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「不倫している」という相談にどう応じるべきか…聞き上手の人が無意識にやっているベストな返し方

プレジデントオンライン / 2022年10月18日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Robert Daly

「好かれる人」と「嫌われる人」はどこが違うのか。心理カウンセラーの山根洋士さんは「周囲から好かれる人は聞き上手だ。たとえば『不倫している』という相談への応じ方に違いがみえる」という――。

※本稿は、山根洋士『なぜ、あの人には何でも話してしまうのか 心理カウンセラーのスゴイ「聞く技術」』(アスコム)の一部を再編集したものです。

■好かれる人は「聞き上手」である

話の聞き方の本質は、「どう話すか」ではなく「どう話してもらうか」です。

会話を盛り上げるのが得意ではなかったり、話術に自信がなかったりしても大丈夫。面白い話のネタがあるとか、冗談がうまいとか、気の利いた返しができるといったことは、それほど重要ではありません。

豊富な知識や経験、うんちくは聞き手にとってかえって邪魔なくらいです。

上手な聞き手になるには、聞く技術が必要です。その技術を持ち合わせているのが、どんな相談者のどんな内容の話でも聞き続けられるカウンセラーです。この本の聞く技術を整理すると、次の3つになります。

①安心して話してもらえる信頼関係をつくる聞き方(受容・共感)
②本音を話してもらう聞き方(自己一致)
③聞き疲れしない方法

最初に、「安心して話してもらえる信頼関係をつくる聞き方」から始めましょう。

会話において、話し手と聞き手の距離感はとても大切です。距離とは、心の距離。相手が心を開いてくれるところまで近寄らないと話してもらえないし、相手の心に踏み込み過ぎると、逆に心を閉ざして話してもらえなくなります。

上手な聞き手になろうとすると、相手のことをもっと理解したいと近づきたくなりますが、上手な聞き手は、近づき過ぎず、離れ過ぎない、ほどよい距離感を保つことを心がけています。

■「わかる~」は何もわかってない

「どうしたんですか? 元気ないですね」
「ええ、ペットが病気になっちゃって本当につらいんです。こんなに落ち込むとは思いませんでした」
「ああ、わかります、わかります」
「もしも元気にならなかったら……とか考えてしまって」
「わかりますよ。私も昔、飼っていたインコが……」

この会話、特におかしなところはないように思えます。でも、もしかすると、ちょっと嫌だなと感じた人もいるのではないでしょうか。

「わかるよ」というのは、相手に寄り添うつもりでつい言ってしまいがちな言葉です。しかし実は「わかる」は禁句。なぜなら、わかるわけがないからです。

長年の友達など親しい人が相手ならまだしも、信頼関係をつくる段階では特に危険。あっという間に心のシャッターを閉ざされるかもしれません。

相手は心の中で「そんな簡単にわかってほしくない」「私の何がわかるのか」と思ってしまうかもしれません。さらに「私も昔……」なんて自分の話を始めるのは最悪です。聞いていない人、自分の話をしたがる人、という印象を与えてしまいます。

受容と共感のためには、「そうなんですね」「つらいですね」などが無難です。相手の言っていることを、そのまま受け止めればいいのです。

コンピュータを使用した会議。
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokouu

■人にはそれぞれ「言葉マップ」がある

相手の話と似たような体験を自分もしたことがあると、「本当にわかる」と思うかもしれません。でもそれが、知識や経験の罠。正確には、自分なりに想像がつく、というレベルではないでしょうか。

ここで質問です。あなたは、「ペット」という言葉を聞いたら、どんなことが頭に浮かんできますか? 自分で飼っている犬や猫の姿でしょうか。それとも、ペットと遊んだ思い出? あるいは、ペットを題材にした映画や漫画が思いつくかもしれません。

このように、1つの言葉から連想されるイメージは、人それぞれです。

相手の頭に浮かんでいることと、自分の頭に浮かんでいることは異なります。どんなに親しい間柄でも、同じ環境で生活している人同士でも、完全に一致することはないでしょう。

年齢も性別も、生まれたところや育ったところも、好きなことや嫌いなこともすべて同じという人はいないのですから、そう考えるほうが自然です。あなたとまったく同じ人生を歩んできた人など、いませんよね。

