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「ジョブ型雇用で20代は不利になる」これから会社に頼らず生き残るための"3ステップ"

プレジデントオンライン / 2022年10月23日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Robert Daly

ジョブ型雇用や雇用延長の影響で、ビジネスパーソンのキャリアはどう変化していくのか。クロスリバー代表の越川慎司さんは「20代はスキルや経験がないままに先輩社員と競争しなければならなくなります。一方で、雇用長期化でシニア社員は増える。大きな流れに身を任せているだけでは、どこにも行けずに会社にしがみつくだけの“厄介者”になる。会社に頼らないマルチキャリア化が必要です」という──。(第4回/全5回)

※本稿は、越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■ジョブ型雇用で20代は不利になる

これから日本企業ではジョブ型雇用が進みます。

プロセスではなく成果を評価するトレンドが加速します。また、企業内教育は減少し、労働者側の自律学習が求められるようになります。時間をかけて社員を教育するのではなく、即戦力人材を社外から引き抜いたり、プロ人材を業務委託として採用したりする傾向が顕著になります。

このトレンドでは、20代の若手社員は他の年代より不利になります。これまで会社側が時間とお金をかけて育成した30代以降の社員と、自律学習を前提として教育機会を失った20代社員とが同じ基準で比較されるからです。

■仕事は「与えられる」ものから、「取る」ものへ

さらに、ジョブ型雇用で職責が明確になることで、職場の先輩が助けてくれなくなるかもしれません。成果に対する評価がエスカレートして、先輩・後輩がポジションを奪い合うライバルになることもありえます。

このような状況では、たとえ20代の若手であっても、「待ち」の姿勢でいたらゲームに参加することすらさせてもらえません。「仕事は自分で取りに行く」というスタイルで働くことが求められます。

リモートワークで上司や先輩に話しかけられるのを待っているのではなく、みずから声をかける姿勢が必要です。

また、自分でタイムマネジメントをして、浮いた時間をスキル習得に充てないといけません。自律学習でスキルを習得できたら、自分で仕事を受けに行くのです。

■仕事はRPGのギルドと同じ

これは、ロールプレイングゲーム(RPG)でたとえれば、ギルドへ行ってクエストという形で仕事を受けるのと同じです。

時には所属するパーティー(チーム)を超えて案件をこなすことで、実践スキルが磨かれます。

会社の研修をいやいや受けるような受け身の姿勢を卒業して、RPGのようにみずから率先してトレーニングに出かけていき、レベルを上げ、より高度なパーティーに参加できるようにならなければなりません。

会社の費用で研修を受けることができる現状は「ラッキー」だと受け止め、積極的に活用したほうがいいでしょう。

■シニア社員の雇用長期化が進む

少子高齢化が進む中で、長年企業を支えてきた人材をそのまま雇用する傾向は続きます。

たとえば米国では、1967年に制定された年齢による雇用関係差別禁止法(The Age Discrimination in Employment Act)により、雇い入れや労働条件などにおいて、年齢を理由として区別することを禁止しています。「60歳になったら会社を辞めてもらう」というような契約はできず、米国では働く個人が自分の意思で退職する年齢を決めることになります。

ヨーロッパの先進諸国では、定年の年齢と年金受給開始の年齢を同一にすることが一般的です。

とくに高齢化が深刻なドイツでは、日本と同様に年金受給開始年齢の引き上げが国会で議論されており、2016年にドイツ連邦銀行が定年年齢を69歳まで引き上げるように提言して物議を醸しました。

■定年レス時代に「厄介者」になる人

日本でも労働力不足を背景に、日本政府は定年年齢引き上げや継続雇用延長を各企業へ働きかけています。

65歳を超えても働きたい労働者は7割近くいます(出所:2019年NRI社会情報システム調査)が、希望者全員が65歳を超えて働ける仕組みがある企業は約2割しかない(出所:2020年労働政策研究・研修機構による調査)からです。

越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)
越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)

そこで日本政府は、2013年の高年齢者雇用安定法で、定年後も従業員の希望があれば65歳まで雇用を継続することを義務付けました。2021年には新たに高年齢者就業確保措置も加わり、さらなる高年齢者の雇用促進が進められています。

このように、法律と労働力不足を背景に、シニア社員が長く会社に居続ける傾向にあります。そうなると、中には仕方なく働いていたり、過去の栄光にしがみついて若手社員が進める改革に反対したりするシニア社員が出てきます。

こうした不機嫌なシニア社員は社内の厄介者になっていくでしょう。将来、そうした厄介者に自分自身がならないようにするために、歳を重ねても必要とされる人材になるために、いまのうちから新しい価値観や新しい視点に対応していく姿勢を持つことが必要です。

