「一生雑務に追われて終わる人」と「多忙でもプライベートが充実した人」の決定的違い
プレジデントオンライン / 2022年10月28日 10時15分
■“やりたいことを全力でやる人生”をモットーに
“やりたいことを全力でやる人生”をモットーに今日まで生きてきました。KADOKAWA Connected(以下KDX)の社長在任中も、「社長たるもの24時間365日すべての時間は従業員のためにある」という思いの下、従業員ファーストで勤務しました。もちろん体力や精神の限界もありますので、仕事“だけ”をずっとやり続けることはできません。なので、リカバリーの時間は最小限、あらかじめ何カ月分も先まで確保しておく必要がありました。
KDX社長時代は全力で社長業に邁進すれば良かったのですが2022年3月で退任し、大学准教授などを兼務しつつ、7月には三菱UFJ銀行のDXを推進するCDTO補佐兼デジタルサービス企画部 部長を拝命しました。必然的に自分で時間配分を決めるため、「自分は何にどれだけ時間を割くべきなのか」「自分は何のために生きているのか」ということを考えるようになったのです。そうした中で、公と私の区別を意識するようになりました。
「公私の別」は私の定義で言うと――
【公】自分以外の“誰か”のために貢献する時間。仕事はもちろん家族を含めたコミュニティの一員としての役割を果たす時間も含まれる。
【私】自分“だけ”のために費やされる時間。「公」で消耗した体力・メンタルを回復、エネルギーの充電、キャパシティを拡張するために費やされる。
――となります。ただ、この「公」「私」は厳格な線引きで真っ二つに分かれているわけではありません。例えば同じ「公」に属する仕事でも“やらなくちゃいけない”ので義務的に淡々とやる仕事と、人から感謝され、自分でやり切ったという満足感・充足感を得られる仕事があります。後者には多分に「私」の要素が混じり、グラデーションになっている部分があります。
また「公」が主で優先、「私」は従で劣後するという関係ではありません。私は昔から「生活と仕事は融合すべきだ」と思い、実践してきました。メンタルとフィジカルのコンディションは「私」の部分でマネジメントしますが、それができているからこそ「公」の部分で義務や責務を成し遂げていけるんだという考えです。もちろん、スケジュール管理では人の都合が関係するぶん「公」のほうに配慮は必要になりますが、「私」をおろそかにしては「公」も成し遂げられません。
■優先順位をつけてから爆速で仕事を処理
仕事が詰まってくると休むのを後回しにしがちです。でも、ダラダラ働き続けても効率や創造性は低下する一方で、良い結果は出ません。それがわかっているからこそ、最初から「私」の時間を確保することが必要になります。
具体的には3カ月ぐらい先までの予定のイメージを持ったうえで、1カ月、2週間、1週間、1日……と逆算し、あらかじめ「私」の時間をルーティンとしてスケジュールに組み込みます。そして日常の行動サイクルに、体力や精神力を「底上げする」「無駄に消費しない」「減ったらリカバリーする」予定を取り入れることで、メンタルとフィジカルのコンディションの波を一定以上に保つようにしているのです。
「無駄に消費しない」という部分では、幾つもの工夫がありますが、カレンダーに予定を入れる段階で、仕事の質や要する負担、重要度・優先度に応じたカテゴライズをすることが特に大事です。最も重要かつ優先度の高い仕事をなるべく小さな負担(時間と労力)でこなすことができれば、次いで重要度・優先度の高い仕事以降に余力を残すことができ、業務全体の質・量を高めることができます。
重要度・優先度の低い仕事は爆速で処理します。作業や決断を圧倒的短時間でこなすのはもちろん、その仕事をフォーマット化して転用できないかどうかも考えます。例えばプレゼンのために資料を作るなら、汎用性を考えて他のミーティング等でも使い回せるようにすると効率化できます。コミュニケーションはなるべくテキストで行います。言葉でかくかくしかじか伝えるより「これ読んどいて」と送るほうが速い。こうした工夫を徹底するとより多くの仕事量をこなせますし、重要度・優先度の高い仕事により多くのエネルギーをかけることができます。
![各務氏の週間ルーティン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/5/1200wm/img_c5c7f99da94eb7843ce051e65f07e019612010.jpg)
仕事によって減少した体力やメンタルは、「私」の時間を使ってリカバリーします。消耗して→リカバる→消耗して→リカバる……このサイクルを上手に回しながら“キャパシティを拡げ底上げを図る”(例:新しい経験をする、勉強する、心身を鍛えるなど)こともできれば、常に良いコンディションで仕事をこなしながら成長もしていける好循環が維持できます。
■自分の調子や創造性はコントロールできる
しかし、仕事には想定外がつきもので、予定していた「私」の時間ではリカバリーが追いつかなくなることもあります。その場合、重要度・優先度の高くない仕事は“やらない”ことにして、空いた時間を「私」に充てます。好きなものを食べたり、15分間静かに目を瞑っているだけでもいいのです。
ただぼんやりと過ごすのではなく「自分は今、リカバリーしている」と意識しながら、短時間でも積極的に何もしないでいると頭がリフレッシュして、その後は良いアイデアが生まれたりするのです。日常業務にはルーティンな作業をこなすとか意思決定をすることが多いのですが、これには収束的思考が求められます。そうすると相対的に発散的思考/クリエイティビティが低下していってしまいます。ここでリカバリーを挟んでスイッチを入れ替えることで、休憩した後には良いアイデアが生まれやすくなります。
私は日頃から「Garmin」というウエアラブル端末を身に着けているのですが、これはストレスやカロリー消費などを常時計測して、自分にどれくらいのエネルギーが残っているかをグラフで表示してくれます。エネルギーは質の高い睡眠が取れて気持ち良く目覚めた朝には満充電されているが、そこから出勤して疲れる作業やハードな交渉をこなすとストレスが溜まって低下していく。一方で、ランチを取ったり、休憩を挟むとちょっと回復する――といった具合に、かなり正確です。
これを見ているとどんな仕事にどれくらいエネルギーを使うか、どういったリカバリーをすればどのくらい回復するのかが、理解できるようになってきます。そうしたらその知識を生かして「金曜日の夜はビジネス会食で疲労がピークに達するので、土曜日は完全オフにしてリカバリーする」「土曜日に回復するので日曜日の午前中は最もクリエイティビティが発揮できる状態にある。発散的思考が求められる資料作りに充てよう」など、効果的なスケジュールを組むことができるわけです。
タスクを大量に抱え、スケジュールを詰め込みすぎても、アウトプットの質が低下したり、そもそも消化できないようであれば意味がありません。自分のフィジカル・メンタルの状態をできるだけ正確に知ることが、パフォーマンスを最大限に発揮できる有効な時間の使い方を実現するコツです。
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三菱UFJ銀行CDTO補佐兼デジタルサービス企画部 部長
VMware、楽天、Microsoft、AWSなどを経てドワンゴへ移籍。2019年にKADOKAWA Connected代表取締役社長就任。22年3月に退任し、同7月より現職。20年4月より情報経営イノベーション専門職大学准教授。
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(三菱UFJ銀行CDTO補佐兼デジタルサービス企画部 部長 各務 茂雄 構成=渡辺一朗 撮影=金城匡宗)
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