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お礼ぐらいしか思い浮かばない…仕事のできない営業マンが「お客と話すことがない」と悩んでしまうワケ

プレジデントオンライン / 2022年10月15日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Image Source

セールスの形は時代とともに変わっていく。営業コンサルタントの和田裕美さんは「これからのあらゆるセールスに必要なものは『ファンづくり」だ」という。一体どうすればファンをつくれるのだろうか。実践的なセールストークの具体例を解説する――。

※本稿は、和田裕美、佐藤尚之『ファンに愛され、売れ続ける秘訣 新しいセールスのカタチ』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■相手がイメージしやすい説明をすることはマナー

本稿では、「ファンづくり」をベースとしたサンプルトークである「ムービートーク」をいくつか紹介したいと思います。

ちなみに「ムービートーク」とは私の造語です。相手の脳内に映像のようなイメージが湧き起こるように、より具体的に立体的にその物事を伝えることを意味します。

たとえば、落語を聞いていると、何人もの人が話す様子やお茶碗やお箸がそこにあるようにイメージできます。おいしそうに蕎麦をすするシーンを見れば思わず唾液が出てきます。

舞台装置も演出も衣装もなく、座布団の上に着物姿の落語家が1人座っていて話すだけなのに鮮明なイメージが広がっていくのです。これこそが「ムービートーク」なのです。

人は自分でそれを想像できて初めてわくわくして動きたくなるのです。また、相手がイメージしやすい説明をすることはマナーだと私は思っています。

■ファンづくりの意識が持てないケース

[相談&トーク説明]

カーディーラーで働く男性からの相談。

今までファンづくりをあまり意識したことがありませんでした。ご購入を決断していただくとホッとして、すべて終わった気持ちになってしまうんです。

お客さまにとって買った瞬間がスタートということですが、納期のことや保険などの細かな内容を説明するだけで、今は終わっています。お客さまがもっと幸せになるためには、いったいどんな言葉をかけたらいいのか教えてください。

×やってしまいがちなトーク[失敗編]

【営業】「本日はお買い上げ誠にありがとうございました」

【お客さま】「はい、ありがとうございます」

【営業】「納車は2週間後になります。保険などについては先ほどご説明した通りです。後日資料が届きますのでご確認くださいませ」

【お客さま】「はい、わかりました」

【営業】「納車が楽しみですね。他に何かご質問ございますか?」

【お客さま】「あ、はい、たぶん大丈夫です」

【営業】「もし何か、わからないことがございましたら、いつでもご連絡ください」

【お客さま】「はい、ありがとうございます」

[解説]

まったく問題のない対応ですが、ここにプラスして「もっとわくわく」できる未来をイメージしてもらいたいです。ちょっとムービートークをつくってみますね。

■未来をイメージさせワクワクを引き出す

○ファンになってもらってYESを引き出すムービートーク

[トーク実例:和田ならこう話します]

【和田】「納車は2週間後になります。○○さまがいらっしゃる日を、私、お待ち申し上げておりますね。その日には今日決めてもらったオプション……、たとえばミラーの色とか、先ほど決めてもらったシートのこういうのが全部できてるんですよ。

さっきはモニターで見てもらったんですけど、実際に完成する日が楽しみですよね。私もどんなふうに仕上がるのか、できれば納車の日、ちょっとだけ助手席に乗せてもらっていいですか」

【お客さま】「えっ……、ああ、もちろんいいですけど」

【和田】「いや、まあそれは半分冗談です。今のは脇に置いておきまして、○○さま、納車の日の後、一番最初にどこに乗りに行きます?」

【お客さま】「え? 特には……」

【和田】「○○さま、ワンちゃんを飼っていらっしゃるとおっしゃっていましたよね。私も犬を飼っていますが、①ワンちゃんと一緒にドライブなんて考えておられます?」

【お客さま】「ええ。うちの子をちょっと遠くの公園とか海とかに連れて行ってあげたいんですよ」

【和田】「そうですよね! でしたら犬用のベッドを後部座席に置くといいと思います。最初は怖がるワンちゃんもいますけど、ご主人さまと広い公園や自然たっぷりの場所に一緒に出かけられたら喜びますね」

