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読解問題を解かせていると頭が悪くなる…「真に賢い子」の親が毎日ていねいにやっていること

プレジデントオンライン / 2022年10月23日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

子供の国語力を伸ばすには、どうすればいいのか。塾講師の久松由理さんは「とにかく読解問題を解かせようとする親がいるが、やめたほうがいい。読解問題は現在の国語力を測るためのもので、国語力を伸ばすためのものではない」という――。

※本稿は、久松由理『国語の成績は観察力で必ず伸びる』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■受験期に読書を辞めた子は成績が下がる

9歳までに、学年相応の本がしっかり読みこなせる読解力を身につけたお子さんは、10歳以降、社会で活躍するための真の賢さを培う「濫読期(らんどくき)」に突入します。

この時期には、SFから、伝記、推理小説、ノンフィクションと、あらゆるジャンルの良書を手当たり次第に与えてください。良書選びに迷ったら、昔から名作といわれている評価の定まった本を与えておけば間違いなしです。

濫読によって膨大な知識を獲得した子どもは、やがて、その知識を組み合わせ、人が思いもつかない新たなアイデアを生み出すことができるようになります。

難関校に合格する子どもたちは、小5、小6のうちに『古事記』や『ギリシア神話』、『聖書物語』など、文学の根底に流れる思想を理解するのに欠かせない、読み応えのある良書をしっかり読んでいることが多いですよ。

私の教室では、「一日30分の読書」が唯一の宿題で、年間100冊の読書を目標にしています。

ところが、本格的受験期に入り、暗記詰めこみ勉強に追われて読書をやめた、あるいは読書量を極端に減らした子は、みな一様に思考力が低下し、国語の成績が目に見えて落ちてきます。

■読書は脳を活性化する

「受験期に、読書なんてしている余裕はありませんよ」というのがその子たちの言い分。決まり文句です。

ですが、成績を上げたくて暗記詰めこみ勉強に必死になればなるほど、主要科目である国語の成績はどんどん下がり、思考力も落ちるので、他教科でもミスが目立って増えてきます。目が生気を失い「どよーん」としてくるのも、こうした子たちの特徴です。

これは、だいたい小6の夏休み以降に、長時間の受験勉強を強(し)いられた子がおちいる「落とし穴」で、ひどいケースになると、燃え尽きて中学入学以降に学習意欲を失ってしまう子や、表情を失い廃人のようになる子もいます。

こういう子を、元通りの元気な冴えた子に戻す特効薬が、「読書」と「自然遊び」なのです。

私は脳科学の専門家ではありませんが、読書しているときの脳が、どれほどすごい働きをしているかは教えられなくてもわかります。

目で見た文字情報を、瞬時に映像に変換するだけでもすごいですが、映像に変換するためには、本に書かれている出来事とよく似た「自分の過去の体験」を、膨大な記憶の海の中から、これまた瞬時に引っ張り出さなくてはなりません。

なぜって、私たちは一度も見聞きしたことのないものを脳内で映像化することができないからです。

つまり、私たちは読書をしている間中、自分の記憶を総動員して、絶えず文字情報を映像化し、その映像に音やにおいや味をつけ、手触りを想起して、本を楽しんでいるのです。さらに、その映像を頭の中で映画のように動かしていくことで、書かれていない情報、「行間」までをも洞察力を使って読み解いているのですから、すごいことだと思いませんか。

お子さんの脳に、これだけ高次の働きを一度にさせてくれるものは、「読書」以外にそうそうありません。忙しい受験期だから「読まない」のではなく、暗記詰めこみ勉強に偏りがちな受験期だからこそ、「本」というサプリを脳に与えてあげたほうが、効率的に頭の働きを良くすることができるのです。

また、ちょっと勉強させすぎたなと感じたときは、自然の中へ連れ出して、思いっきり遊ばせてみてください。疲れていた脳と心が活性化し、勉強への意欲を復活させるのに役立ちますよ。

日差しが差し込む部屋で読書をする少女
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■「ガリ勉」は創造的・批判的思考力を委縮させる

では、どうして「ガリ勉」すると国語力が落ちるのか? ということも説明しておきましょう。

そもそも進学塾の受験勉強というのは、「いつまでに、どの単元まで」と、がっちりカリキュラムが決まっていて、いちいち子どもに考えさせていたら予定通りに授業が進みません。

そこで、「じっくり深く思考する」ことをいったん停止させて、ひたすら知識とスキルを覚えさせ、効率的に活用させる「暗記訓練」「情報処理訓練」を子どもたちに課すわけです。

ところが、そのような訓練を過度に繰り返しますと、その間ほとんど使われない、子どもの創造的・批判的思考力はものすごい勢いで萎縮していきます。そうなると、要約がまったくできなくなったり、急に作文が書けなくなったりと、国語科では目に見えていろいろな変化が起きてきます。

子どもの脳はまだ成熟しきっていませんから、よく使う反射的な思考回路(データ処理回路)ばかりを、無意識のうちに強化してしまうのだろうと思います。

■暗記力・情報処理力ではAIに勝てない

正確さ・速さを求められる計算演習や、体験のともなわない机上の暗記勉強には、「なぜ?」「どうして?」と疑問をさし挟み、想像力をめぐらせる余地がありません。

そのため、計算能力や知識は身についても、人生で成功するための好奇心や批判的なものの見方、新しいものを生み出すクリエイティブな能力が育たないのです。

世界がIT化する前なら、暗記と情報処理能力に長けたロボット人間は重宝されたでしょう。でも、今は21世紀。誰もがスマホやタブレット端末を持ち歩く時代です。

子どもの頭をどんなにAI化しても、暗記・情報処理能力でAIに勝つことはできません。これからの時代は、IT機器やロボットに真似のできない、人間ならではの能力に磨きをかけた子のほうが豊かな人生を歩めるのです。

