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周囲から媚びられる独裁者プーチンと同じ…日本のオジイサン社長がその座にしがみつく5つの身勝手な理由

プレジデントオンライン / 2022年10月26日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/deeepblue

なぜ、日本企業のトップは権力の座にしがみつくのか。日本の社長の平均年齢は、2009年は59.5歳だったが、2021年は62.77歳。世界的に見ても高齢化が突出し、老害を指摘する声も多い。コミュニケーション戦略研究家の岡本純子さんは「ある程度の地位と名誉と金銭を得たのだから、傍目にはとっとと楽しいセカンドライフを送ればいいのにと思いますが、彼らが何歳になっても辞められない5つ理由がある」という――。

■オジ(イ)サン社長がその地位に恋々としがみつく理由

日本企業の社長の高齢化が進んだことで、最近ますます経営者の老害化の話が耳に入るようになった。

権力の座に居座り、一向に後進に道を譲ろうとはしない。そのため世代交代は起こらず、組織が硬直化、企業はどんどんと時代に取り残され、世界の中での“日本”の存在感もどんどん薄れていく……。

なぜ、大きな組織のトップに就いたオジ(イ)サンたちはその地位に恋々としがみつくのだろうか。その複合的な理由と深刻な弊害に迫ってみよう。

かつてはカリスマ経営者としてたたえられた日本電産の永守重信会長。その話は明快で面白く、人を惹きつける強烈なエネルギーを発していた。しかし、最近は齢78にして、次々とその後継とされる人の首を切り、幹部が大量離職、株価は急落するなど、社内は混乱を極めている、と報じられている。

筆者がかつて勤務した読売新聞の渡邉恒雄氏も96歳ながら代表取締役主筆として、今も君臨している。フジサンケイグループ代表の日枝久氏も御年84歳だが、いまだ権勢をふるっていると聞く。

もちろんこれまでの功績が否定されるわけでもなく、高齢でも会社組織を改革し前進させる人も少なくない。しかし、トップが権力に執着し、ある種の「恐怖政治」を行うと、結果的に上の言うことに唯々諾々と従う「コバンザメ」のような幹部が増殖することになる。新陳代謝は起きず、風通しが悪くなる。イノベーションは起こるべくもなく、組織はやがて壊死する。そうした事例は日本企業には掃いて捨てるほどある。

東京商工リサーチの調べによると、2021年の社長の平均年齢は、調査を開始した2009年以降、最高の62.77歳(前年62.49歳)だった。調査を開始した2009年の59.5歳から毎年、上昇を続け、社長の高齢化傾向が鮮明となっている。

■米国57歳 ドイツ54歳 英国53歳 中国50歳 日本60歳超

英国経済紙「フィナンシャル・タイムズ」のグローバルデータによると、CEO(最高経営責任者)の平均年齢はアメリカでは57歳、ドイツでは54歳、イギリスでは53歳、中国は50歳。日本は世界で唯一の60歳超えとなっており、高齢化が際立っている。

日本では海外に比べ、若い経営者による起業が少なく、平均年齢を押し上げている側面もあるが、何より年功序列の弊害の側面はあるだろう。だが最も厄介なのが、いったん権力を握ると、なかなか辞めようとしない経営者が多くいることだ。

ある程度の地位と名誉と金銭を得たのであれば、とっとと楽しいセカンドライフを送ってはどうかとも思うが、なぜかそういう発想にはならないらしい。その理由は後で詳述するとして、海外のCEOのリタイアメントライフとはどういったものなのか、アメリカの事例について、少し触れてみよう。

米国経営学誌「ハーバードビジネスレビュー」の「CEOのためのリタイアメントガイド」という記事によれば、アメリカのCEOの平均退任年齢は62歳。大企業に当たるフォーチュン500の元CEOのうち、

・4分の1以上はプライベート・エクイティ(未公開株投資)などに携わる
・半数以上が非営利団体でリーダー職に
・3分の2は学校や博物館の理事など、公的機関の役員に
・多くが教鞭をとり、本を書く人もいる
・ほぼ全員が慈善活動をしている

つまり、ほとんどの元CEOがこれまでいた企業を潔く去り、非営利の仕事などに携わって、「経済と社会の幸福に貢献している」のだそうである。

日本のエライ人たちは、なぜそこまでして「会社にしがみつく」のだろうか。これには少なくとも次の5つの理由が考えられる。

こめかみを押すシニア男性
写真=iStock.com/deeepblue
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/deeepblue