【お客さま】「そうですよね」

【和田】「犬好きのお客さまがいるんですが、○○公園なんかはすごくいいって言ってましたね。ドッグランもあるみたいですよ。あ、私、ワンちゃん連れで入れるカフェや公園を以前に調べたことがあるので、そのマップ、つけておきますね」

市のコンセプトの開発
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

~前の例はワンちゃんですが、小さなお子さまがいるお客さまでしたら~

【和田】「そうそう、他のお客さまでこの車を買われた方で、お子さまが1歳、ちょうど○○さまのお子さまと同じぐらいですよね。その方が写真を送ってくださったのですが、こんなふうに(写真を見せながら)乗せてたんですよ。かわいくないですか? このチャイルドシート」

【お客さま】「あ、ほんとだ。いいですね。うち、これからチャイルドシート買うんですよ」

【和田】「そうですか。でしたらそのお客さまに聞いて、パンフレットを取り寄せるぐらいならできますので、もし興味があったら言ってくださいね。私はこのチャイルドシートの会社の者ではないので割引などはできませんが」

【お客さま】「アハハ。ありがとうございます」

[解説]

それぞれの未来をイメージしてみることでさらなる「わくわく」が生まれます。

①ワンちゃんと一緒にドライブなんて考えておられます?

車を購入されたけれど、そこにある付加価値をさらに感じてもらえると、お客さまの幸せ度が上がります。

■お礼を言うことしかできないケース

[相談&トーク説明]

リフォーム専門店に勤務している男性。

私はアパート・マンションなど一棟お持ちのオーナーさまのリフォームを請け負う営業をしておりますが、今までは工事が終わって完成した後は請求の話とお礼を言うくらいしかしていませんでした。

今まで何の疑問もなくやってきましたが、もっと喜んでもらえることができたのかと思うと悔やまれます。ただ、正直、ファンづくりと聞いてもピンとこなくて、これ以外に何を話していいのかまったく思いつきません。

×やってしまいがちなトーク[失敗編]

【営業】「このたびはおめでとうございます。また弊社にマンションのリフォームをご注文いただきありがとうございました。ご覧になっていかがでしょうか?」

【お客さま】「はい、きれいになりましたね」

【営業】「そう言ってくださると、私もとても嬉しいです」

【お客さま】「はい」

【営業】「では、残金の話ですが、ご請求書がこちらになります。今後何かわからないことがあれば……」

【お客さま】「はい、ありがとうございます」

[解説]

今回はマンション一棟のリフォーム案件です。失敗例のトークは簡略化しているので、通常はもう少し雑談も入るかと思いますが、この会話は、ごく普通の丁寧な応対かと思います。

しかし、一緒につくってきたわけですから、何かもっと自分ごとのような感動を持って接して欲しいです。共感がちょっと足りないのです。

■未来の喜びにもフォーカスする

○ファンになってもらってYESを引き出すムービートーク

[トーク実例:和田ならこう話します]

【和田】「完成おめでとうございます。いや、本当にきれいになりましたね。私も感動でちょっと泣きそうです。これからも賃貸経営できますね。住まわれる方もとっても幸せですね。外観をご覧になってどうでしょうか?」

【お客さま】「いい感じに仕上がってると思います」

【和田】「よかった! ありがとうございます。ぐるっと一周回ってご覧になりましたか?」

【お客さま】「一周? あ、いえ、まだです」

【和田】「①私、さっき一周回ってみたんですけど、いろいろな角度から見ると本当にわくわくしますよね。道の向こうから見るとすごく目立ってて。自社でリフォームしておいてこんなことを言うのもナンですけど、本当に仕上がりがいいですね」

【お客さま】「ええ、そうですね。壁もきれいに塗っていただいて」

【和田】「はい! 入居者の方も『きれいな家に帰れるんだ』と思ってくださるので、嬉しいですよね」

プレゼント交換を楽しむ日本の女の子
写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi

【お客さま】「ああ、確かに。そうなるといいですね」

【和田】「ゴミ捨て場も新しくなったんで、よりきれいに使っていただけると思います。入居者の方の生活もますます快適になります。ぜひ、入居者の方にも感想聞いてみたりしてみてくださいね」