21世紀、お子さんの将来を大きく左右する力とは、暗記詰めこみ勉強では手に入らない、批判的・創造的・哲学的な思考力、読解力、コミュニケーション力など、ロボットが苦手とする能力に他なりません。

黒板の前でロボットと子供の指がE.T.みたいに指先触れ合っている
写真=iStock.com/selimaksan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/selimaksan

■「読解問題」を解いても国語力は上がらない

最後にもう一つ、国語の苦手な子がやっていて、得意な子たちがほとんどやっていないことを紹介しておきましょう。

国語の苦手な子どもたちが、読書もしないで必死に取り組んでいるのは、「読解問題を解く」という勉強法。中には、模試などで一度解いた長文読解問題を解き直すという「時間の無駄遣い」をしている子も少なくありません。

まず、ご理解いただきたいのは、読解問題をただ普通に解いて答え合わせをしても、国語の成績が上がることはないということ。

本の断片とはいえ良い文章に触れるわけですから、本人も読解問題を解いていると充実感を覚えますし、親御さんも勉強させている気分になる、というのはわからないでもありません。

ですが読解問題は、そもそも国語力を伸ばすためのものではなく、お子さんの国語力を調べて、点数や順位をつけるための「国語力チェックシート」なのです。

ですから、何題解いても国語力を伸ばす効果はあまり期待できません。

視力が低下したからと、毎日眼科に通って視力検査をしても視力が回復しないのと同じです。視力を回復させるには、視力回復トレーニングをしなくてはいけないように、国語も成績を上げたいなら「検査」ではなく、「国語脳トレーニング」をする必要があるのです。

■観察力、語彙力、読解力、記述力を身につけるのが先

考えてもみてください。

お子さんをテニスの試合に出そうと思うなら、まずラケットの握り方、振り方を教え、テニスのルールを教え、筋力トレーニングをするでしょう。

ところが多くの親御さんは、国語の試合(模試や受験)にお子さんを送りこむのに、文章の読み方、書き方を教えず、ルール(文法や論理)も覚えさせず、国語脳トレーニングもしないまま「勝ってこい」と背中を押しているのです。

筋トレなし、ルールも知らずに試合に出続けて勝てるはずがありません。

学ばせる順番が逆なのです。そのため、お子さんは試合のたびにボロボロになり、劣等感を植えつけられて、どんどん国語嫌いになっていきます。

読解問題の点数や順位を人と競わせる前に、観察力を鍛え、語彙(ごい)力を豊かにし、読書と作文で正しい読解力と記述力を身につけてさせてあげなければいけません。

■本当の学力を育てよう

私の教室では、まず、狂ってしまった学びの順番を正すため、どのような年齢で入室されても、そのお子さんの国語力に見合った「観察力トレーニング」「語彙力トレーニング」などから国語脳開発を始めます。

中には、その学びの順序をご理解いただけず、「もっと難しいことをさせたい」「難関校を受験するのだから、過去問や読解問題をもっと解かせてほしい」と退室していかれる方もいます。

ですが、いざ模試や入試などになると、進学塾で難しい過去問や読解問題をたくさん解いただけの子どもたちより、当教室でトレーニングを受けた子どもたちのほうが、圧倒的に国語の成績が伸び、入試合格率も高いのです。

それは、ガリ勉タイプの子が持ち合わせない、優れた観察力、思考力、創造力、表現力などを持っているからに他なりません。

読解問題を解かせる暇があるなら、トランプやカルタ、百人一首、ボードゲームなどで脳を活性化させたり、海や山へお子さんを連れ出して「観察力」を養ったりするほうがよほど有意義です。

久松由理『国語の成績は観察力で必ず伸びる』(かんき出版)
久松由理『国語の成績は観察力で必ず伸びる』(かんき出版)

この和歌にはどんな意味があるのだろう?
ゲームに勝つには、どう攻めればいいのかな?
海の水はなぜ満ち引きするのかしら?

お子さんの知的好奇心をくすぐり、なぜ? と疑問に思うことを本で調べさせるなどして、文章にまとめさせてみてください。

そうやって毎日、お子さんと知的な遊びや会話を楽しみましょう。

一見、受験学力とは関係なさそうに見えること。

それこそが、「真に賢い子ども」を育てている親御さんたちが、日頃ていねいにやられていることなのです。

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久松 由理(ひさまつ・ゆり)
イデア国語教室主宰
立教大学法学部卒業。テレビ高知報道記者、ディレクターを経て、制作会社に勤務。放送作家として多数のプレゼンテーション、番組制作を手がける。2010年、若者の国語力が年々低下していくことに危機感を抱き、高知県高知市に「読書と作文」を個人指導する教室を開く。2021年度入試では、国立大学医学部総合型選抜で合格率100%。慶應義塾大学AO入試の合格率も開室以来100%と驚異の合格率を誇る。2022年春、東京・三田に新教室開設。

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(イデア国語教室主宰 久松 由理)

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