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なぜ若者はオジサンとの会話を嫌がるのか…絶対にダメなのについやってしまう「HHJ」という3大悪

プレジデントオンライン / 2022年10月13日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RRice1981

世代の異なる人との会話を盛り上げるにはどうすればいいのか。ノンフィクションライターの中村淳彦さんは「相手の話に寄り添うことがきわめて重要。相手が発言した単語を拾い、相づちを打つように短い質問を返す。慣れれば、本当に簡単なことだが、それができない人が少なくない」という――。

※本稿は、中村淳彦『悪魔の傾聴』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■会話で絶対にやってはいけない「破壊的な行為」

どんどん本音を引きだす悪魔の傾聴を習得するための前提スキルとして、相手に寄り添う「聞く会話」を身につけていきます。

まず、15~20分程度の初対面の相手との会話において、真っ先に聞き手のポジションをとって相手を主役にしてみます。やることは、相手の興味を聞きながら、相づちを打ち、つなげていくだけです。相手を楽しませるために情報提供することもなければ、盛り上げる必要もありません。相手の話が面白かったら、自分の感覚に任せて笑いましょう。しかし、人と会話するあらゆる場面で絶対にやってはいけないことがあります。

●否定する
●比較する
●自分の話をする

この3つです。これは最重要項目なので、いまこの3行を何度も読み返して覚えてほしいです。会話で絶対にやってはいけない基礎的なことなので、お酒と食べることが好きな会社員女性との会話を想定して悪例を挙げていきます。

ケース1 否定する

【相手】「お洒落な店とか行きたい。けど、会社の帰りとか居酒屋になっちゃいますね」

【自分】「行きたいお洒落な店って、どんなところですか?」

【相手】「たまに行くのは池袋とかかな。会社が近いし」

【自分】「池袋はダメですね。本格的なシェフのいる青山とか麻布まで行かないと」

もっとお洒落な青山とか麻布を薦めたい気持ちがあっても、否定してしまった時点ですべて台無しです。相手のテンションはだだ下がりで、沈黙まで秒読みでしょう。青山とか麻布を薦めたいならば、完全にタイミング違いです。早すぎます。

質問によって池袋の店の話を聞き、もっと新しい店を知りたいという気持ちを確認、タイミングがあればそこで青山や麻布の提案をしてみます。タイミングがなければ、薦めることは断念します。否定は、せっかくの話がすべてダメになる破壊的な行為です。

■「~のほうがいいよ」「~比べるとさ」はNG

ケース2 比較する

【相手】「お洒落な店とか行きたい。けど、会社の帰りとか居酒屋になっちゃいますね」

【自分】「居酒屋はチェーンですか? どこに行っています?」

【相手】「近所の庄やが落ち着くので好きかな」

【自分】「庄やもいいけど、磯丸水産はもっといいよ」

否定に似ていますね。非常によくない返答です。「近所」で「落ち着くから」という理由を挙げているにもかかわらず、関係ない磯丸水産をだして比較しています。この場面で比較する必要性が一切ありません。これが音楽や映画になると、もっとわかりやすくなります。

たとえば一緒に鑑賞した『千と千尋の神隠し』をすごく楽しめたのに、相手が観ていない「『ハウルの動く城』と比べるとさ……」みたいなことを言いだしたら、せっかくの映画鑑賞が台無しでしょう。相手が肯定している物事は、なにかと比べてはいけないのです。

■自分語りはせず、すぐに聞き手に徹するべき

ケース3 自分の話をする

【相手】「お洒落な店とか行きたい。けど、会社の帰りとか居酒屋になっちゃいますね」

【自分】「居酒屋はチェーンですか? どこに行っています?」

【相手】「近所の庄やが落ち着くので好きかな」

【自分】「僕は断然、磯丸水産派。肉より海鮮が子どもの頃から好きでして」

途中で自分の話にすり替わり、話し手と聞き手が逆転してしまいました。聞くことを軸としたコミュニケーションで、この流れはありえません。これをしてしまったら、もうどうにもなりません。話をしたかった相手は辟易し、すぐ沈黙となります。「HHJの三大悪」を肝に銘じる自分の話を絶対にしてはいけないわけではありません。

相手から質問されたときだけは、聞かれたことに答えましょう。自分の話を長引かせたり、余計なことを話さないように、相手に聞かれたことも簡潔に返します。そして、なるべく早い段階で、話を戻して聞き手のポジションに戻りましょう。

ビジネスイメージ、男女の裏図
写真=iStock.com/chachamal
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/chachamal

否定する。比較する。自分の話をする。これらは、会話も人間関係も破綻させる恐るべき行為だと理解してもらえたでしょうか。筆者はこれらの行為を「HHJの三大悪」と呼んでいます。三大悪を絶対にしないと心がけ、日々意識して実践するだけで会話の成功率は飛躍的にアップします。

■相手の話をさえぎって自分の話をする40代男性のケース

先日、福祉系のイベントで40代男性と20代女性との、ちょっと痛い会話を見かけました。そのときの風景を悪例として挙げてみます。

【女性】(20代)「実はアイドルが好きで。特に好きなのはハロプロですね。この前、Juice=Juiceのライブに行ってきたんです」
【男性】(40代)「知らないなぁ。ハロプロだったらモーニング娘。だよね。俺は安倍なつみとか好きだったなぁ。ハロプロといえば、モーニング娘。だよ」
【女性】(20代)「……安倍なつみさんは名前しか知りません」

