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何もしなければ10倍になっていたのに…投資信託を買う人がどうしてもやってしまう"最悪の行動"

プレジデントオンライン / 2022年10月26日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JGalione

今年に入って、株式市場は不安定な状況が続いている。個人投資家は何に気を付ければいいのか。経済コラムニストの大江英樹さんは「何もする必要はありません。不安に駆られて最も安いタイミングで売ってしまうということにならないように、ただじっとしていればいいのです」という――。

■年初から続く波乱の相場

今年に入って株式市場は波乱が続いています。この10年ほどの間は、途中小幅な調整はありましたが、一昨年のコロナショックの時にごく短期間には大きく下がったものの、その後はそれまで以上に回復し、高値を付けたという展開は日米共に同様です。

ところが今年に入ってからは、市場全体に暗雲が垂れ込めるように、不安定な動きが続いています。例えば日本の場合、日経平均でみると年初から3月初めまでの2カ月間で約15%下がりました。その後8月中頃までには約18%上昇したので、年初とほぼ同じ水準になっています。ところがその後1カ月余りで再び下落し、以後は一進一退の動きとなっています。結果として、年初からは11.5%の下落というのが9月末時点の状況でした。

アメリカの場合はさらに振れ幅が大きく、こちらも年初からは何度か上げ下げを繰り返しながら、年初からの比較では21.5%の下落ですから、日本の倍近い下げとなっています。したがって今年のように市場が上がり下がりを繰り返す時は、株式投資をしている人の多くが不安な心理になることは確かです。では、こういう状況の時にはどう対応すれば良いのでしょうか。

■何もしなければ10倍になっていたのに

結論から言えば、“何もしなくていい”ということです。

こう言ってしまうとあまりにもあっさりし過ぎているように思われるかもしれませんが、これはまちがいなく事実です。投資家が失敗する最大の理由は売買を繰り返すことにあります。アメリカの代表的な株価指数であるS&P500について、1983年~2013年までの30年間で見るとその間の上昇率は年率で11%余りになっています。ところが同じ期間、S&P500に連動する投資信託を持っていた人の利回り平均は3.69%にしかなっていないというデータがあります。

ひとくちに30年間と言いますが、その間には株価の上り下がりは数え切れないぐらいありました。例えば大きな下落でいうと、1987年10月19日のブラックマンデーではNYダウ平均株価が一日で22.6%も下落しました。でも何もせずにそのまま持っていれば、その30年間でほぼ10倍になっているのです。

さらに言えば、この2年間ほどの間でも同じような現象は起きています。投資信託の売買によって投資家が実際に得た平均的なリターンを「インベスターリターン」と言いますが、ある投資信託会社が販売しているS&P500に連動する投資信託の場合、ファンドのトータルリターン(ファンドの値上がり+分配金を合計した収益率)は23.61%であるにもかかわらず、インベスターリターンは12.94%と半分近い数字にしかなっていないのです。

■不安に駆られて最も安いタイミングで売ってしまう人々

では、一体どうしてこんなことになるのかというと、その原因は投資家の行動にあります。相場が下落したことで不安な心理に陥り、売却してしまう人が出てくる。そのうち、戻ると安心してまた再び買い付けるという行動を繰り返してしまうから、こういうことになるのです。つまり、余計なことをするから儲からないということなのです。何もせずに放っておいた場合の方がずっと高い利益を得ることができています。

実はこれ、今年の3月にロシアによるウクライナ侵攻があって、市場が下落した時も同じことを私はこのコラムに書きました(ウクライナ・ショックで投資家が「絶対やってはいけないこと」と「狙い目の銘柄」)。

結果、今年の日経平均株価の安値は3月の始めですから、私の記事にもかかわらず不安に駆られて売ってしまった人は年初から今までで最も安いタイミングで売ってしまったことになります。別にこれは私の予想が当たったわけでもなんでもなく、往々にしてそういうことは起こりがちだということなのです。

右手にスマホを持ちながら、床に座り、頭をかきむしる女性
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■何もせずずっと持ち続けることが大切

何もしない方が良いというのは、別な視点から見てもとても大切です。米国の著名な投資家であるチャールズ・エリスという人がいますが、彼の著書『敗者のゲーム』にはとても興味深いことが書いてあります。S&P500指数のデータを使って1982年から2000年の18年間を調べてみると、その間における最も上がった上位30日を逃すだけでリターンは年収益率11.5%から5.5%へと半減してしまうというのです。

逆に言えば、その30日間だけ投資をしていれば、ごく短期間に莫大な利益を得ることができたことになりますが、それがいつかなどということは事前には絶対にわかりません。多くの人は相場の予想をして売ったり買ったりするわけですが、そういうことをやっていると、往々にしてその上位30日間を逃してしまうことになりかねません。したがって、わからないことを予想して売ったり買ったりするのではなく、何もせずにじっと持ち続けることがとても大切なのです。

■円安を心配する必要はない

今回、相場が低迷している理由については世界的な物価上昇傾向、それに対して米FRBの金利引き締め政策、日本の場合は円安による経済への不安ということが一般的には言われていますが、正直言って、こういうのは全て後講釈でしかありません。上がったらそれなりの理由をつけるし、下がった時も同様です。

例えば物価上昇の原因として、ウクライナ紛争を例に挙げる人が多いのですが、本当のところ、2020年のコロナ禍による各国政府の資金支援で世の中にお金がダブついたのが最大の要因でしょう。したがって、いわばコロナバブルを安定的に軟着陸させるために米FRBは金利の引き上げをおこなっているわけで、インフレというのはそのきっかけに過ぎません。

見出しに踊る「円安」の文字
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

日本の場合も円安が経済に悪影響を与えると言いますが、10年程前に1ドル=80円を割り込む円高になった時は「円高で日本は破滅する」みたいなことを言う評論家の人もいましたが、実はそこから株式市場は長期に上昇を始めているのです。

為替相場というのは単なる両替のレートに過ぎません。為替レートは強い方が、その国の経済力が強いということを表すことになるので、長期的には円高の方がトータルで見ると好ましいと私は考えていますが、だからといって今の円安ですぐに日本経済が大変なことになるとは言えません。実際に輸出産業は非常に大きな利益を上げていますし、先日もユニクロを展開するファースト・リテイリングが史上最高の利益を上げたというニュースが出ていました。

■短期的な株価の変動はノイズでしかない

多くのメディアや評論家は上り始めた時や下がり始めた時は必ずそれに同調し、あおるような記事を書く傾向があります。今回も不安をあおるような記事はいくらでも見つけることができます。

でもこのように短期的な株価の変動というのは長い目でみると単なるノイズにしか過ぎませんし、その短いノイズを的確に当てることは不可能です。それに当てる必要もありません。ただじっとしていればいいだけなのですから。

もちろん下がった時に躊躇せずに買うことのできる資力と胆力を持った人はおおいにやればいいと思いますが、多くの人にとっては当たり外れに翻弄されるよりも何もせずじっとしていた方が良い結果が出る可能性は高いと思います。

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大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。

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(経済コラムニスト 大江 英樹)

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