「行ってらっしゃい」「ありがとう」の言い方がちょっと違う…わが子を東大生にした親150人の声かけアレンジ術
プレジデントオンライン / 2022年10月14日 11時15分
※本稿は、『プレジデントFamily2022年秋号』の一部を再編集したものです。
■東大生の親の共通点:子供の「『ありがとう』の心」を育てる
日々の「ありがとう」を出し惜しみしない
「家族から愛情を言葉や行動で示してもらいましたか?」の質問にYESと回答した東大生は76%。日本人は愛情表現があまり上手ではないといわれるが、愛情表現豊かな家庭で育った東大生が多いことがわかる。
「『家族だから言わなくても伝わるはず』『親子なんだからいちいち言葉にしなくても大丈夫』と、愛情や感謝を伝える言葉を口にしない人が多いかもしれません。でも、言葉やハグなどの行動で何度も表現してもらったほうが子供にはきちんと伝わります」
愛情の出し惜しみ厳禁。スキンシップ、声かけ、目を見て話すなど、日々のコミュニケーションの中に愛情と感謝をちりばめよう。
愛情を感じた具体的な行動を聞くと「頭をなでてもらったり、抱きしめられたりした」「送り迎えをしてくれた」「好きなものを食べさせてもらった」「誕生日を祝ってくれた」ことなどから間接的に愛情を感じ取っていることがわかった。ただし、単にその行動をまねすればいいというものではない。
「たとえば、朝の『行ってらっしゃい』という言葉ひとつにしても、掃除をしながら片手間で言うのと、玄関で目を見て『○○くん、行ってらっしゃい』と送り出すのとでは、受け取る印象は大きく違いますよね。子供のことを大切に思っている、子供は親に認められている、というのが伝わるかは言い方次第。まずは、目を見て話すことを心がけるといいでしょう」
また「『ありがとう』を言い合うことが多かった」という東大生のコメントで、前野さんが注目したのは「物を取ったとき」などささいなことという回答。
「たとえば食卓でのやりとりでしょうゆを取ってもらうとき『しょうゆ取って』『はい』。こんな会話になっていませんか? 親しき中にも礼儀ありで、こんなときも『ありがとう』と返す習慣があるといいですね。親がまず意識してみてください。『ありがとう』は対人関係の基礎になる大事な言葉です。『ありがとう』を言われることで、相手のためにいい行動をすることが嬉しいという利他的な心が育まれます。また感謝の言葉が出るのは、相手を尊重している証拠。家庭をそうした場にすることが、社会に出たときのコミュニケーション力へと結びついていきます」
さらに、前野さんがおすすめするのは、「○○ちゃん、ありがとう」と感謝や愛情表現の前に名前を呼ぶこと。
「自分の名前を呼ばれるだけで人は自分だけに向けられた言葉として、その感情を全部受け止め幸せを感じます。気持ちをきちんと相手に伝えるために、名前を呼ぶ。これは親子関係だけでなく、夫婦や友人、仕事仲間にも使えるワザですよ」
■【親からやってもらった「愛情を感じた言葉や行動」】
●忙しかっただろうと思いますが、どんな話でも真剣に最後まで聞いてくれた(文科一類2年)
●頭をなでてもらったりハグをしてもらったりした(文科一類1年)
●送り迎えやお弁当を朝早く作ってくれたこと(経済学部3年)
●出かける前の「行ってらっしゃい」、家に帰ったときの「おかえり」。何げない、こういったささいなやりとり(理科二類1年)
●いろいろなところに連れて行ってもらって、さまざまなことを体験させてくれた(教育学部3年)
●ご飯の美味しいところを分けてくれる(文学部4年)
■【家族が「ありがとう」を使うとき】
●買い物などで荷物を運ぶなど、親の身体的負担を減らしたとき(教育学部4年)
●公共施設やお店で、係員さんや店員さんにちょっとしたことをしてもらったときにはこまめに感謝を伝えていた(経済学部4年)
●感謝の気持ちを感じたときはささいなことに対してでも必ず言っていたと思います(文科一類2年)
■【親が人のために行動するといいことがある?】
アンケートでは「親はボランティア活動をやっていましたか?」の質問には42%がYESと回答。前野さんは「できる範囲で積極的にボランティア活動などの利他的な行動をしたほうがいい」という。
「人のために行動すると幸せを感じ、心が安定することがわかっています。ただし、子供に『人のために行動しなさい』と声をかけてもあまり意味がありません。親の姿を見て、子供も利他的な行動が自然に身につくのがいいですね」
PTAなどは参加が必須なことも多いだろう。子供への教育的な影響を考えるなら、嫌々するのではなくできるだけ積極的に参加したい。
「電車で席を譲る、ごみを拾うなどでもOKです」(前野さん)
前向きな声かけをした 72%
ミスをしたときに責めなかった 47%
できないところよりできるところに注目した 78%
※アンケート:2022年7月にトモノカイの協力を得て、現役の東京大学の学生・大学院生150人にWEBアンケートを実施。
EVOL株式会社代表取締役CEO。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属SDM研究所研究員。IPPA(国際ポジティブ心理学協会)会員。夫の前野隆司・慶應義塾大学大学院SDM研究科教授とともに、ウェルビーイングを研究し、ワークショップやコンサルティング、研修や執筆活動などで幅広く活躍。著書に『最新の「幸せの研究」でわかった しなやかで強い子になる 4つの心の育て方』など。
(プレジデントFamily編集部 構成=浦上藍子)
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