■① 海外のCEOほど、カネがない

そもそも、海外のCEOの年収は数十億、数百億円がスタンダード。日本では、数千万~多くて数億円程度で、さすがに、これを数年やっただけでは、退職後に、慈善活動に大枚をつぎ込むほどの蓄財はできないだろう。そう考えると、人生100年時代、少しでも稼いでおきたいという気持ちになる人がいてもおかしくない。

■② 権力、特権を手放したくない

権力は魔物である。一度手に入れたその力を手放すことに強い抵抗感を覚える人は少なくない。「秘書、自分の部屋、送り迎えの車」という三種の神器に加え、肩書や名刺を失い、「何者でもない人」になることへのおびえ。特に、生涯を一企業に捧げる人が多い日本では、そのセーフティーネットを失う「アイデンティティークライシス」に対する恐怖心は相当なものだろう。

金色の「CEO」と書かれたプレートが置かれた席
写真=iStock.com/naotake
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/naotake

■③ 権力により、謙虚さを失い、承認欲求が肥大化

権力は腐敗する。そもそも、リーダーにのし上がる人には、「マキャベリアン(個人の野望と利益に固執し、人との関係性より、権力や金を優先する)」「サイコパス」「ナルシシスト」という、心理学では「暗黒の三元素(Dark Triad)」と呼ばれる3つの特質をもった人が多いとされている。最近では、これに「サディズム」が加わった4要素という説もあり、一般人のサイコパスの出現率は1%である一方、エグゼクティブになるとその割合が3~5%になるというデータもあるほどだ。

もともとそうした資質を持っていなかったとしても、権力が人を変えてしまうこともよくある。権力の座に居座り続けることで、エゴや承認欲求が肥大化し、傲慢さと行きすぎたプライドや自信ゆえに他者を見下す姿勢へとつながる。また、「つねにこびへつらわれる」という状況下で、「共感力」を失い、ロシアのプーチン大統領のように権力が目的化してしまう。暴君化するリスクは少なくない。

■④ 「自分は役に立っている」という過信

自分の能力を謙虚に評価する力を失い、自らの知見や能力を過信してしまう。「まだまだ、会社のために貢献し、役に立てる」という誤った認知にはまり、迷惑な「利他意識」を振りかざしている可能性がある。

■⑤ 仕事以外にやりたいことがない。

案外よくあるのが、このパターンだ。40年あまり、会社に尽くしてきて、トップに上り詰める人は基本、ワーカホリック、仕事一筋だ。趣味はゴルフぐらい。時間ができたとしても、何か打ち込みたいという趣味もなく、そもそも家族を顧みる時間などなかったので、疎まれていたりもする。楽しいリタイアメントライフの絵がなかなか描けないのだ。華麗にリタイアし、セカンドライフをエンジョイしているロールモデルも少なく、退職後の人生に希望を持てない人もいるだろう。

こうした複層的な理由が絡み合い、「辞めたくないオジサン」が生まれてしまう。

悩ましいのは彼らが高齢だから、能力が低いと必ずしも断言できないことだ。しかし、世界は秒速で状況が変化し、高いITスキルが求められる時代に、「昭和の成功体験」を語り、自らのやり方を結果的に押し付ける経営者が率いる企業に機動性を求めるのは難しい。

実際、社長の高齢化と業績悪化の関連性はデータでも如実に表れている。東京商工リサーチによれば、直近決算で減収企業の社長は60代が48.8%、70代以上も48.1%を占めた。高齢社長に業績不振が多い理由として、「長期的なビジョンを描けず、設備投資や経営改善が遅れる」と分析している。

会議室に置かれた、社長の席次を示すカード
写真=iStock.com/Vladstudioraw
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Vladstudioraw

これは海外でも同じ傾向だ。アメリカのabcニュースによれば、S&P500企業のうち、47歳以下のCEO23人の株価の19カ月間の平均下落率が2.8%に対し、72歳以上のCEOを擁する6社は、平均21%下落している。「高齢のCEOの中に勝ち組はほとんどいない」というのが、残酷な真実のようだ。

このままでは、多くの企業があの世へ道連れにされかねない。

年功序列に変わる新たな経営の形の模索や世代交代の促進とともに、長年培ってきたシニア経営者の知見を全く別の分野で活用し、活躍してもらう仕組み作り、さらに、新たなロールモデルの創出をすることが、沈みかけている日本の地位を復活させる鍵なのではないだろうか。

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岡本 純子(おかもと・じゅんこ)
コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師
「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。

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(コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師 岡本 純子)

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