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叱って取り上げるだけでは意味がない…「1日2時間以上ゲームをする子供」が抱える根本的な問題

プレジデントオンライン / 2022年10月20日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA

ゲームばかりしている子供をやめさせるにはどうすればいいのか。児童精神科医の宮口幸治さんは「たんに取り上げるだけでは何も解決しない。問題なのはスマホやゲームではなく、何かに依存してしまう子供のメンタルの状態にもある」という――。

※本稿は、宮口幸治『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

■何でもかんでも「すごいね」と褒めても響かない

褒めること自体はとてもよいことだと思います。しかし、どうでもいいようなことを、いつでも何度でも褒められても全く心には響かないでしょう。やはり、褒めるタイミングや回数、褒める内容を考慮せねばなりません。

PHP新書『子どもが心配』に収められた、養老孟司さんとの対談でも述べたことですが、例えば勉強ができなくて困っている子に、「気持ちがやさしいね」とか「走るのが速いね」など、全く違うことで褒めても、問題解決にはつながりません。また、一部の大人がしてしまいがちなことですが、何でもかんでも「すごいね」「上手だね」と褒めても、当然ながら子どもの心には響かないでしょう。

褒めるときには、子どもが自分でも頑張ったと思っていることを褒めることが一つのポイントです。子どもは、褒められたこと自体はもちろん、自分の頑張りをきちんと見てくれていることに嬉しさを感じるはずです。

■悪いことを自覚している時に追い打ちをかけてはいけない

ところで、叱って伸ばすというのはどうでしょうか。私自身は、子どもを叱らないで、考えさせるようにしています。「こんなことしてどう思う?」と子どもに訊ねるのです。何か叱られるようなことをした場合、子ども自身も「悪いことをしてしまった」と自覚していることも多いといえます。子ども自身が大変つらい思いになっているときに、さらに大人から叱られると、失敗した後のダメ出しとなり、もっとつらくなってしまいます。

例えば、子どもが危ないことをしてケガをしてしまったとき、最もつらいのは本人です。本人がつらいところに、そこでさらに叱って追い打ちをかけると、もっと惨めな気持ちになってしまう。そこで子どもが心を閉ざしてしまう可能性もあります。

他の子どもが同じように失敗したケースについて考えさせるのもいいでしょう。例えば、ずっと遅刻を繰り返している子どもには、後日、別の子が遅刻したタイミングなどで「こんなふうに遅刻してしまうこと、どう思う?」といった具合に、考えさせるのです。恥をかかせないように本人を立てて、その子に、遅刻する子がいたらみんなが迷惑するということを、気づかせるような方法です。

自分のミスを直視させたら、恥ずかしくてつらいものです。ですので、本人が遅刻していない、落ちついているときに聞くようにすると「あ、これ自分のことだ」と素直に気づくことができます。「これから気をつけよう」と思うようになるのではないでしょうか。

■「これを選んだら先々どうなるか」を考えさせる

考えることが苦手な子というのは、裏を返せば、何も考えずにパッと思いつきで飛びついてしまうということでしょう。そうならないためには、「これをしたらこうなるから、だから、こうしなければならない」という行動の順序立てを行ない、一歩先、二歩先を読む練習をするということが効果的です。例えば、以下のような課題があります。

「Aさんは学校で、あるグループに入れてほしいと思いました。しかしリーダーのBさんは、グループに入りたければ、店でブレスレットを盗んでこい、と言いました。Aさんは友だちがいなくて、いつも一人ぼっちだったので、どうしてもグループに入りたいと思いました」

これはブレスレットを盗んでも、盗まなくても、メリットとデメリットがあります。とても悩む問題だと思います。机の上でこのような課題に取り組んでもいいですし、日常生活の中でも「もし、これを選んだら、先々どうなるか」ということを考える場を提示してあげてもいいでしょう。

考える材料は、日々の生活の中にたくさんあります。「ある目的地まで急いで行かないといけないときに電車が止まった。どうすればいいか」、「親友とけんかした。どうやって仲直りすればいいか」などなど。そのとき、親が先に答えの案を出してしまって、子どもに従わせるというやり方は、とりあえずは親も子どもも安心はできますが、一方で子どもの考える力を奪ってしまう可能性もありますので要注意です。

■1日2時間以上…子供にゲームをやめさせるには

ゲームやYouTubeを楽しむ時間が毎日2時間以上にのぼるという習慣がついてしまっている子どもも少なくありません。そんな子どもの保護者から、「止めさせるには、どうすればいいですか?」という相談を受けることもあります。しかし、私は、単に止めさせるだけでいいのかと疑問に思うことがあります。

宮口幸治『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』(PHP新書)
宮口幸治『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』(PHP新書)

我々の子どものときには「マンガばっかり読んで!」と言われていましたが、多くの場合、マンガを取り上げても、別のものに移行するだけです。

賛否両論があるかもしれませんが、私自身は、そもそもスマホやゲームが悪いものだとは思っていません。依存しない子は、そもそも自己管理がしっかりできているのです。だから、いくらゲームがあっても依存しません。スマホやゲームをしていても自己管理ができる子は学力が高いという報告もあるくらいです。

一方、ゲームばかりに依存している子は、ゲームを取り上げても別のものに依存する傾向があります。つまり、そもそも自己管理ができるか、できないかで二分化されているように思います。

ゲームをする子
写真=iStock.com/gorodenkoff
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gorodenkoff

■取り上げる前にメンタルに目を向けてみる

ところで、依存しやすい子は、ゲームが原因で依存しているように誤解されがちですが、もともとメンタルに何らかの課題を抱いている子どもが救いとして求めたのが、ゲームやSNSだった、ということもあります。

すなわちそれらはむしろ、子どものメンタルを保つ一つのツールだったりするのです。例えば、引きこもって誰とも接触がないという子が、スマホなどでいろいろな人たちと交流するようになることもあります。傍(はた)から見るとスマホに没頭してしまい、それで引きこもりになったように見えますが、実は逆なこともあるのです。

メンタルの課題が生じた理由については、それぞれのお子さんやご家庭の事情も関係しますので、なかなか明らかにはできませんが、一つだけいえることは、そういう子どもからスマホやゲームをとりあげても、問題は全く解決されないということです。

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宮口 幸治(みやぐち・こうじ)
児童精神科医/立命館大学産業社会学部教授
立命館大学教授、(一社)日本COG-TR学会代表理事。京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「日本COG-TR学会」を主宰。医学博士、臨床心理士。

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(児童精神科医/立命館大学産業社会学部教授 宮口 幸治)

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