せっかく20代女性が「実は……」と自己開示をしたのに、40代男性は一発で話を潰してしまいました。この後、40代男性は00年代のモーニング娘。の話をしていましたが、聞いている女性は上の空です。近くにいた筆者は溜息がもれました。ミスを指摘します。

40代男性の返しはハロプロつながりではあるものの、彼女の話を遮って自分が知る安倍なつみの話にすり替えています。会話は続くはずがありません。20代女性は興味ない00年代のハロプロの話を聞かされ、苦痛な時間を過ごすことになりました。この場面での正解は、「ピックアップ・クエスチョン」を使うことです。この先も何度もでてくる、聞く会話の基本的な技術となります。

■会話を進めるために有効な「ピックアップ・クエスチョン」

ピックアップ・クエスチョンとは、すでに相手が発言した単語や主旨を拾い、即時に短い質問を投げかけるテクニックです。自分が聞きたい・知りたい質問ではなく、相手の語りをもっと進めるための質問を投げるのです。

会話の潤滑油として、相手が話したいことに沿って、短く一言の質問を投げます。相手にとってはちゃんと聞いてもらっている確認となり、その話を続けることができます。この場面での40代男性の返答の正解は、「へー、(Juice=Juiceの)ライブはどこでやったの?」

「そうなんだ、(Juice=Juiceの)誰が好きなの?」などになります。相手がすでに発言した言葉をフックにして、短い質問を投げながら、相手の興味関心や話したいことを探っていきます。やってはいけないのは、この40代男性のように、相手の話を自分の知るネタにすり替え、相手の話を潰してしまうことです。

相手の自己開示からはじまったこの場面では、自分の好き嫌い、興味関心は一切関係ありません。とにかく相手が話を継続できる質問を心がけます。この段階では20代女性が、言葉通りにJuice=Juiceの話をしたかったのか、女性アイドル好きな趣向を伝えたかったのか、わかりません。ピックアップ・クエスチョンによって話し手が順調に語れば、いずれ相手がなにを話したいのか見えてきます。

■「情報弱者である自覚」を持つべき

相手の話を潰して自分の話にすり替えると、会話が続かないだけでなく、相手からの評価は下がって距離は離れるばかりとなります。このケースを見るとよくわかりますが、悪魔の傾聴を使うためには聞き手が「情報弱者である自覚」と、「心の調整」が必要になってきます。

この40代男性は、情報弱者である自覚がありませんでした。年上の自分のほうが知っている、という傲慢な気持ちがあるので、求められていない情報提供をしてしまうわけです。このようなコミュニケーションをすると、孤立や孤独に突き進むことになってしまいかねません。この場面での正解を見てみましょう。

【女性】(20代)「実はアイドルが好きで。特に好きなのはハロプロですね。この前、Juice=Juiceのライブに行ってきたんです」

【男性】(40代)「Juice=Juiceってハロプロなんだね? 知らなかったよ」

【女性】(20代)「そうです。そうです。工藤由愛ちゃんって子がすごくよくて―」

どうでしょうか。この簡単なことができない人があまりにも多いのです。起点の会話が弾めば、話をどんどん引きだせる会話の発進の段階では、相手の話に寄り添うことがきわめて重要になってきます。相手が発言した単語を拾い、相づちを打つように短い質問を返します。慣れれば、本当に簡単なことです。

この場面では20代女性がハロプロやJuice=Juiceのことを話したいのは明確でした。相手が言っていることを質問で助けながら広げていくだけです。正直、相手からこのような自己開示がでてきただけで、会話はもう勝ちです。丁寧に「ピックアップ・クエスチョン」を実行すれば、ハロプロやJuice=Juiceが起点となって、彼女がどんな性格なのか、どんな恋愛をしてきたのか、現在どんな生活をしているのかと、プライベートにまで発展させることができます。

■自分の話をしないだけで会話は好転していくのに…

起点の会話が弾めば、話を遮る、自分の話をするなど大きなミスをしない限り、どんどんと広がり、様々な情報を得ることができるのです。誰でも、話したいことを聞いてくれた相手、希望を叶えてくれた相手には好印象をもちます。

中村淳彦『悪魔の傾聴』(飛鳥新社)
中村淳彦『悪魔の傾聴』(飛鳥新社)

相手が同僚ならば社内の関係性は円滑になり、プライベートで異性相手ならその場の会話を楽しむだけでもいいし、LINEのIDを聞いたり、次になにか誘うもいいでしょう。様々な可能性が広がっていきます。人の話を聞くことで、知らない情報をインプットしながら人間関係は広がって、好転していくわけです。

筆者と同世代(団塊ジュニア男性)が失敗している事例をネタにしていますが、我々は上昇気流のなかで恵まれて育ち、年功序列が抜けきれていません。自分が年上からされてきたように、年下にはついつい上から目線で語ってしまいがちです。その結果、時代遅れでニーズのない自分語りをして、若者の話をちゃんと聞くことができていません。多くの場面で、せっかくの会話を自分の話で壊しているのです。

自分の話をしないだけで会話は好転するのに、ついいらないことを語ってしまう。それは本当にもったいないと、わかってもらえたでしょうか。

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中村 淳彦(なかむら・あつひこ)
ノンフィクションライター
1972年生まれ。著書に『名前のない女たち』シリーズ(宝島社)、『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)、『崩壊する介護現場』(ベストセラーズ)、『日本の風俗嬢』(新潮新書)など。現実を可視化するために、貧困、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買、介護、AV女優、風俗などさまざまな社会問題を取材し、執筆を行う。

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(ノンフィクションライター 中村 淳彦)

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