重要なのは「なにを話すか」より「なにを話さないか」…会話で評判を下げる人の7大特徴
プレジデントオンライン / 2022年10月20日 11時15分
※本稿は、山根洋士『なぜ、あの人には何でも話してしまうのか 心理カウンセラーのスゴイ「聞く技術」』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■頑張って話すことが逆効果になる
日本語の「聞く」には2つの意味があります。
1つは、文字通り聞く。英語で表現すると「LISTEN」です。もう1つは、質問する。英語なら「ASK」です。どちらも聞くという行為になりますが、大きな違いは、話し手と聞き手、どちらが主役か。
LISTENは話し手が主役で、ASKは聞き手が主役になります。なぜなら、質問には聞き手の意図が反映するからです。質問内容によっては、話し手の話を誘導することさえできてしまいます。
話したいことが話せなくなるのですから、相手が満たされることはありません。つまり、上手な聞き手はLISTENしているのです。ところが私は、LISTENできていませんでした。
カウンセラーになったばかりの頃の私は、相談者の悩みや相談を「私が解決してあげる」のが仕事だと思っていたのです。
相談者の時間とお金をいただいているわけですから、悩みや相談を聞くだけでは申し訳ない。相談者が苦しみから解放されるための解決策や道筋を教えてあげることが、私の使命だと考えていたのです。
そういうスタンスになると、相手が主役のはずなのに、私の頭の中は自分のことでいっぱいになります。
「どうしたらこの問題は解決できるのか」
「どういうアドバイスをしたらわかってもらえるのか」
「何かいいアイデアはないか」……。
相手に「何を話そう」ということばかりが頭に浮かんできます。私は、相談者の話を聞いているつもりで、聞けていなかったのです。しかも、相談者の話を聞いている時間よりも、私が話している時間が長くなることもありました。これでは、「いいアドバイスができた」と私は満足しても、相談者が満たされることはないですよね。
頑張ろうとするのが間違いでした。相談者は、限られた時間の中で、自分の話をたくさん聞いてほしかったのです。
![オフィスで働く成熟したアジアのビジネスウーマン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/2/1200wm/img_120c53b9ee1d0620ea32e1ccc0e18db8435525.jpg)
■「何を話すか」より「何を話さないか」
この経験を踏まえていえるのは、会話の準備で必要なのは「何を話すか」ではなく「何を話さないか」だということです。
これまで何度も述べてきた通り、相手の話を聞いていると、こちらも話したいことがどんどんわき出てきて、いつの間にか「次に何を話すか」で頭がいっぱいになってしまいます。そうなると、聞くことがどんどんおろそかになってしまいます。
これを防ぐためのシンプルな解決策は、「何を話さないか」を準備すること。
慣れるまでは、例えば、
・アドバイスをしない
・自分のエピソードを話さない
・意見しない
・「でも」と言わない
など、簡単な“べからず集”を用意しておくといいでしょう。もちろん、「アドバイスがほしい」と言われたら答えればいいのです。これは受容と共感のための、初歩の初歩ですが、かなり強く意識しないと、つい自分から口を挟んでしまいます。そしてどんどん会話の心理的安全性を下げていきます。
次に典型的な「聞けない人」のパターンを紹介するので、それもぜひ反面教師にしてみてください。
■会話で評判を下げる人の7大特徴
①アドバイスしたくなる「先生タイプ」
相手の話に失敗したことやうまくいかないこと、迷っていることなどが出てくると、ついアドバイスしたくなるのが、先生タイプです。
「○○がうまくできなくて上司に怒られまして……」
「○○なら、俺が教えてあげるよ。まず~」
相手は「解決策を教えてほしい」とはまだ言っていないのに、ただ「たいへんだったな」と言ってほしいだけかもしれないのに、先生タイプの人は、相手の思いをさえぎるようにアドバイスを始めます。しかも、わかりやすく教えようとすればするほど、話が長くなります。
教えるために聞いている先生タイプが会話で気になるのは、相手の話より、教えるためのネタ。「どうしたらいいアドバイスができるか」がいつも頭にあるため、相手の話に耳を傾けることがおろそかになります。