■マルチキャリア化が生き残りのカギ

今後は、少子高齢化による人材不足が進み、そして、Web3の分散型ネットワークで誰にでもつながることができるようになります。そうなると、有能な人材は引く手あまた。複数の会社に属して複数の仕事を行うマルチキャリア(複業)が当たり前になります。

人口が減少する中で必要な労働力を埋め合わせることができなければ、働く個人が2人分、3人分の成果を出さないといけません。

これまでのように一個人が1つの企業に所属するモデルは崩壊します。一個人が複数の企業および組織に所属し、複数の職責を全うすることになります。そうすることで社会に貢献し、その貢献に応じて報酬が上がっていきます。

1つの企業や組織に所属するだけでは給与の大きな上昇は望めませんが、マルチキャリアになることで、それが可能になります。

■複数のスキルを併せ持つことの重要性

では、複数の企業に求められる人材になるには、いったいどうしたらいいのでしょうか?

これまでのように、1つの企業で長年かけて積み重ねた「一点集中スキル」は通用しにくくなります。営業なのに企業会計に強い、開発なのに営業が得意、文系なのにアプリを開発できる、といった複数のスキルを併せ持つことで他者と差別化することができ、ナンバーワンやオンリーワンの存在になります。

RPGでは、戦士が途中で魔法使いに職業転換して魔法が使える戦士になっていく、ということがあります。

現実のビジネスの世界でも、このようにマルチなスキルを持っていれば、「一緒に組みたい」と考える人が増えます。これを「市場価値」といいます。

それでは、どうやってマルチなスキルを積み上げていくべきか? 私は、「3つのステージ」に分けて学び方を変えていくことを推奨します。

■マルチキャリア化:ステージ1

ステージ1は、学校教育で学ぶ社会スキルが中心です。国語や社会、理科、数学といった記憶を中心とした学習で得た基礎学力は、その後の活躍に向けたベース・スキルとなります。

ステージ1の学校教育で必要なのは、なによりも社会性を身につけることです。礼儀正しく調和を取りながら仲間と人間関係を築いていくことができる対人スキルは、一生涯にわたって使える“武器”になります。

このスキルの獲得こそ、ステージ1の大きな学習目的です。

■マルチキャリア化:ステージ2

10代後半から20代にかけて、初めて社会人として企業に所属します。この段階をステージ2と位置付けます。

このステージでは、学ぶ場所が所属する企業となり、会社の利益拡大に向けて必要な業務スキルを徹底的に教わります。社内研修という形式の座学や、職場で先輩や上司から学ぶOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)形式で、会社が必要とするスキルを積み上げていきます。

気をつけなくてはいけないのは、このステージでの教育は、あくまで会社の利益向上が目的であることです。ドライな言い方ですが、社員は、会社にとってあくまで資源の1つであり、個々人は第一優先ではありません。

会社の利益向上を優先し、社員個人の価値向上はその次という現実を理解しないといけません。そのうえで、自分が会社にとっての戦力だと見てもらえるようにする戦略を取っていくべきです。

たとえば、コンプライアンス研修の受講を指示されることがあります。これなどは個人の価値向上のためではありません。業務でコンプライアンス違反を起こすと、賠償責任や謝罪対応などで会社の価値を落とすことになってしまうので、全社員に研修を受けさせるのです。

この点を考えれば明らかなように、「会社の研修はあくまで会社の価値向上が目的だ」と割り切る覚悟が必要です。

テクノロジーを用いた教育のイメージ
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■マルチキャリア化:ステージ3

今後もっと必要となるのがステージ3です。

従来のように、人事部などから言われたことをやる受け身の社内研修ではなく、自分で必要なものを自分で考えて自発的に学んでいくプロアクティブな学習プロセスです。

ステージ2とは違い、ステージ3は個人の価値向上が主たる目的になります。また、勤務時間外に社外で行うものが中心となっていきます。自分の成長に寄与する学習であるかをしっかり見極めながら進んでいかなければなりません。学んだことを自身の行動に生かして、社内外で評価されるようになるのです。

このステージ3の教育、学習が「複業人材」になれるかどうかを決めます。企業評価だけでは、他の企業でも成果を出すことができるかどうかの判断が難しくなるからです。

今後は、個人の技能や経験が客観的な判断で数値化されるようになっていきます。個人の側も、社会で広く認められるスキルや経験を積み重ねて数値化できるようにしておくことが必要になっていくのです。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。

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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)

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