「勉強しても10分で飽きてしまう」そんな落ち着きのない子供の集中力をグッと高める"魔法の声かけ"
プレジデントオンライン / 2022年10月17日 15時15分
※本稿は、宮口幸治『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
■ゴロゴロしている親が叱っても説得力がない
いつの世も親は、子どもに対して勉強をする習慣を身につけさせようとします。しかし、私がいつも思うのが、親自身はどうなのか、ということです。
子どもは身近な大人をモデルにしながらいろいろなことを学んでいきます。その一番のモデルは親です。
私の知り合いに、仕事から帰ると必ず寝るまでに本を読むという人がいます。時間はその日によって変わるのですが、必ず毎日読んでいるというのです。すると、そのお子さんもやはり本を読む習慣がついたそうです。
勉強も同じだと思います。例えば、仕事から帰ってきて、いつも机に向かって何か勉強をしているという親の様子を見ていたら「自分も何かしよう」という気持ちになります。しかし、親が家に帰ってきて、お酒を飲んでテレビを見てゴロゴロしているときに、子どもに「勉強しなさい」と言っても説得力がありません。子どもに勉強をしてほしかったら、親も勉強している姿を見せることが一番かと思います。
もし、子どものスマホを見る時間も減らしたいなら、親もスマホを触らないようにしなければいけません。電車に乗って周りを見ると、ほぼみんなスマホを触っています。それなのに子どもだけに「やめよう」と言うのは、無茶な話です。
■すぐに集中が途切れてしまう子にかける言葉
子どもの集中力を養うためには、まず子どもの特性を観察して、どういうときに集中しやすいか、何分ぐらい経てば集中が途切れるかなど、子どもの特性をしっかり見極めることも大切です。
例えば、10分ぐらいすると集中が途切れる場合は、学習開始から8~9分ぐらい経って、そろそろ集中が途切れるというタイミングで「今日はちゃんと聞いてるね」など、一言声をかけるようにすれば、その子はリセットされて、またそこから10分くらい集中できるのです。
このように子どもの行動を観察して、どうしたらその子が集中を保てるかというデータをたくさん集積するようにします。小学校だったら、先生の目が届きやすい一番前の席にするという手がよく使われていますが、もしかしたら、そうではなく後ろの席のほうが集中するという子もいるでしょう。その子に適した学習環境があるはずです。
■「姿勢を正して」と言うだけでは伝わらない
イスに座る姿勢が気になるという保護者もいらっしゃるかと思います。でも子どもに「背筋を伸ばしてしっかり姿勢を正しなさい」と言っても、自分の姿勢は、自分では見えないのでどうしたらよいかわかりません。そのような場合は、例えば、背中をきちんと椅子にくっつける、足はこの位置にするなど、具体的に指示すればいいでしょう。
しかし、体幹が弱い子もいるので、姿勢が悪い原因をひとくくりにすることはできません。きちんと座ろうと思っても、体幹の筋緊張が緩すぎて、フニャッとした姿勢になってしまうという子もいます。
そのような子どもは、体幹を鍛えるようなトレーニングを試してもいいかもしれません。手軽にできるのは、立ったり座ったりするときに10秒かけながらゆっくり立つ、10秒かけながらゆっくり座るという動きです。実際にこれらの動作をやってみると腹筋や背筋、脚の筋肉をかなり使うことがわかります。そうすることで少しずつ体幹が鍛えられていくのです。
■同級生の行動がわが子を変えることもある
子どもの勉強のモチベーションを保つためにはどのようなアプローチが有効なのでしょうか。
ある子どもの話です。小学5年生ぐらいのときまでほとんど勉強しなくて、成績も真ん中ぐらいでした。しかし、小学5年生の終わりぐらいからものすごく勉強するようになり、それから成績がグーッと伸びていきました。
何でも、仲のよかった友だちが有名私立中学を受験すると言い出したのがきっかけになったそうです。「中学受験って何?」と思っていたら、その友だちは一緒に遊ぶのを止め、急に塾に行き出して、長時間の勉強をし始めました。それでその子もスイッチが入ったそうです。
子どもにとっては、親よりも友だちのほうが、影響力が大きいことがあります。周りにそのような刺激になる子がいたら、大きなモチベーションにつながることもあるのです。そうした場合、親としては、コツコツ勉強している子や頑張っている子と付き合ってほしいと思うかもしれません。しかし「あの子と仲よくなりなさい」と親が言ってもそうはいきません。
