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英語リスニングで超重要なのに日本人が完全に見落としている「弱形」という言葉の本当の意味

プレジデントオンライン / 2022年10月31日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CrispyPork

なぜ日本人は英語のリスニングが苦手なのか。オンライン予備校講師の関正生さんは「『弱形』を誤解している人が多い。弱く軽く発音されると説明されることが多いが、これは間違い。たとえばandは『アンド』ではなく『ン』と発音されており、さらに『ン』すら発音されていないこともある」という――。

※本稿は、関正生『改訂第2版 大学入試 世界一わかりやすい英語の勉強法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■英語をただ何時間聞き続けてもリスニングはできるようにならない

リスニングができるようになるには、大きく2つの力が必要になります。

リスニングができるようになるための2つの力
(1)英語の「音」を聞き取る力
(2)聞き取った英語の音を「理解」する力

ほとんどの受験生は、リスニングといえば「音を聞き取る力」がすべてだと思い込んでいます。

確かにこの「音」そのものを聞く力は大切なので、これはこれで後ほど詳しく説明しますが、これだけではリスニングができるようにはなりません。

せっかく聞き取れた「英語の音」も、頭の中で一瞬で(リスニング中にはゆっくり考える時間はありません)「理解」できないと、右から左に音が流れていくだけになってしまいます。

この「理解する力」は、「英文解釈」と「音読」で鍛えられます。英文を返り読みしないで理解していく力がないのに、何時間英語を聞き続けてもリスニングはできるようになりません。

■リスニング音声のスピードに追いついているか確認する方法

頭の中でリスニングの「情報処理」が追いつくか、自己診断することができます。まずは共通テスト問題の英文を、リスニング音声と同じスピードで読みます。もちろん内容を「理解」しながらです。次に、自分で理解できるスピードで読みます。

1回目の「普通のリスニングのスピード」で英文の内容が理解できれば、理解力に関してはクリアしています。2回目は「自分が理解できるスピード」ですから、このスピードのリスニングしか理解できないことになります。

つまり、1回目の「普通のリスニングのスピード」で理解できない状態では、いくらリスニングの練習をしても、とても効率が悪いことになります。逆に言えば、まずは「理解力」を優先してからリスニングに取り組めば、とても効率的というわけです。

■「発音されていない音」を聞き取るための3つのポイント

「理解力」の次は、本題の「音そのものを聞き取る力」についてお話しします。

「音」そのものを聞き取るために大事なこと
(1)リスニング特有のルール
(2)「正しい音(弱形)」
(3)「速い」のではなく「短い!」という事実
(1)リスニング特有のルール

リスニングには決まった「音変化」のルールがあります。たとえば「語末の子音は聞こえない」というルールで、Oh, my God! は「オーマイ、ガッ」と聞こえます。Godの“d”が「飲み込まれて聞こえない」わけです。

ほかにも「音がくっつく」ルールで、stand up「スタンダップ」、an apple「アナップル」は有名です。

こういうルールはリスニングの本であればどれにでも書いてありますから、一度見ておくと役立つはずです。

(2)「正しい音(弱形)」

リスニングで重要かつ日本人が完全に見落としているのがこの「弱形」です。

この記事をお読みのみなさんも、andなどの単語は「弱く軽く発音される」と聞いたことはありませんか?

残念ながらこの説明、日本人を混乱させる説明です。「弱く」と言われたら、まるで小声で「アンド」ってサッと発音されると思い込んでしまいます。受験生はそれを信じて音声を何度もリピートして、でも聞こえない……という経験をすることになります。

「弱い」んじゃないんです。そもそも最初からそんな風には発音されていないんです!

■「アンド」が「ン」になり、とうとう聞こえなくなる

たとえばandは、決して「アンド」ではなく、実際は「ン」と発音されています。さらにその「ン」すら聞こえなくなった例として、ham and eggs「ハム・ン・エッグ」が「ハムエッグ」に聞こえたし、cut and sewn「カット・ン・ソーン」が「カットソー(長袖のTシャツ)」に聞こえてしまったんです。「ン」と発音するandが、もはや聞き取れなかったんです。

とかくリスニングになると「聞こえないからダメ」と思わされてしまいますが、andのように、「聞こえない」どころか「最初からそうは言ってない」ということがよくあります。

この発音を「弱形」といいます。ぜひこの「弱形」をマスターしてください。リスニングの世界が劇的に変わるはずです。弱形は基本単語にしかありませんから、少し努力するだけで、あっさりマスターできます。

(3)「速い」のではなく「短い!」という事実

「倍速で聞けば普段の英語が遅く聞こえる」と聞いたことがあるかもしれません。ただ、やみくもに速く聞いても、リスニングはできるようにはなりません。

実は、英語は「速い」のではなく「短い」だけなんです。

先ほどのandを考えてみてください。「アンド」ではなく、本当の発音(弱形)は「ン」でしたね。「アンド」→「ン」になっているので、「発音する時間は3分の1」に、言い換えれば、3倍速で発音されているように感じるだけなんです。発音が「短い」から、しゃべる時間も短くなる。それを「速い」と錯覚してしまいます。だからこそ弱形をマスターすることが大事です。

