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キャリアの7割は偶然の出会い…"転職ガチャ"で成功する人、後悔する人を分ける意外な要素

プレジデントオンライン / 2022年10月26日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

昨今、転職する人が増えている。「しかし、2022年7月に調査したところ、1年以内に転職した20代、30代4770人のうち、21.4%が転職を後悔していました」と指摘するのは、800社超17万人の働き方改革を支援してきたクロスリバー代表の越川慎司さんだ。自身3回の転職をしてきた越川さんは「転職に成功する人としない人を分けるのは、“成功の定義”があるかないかです」という──。(第5回/全5回)

※本稿は、越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■選択権を取り戻せ

自分の人生を誰かにコントロールされると、精神的にも不安定になります。「会社に運命を託します」ではなくて、「自分でやる」という選択権を握ることはとても大切です。

働き方、働く場所や成果の出し方などを自分で選ぶことができる権利を「自己選択権」と呼びます。自己選択権を得るためには、会社で「すべきこと」「したいこと」「できること」の3つのバランスを考えていく必要があります。

「したいこと」を主張するだけでは自己選択権は得られません。「すべきこと」をしっかりこなし、「できること」が増えていけば、「したいこと」を選択できるチャンスが広がります。

■キャリアの7割は「偶然の出会い」

とくに若手の方々は、「すぐにでも会社を辞めてやろう」とならずに、長期スパンで人生設計を考えてほしいのです。

「したいこと」だけやれる世の中ではありません。8割以上の「すべきこと=やりたくない仕事」をして、給料がもらえる仕組みになっています。

「すべきこと」を着実にこなしながら、「できること」を増やせば、「したいこと」が偶然見えてきます。

キャリアの7割は「偶然の出会い」で生まれるといわれています。その出会いを引き寄せるために、成果を残して実力をつけていくことが必要です。

■20代30代は「Will」「Can」「Must」で考える

私も20代の頃には、将来マイクロソフトの役員になることや、二度も起業をすることになるとは考えてもみませんでした。とくに20代後半には、最短距離で成果を残すことに集中し、昨日よりも今日、今日より明日と、少しでも成長することを願って日々の業務をこなしていました。

そうした積み重ねの中で、「すべきこと」「したいこと」「できること」がすべて重なると「働きがい」になることに気づいたのです。

20代、30代では、「Will」「Can」「Must」の有名なフレームワークを意識してもらいたいと思います。

会社が求める「やるべき仕事」がMust、「自分にできること」がCan、「自分がやりたいこと」がWillです。

Mustは、正直コントロールできないのでやらざるをえません。20代、30代の戦略としては、自分でコントロールできるCanとWillの円を大きくすること、そして、これらの円をMustと重ねることを目指してもらいたいと思います。

■転職の本当の意義

自分がやりたいこと(Will)ができるようになって(Can)、それが会社が求めるもの(Must)であれば、会社と働く個人の双方がハッピーになり、この重なりこそが「働きがい」です(図表1)。

【図表1】「Will」「Can」「Must」が重なり合うところに「働きがい」がある
「Will」「Can」「Must」が重なり合うところに「働きがい」がある(越川慎司『29歳の教科書』より)

そして、3つの円を重ねるための1つの手段として、「転職」を検討してもらいたいのです。

転職したらMustが小さくなったり、コントロールできるようになったりするわけではありません。転職したら突然CanとWillが大きくなるわけでもありません。過剰な期待は禁物です。

■「転職ガチャ」に頼ってはいけない

もちろん、最良の職場環境や給与を目指す転職もあると思いますが、「最良」にゴールはありません。いまよりもよい会社を探していると、転職を短期間で繰り返してしまい、「継続できない人」という悪いレッテルがついてしまいます。

2022年7月に1年以内に転職した20代・30代の4770人を調査したところ、21.4%が転職を後悔していました。その理由の1位が「職場環境がよくない」でした。最良の環境を目指して転職したものの、入社してみたら意外と悪かったということです。

人材不足の環境下で企業は自社のよいところをやや大きめにアピールする企業はあります。そうしたアンラッキーなガチャ(悪運)を引かないように、自分主体で「Can」と「Will」を大きくしていく戦略を取ったほうが、失敗が少ないのです。

■転職に成功する人しない人を分ける「たった1つのこと」

転職は、あくまで「手段」です。キャリアを成功させるために、その手段として勤める会社を変えるわけです。

越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)
越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)

それでは、あなたにとって「キャリアの成功」とは何でしょうか?

私は転職を3回して、転職の成功と失敗を分けるのは、「成功の定義があるかどうか」だと感じるようになりました。転職によって実現したいことは何か、どうなったらこの転職が成功といえるのか、自分の中で事前にクリアにしておいたほうがよいでしょう。

この点がクリアになっていないと、転職を繰り返すことになってしまいます。たとえば登山で、登るべき頂が決まっておらず、そのためルートも定かでない状態で山登りを開始すれば、たちまち遭難の危険が高まってしまうでしょう。

転職も同じです。

■副業で市場ニーズを把握する

働く人の副業に対する潜在的なニーズが高まる中で、社会や企業の受け止め方も少しずつ変わってきました。ヤフーでは、副業を持つ社員がすでに数百人規模に達しているようです。サイボウズも、2012年から社員の副業を「原則許可」に変更しています。

