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「私は期限までに必ず仕事をやり遂げます」とアピールする人は、死ぬまで指示されるだけで終わる人である

プレジデントオンライン / 2022年10月13日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

仕事のパフォーマンスを高めるにはどうすればいいか。起業家の野原秀介さんは「IRR(内部収益率)の高い働き方をしたほうがいい。たとえば『期限を決めて仕事をする』というのは、一見合理的なように思えるが、むしろIRRを破壊するに等しい行為である」という――。

※本稿は、野原秀介『投資思考』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■同じキャッシュフローでも投資効果に違いが生まれる

皆さんは仕事のパフォーマンスを何で測っているでしょうか? 営業マンであれば架電数や商談数など、部署単位であれば売上や利益などが設定されることが多いと思います。また、一企業で見れば株価やROE(資本収益率)といった目標が設定される場合もあります。

投資の世界ではどのようにパフォーマンスを測るかというと、IRR(内部収益率)と呼ばれる指標が使われています。

聞き慣れない言葉だと思うので用語について説明します。まず、辞書的な定義でいうとIRRとは「投資に対する将来のキャッシュフローの現在価値(の総計)と、投資額の現在価値とがちょうど等しくなる割引率のこと」です。

これだけを聞いて、なるほど! となる人はいないと思うので具体例を示して説明しますが、重要なのは「IRRは単純な利益額とは別もの」であるということです。

以下に2つの投資における年ごとの資金の回収を掲載しています。

【図表】IRRの例①
出典=『投資思考』
【図表】IRRの例②
出典=『投資思考』

1つ目の投資(図表1)では、投資開始時(0年目)に100の金額を投資しています。その後1年目・2年目に25ずつのキャッシュフローがあり、3年目に100のキャッシュフローを回収して投資期間が終了しました。

2つ目の投資(図表2)では、投資開始時(0年目)に同じく100の金額を投資しています。その後1年目・2年目はキャッシュフローがなく、3年目に150のキャッシュフローを回収して投資期間が終了しました。

ご覧の通り、どちらも初期投資は100で、投資期間は3年、回収金額は150です。一般的な考え方であれば、どちらの投資でも得られた利益は50であり、遜色ないように感じます。

しかし投資の世界では圧倒的に1つ目の投資のほうが優秀です。なぜならIRRで比較した場合、1つ目の投資は18%、2つ目の投資は14%であるためです(IRRを算出するにはExcelや関数電卓を用いることが一般的です。計算式については本筋と関係ないのでここでは割愛いたします)。

■“お金の現在価値”を理解する

この考え方のベースになるのが“お金の現在価値”という概念です。

この概念を理解するために少しクイズを出します。

あなたは運良く宝くじに当選し、100万円を獲得できることが決まりました。ただしそれを受け取るタイミングについては決まっておらず、以下の3つの選択肢があります。さて、投資思考においてはどれを選ぶことが正しいでしょうか?

A 今すぐ100万円をもらう
B 1年後に100万円をもらう
C AもBも変わらない

答えは“A 今すぐ100万円をもらう”になります。

これはなぜか考えてみましょう。

Aを選び100万円を受け取ったあなたは、すぐにその100万円を好きに使うことができ、もちろん投資することもできます。ということは上記の選択肢は以下のように書き換えることが可能です。

A 今すぐ100万円をもらう+1年間の運用益
B 1年後に100万円をもらう
C AもBも変わらない

運用して損するかもしれないじゃないか! という意見も出そうなので補足します。

確かに運用方法によっては利益が出るものも、損失を出してしまうものもあり得ます。金融の世界にはそういった可能性を考慮した上で、「リスクゼロでこれくらいの利回りは出るよね」という利率が存在しており、“リスクフリーレート”と呼ばれています。

日本の場合には2016年12月以降、無担保コールオーバーナイト物金利(TONA、Tokyo OverNight Average rate/金融機関同士が「今日借りて、明日返す」、「今日貸して、明日返してもらう」など、超短期の資金調達や資金供給を、借り手が貸し手に対して担保を預けずに行う取引のこと)が採用されています。