②○か×かジャッジする「審判タイプ」
相手の話の内容が自分の意見と違っていたり、非常識と受け取れたり、荒唐無稽に思えたりすると、つい口を挟みたくなるのが、審判タイプです。
「○○は冷やしてから食べるとおいしいよ」
「そうかな、常温のほうがおいしいけど……」
審判タイプの人は、自分の価値観や判断基準と異なると敏感に反応し、いきなり否定したり、真っ向から反対意見を言ったりする傾向があります。議論を戦わせるディベートの場ならともかく、ふだんの会話の中で相手の心を折るようなツッコミが入れば、相手は話したくなくなります。
毎回、そんな会話を続けていれば、相手は「いつもあなたが正しいのね」と話を聞いてくれない人と思われることにもなるでしょう。聞ける人は、どんな内容であれ、まずは相手の話を受け入れることから会話を進めます。
■話すことを拒絶されても仕方ない…
③何でも説明したがる「解説者タイプ」
聞かれてもいないのに、求められてもいないのに、確認したり、説明したりしながら会話を進めるのが、解説者タイプです。
「昨日、○○さんから夜中に電話があってさ」
「○○さんは、あなたが新卒で入社したときの……」
相手は連絡してきた内容について相談したいのかもしれないのに、夜中の電話は非常識なことについて話したいのかもしれないのに、解説者タイプは相手の話を折ってまで確認作業を始めます。それによって、相手は話したいことが話せなくなったり、説明が長くなり過ぎて話す気力が失われたりすることもあります。
お店で買い物をしているときに、説明がくどかったり、こちらが聞きたいかどうかも構わず不要な説明をしてくる店員っていますよね。解説者タイプは、話している人にとっては、そんな面倒くさい対象になっているのです。
![プレゼン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/6/1200wm/img_f620368f794ebdf863deee335aa860d9619260.jpg)
④とにかく聞きたがる「記者タイプ」
好奇心旺盛なのはいいことですが、興味のあることや気になることがあれば、とにかく根掘り葉掘り聞いてしまうのが、記者タイプです。
「1週間前にお母さんが入院して……」
「どこの病院なの? どんな病気なの? いつまで? 入院費用は?」
相手がどこまで話をしたいのかわからないのに、記者タイプは、とにかく自分が聞きたいことはすべて聞こうとします。1つ2つの質問ならともかく、あれこれも聞かれると、相手は「自分が知りたいから聞いているだけなのね」と興ざめして、話したくなくなります。
しつこく聞かれると、まるで事情聴取を受けているような気分になってしまうこともあります。それどころか、食い気味に質問されると、「この人はきっとどこかで誰かにしゃべるのでは……」と思われ、話すことさえ拒絶されることにもなります。
■安心して話せる環境が重要である
⑤人の話に興味がない「無関心タイプ」
この人の話を聞くのは面白くない、つまらないなどと端から聞くことを拒絶して、相手が話しているときにほかのことを思い浮かべていたり、話す順番が来たら何を話そうかと考えていたりしているのが、無関心タイプです。
「今朝、面白いことがあってさ……」
「ふ~ん、そうなんだ」
「朝起きたら、プランターの花が突然咲いていたんだよね」
「そんなことより昨日ね……」
自分の話に関心がないことが伝われば、相手も話していて楽しくありません。やがて口数が少なくなるでしょうし、場合によっては怒り出す人もいるでしょう。あなたも、相手の無関心さに話す気力が失せたということはありませんか? 無関心タイプは、そもそも聞く気がないのですから、聞けないのは当然です。
![東京での会議を待っているダウンタウンのオフィスビルでビジネスをしている男性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/5/1200wm/img_45e8d0e196315d3e988f59e4536aba47741416.jpg)
⑥相手によって聞き方が変わる「カメレオンタイプ」
この人の話だからちゃんと聞く、この人の話は聞きたくないなど、相手によって聞き方が変わるのが、カメレオンタイプです。
いつも小ぎれいにして清潔感のある先輩だから聞く。髪がぼさぼさでだらしない先輩だから聞かない。物腰が柔らかいのが噂になっている上司だから聞く。高圧的な態度が噂になっている上司だから聞かない。
