおう」としがちな人に多いです。ぜひあなたは、グラントの言う「ギバー(giver)」になり、「与えよう」とする人になって、子どもの学びの「過程」に精いっぱいの応援を贈ってあげてください。

■理由が見えない「頭ごなし叱り」は国語力を低下させる

「結論」に相手目線の「理由」を添えた話し方をすることが大切です。この原則は、子どもの「叱り方」を考えるときにもとても大切です。叱りとは、「しなさい」「やめなさい」という「結論」の受け入れを相手に強いることが多いものです。ですから、相手目線に立った「理由」がなければ、なかなか耳を傾けてもらえません。

ひとつのことをきっかけに、あれもこれもと話が飛ぶ「ダラダラ叱り」や、「ダメと言ったらダメ!」式の「頭ごなし叱り」は、非常に「理由」が見えにくいものです。子どもからすればとても不快で、話を理解して受け入れようという意欲もわきませんし、力まかせに押さえつけられれば、反射的に委縮したり反発したりしてしまってもしかたありません。

怒る母と耳をふさぐ子ども
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

ところで、すべての学びの土台となる「国語」の能力は、単語のひろい読みではなく、ひとつの単語が選ばれた「理由」、いくつもの単語の並びや文の並びを決める「理由」、つまり「文脈」を読み解く力を養うことによってアップします。どちらの叱り方も、言葉の裏にあるこうした「理由」を考えようとする姿勢を奪うため、子どもの国語の力に非常に悪い影響を及ぼしてしまいます。

■国語力を高めるために欠かせない「要約する力」

子どもを叱る場面では、感情が高ぶっていることも多いので、相手目線に立った「理由」を添えながら落ちついて話をするのは難しいものです。そこで親御さんには、人の言葉に触れたときに、日ごろから「なぜ?」「どうして?」を自問する癖をつけていただきたいのです。

ゲームのような感覚でいいので、テレビで見たニュースやご家族からかけられた言葉、ご自分の発言に対しても、否定するのではなく、いったん受け入れたうえで、「ところで、どうしてだろう?」と「理由」を考える習慣を身につけてほしいのです。私たちおとなのほうが、言葉の「文脈」を理解する力を日々鍛えるようにすることが大切です。

大学入試の問題が記述化されていることの影響を受けて、最近は中学校や高校の入試でも記述式の問題が増えてきています。記述のしかたが上達するためには、「文脈」を理解する力も大切ですが、もうひとつ大切なものがあります。それは文章や話を「要約」する力です。

そこで、日ごろの会話の中で、子どもの話の「要点」にフォーカスして、「つまりこういうこと?」と要約して返してあげる習慣を身につけてください。親御さんの要約が的を射ていれば子どもから、「そうそう!」といったリアクションがあるはずです。

子どもの「そうそう!」をたくさんゲットしていけば、親御さんの話し方がしみていき、子どもの要約力もおのずとアップしていきます。子どもとの会話が、なごやかで親密なものにもなることでしょう。

すべての勉強において、「答え」を知ることは大切な「ゴール」です。しかし、それだけでは勉強は成り立ちません。勉強には、正しいゴールを目指すための適切な「スタートライン」もまた必要です。

このスタートラインこそが、「問題」を正確に理解することなのです。どんな教科の勉強でも、問題の理解には「国語」の力が求められます。そして「要約力」は、国語の力を磨くためには必須なのです。

■対話や叱るときに有効な「間」の使い方

私はかつて、中学校で校長をしていた祖父からよく叱られました。私のしたこと、言ったことが、まわりにどんな迷惑を及ぼすのか、「なぜ」それをしてはいけないのか、「どうして」それを言ってはいけないのか、本質的には何が「問題」なのか、短い言葉でぴしりと諭(さと)されるのがとてもこわかったものです。

そして何より恐ろしかったのが、「よく考えろよ」と言われたあとの祖父の沈黙でした。

祖父が黙ると、辺りは「しーん」と静まりかえります。私は冷や汗をかきながら、自分の言動をどう改めるべきか、必死に考えたものです。ときには私の祖父のように、相手に真剣に考えさせる厳しい「間(ま)」を与える話し方も参考にしてもらえたらと思います。

誤解のないようにつけ加えると、考える「間」は厳しいだけのものではありません。意見や考えの押しつけをせず、相手の話にも耳を傾けながら「対話」をしていると、考える「間」を、お互いにごく自然に与え合うことになります。「話題」になっていること、「論点」になっていること、「問題」になっていることを真ん中に置いて、意見を出し合いながら一緒に考えていく「過程」が生まれます。こうした「対話」は、子どもの考える力を大きく伸ばしていきます。

友だち関係のこと、大好きな趣味のこと、将来の夢のことなど、身近な話題で子どもと「論点」や「問題」を共有しながら、どんどん話をしてみましょう。「論点」や「問題」が共有できていれば、「対話」は楽しく盛り上がりますし、たとえ意見が食い違っても恐れることは何もありません。子どもは、価値観や主張を話し相手と尊重し合うやり方も学ぶ、いい機会になるでしょう。

■「わからないこと」は分かち合ったほうがいい

私の塾では、テキストや問題集などのわからないところ、「思考が止まってしまった」箇所に、子どもたちの手でピンクの付せんを貼ってもらうようにしています。質問対応をするスタッフが教室をまわっていて、ピンクの付せんを見つけるとすぐに教えてくれる仕組みになっているのです。「わからない」ことを放置してはいけません。「わからない」ことを「わかる」ようにすることが大切です。

須合啓『自分で考えて動ける子の育て方 「早くして!」「勉強しなさい!」「片づけなさい!」はもう言わない』(明日香出版社)
須合啓『自分で考えて動ける子の育て方 「早くして!」「勉強しなさい!」「片づけなさい!」はもう言わない』(明日香出版社)

「わからない」ことを、だれかと「分かち合う」ことはもっと大切です。勉強の困りごとはひとりで抱えこまず、「団体戦」で分かち合うのが正解なのです。質問をする癖がつくと、考える力が伸びるサイクルが早まります。勉強に限らず、子どもがわからないことをたずねてきたら、やさしく答えてあげつつ、質問してきたことじたいをほめて、いい習慣が身につくようサポートしましょう。

この機会にもうひとつ別のお話を。私は、「親御さんの子育て上の困りごとはオープンにして」と伝えています。こちらも「団体戦」で臨むのがいいわけですが、「そうは言われても自分の弱みやマイナスを公開することに抵抗がある」という方もいらっしゃると思います。

そういう方は、元気がなかったり、疲れている親御さんを見かけたら、自分からひと声かけるようにしてみてください。相手も相談できる人をうまく見つけられずに困っているかもしれませんし、お互いに話を聞き合える関係性をつくれるかもしれません。あなたの親切が、回りまわってあなたを助けることも必ずあるはずです。

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須合 啓(すごう・けい)
学習塾STUDYHOUSE代表
秋田県生まれ。城西大学卒業。20歳から塾講師をスタートさせ、教員生活25年。これまで指導した生徒数は延べ1万人を超える。2012年、自宅の机1つでオンライン教員採用試験受験予備校「教採スクール」を起業。2015年、地元秋田で、小中高を対象にした塾経営をスタート。自らも指導を開始して3年目の2021年3月には、医学部、難関公立大学、大学推薦組、中学受験組、高校推薦入試組、高等専門学校(高専)受験組、高校私立組が全員合格。中学3年生の秋田県模試で3年連続総合順位1位の生徒を輩出中。

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(学習塾STUDYHOUSE代表 須合 啓)

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