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「たくさん売れた」と喜ぶ人に未来はない…これから営業の仕事が「ファンづくり」に変わっていく理由

プレジデントオンライン / 2022年10月14日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Liubomyr Vorona

物が売れない時代に売上を伸ばしている人は何をしているか。営業コンサルタントの和田裕美さんは「多くの人が『売ったら終わり』になっている。釣った魚に餌をやらなかったことで、未来の売上が消滅している」という――。

※本稿は、和田裕美、佐藤尚之『ファンに愛され、売れ続ける秘訣 新しいセールスのカタチ』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■これからの時代は「売れる」より「選ばれる」へ

人口減少、高齢化、若者の購買意欲減少、不景気なのに物価が上がるというスタグフレーションの渦中にいる我々日本人は本当に崖っぷちにいるわけで、早急にセールスの概念を「売る」から「つながり」に変えていく必要があるのだと私は思っています。

言いかえると「売れる」から「選ばれる」に変わっていきます。リアルに「買ってくれる人が減っていく」からです。

もちろん、これからも人はモノを欲っし、サービスを買い続けていきますし、今後伸びる業界に身を置いて圧倒的な勝ちを取るという方法だってあります。

でも、それは本当に一部の限られた人たちとなります。では、「買ってくれる人が減っていく」という厳しい現状で私たちはいったいどうしたらいいのでしょうか?

答えはとてもシンプルです。それこそが「ファンをつくること」なのです。

消費者意識の指標
出典=『ファンに愛され、売れ続ける秘訣 新しいセールスのカタチ』より

人口が減り、消費も減るという未来に向かっての施策は1人のお客さまがあなたの商品やサービスを何度も何度も買ってくださる。

1人のお客さまからどんどん新しいお客さまに広がり続けるというシステムをつくるということです。そのためには商品だけでなく、あなた自身のファンになってもらう必要があります。

■ファンを増やす「3つのステージ」

いきなり「ファンづくり」と言っても今のセールス活動の延長線上で何をしたらいいのか、すぐにピンときてイメージができる人は少ないかもしれません。今までの「セールス活動」はアポイントをとってプレゼンして契約を取るという流れがメインだったから当然です。

そもそも過酷なノルマを抱えた営業にとって購入されたお客さまを丁寧にフォローする時間などなかったと思います。そこで、今までのセールスからどこに比重を置き換えたらいいのかを説明していきますね。

通常、営業活動にはさまざまな流れがあります。

私の営業スタイルは、まず営業の流れを第1ステージ、第2ステージ、第3ステージと分けています。

営業基本動作
出典=『ファンに愛され、売れ続ける秘訣 新しいセールスのカタチ』より
●第1ステージは『探す』

誰に売るのか? セールスの現場では「ペルソナ」(サービスや商品の典型的なユーザー像)を明確にしてその人の行動パターンや購買動機などを想定したりします。そして広告を出したり個人の方ならSNSで発信したりリストにアプローチをするなどして集客活動をする。

とにかく、お客さまに会うまでのすべての活動がここに入ります。言うまでもなく一番手間がかかるのがこの第1ステージです。

声をかける行動量によって大きく左右される営業などは、このステージで大半の時間を費やします。

●第2ステージは『説明する』

対面の場合はこのステージがプレゼンテーションと契約までの流れとなります。

直接話を聞き、相手に質問をしながら、第1ステージでは「仮」として想定していたペルソナやニーズをより具体的にはっきりとした輪郭にしていきます。そうすることで相手の現状やニーズを把握し、より相手が欲しい未来をプレゼンテーションしていきます。

価格以上に価値があることが伝わったところで、クロージングをして背中を押します。このステージでは契約を取った後に「バトンナップ」という、もう1つのプレゼンテーションをして懸念している不安を取り除きます。

●第3ステージは『フォローする』

ご購入後のアフターフォローで人間関係を構築するのが、この第3ステージです。ご契約後に直接お会いしたり、メールやLINEなどで事務的な会話以外のコミュニケーションをとったり、イベントなどを企画してお客さま同士のコミュニティをつくることなど、ご縁を深めるための「フォロー」をします。

通常は、この第3ステージはまた買ってもらう、あるいは他のお客さまを紹介してもらうことが目的だと考えがちですが、それ以上に、お客さまにもっともっと商品のファンになってもらい幸せな気持ちになってもらうことを優先します。

さて、この3つのステージの中で多くの営業が一番時間を取られるのが第1ステージです。その上「動けば動くほど断られる」ということもあり、メンタルがやられてここで脱落してやめていく人が多くいます。

それなのにこの一番厳しい第1ステージをクリアしないと次のステージには行けませんでした。

■自分のためではなく“相手のために”フォローする

もちろん、第1ステージが今後もなくなることはありません。

ただ、多くの営業がこの第1ステージに80%の時間を投下しているのはあまりにも効率が悪いと思いませんか? 逆にほとんど手付かずだった第3ステージにもっと時間をかけてみたらどうなるでしょうか?

