入試で得点に直結する熟語ほど下位にある…「試験に出る順ランキング」を信用してはいけないワケ
プレジデントオンライン / 2022年10月27日 13時15分
※本稿は、関正生『改訂第2版 大学入試 世界一わかりやすい英語の勉強法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■英単語は「0.1秒で思い出せない」ならマスターできていない
単語テストでは「えっと……」と考えて意味が書ければ正解ですが、受験ではそうはいきません。本当の意味で「単語をマスターした」という基準は「0.1秒で思い出せるかどうか」になります。つまり、0.1秒で思い出せないと、それは「マスターした」ことにはなりません。時間が経てばすぐに忘れてしまいます。
「覚えた」と「定着した」はまったく違います。「定着」して初めて単語をマスターしたことになります。
(1)知らない「見てもサッパリ思い出せない」
(2)覚えてない「スペルに見覚えはある」
(3)覚えた(けどすぐ忘れる)「数秒で意味を思い出せる」
(4)定着「0.1秒で意味を思い出せる!」
(1)から(3)に行くまでが一番時間がかかるので、多くの受験生が(3)の状態(数秒で意味を思い出せる)で「覚えた」と思ってここでやめてしまいます。ここでやめるからすぐに忘れることになります。それで「何回やってもすぐ忘れちゃう。やっぱ単語は苦手……」と思ってしまうわけです。
(3)の状態まで行けば、実はあと一押しです。(4)の状態(0.1秒で思い出せる状態)まで繰り返せば、英単語は脳に染み込みます。必ずここまでやりこむ必要があります。しかも「0.1秒で思い出せる」その瞬発力は、後々「長文を速く読める」力にもつながります。1つの単語の意味を思い出すのに数秒かかっていたら、長い英文を速く読むのは不可能です。
■単語暗記のコツは「全部を暗記しない」
単語は「意味が1つわかる」という目標1つに絞る必要があります。
「たくさんの意味を覚えたほうがいい」「スペルも書けたほうがいい」「派生語も覚えたほうがいい」のは確かです。ただここまでやろうとするとキリがありません。
まずは「意味だけわかる」単語を増やすべきです。受験生が一番悩むのが「意味がわからない」単語です。「意外な意味」「スペルに注意する」単語は限られているので、そういう問題にぶつかったときに覚えるほうが、圧倒的に効率がいいです。
最初は、1つの英単語につき1つだけ意味を覚えるべきです。
困ったことに、ここ最近単語帳が「辞書化」してしまっています。
本来、単語帳というのは、「入試に出る単語」を「出る意味に絞って」載せたハンドブックでした。昔の単語帳はスッキリと情報が絞り込まれていました。
ところが、最近の単語帳は細かい情報を詰め込みすぎです。教師の立場からはありがたいですが、生徒からしたら、たまったものではありません。たくさんの意味・スペル・派生語・類義語・長い例文……。欲張って1つの単語のいろんな情報を覚えようとすると、結局頭に何も残らなくなります。
■「試験に出る順ランキング」を気にしてはいけない
市販の単語帳では「出る順ランキング」がよく使われていますね。でもこのランキングは気にしないほうがいいです。ランキングは、全国の大学の平均値になっています。上は東大から、下は偏差値40の大学までの平均値です。
この記事を読んでいる方のお子さんには、難関大学を目指す方もいるかと思います。そういう大学を狙うなら、ランキングにとらわれてはダメです。言い換えれば「頻度1位も、頻度1500位も同じようにマスターする必要がある」のです。
■入試で得点に直結する熟語ほどランキングの下位にある
なぜなら、ランキングで1500番目の単語は、確かに全国の平均値では1500番目かもしれませんが、難関大学ではよく狙われるということがあるからです。たとえばattic「屋根裏部屋」という単語は「物語」でよく使われます。ただ物語自体が入試にあまり出ないため、ランキングでは当然、下になります。
さらに、熟語帳の場合はもっと深刻です。なぜなら、重要な熟語ほど実際の試験問題では空欄になって消えてしまい、数えられないからです。(誤解を恐れずに言うなら)「入試で得点に直結する熟語ほど後ろにある」とも言えます。
また、ランキングにとらわれてしまうと、最初の重要語は真剣に覚えるのですが、後半の難しい単語だと、常に心の中に「ホントに出るのかなぁ?」という疑念がつきまとって、無意識のうちに真剣さが下がってしまうこともあります。
■「ウロ覚えの反復」で1カ月に1000単語覚える
「1カ月で単語1000個を覚える」と言うと「ムリ」と言われそうですが、十分可能です。
まず、今までの常識を捨ててください。やり方を劇的に変えるからこそ「劇的な効果」が生まれるわけです。
![教室で勉強している男子学生](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/4/1200wm/img_042ef385efe957dade0193a5a763c255399923.jpg)
単語の覚え方は、「1日200個×5日」で1セットです。
200個の英単語を1日2時間使って(1時間で100個ペース)ひたすら覚えます。5日で1セットですから、6日目からは2セット目に入ります。これをひたすら6セット繰り返します。
ポイントは「ウロ覚えの反復」です。ウロ覚えでOKなので「とにかく1日200個」目に焼きつけることです。
そして、暗記の間隔を空けないことも大事です。最低でも5日に1回は同じ英単語に目を通すことになるのがこの方法のポイントです。
本当につらいのが最初の4セット(20日間)です。時間もかかるしココロが折れます。4セット目まではほとんど効果が出ないからです。
手ごたえを感じるのは5セット目からです。そして、6セット目で一気にブレイクします。
■1時間で100個覚えるためには「とにかくリズミカルにテンポよく」
2時間で200個の単語を覚える具体的なやり方は、以下の通りです。