今でこそ、0%付近を推移していますが、1990年代には年利8%を推移していたこともありました(図表3)。リスクゼロで8%の利回りが獲得できるのであれば、A 今すぐ100万円をもらう以外の選択は考えられませんね。

【図表】無担保コールオーバーナイト物金利の推移
出典=『投資思考』

このように得られる効用(例で言えば100万円)は全く同じであっても、タイミングによって価値が変わってくるので、将来得られる効用も全て現在の価値に直して比較しましょうというのが金融の世界における考え方です。

これをDCF(Discounted Cash Flow)法といいます。様々な国から、様々な投資家が、様々な資産に対し投資検討をしているため、その際に共通の物差しとしてこのDCF法という考え方が用いられています。

■「いつでもできる」ことは徹底的に前倒しして実行する

では、この考え方を我々の生活に取り入れるにはどうすれば良いか。一言で言えば「手前の結果には、より価値がある」と意識する、ということになります。

例えば30歳になってから初めて海外旅行を経験し、語学力の必要性を痛感した場合と、同じことを20歳で経験した場合を考えてみましょう。

30歳からであっても決して遅くはありませんが、後者であれば10年早くスタートを切ることができ、キャリアや人生の幅は大きく違ってきます。

また、会社から持たされている年度の予算を第3四半期に達成した場合と、年度末ギリギリになって達成した場合を考えてみましょう。どちらもその年度の実績としては同額ですが、前者であれば残りの3カ月間を次の年度の成績に向けた仕込みに使うことができます。

こうして書いてみると至極当たり前のような気がしてきますが、実際には多くの人が手前の経験・成果の価値を見誤り、大きな機会損失を被っています。

よく見るケースでいうと、節約のために飲み会を欠席し、毎食弁当を持って来る人(手前での新たな人的ネットワークの獲得や、同僚・お客さんとのコミュニケーション機会を失い、数年後に使うための資金を貯めこんでいる)や、飛び級での昇進の話や高待遇での転職オファーを、まだ自信がないからという曖昧な理由で断る人(数年早く、新たな職責で得られるノウハウがあることを見過ごしている)などが挙げられます。

「いつでもできる」ことは徹底的に前倒しして実行することが、IRRの高い、投資思考に沿った生き方だと言えるでしょう。

■期限に向かって仕事をする習慣を卒業しよう

巷のビジネス書やインフルエンサーの発言によく見られるのが、「まず期限を決めて、それに向かって仕事をしよう」というものです。

これは一見合理的なように思えるのですが、これを実践していくと期限に合わせて仕事をする癖がついてしまいます。これはIRRを破壊するに等しい行為です。

一スタッフとして、指示されたことを遂行するだけの人材としてキャリアを終えるつもりならそれでもよいかもしれませんが、本書を手に取って頂いている方は視座の高い方々と想定しています。

野原秀介『投資思考』(実業之日本社)
野原秀介『投資思考』(実業之日本社)

もしあなたが今“期限に向かって仕事をする習慣”が染み付いてしまっているのであれば、今すぐにその習慣を卒業しましょう。

全ての仕事は本来今すぐに完了されるべきもので、期限とは「このラインを超えると周りに迷惑をかける・ビジネスに差し障りがある」ことを示すのだと頭を切り替えましょう。

そして基本的な仕事の進め方として、IRRを高めることをゴールに据え、仕事の回転数を高めるようにしましょう。

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野原 秀介(のはら・しゅうすけ)
X Capital代表
1991年生まれ。東京大学卒業後、新卒でゴールドマン・サックス証券に入社、債券為替コモディティ営業本部にて数多くの金融機関とのディールを経験。その後2018年に株式会社X Capitalを創業、現在まで代表を務める。「日本経済に、パラダイムシフトを。」というビジョンを掲げ、日本に経営人材を創出すること、プリンシパル投資により中長期的な企業価値を増大させることを目指して事業を拡大し、創業以来増収増益を達成している。

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(X Capital代表 野原 秀介)

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