【お客さま】「はい、聞いてみます」

【和田】「今回ちょっとご予算もかかってしまいましたが、外観がよくなると入居者の方の満足度がすごく上がりますので、長く住む人が増えると思います。弊社がリフォームさせていただいたマンションやアパートではよくそういったケースが見られます」

【お客さま】「そうなんですか?」

【和田】「はい。満足度が上がると、家賃のアップも考えられますので」

【お客さま】「確かにそうですね」

【和田】「はい。他にももっといいご提案ができますので、何かあったら小さなことでも構わないのでご相談ください。あ、今回気になったのが、鍵なんですよ」

【お客さま】「マンションのドアの鍵ですか?」

【和田】「はい。そろそろ老朽化してくるところかもしれないので、今すぐと言うことではありませんが、数年ごとに見ておいたほうがいいかと思います。いっぺんにいろいろな問題が発生すると大変ですからね」

【お客さま】「そうですね。気づきませんでした」

【和田】「鍵は1つだけ変えるより一気に変えたほうが、単価が安いですから。変えるなら全部の鍵をいっぺんに新しくするといいと思います」

【お客さま】「わかりました」

【和田】「今回は外壁と共有部のみでしたが、何かあったらすぐ駆けつけるので、よろしくお願いします。長く長く大事に使っていただいて。ずっと家賃収入があると安心ですからね」

【お客さま】「こちらこそよろしくお願いします」

【和田】「②あ、最後にいいですか。自信作のリフォームができたんで、マンションの前で一緒に写真を撮らせていただいてもいいですか?」

【お客さま】「えっ?」

【和田】「はい、私にとってもすごく嬉しい日なんです。記念にしたいんです。ありがとうございます」

[解説]

出来上がったリフォーム物件に対して、営業サイドが自分ごとのように感動している会話です。

①私、さっき一周回ってみたんですけど、いろいろな角度から見ると本当にわくわくしますよね。道の向こうから見るとすごく目立ってて。自社でリフォームしておいてこんなことを言うのもナンですけど、本当に仕上がりがいいですね

和田裕美、佐藤尚之『ファンに愛され、売れ続ける秘訣 新しいセールスのカタチ』(かんき出版)
和田裕美、佐藤尚之『ファンに愛され、売れ続ける秘訣 新しいセールスのカタチ』(かんき出版)

②あ、最後にいいですか。自信作のリフォームができたので、マンションの前で一緒に写真を撮らせていただいてもいいですか?

担当営業の「ああ、きれいにできてよかった~」という安堵と感動の心の声が漏れ出てきそうなくらいに嬉しそうな態度です。それを見れば発注したお客さまも同じような感情になり共感が生まれます。

また、建物がきれいになったことで派生する未来の喜びにもフォーカスして、よりお客さまがハッピーな気持ちになるような言葉を選んでいます。

いかがでしょう。お客様のワクワクを生み出し、ファンになっていただける「ムービートーク」、ご参考になれば幸いです。

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和田 裕美(わだ・ひろみ)
作家、営業コンサルタント
株式会社HIROWA代表取締役、京都光華女子大学客員教授。京都府生まれ。事務職を経て、外資系教育会社に入社し営業職に。お客様の98%から契約をもらう「ファンづくり」のスタイルを構築し、日本でトップ、世界142カ国中第2位の成績を収める。その後、独立し、“愛されて売れ続ける”人材を育成するコンサルタントとして、1300社以上、延べ34万人以上を送り出し、サポートし続ける。著書にベストセラー『成約率98%の秘訣』『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)など。公式サイト http://wadahiromi.com/

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佐藤 尚之(さとう・なおゆき)
クリエイティブ・ディレクター
株式会社ファンベースカンパニー創業者、取締役会長。大阪芸術大学客員教授。助けあいジャパン代表。花火師。1961年東京都生まれ。電通入社後、コピーライター、CM プランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し、ツナグ設立。19年、ファンベースカンパニー設立。著書に『明日の広告』『明日のコミュニケーション』(アスキー新書)ほか多数。

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(作家、営業コンサルタント 和田 裕美、クリエイティブ・ディレクター 佐藤 尚之)

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