はたして自分にとってためになる話をしてくれるのは、清潔感のある人でしょうか、だらしない人でしょうか、物腰の柔らかい人でしょうか、高圧的な人でしょうか。答えは話してみなければわかりません。見た目や噂、相性などの先入観で話に耳を傾けるかどうか決めるのは、とても損していることになるのです。
■会話の主役は話し手、コントロールしているのは聞き手
⑦愚痴や文句も100%聞いてしまう「お人よしタイプ」
もともと話すのが苦手な人や内向的な人は、相手のどんな話でも黙って聞くことが多くなります。優しい性格の人も、話し好きの人や話が止まらない人を相手にすると、聞く側に回ることがよくあります。
「この前、○○さんから小言を言われて」
「……」
「私は悪くないのに、○○さんは絶対間違っている……」
「……」
お人よしタイプは話を聞ける人のように映りますが、楽しい話ならいいのですが、相手の愚痴や文句などが続く場合、あれこれ頭の中で考えて聞いている自分が苦しくなることがあります。真面目なだけに受け流せなくなるのです。そうなると、聞いているようで、実は聞けていない状況になります。
会話をコントロールしているのは聞き手です。ただし、ここで間違ってはいけないのは、コントロールしているといっても、会話の主役は、あくまでも話し手だということです。
ここを間違えると「聞けない人」になってしまいます。
相手は自分が話したいことを話せて気分がいい。会話全体を支配している感があって満足している。でも、会話をコントロールしているのは、聞き手のこちら。これが、「聞ける人」の技術です。
■打ちやすいところに「会話のボール」を返す
住職の説法や著名人の講演会などとは異なり、会話は一方的に聞くばかりというわけにはいきません。会話のほとんどを相手が話していたとしても、軽い返答やリアクションなど、相手が気持ちよく話し続けるための返しは必要になります。
それがないと、
「聞いてないでしょ、あなた」
「つまらないなあ、おまえは」
と、相手をイライラさせたり、怒りを買うことになったりします。
といっても、難しく考えることはありません。イライラした話をされたら「それはイライラするよね」と返せばいい。自慢話なら「それはすごいね」と返してあげればいい。それだけで、相手は気持ちよく話を続けることができます。
![山根洋士『なぜ、あの人には何でも話してしまうのか 心理カウンセラーのスゴイ「聞く技術」』(アスコム)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/d/1200wm/img_9daf0e6c896acbc5e224eaa5ed968b5b206649.jpg)
上手な聞き手は、テニススクールのコーチのようなものです。
ストロークでも、ボレーでも、スマッシュでも、生徒が打ちやすいところにボールを的確に返してあげる。気持ちよく打てれば、生徒は満足。これと同じように、聞き手は話し手が気持ちよく話せるように返すのです。
会話が打ち明け話や相談ごとになったとしても、基本はテニスコーチ。「解決策を教えてください」「アドバイスをください」と具体的に求められない限り、相手は話を聞いてほしいだけ。「実はね……」「悩んでいることがあって……」と話し始めても、それは「これから話すことを聞いてね」というネタ振りです。
聞き手は、同じように相手が気持ちよく“会話のボール”を打てるように返球してあげるといいのです。そうすると、相手は聞いてくれていることに安心して話を続けることになります。
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心理カウンセラー
心のクセを直す「メンタルノイズ」カウンセラー(心理カウンセラー)。一般社団法人メンタルノイズ心理学協会チェアマン(会長)。大阪府出身。早稲田大学中退。両親の離婚、熱中していたスポーツの挫折、就職の失敗などを経て、情報誌編集者からノンフィクションライターとして独立。心理療法を学び、カウンセラーになる。著書に『「自己肯定感低めの人」のための本』、『なぜ、あの人には何でも話してしまうのか 心理カウンセラーのスゴイ「聞く技術」』(いずれもアスコム)などがある。
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(心理カウンセラー 山根 洋士)
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