ちょっと戦略的になるかもしれませんが、保護者同士が仲よくする方法もあります。頑張っているお子さんの保護者もきっと頑張っていらっしゃると思います。積極的に声をかけて仲よくなる、家族づき合いをする、そういうことがあってもよいかもしれません。
■「勉強しなさい」と叱るのは逆効果
片付けや整理整頓が苦手な子どもたちがいます。それにはいろいろな要因がありますが、例えば子どもが自分で片付けようとしているときに「片付けなさい」と大人が余計なことを言って、しなくなる場合もあります。その言葉に従ったら、大人の言うことを聞くことになってしまうからです。
![子供を叱る母親](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/8/1200wm/img_d89ae84448d19112b00ba70664f54b8f135422.jpg)
これは「勉強しなさい」と言うことにも共通しています。「勉強しなさい」と言ったときに、もしそれで勉強をしてしまったら、親が言ったからやったということになってしまいます。そして親のほうは、「勉強しなさい」と言って子どもが勉強したら、「やっぱり言わなきゃダメなんだ」と思ってしまいます。そのため、子どもが勉強していなかったり、片付けしていなかったりしたら、ますます「何々しなさい」と言うことになるのです。
自分がやろうと思っていたのに、親に「やりなさい」を連発されるとやる気がそがれ、逆にやらないと意地を張ることもあります。これでは、逆効果です。大人が子どもにとってNGなことをして、子どもがやる気をなくしていることがいっぱいあると思います。まずは何も言わず大人が手本を見せ、子どもにいつか気づいてもらう。それしかないように思います。
■読書感想文は本嫌いになる大きな原因
本を読むのが嫌いという子がいます。これは多くの場合、大人が本を読ませようとするから、嫌いになってしまうこともあります。
私も子どものころに言われたのが、「この本を読んで、隣の子は泣いたんだって。だから読みなさい」という言いつけの言葉。でもその本を読んでみても、泣けないのです。全く面白くありませんでした。それなのに親は、「どうだった?」と感想を聞いてきます。それで「可哀想だった」と答えると「たったそれだけか?」と叱られ、隣の子は天使で自分はおかしいのだと感じました。
夏休みに本を読んで読書感想文を書くという宿題が出ます。それも本嫌いにさせる大きな原因の一つだと考えます。読むのと書くのとは大違いです。書くのが苦手な子どもにとっては苦痛です。でも大人は、本を読んだら感想を言わせたり、書かせたりしたいのです。
■本を読む入口がマンガだっていい
![宮口幸治『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』(PHP新書)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/9/1200wm/img_2946c16f009c752f7a5a36d974fadef7102099.jpg)
私は、本を読んでも大人は「何も言わない。何も感想を聞かない。何も書かせない」と徹したらよいと思います。そうすれば、本嫌いな子でも夏休みの宿題として安心して本を読めるのではないでしょうか。
子どもを本好きにさせるには、やはり自然に本に親しむところから始めるのがいいでしょう。例えば、一緒に書店へ行って、大人自身が好きな本を探している間に子どもの好きなところに行かせるだけでいいと思います。「本屋にはいろんな本があるな!」という印象を子どもが持てるだけでいいのです。
だから何でもよいのです。それはマンガかもしれませんが、そこからでよいのではないでしょうか。今のマンガは昔に比べて恐ろしいほど充実していて、マンガから学ぶことがいっぱいありますし、我々もそうでしょう。そこから、「本も読んでみよう」とつながっていきます。とにかく本自体に親しみをもってもらうことが第一歩です。
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児童精神科医/立命館大学産業社会学部教授
立命館大学教授、(一社)日本COG-TR学会代表理事。京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「日本COG-TR学会」を主宰。医学博士、臨床心理士。
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(児童精神科医/立命館大学産業社会学部教授 宮口 幸治)
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