たとえば、単語100個のリストを渡されたとしましょう。時計を見てください。
今からジャスト1時間後に、その100個をテストすると思ってください。これでどのくらいのペースで進めていけばいいか想像がつくと思います。
(1)今この瞬間「覚えた!」と思ったら次へ進む。
(2)最初から知ってる単語は「即ムシ」する。
(3)簡単な単語は数秒目を通すだけでOK。
(4)難しい単語はじ~っくりと(「書く」のもアリ)。
とにかくリズミカルにテンポよく進めます。もちろん、100個の単語に2時間でも3時間でもかけたほうが効果はありますが、受験生の多くはそこまで単語に時間を割けません。かといって、100個の単語を30分でやると、あまりにウロ覚えすぎて効果は出ません。「1時間後にテストが待ってる」つもりでやる必要があります。
ちなみに、単語の数は「知っている単語も含めて100個」です。純粋に知らない単語だけ100個をピックアップするのは、それだけで時間がかかりますので、その時間は暗記に回したほうがいいです。
■得点に直結する「英熟語」を効率的にマスターする方法
「単語と熟語、どっちが大事?」という質問はナンセンスですが、あえて答えるなら「熟語」です。単語よりも熟語のほうが、空所補充などでそのまま出るので「熟語を知ってる」=「得点につながる」からです。受験計画にはしっかり「熟語」の時間を確保する必要があります。
英熟語は「丸暗記する人」と「理屈で覚えていく人」で大きく差がつく分野です。
熟語の丸暗記を減らすには3つの力が必要です。
(1)「直訳」する単語力
(2)「前置詞」の理解
(3)「基本動詞」の理解
熟語は、直訳すれば大半のものは丸暗記しなくても大丈夫です。
たとえば、mean business「本気だ」という熟語。直訳は「仕事を意味する」ですね。「仕事を意味する」→「本気だ」になります。
pass away「亡くなる」なら、「離れたところへ(away)、過ぎ去る(pass)」→「遠くへ行く」→「亡くなる」という意味です。
■英熟語を「理屈」で覚えるために必要な“本来の意味”
ただし、直訳に当たって必要になるのが、前置詞と基本動詞の知識です。
たとえば、stand by「傍観する・味方する・待機する」という熟語があります。
これはbyを「~によって」なんて考えていたら解決できず丸暗記になります。
実はbyの原義は「近くに」です。
そのためstand byの直訳は「そばに立つ」で、「現場のそばに立つ」→「傍観する」、「精神的にそばに立つ」→「味方する」、「舞台のそばに立つ」→「待機する」(stand byをそのまま読めば「スタンバイ」)になるわけです。
このby本来の意味「近くに」を知っていれば、ほかにpass by「通りすぎる」なども納得できるはずです。
また、基本的な動詞の意味も大事です。たとえばtakeは「取る」という意味です。take inという熟語には「理解する・見物する・だます」という意味があります。take inの直訳は「中に取る→取り入れる」です。
「頭の中に取り入れる」→「理解する」、「旅行の予定に取り入れる」→「見物する」、「自分のズルイやり方に相手を取り入れる」→「だます」となるわけです。
■いつまでも単語帳と向き合っていても成績は上がらない
単語帳を1冊こなしたら、とりあえず単語は終了です。
「2冊やったほうがいい」と言われるかもしれませんが、受験生には「やらなきゃいけないこと(熟語・英文・英文解釈)」が山ほどありますので、そちらを先にやる必要があります。単語は早い段階で見切りをつけるべきです。
![関正生『改訂第2版 大学入試 世界一わかりやすい英語の勉強法』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/1/1200wm/img_91783a586a2a96a8651b60c06512bdd4238229.jpg)
単語は永遠のテーマですので、どんなに覚えても知らない単語は出てきます。ただ、この「知らない単語が出てくる」という現実に向き合わなければなりません。
いつまでも「単語が苦手で……」と言いながら、単語帳から離れたがらない受験生がたくさんいます。その気持ちはわかりますが、受験は時間が限られた中での戦いです。いつまでも単語ばかりやっていては勝てません。早く1冊を仕上げて、次のステップに進まないといけません。
目安としては、どんなに遅くても「高3の8月まで」です。この時期までに覚えた単語で勝負していかないといけないんです(でなければほかのもっと大事なことが終わりません)。
そして、熟語は9月までに完成させるべきです。高3の後半は「単語がわからなくても意地でも長文を読み切る」という精神力を養う必要があるからです。まちがっても、受験直前まで単語帳から離れられない、ヤワな受験生になってはいけません。
6回やって一度頭に入れた単語は「定着した」と言えますが、さすがに一生忘れないわけではありませんので、その後「月1メンテナンス」はしてください。1000個の単語といえども、6セットもやっていれば、1時間くらいでチェックできます。月に1回は総確認をして万全なものにしてくださいね。
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英語講師
1975年、東京生まれ。埼玉県立浦和高校、慶應義塾大学文学部(英米文学専攻)卒業。TOEIC L&Rテスト990点満点。リクルート運営のオンライン予備校「スタディサプリ」講師。スタディサプリでの有料受講者数は年間140万人以上。著書は『真・英文法大全』『カラー改訂版 世界一わかりやすい英文法の授業』(以上、KADOKAWA)など累計300万部突破。
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(英語講師 関 正生)
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