私たちの頭の中には、生まれてからの経験をもとに、膨大な言葉と、それに連なるイメージが蓄積されています。それを「言葉マップ」といいます。そして会話のときは、相手の言葉を、その言葉マップからピックアップしてイメージしています。

つまり、相手の言葉を自分なりに翻訳して理解しているということです。それなのに、次のような合いの手を安易に使ってしまいます。

「あなたの気持ちはよくわかります」
「言いたいことはわかります」

私たちは、さも相手のことを理解しているといった言葉を返すことがありますが、間違って解釈している可能性は十分にあります。言葉マップがそれぞれ異なるのに、相手が話していることを100%理解できていると思っているのが、そもそも間違いなのです。

■「わかっているつもり」には要注意

わかっているつもりの会話で問題が起きやすいのが親しい関係です。付き合いが長くなればなるほど、相手のことを知っていると思い込んでしまいます。最後まで話さなくてもわかるからと会話をさえぎることもあります。

あなたは、あなたの大切な人(恋人や子どもなど)の好きなことと嫌いなこと、したいこととしたくないことを100%言い当てられますか? 難しいと思います。私も自分の子どものことを100%理解するのは無理です。

聞き手は、相手のことを100%理解できないことがわかった上で聞くのが大前提。わざわざ「わかる」という言葉を使ってリスクを冒す必要はないでしょう。

■会話に上下関係はいらない

安心して話してもらうためにカウンセラーが意識しているのが、「ラーニング」です。ティーチングでも、コーチングでもなく、ラーニング。上手な聞き手は、どんな相手でも「教えてもらう」というスタンスを忘れません。

どうして、ついアドバイスしたくなるのか?
解決方法を聞かれてもいないのに、教えたくなるのか?
自分の意見と異なると正したくなるのか?
気になることがあると、あれこれ確認したくなるのか?

それは、相手との関係性から生まれる心理です。

会話する相手との関係を上下でとらえると、上手な聞き方ができなくなります。

例えば、相談されると、相談してきた人(悩んでいる人)が下で、相談を受けているほうが上だと思ってしまいます。カウンセラーとして仕事を始めたばかりの頃の私も、そうだったかもしれません。そういう心理が働くと、相手に対して上から目線になります。

本人に「上から」という意識はなくても、相手のためにと思っていたとしても、「教えてあげる」「解決してあげる」というスタンス。要するに、ティーチングやコーチングです。

相談ごとや悩みごとでなくても、上下の関係を意識すると、ラーニングではなくティーチングやコーチングのスタンスになります。

上司と部下、先輩と後輩、親と子、年上と年下、先生と生徒……。こうした関係は、誰が決めたわけではありませんが、世の中ではヨコの関係ではなく、タテの関係になります。

女性マネージャーと若いビジネスマン
写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

■「教えてくれる?」「教えてくれてありがとう」と言えるか

タテの関係での会話は、どうしても上の人のほうが話し手になりがちです。

例えば上司と部下の会話の場合、「今日は君の話をたくさん聞かせてよ」と上司が言ったところで、部下が聞き手に回ることが多くなります。部下の話の中に気になる箇所があったりすると、それこそ上司が一方的に話すことになります。

「今日は部下の話をよく聞いたなあ」と思っていたとしても、客観的に見ると、上司のほうが話している時間が多いのはよくあることです。これでは、聞き手としては失格。部下の話をうまく聞けるはずがありません。

タテの関係性であったとしても、会話においては対等です。上手な聞き手になりたいなら、少しくらい下だと思っているくらいがちょうどいいでしょう。

「教えてください」と「教えてくれてありがとう」。へりくだることはありませんが、この2つを意識していると、相手は安心して話すことができます。会話の主役は、あくまでも話し手。このことを忘れないようにしましょう。

■白黒つけてはいけない

ネットニュースやテレビのワイドショーを見ていると、著名人の不倫や、迷惑系ユーチューバーの騒動を知ることがあります。自分には関係ないのでどうでもいい、という人もいれば、許せない! と怒りを覚える人もいるようです。

SNSやネットニュースのコメント欄には、「謝罪すべきだ」「活動自粛してほしい」といった怒りの投稿が溢れます。一般論として、多くの人が間違っていると思うことには、つい、ひとこと言いたくなってしまうのが人情です。