最近では、働く個人としての成長や生きがいのために副業を模索する人が増えています。NPO法人(特定非営利活動法人)やプロボノ(仕事を通じて培(つちか)った知識やスキル、経験を活用して社会貢献するボランティア活動全般のこと)など、社会貢献活動に励むパラレルキャリアもその1つです。

会社にとっても、社員が社外での活動で得たスキルや知見を、本業に活かすことが期待できます。また、社員の目が社外に開かれたり、外の世界でよい刺激を受けた社員がみずからさらなる成長を目指すようになったりすることにも大きなメリットがあります。

働く個人にとっては、社外で働くことは自分の市場ニーズを知るよい機会になります。ですから、本業に影響を与えない範囲で副業をしてみることをお勧めします。

■インターネットを活用したスキルの切り売りを

中でもお勧めはインターネットを通じたスキルの切り売りです。

インターネットでは、ものごとをアンバンドル(細分化)しやすく、本業で身につけたスキルや趣味などを“売る”ことができます。

例として、スポットコンサルの「ビザスク」や、カジュアルなスキルのフリーマーケット「ココナラ」、独自のネットショップを展開する「ミンネ」などがあります。

何かを制作していなくても、たとえばミンネで物販の仕組みを理解することは学びになります。画像の見せ方、魅力を増す説明文、クレームを防ぐ注意書きの作法などを学ぶことができます。

■自分の商品力を高めるテスト

メルカリなどのフリマサービスでもよいのですが、ミンネのようなネットショップのほうが独自の販売戦略を組むことができます。画像やイラストも販売できるので、インターネットの商流を基礎から体験することができます。

私自身、2016年にビザスクで自分の経験を登録して、クライアント企業にテスト提供し、身につけたスキルがどれくらいの市場価格で販売できるか知ることができました。それが、その後コンサルタントとして独立するきっかけにもなりました。

自分のスキルを売るだけでなく、ほかの副業者・フリーランス(個人事業主)からスキルを買ってみてください。価格設定の感覚をつかむことができ、また、自分の商品力を高める動機付けにもなります。

■副業を複業へと進化させる

市場のニーズを把握するのは「副業」でいいですが、今後は「複業」が主流となっていくでしょう。

「複業」は本業が複数あることを意味しており、メイン(本業)―サブ(副業)ではなく、メイン―メイン(複数のメイン)の形式です。異なる複数の仕事を、どちらも本業として兼務する働き方であり、勤労形態としては「兼業」に近いでしょう。

自分が身につけるスキルを多様化して、さまざまな挑戦をすることができる状態に持っていく。それができれば、「自己選択権」が高まります。

すなわち、自分で仕事を選ぶことができるようになります。リモートワークや「金曜だけ」などといった、好きな働き方を自分の意思で決めることができるのです。

スマホやタブレット、ノートパソコンを使用して仕事をする人たち
写真=iStock.com/Tzido
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tzido

■年齢を言い訳にはしない

とりわけ、「第3のプラットフォーム」(モバイル・ソーシャル・ビッグデータ・クラウドの4要素)での活用が注目されるIoT(Internet of Things:モノのインターネット=センサーなどさまざまなデバイスがネット接続する)やAI、セキュリティの分野では、2030年には40万~80万人規模で人材が不足するといわれています。売ることができるスキルがあれば、年齢にかかわらず必要とされます。

将来を見据えて、たとえばIoTに必要なデータ解析を学習したり、プログラミングの基本を勉強したりしてみてはいかがでしょうか。こうしたテクノロジー分野を複業にしてやろう、という意気込みで取り組んでみるのです。

80歳を超えてiPhoneアプリを開発する方も現実にいるのですから、年齢を言い訳にすることはできません。

また、業界の常識は異業界の非常識ともいわれます。現業と違う業界で本気で兼業してみたら、現業にも活かせる新たなビジネスの種を見つけられるかもしれません。

■異業種の知見に触れることが最大の学び

私たちのクロスリバーは複業していないと入社できないルールにしています。これは私が、自分が持っていない異業種の知見を取り入れたいと思ったことが大きいのです。

ベンチャーでは優秀な人材を獲得するのは難しいのですが、「複業」を前提にその人の稼働を時間単位で調達することができ、双方にとって都合がよいのです。

その結果、医師をしながら「働きがい診断サービス」の監修をしたり、実家で住職をしながらクロスリバーの研修サービスを営業してくれたりと、さまざまな業種の人が参画してくれています。

■新しい時代の働き方の「お試し」はいますぐ可能

この複業ルールは、社長である私にももちろん当てはまります。そこで、2018年11月からリモートのオンラインアシスタントサービスなどを展開するキャスターの執行役員を務めている、というわけです。

キャスターでは、コンサルティングや社内セキュリティ強化などの業務を行い、小規模なチームも持っていました。

私より断然若い役員陣の斬新な発想や迅速な行動に触れてよい刺激を受け、そのことが、もう1つのメイン業務であるクロスリバーのコンサルティングにもプラスの影響を与えています。

今後は、異質な経歴、そしてさまざまなスキルを持つ人同士が会社の垣根を越えて共同作業をしていく時代になります。そのうえで、副業や複業といった働き方がスタンダードになっていくでしょう。

週に2~3時間でいいので、早めにトライしてみることを強くお勧めします。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。

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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)

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