もちろん「すぐにここから契約が取れる」という期待はできないかもしれませんが、きちんとフォローして関係性を築いていくことができればお客さまが商品(あるいは営業)の「ファン」になってくださいます。そしてリピート購入が生まれるのです。

それ以上にツイッターなどのSNSで発信してくれたり友だちに紹介してくれたりします。楽しい気持ち、嬉しい気持ちが連鎖していくのです。

つまり、これは新規顧客を追いかける苦しい第1ステージの時間が減っていくことを意味します。この第3ステージは笑顔だらけの楽園ステージなのです。

ただし、注意点があります。企業の利益や自分の営業成績を上げるためだけにこの第3ステージを活用しようと目論むのはダメ。

「え、結局は売上のためにやるのだから当たり前でしょう」と言われそうですが、そういう「思い」は相手に伝わってしまう。決してファンづくりにつながりません。

あなたのためではなく“相手のために”このステージがあるのです。

■買ってもらってからが始まり

Amazonで買い物をすると、その傾向から「あなたのおすすめはこれ」という表示がでますね。また、私が利用しているファッションサイトでは「こんなコーディネートもできます」というお知らせが来ます。今の時代、このような機能的な「フォロー」は積極的に日常の中に入ってきています。

彼は自宅でオンライン購入から配達されたパッケージを受け取った
写真=iStock.com/AsiaVision
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AsiaVision

ECショップで買い物をして送られてくるメルマガもたいていの場合は「これもどうですか?」「今、ポイント2倍です」と次の「売り」が目的で、お得な情報と言えば「セール情報」となってしまう。

私は買い物が好きなので、ついつい釣られて買ってしまうこともありますが、毎回「売り、売り、売り」という案内が続くとメールマガジンも開封するのが嫌になってしまいます。

このように「フォロー」と言っても「売りのフォロー」と、「関係構築のフォロー」に分かれてくるのです。もちろんファンづくりに必要なのは後者となります。

私が初めて株を買ったのは20代の時でした。ある証券会社の営業の方を紹介してもらってよくわからないまま言われた商品を素直に購入したんです。

けれど、その株はどんどん下がり、営業の方は1年後にいなくなり、私は誰に相談していいのか、何を聞いたらいいのかもわからなくなりました。だから、私は損をしたままですが、その契約を解約しました。

自分も勉強不足だったことも否めないのですが、もしあの時きちんとフォローがあれば今も口座を持っていたかもしれないし、営業の人から興味が湧くようなアドバイスを受けていたら、もしかしたら今頃、ビルを3棟くらい所有する資産家になっていたかもしれないのです(その逆もありますが……)。

担当してくれる人によって未来がこんなふうに変わるんだと思うと営業選びってとっても重要です。

■釣った魚には餌をやらない営業はNG

同じように、今まで多くの営業の人に関わってきましたが会社側から営業の人に「フォローをしろ」という指示はほとんどなく営業が契約を取ってきたら顧客リストに載せて、あとは本社がケア。ケアといってもたまにダイレクトメールを送るぐらいしかしていない。

実際にお客さまと向き合った営業は次の新規獲得を目指さないといけないので、1つひとつの契約なんか覚えていないことがほとんどでした。

でも、お客さま心理から考えていくと、一生懸命説明してくれた営業の人が、契約になった瞬間に消えるのって、寂しいですよね? これぞ「釣った魚には餌をやらない営業」です。渇きますよね、心が。

おそらくあらゆる業界で、関係性の構築のフォローをしていれば未来の売上があったはずだと私は思っています。未来の売上が、フォローをしなかったせいで消滅しているのです。

こんな恐ろしいことが起こっているにもかかわらず、「新規をとれー!」と檄を飛ばしている営業部長がいるとしたら「あなたのせいで大事な未来のお客さまを失っていますよ」と耳元で囁いてあげたいです。

それでも「目先の売上が大事なんだ。お前は何を言ってんだ!」と逆ギレされたら「ごめんなさい、絶滅危惧種に認定しますよ」と言ってあげたい(どうか生き残って欲しいという思いやりを込めて)。

こんな慣習を変えていくためには認識を変える必要があります。

■お客さまのスタートに伴走することが大きな喜びへ

自分の視点から、お客さまの視点に変えていくのです。売ったら終わりが営業の視点ならば、買ったところからが始まりが、お客さまの視点です。

和田裕美、佐藤尚之『ファンに愛され、売れ続ける秘訣 新しいセールスのカタチ』(かんき出版)
和田裕美、佐藤尚之『ファンに愛され、売れ続ける秘訣 新しいセールスのカタチ』(かんき出版)

つまり「営業のゴール=お客さまのスタート」なのです。

もちろん、私も営業をやってきたので、営業がアポ取りからプレゼンと契約まで長い道のりがあったこともよくわかるし、たくさんの人に断られて、いくつも山を超えてきたのですから、「やれやれやっと契約になった」という達成感でいっぱいの気持ちになってしまうのもよく理解できます。

ですが、ここからが第3ステージなのです。お客さまのスタートに伴走してあげることがきっと大きな喜びになって返ってきます。

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和田 裕美(わだ・ひろみ)
作家、営業コンサルタント
株式会社HIROWA代表取締役、京都光華女子大学客員教授。京都府生まれ。事務職を経て、外資系教育会社に入社し営業職に。お客様の98%から契約をもらう「ファンづくり」のスタイルを構築し、日本でトップ、世界142カ国中第2位の成績を収める。その後、独立し、“愛されて売れ続ける”人材を育成するコンサルタントとして、1300社以上、延べ34万人以上を送り出し、サポートし続ける。著書にベストセラー『成約率98%の秘訣』『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)など。公式サイト http://wadahiromi.com/

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佐藤 尚之(さとう・なおゆき)
クリエイティブ・ディレクター
株式会社ファンベースカンパニー創業者、取締役会長。大阪芸術大学客員教授。助けあいジャパン代表。花火師。1961年東京都生まれ。電通入社後、コピーライター、CM プランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し、ツナグ設立。19年、ファンベースカンパニー設立。著書に『明日の広告』『明日のコミュニケーション』(アスキー新書)ほか多数。

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(作家、営業コンサルタント 和田 裕美、クリエイティブ・ディレクター 佐藤 尚之)

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