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独立後に「食べられる人」「食べられない人」何が違うか

プレジデントオンライン / 2022年10月14日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

いうまでもないことだが、独立しても、資格があるだけでは食べてはいけない。稼ぐためには商売人としてのセンスや営業力も必要だ。そのときに自分の強みを決め込みすぎないこともポイント。何屋さんかを決めるのはお客様だからだ。もはや、ひとつの会社だけでは食べていけない時代。いずれ必ずくる定年・独立後に「食べられる人」になるための心構えとは。「プレジデント」(2022年11月4日号)の特集「資格・検定、独立、再就職」より、記事の一部をお届けします――。

■何屋さんかはお客様が決める

資格を取れば独立できる――あなたはそう思っていませんか。しかし、資格があるだけでは食べていけません。難関資格を取って独立したのに結局は稼ぐことができずサラリーマンに戻った例も、実際に見てきました。

独立するということは、商売人になるということ。商売人は、営業をしなければいけません。とはいえ、「仕事くれくれ」と言って各所を回るのは営業とは呼べません。営業とは、「お役立ち」を実現することです。自分が積み上げてきた経験値を必要とするお客様を探し、困りごとを聞き、自分の知識とスキルを活かして課題を解決する。お客様に喜んでもらい、対価をいただくことで、自分の能力をマネタイズする。この一連の活動が営業なのです。

■第一に検討すべきは、副業

お役立ちの芽を見つける方法はたくさんあります。まだ会社に所属している人が第一に検討すべきは、副業です。会社が副業を認めている場合、知人から紹介を受けたり、発注者と受注者をマッチングするウェブサービスに登録したりして、まずは腕試ししてみましょう。また、先行プレイヤーに弟子入りして報酬ゼロで丁稚奉公をすれば、クライアントとのやり取りの手法や請求書の作成方法など、実際の独立スキルを横で見て学ぶこともできます。自分が住む地域のコミュニティや知人の会社などをボランティアとして手伝わせてもらうのもオススメです。

商売人として成功するには、この「とにかくまずやってみる」ことです。頭のなかで壮大な経営戦略やマーケティングのプランを練るよりも、小さい実地体験を着実に積み重ねていく行動力のほうが大事。最初のうちは自分が「できること」「したいこと」を決め込みすぎるのではなく、意外なオファーが来ても、まずは挑戦してみましょう。「自分はこれが強みだ」と思っていても、お客様から見たら他のスキルのほうが貴重かもしれないからです。仕事を選り好みしないことで、思わぬ頼まれ仕事が自分の商売の核になっていく可能性があります。

いまは上司やミドル層向けの研修を提供する会社を営む私も、独立当初に取り組んでいたのは若者のキャリア支援でした。転機になったのは、事業の方向性に悩んでいたときに舞い込んだ、「新入社員研修と管理職研修をやってほしい」というある企業からの依頼です。研修プログラム開発や講師なんて未経験でしたが、あちこちにアドバイスを求めながら自分なりにやってみた結果、とても喜んでもらえました。リクルートの編集長時代に培った、個々人のキャリアを応援するという視点と編集者としてのスキルが、意図せず強みとなり、お役立ちを実現できたのです。自分が何屋さんかは、お客様が決めてくれるんですね。

営業なんてできないし、行動力もないから、自分に独立は無理だ――あなたはそう感じるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか。確かに営業は簡単ではないし、慣れない雑務も増えます。でも、そんな壁を乗り越えさせてくれる方法がひとつあります。それは、自分が本当にやりたいと思うことを見つけて、ワクワクすることです。ワクワクする気持ちは、前に突き進む原動力を私たちに与えてくれます。

「やりたいことは何ですか」と聞かれて、即答できる人は多くありません。これまで自分の仕事は会社が全部決めていたからです。自分で考える筋肉もワクワクするための感性も衰えてしまっているんですね。これを鍛え直す第一歩として私が勧めるのは、すでに独立した人や経営者の集まりに参加することです。自らの意志で行動することが当たり前の環境に身を置けば、自ずから行動力も高まっていくでしょう。

■50歳よりも75歳が仕事に満足な理由

とはいえ、これまで堅実にキャリアを積んできた会社員が大志だけを抱いて「えいやっ」と会社を辞めるのは、リスクが大きすぎます。自分がやりたいことを見定めたら、次は、会社という学びの宝庫を賢く使い、独立に向けて周到に準備すべきです。会社を離れてひとり社長になると、商品企画や経営戦略、さらには営業・経理・財務・法務・購買・総務まで、すべてを自分でカバーしなくてはいけませんから、会社員のあいだに基礎的な知識を身に付けておくといいでしょう。異動願を出したり社内副業制度を利用したりすれば実務経験を積むことができます。

個人で事業を起こしたら、それまでは部下や委託先が手足となってやってくれていたことも、すべて自分でこなさなければなりません。ポストオフは、改めて実務を学び直し、現場の肌感覚を取り戻す絶好のチャンス。自分で考え自分で行動するための筋肉を、しっかりリハビリしましょう。55歳で役職定年を迎える、60歳で正社員から嘱託職員になるという選択も、独立のための助走期間として前向きに位置付けることが十分可能です。

リクルートワークス研究所の調査では、仕事の満足度は50歳が底で徐々に上がり、75歳では50歳の約1.7倍になるというデータが出ています。「レイバー(labor)」と「ワーク(work)」は、どちらも働くことを意味する英単語ですが、前者がラテン語の「苦役」を由来とする一方、後者はゲルマン語の「自主的に活動する」ことが語源です。会社員時代の仕事がレイバーなのに対し、定年後のそれは自分がやりたい仕事を自分のペースでするワーク。雇用や給与が若い頃と比べて不安定にもかかわらず、より仕事への満足を感じられるのは、これが理由です。

仕事に満足している人の割合は、75歳では50歳の1.7倍に

もはや、ひとつの会社にしがみつくこと自体がリスクの時代です。それに、私たちはみな、受け身のレイバーから脱却し、主体的なワークを目指すべきではないでしょうか。独立したいけど不安だ、独立したけど仕事がない――そんなときは、「自分がやりたいことは何か」という問いに立ち返ってみてください。その答えを再確認して、ワクワクする気持ちが再び胸に湧いてきたとき、あなたはどんな困難にも立ち向かえるはずです。

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前川 孝雄(まえかわ・たかお)
FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師
1966年生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。リクルートで「リクナビ」「就職ジャーナル」などの編集長を務めたのち、2008年に起業。「上司力Ⓡ研修」「50代からの働き方研修」などで400社以上を支援。ベストセラーとなった『50歳からの逆転キャリア戦略』『本物の「上司力」』『人を活かす経営の新常識』など著書多数。

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(FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師 前川 孝雄 文=奥地維也)

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