しかしこれが、人との信頼関係を築く会話では、聞き手の邪魔になってしまいます。心理カウンセラーは、相談者のどんな話もジャッジしません。

相手の話している内容について、自分の倫理観や常識、価値観などで、正しいとか、間違っていると判断しないということです。一般常識と照らし合わせておかしいなと思うことでも、そのまま受け入れます。

カウンセラーは、自分の倫理観や常識、価値観などを横に置くか、棚に上げて相談者の話を聞いています。そうしないと、相手の話を素直に聞けなくなるし、口を挟みたくなるからです。

例えば、不倫の相談をされたとします。一般論でいえば、不倫はよくないと考えるかもしれません。しかも、それが知人の話となると、我がことのように真剣に考えるでしょう。

「そうなんだ。でもね、不倫は相手も自分も、相手の家族も不幸になるよ」

結婚指輪をつける男
写真=iStock.com/Suebsiri
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Suebsiri

相手のためを思えばこそ、真剣に釘を刺すこともあるはずです。それ自体はコミュニケーションのとり方の1つです。しかし、何でも話してもらうために、会話の心理的安全性を高めるのであれば、ジャッジは不要です。

■「不倫している」と打ち明けられたら…

話し手にとってみれば、ジャッジを下されてしまうと、それ以上のことを話すハードルがグッと高くなってしまいます。どんな事情があって、どんな想いを抱えているのか、話してくれなくなってしまいます。

受容・共感の段階では、「そうなんだ」のあとの「でもね」が出そうになったら我慢しましょう。「どう思う?」と聞かれたら答えればいいだけです。

もう少し掘り下げると、直球で正論をぶつけられることは、話し手にとっては意外と息苦しいものです。不倫はよくない、なんてことは、当事者もきっとわかっています。

「そんなことはわかっている。でも自分にはそれなりの事情がある」と考えているのかもしれません。

人が大切なことを話すとき、本当にしてほしいのは受容と共感です。相手があなたにジャッジを求めたり、間違いを正してほしいと思っていることはほぼありません。

これは聞く技術というより考え方になりますが、ものごとに唯一絶対の正解などないと思ったほうが、話し手も聞き手も気がらくです。相手が間違っているのではなく、自分とは違う。これが、上手な聞き手の受け止め方です。

■人は正論を求めているわけではない

世の中にはいろいろな人がいます。あなたがタブーだと思っていることをまったく気にせずに生きている人もいます。あなたが正しいと思っている生き方とは、真逆の生き方をしている人もいます。

山根洋士『なぜ、あの人には何でも話してしまうのか 心理カウンセラーのスゴイ「聞く技術」』(アスコム)
山根洋士『なぜ、あの人には何でも話してしまうのか 心理カウンセラーのスゴイ「聞く技術」』(アスコム)

ふだん会話している人のことは何となくわかっているつもりですが、話しているときに、「この人は意外とドライな人だったんだ」「細かいことを気にする人だったんだ」「社交的に振る舞っているのは会社だけなんだ」と、相手の一面に気づかされることもあります。

本来、そう簡単にジャッジなどできないのではないでしょうか。聞き手がやるべきことは、まず相手の話を聞くこと。そして、相手を認めることです。

自分の倫理観や常識、価値観を横に置くのが苦手なのが、真面目な人です。これが正しいことだと信じて生きている人ほど、敏感に反応してしまうところがあります。

上手な聞き手になりたいなら気をつけたほうがいいでしょう。もちろん、その価値観は聞き手として邪魔なだけ。あなた個人にとって、大切なものは大切でいいのです。

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山根 洋士(やまね・ひろし)
心理カウンセラー
心のクセを直す「メンタルノイズ」カウンセラー(心理カウンセラー)。一般社団法人メンタルノイズ心理学協会チェアマン(会長)。大阪府出身。早稲田大学中退。両親の離婚、熱中していたスポーツの挫折、就職の失敗などを経て、情報誌編集者からノンフィクションライターとして独立。心理療法を学び、カウンセラーになる。著書に『「自己肯定感低めの人」のための本』、『なぜ、あの人には何でも話してしまうのか 心理カウンセラーのスゴイ「聞く技術」』(いずれもアスコム)などがある。

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(心理カウンセラー 山根 洋士)

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