耳に手を添えて聞く人
写真=iStock.com/Panya7
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Panya7

■長文の教材を何度も聞くことで「英語の体内時計」ができる

リスニング練習で、受験生に普段からやってほしいことは「長文の教材でリスニング」です。

僕がこれをオススメする理由は、「リスニングの勉強を通して、リスニング力はもちろん、長文の力・スピードが劇的に上がる」からです。この方法では、音声がついた教材を使用します。それを使って徹底的にリスニングします。長文の教材を何度もリスニングすることで、レベルの高い英文を頭の中で「英語のまま処理する」能力が養われます。

つまり、音読でやっている「英語アタマ」を、今度はリスニングでやっていくわけです。これによって「(日本語に直さずとも)英語のまま理解できる」ようになり、読解スピードが上がります。

おまけに、リスニングは「返り読みできない」ですし、ある一定スピードで強引に進んでいくわけです。このスピードを頭と体に染み込ませることで、たとえるならメトロノームやマラソンのペースメーカーのように「英語の体内時計」が埋め込まれます。これで「試験時間内に長文を読み終えるスピード」が身につくわけです。

■リスニングでしくじっても長文で取り返せる力をつける

リスニングは水モノです。本番で緊張したり、周りの騒音で得点を大きく失ったりすることもあります。しかしこの勉強を通してリスニング力と同時に長文力もつけておけば、たとえ本番のリスニングでしくじっても、必ず長文で取り返せるだけの力が身につきます。

オススメの教材は『大学入試問題集 関正生の英語長文ポラリス』です。長文で使った教材をリスニングに使い回すのがベストです。

もちろんいきなりリスニングから始めると120%挫折します(普通に読んでも難しい長文の教材です)。まずは「長文としてじっくり読む」→「単語・解説などを確認」→「音読30回」→「リスニング」という順番です。

ちなみになぜ『ポラリス』が良いかというと、この本の音声は「本番でのスピード」を再現したからです。「本番の長文の理想のスピード」なので、他の教材よりずっと速い音声となっています。

■英文について声に出して読む「シャドーイング」の重要性

リスニングの勉強法は「ディクテーション」と「シャドーイング」が効果的です。

ディクテーション(dictation「書き取り」)とは「聞こえる英文をすべて書き取ること」です。書き取るために何回も集中して聞き直すことになるうえ、自分が聞き取れない単語(弱形が多いと思います)がハッキリするので、とても効果があります。

ただし、ディクテーションはとても時間がかかるので、受験生に毎日やってほしいのはシャドーイングです。

シャドーイングとは「リスニングしながら、その英文に影(shadow)のようにくっついて声に出していくこと」です。

字で説明すると簡単そうですが、実際はかなり大変です。

でもその分だけ効果があります。

ただ聞き流すだけだと、一瞬ボーッとしてしまったりするものですが、シャドーイングでは自分の口を動かす分だけ、ボーッとすることが激減します。

シャドーイングは、最初はスクリプトを見ながらで問題ありません。5回ぐらいスクリプトを見ながらシャドーイングしたら、今度はスクリプトなしで行います。5回も見たはずなのに、全然できないものですが(どの受験生でもそうです)、わからないところはまたスクリプトに戻って確認します。

■たくさんの長文を1回ずつ聞くより、同じものを50回以上聞く

これを何回もこなして、最終的に何も見ないで、しかも1回もつっかえずにシャドーイングできる状態まで行けば、その英文は終了です。

関正生『改訂第2版 大学入試 世界一わかりやすい英語の勉強法』(KADOKAWA)
関正生『改訂第2版 大学入試 世界一わかりやすい英語の勉強法』(KADOKAWA)

シャドーイングは本来声に出すものですが、慣れないうちは自分の声によって英語がかき消されてしまうので、小声もしくは声に出さないでシャドーイングしても構いません。これなら電車の中でもできるので、リスニングの勉強時間が一気に増えます。

リスニングの回数ですが、最終的には1つの長文を最低50~100回は聞くべきです。たくさんの英文を1回だけ聞くよりも、同じ英文を何度も聞くほうがリスニング力は上がります。1つの英文を完璧にシャドーイングできるようになるまで聞きこむわけですが、結果的に50回以上聞くことになると思います。

リスニングの勉強の理想は「1日30分」ですが、音読も30分(これは絶対に死守)することを考えると、受験生には厳しいでしょう。リスニングは10分でもいいので、集中してやってください。

また、リスニングはどこでもできます。電車の乗り換え時間・エレベーターにいる時間……、ささいな時間を有効活用できます。

「チリも積もればヤマとなる」ので、この方法で1日40分はリスニングの時間が増えるはずです。

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関 正生(せき・まさお)
英語講師
1975年、東京生まれ。埼玉県立浦和高校、慶應義塾大学文学部(英米文学専攻)卒業。TOEIC L&Rテスト990点満点。リクルート運営のオンライン予備校「スタディサプリ」講師。スタディサプリでの有料受講者数は年間140万人以上。著書は『真・英文法大全』『カラー改訂版 世界一わかりやすい英文法の授業』(以上、KADOKAWA)など累計300万部突破。

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(英語講師 関 正生)

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