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目立つためなら何でもやる…YouTuberヒカルが「山口県の4630万円使い込み男」を救ったシンプルな理由

プレジデントオンライン / 2022年11月12日 15時15分

YouTuberのヒカル氏 - 写真提供=徳間書店

人気YouTuberのヒカルさんは、なぜ史上最速で100万人のチャンネル登録を集められたのか。ヒカルさんは「綺麗ごとに雁字搦めになるヒーローではなく、好感度を捨てて何にも忖度しないダークヒーローを目指した。その予測のつかなさが世間に支持されている」という――。

※本稿は、ヒカル『心配すんな。全部上手くいく。』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

■「ダークヒーロー」で史上最速のチャンネル登録者数を達成

たいていの人は自分が周りからどう見られているかを気にする。周りから好かれようとする。大半の人気ユーチューバーもまさにそうだ。彼ら彼女らの人気は好感度と切っても切れない関係にある。

だから僕は逆転の発想を取った。僕はユーチューバーの頂点を目指す。そのために必要なのは? 好感度を捨てることだ。人気ユーチューバーたちはみんな好感度を武器にしている。ならば僕はそこでの勝負はしない。むしろ逆を行く。そこにはだれもいない。最強の差別化だ。そしてその戦略は的中した。

2016年、遅まきながら実写動画に参入した僕は、リスクやタブーを恐れないそのスタンスから、いつしかダークヒーローという異名がつくようになった。そんなユーチューバーはいままでいない。

攻めに攻める企画は次々とバズった。「ヒカル(Hikaru)」チャンネルの登録者数は開設から9カ月で100万人に到達。さらにそこから半年後には200万人に到達。どちらも当時のYouTubeの日本最速記録だ。

■ヒーローの世界は綺麗ごとであふれている

ダークヒーロー――。不敵な響きだ。でももちろんなにか悪さをするわけじゃない。ただのヒーローの対極にいるのがダークヒーローだ。世のなかは綺麗ごとであふれている。そしてその綺麗ごとがときに人を苦しめる。それを壊すのが僕の役目だ。

綺麗ごとや正論をまえに、他人と異なる意見を言うのは普通なら難しい。本音を口にすれば不謹慎だと叩かれかねないからだ。でもそんな世のなかは息苦しくないか?

「人に迷惑をかけたらダメだ」「恩を忘れたらダメだ」「人の役に立つ人間になれ」

そのとおりだ。そのとおりだからこそキツい。雁字搦めだ。身動きが取れなくなる。やりたいこともなにひとつやれなくなる。綺麗ごとは巡り巡ってあなたの可能性をつぶそうとする。綺麗ごとと優しさは別だ。綺麗ごとはたんなる同調圧力だ。強烈な同調圧力である。それに風穴を開けるのはだれだ? ダークヒーローだ。

マントをつけたヒーローのイメージ
写真=iStock.com/Avesun
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Avesun

■忖度のない生きざまを見せるのがヒカルのエンターテインメント

僕は他人の顔色をうかがわない。思ったことはそのまま口にする。

たとえば犯罪。犯罪は許されない行為だ。あたりまえだ。これは綺麗ごとでもなんでもない事実だ。法を犯した者は処罰されるべきだろう。でも犯罪者にも犯罪者の事情がある。窮地におちいった結果、やむにやまれず犯罪に手を染めてしまう人だっている。そうであれば僕は擁護する。ひとつの過ちがその人の全否定になるなんてあってはならない。だから周りがどう言おうと僕は擁護する。

犯罪のような重い話にかぎらずそうだ。僕は本音を隠さない。不味い料理には不味いと言う。つまらないものにはつまらないと言う。くだらない忖度(そんたく)はしない。それで何不自由なく生きていけている。むしろそんな人生のほうが楽しくて豊かだ。違うだろうか? 僕はそう思う。それを身をもって表現してみせるのが、ヒカル流のエンターテインメントだ。

僕はファミリーレストラン「ジョイフル」に声をかけてもらい、たくさんのメニューをプロデュースさせてもらっている。ありがたいことにどれも好評だ。2021年7月の販売開始から1年で累計400万食を突破したらしい。

ヒットの理由はいろいろあるだろうが、忖度せず本音で生きる僕のスタンスも貢献したと思っている。あのヒカルが美味いと言うなら美味いんだろう。そう思ってくれた人も少なからずいるはずだ。本音は信用を得られるのだ。

■ダークヒーローがヒーローを倒す日も近い

ダークヒーローであること。その最大の強みはなんといってもコアで熱狂的な支持を得られることだ。たとえばマンガの人気キャラクター投票を見ると、善とも悪ともつかない不敵なキャラが上位につけることは珍しくない。

マンガ『ドラゴンボール』のベジータなんかがそうだ。主人公(ヒーロー)の孫悟空よりもベジータのほうが好きだという人は多い。僕もそのひとりだ。ベジータははじめ悪役だったが、そのあと改心して悟空の味方になった。とても頼もしい味方だ。でも完全に正義の人物になったわけではない。冷酷な一面も併せ持つ。そんな得体の知れないダークヒーローぶりがベジータの魅力だ。

ダークヒーローは予測がつかない。なにをやりだすかわからない。だからハラハラさせられる。ワクワクさせられる。目が離せない。

僕もそうあり続けたい。ダークヒーローがヒーローを凌駕する。そんな逆転劇を演じたい。そのときは近づいている。ジャイアントキリングだ。きっと熱狂を生むだろう。史上最高のエンターテインメントだ。そしてそこに新しい世界が開けるだろう。だれも見たことのない楽しい世界が。

■メリットがあってはじめて信頼関係が生まれる

人はメリットがないと動かない。仕事でもプライベートでもそうだ。あなたがだれかになにかを頼まれる。どうする? 引き受けるかどうか。その判断材料はメリットの有無にしかない。

街で道に迷っている人を見かけた。あなたはどうするだろうか。よほどのことがないかぎり手助けするはずだ。そこにはメリットがあるからだ。どんな? 困った人を見捨てない自分。善良である自分。肯定できる自分。それを再確認できるメリットだ。

道に迷っているその人は、巡り巡ってあなたの自己肯定にひと役買っているわけだ。その人はあなたに明確なメリットを提示している。

だから僕は綺麗ごとが嫌いだ。抽象的な綺麗ごとはメリットの有無をあやふやにしてしまう。具体的なメリットのやり取りがあってはじめて信頼関係は生まれる。それが生産的であるということだ。それが相手に対して誠実であるということだ。僕はそう思う。

■ダークヒーローが「ホワイトナイト」と言われた日

ダークヒーローの僕が「ホワイトナイト」と称されたことがある。メディアをにぎわせたので知っている人も多いと思うが、いわゆる「4630万円誤送金問題」をめぐってのことだ。

2022年4月、山口県阿武町は新型コロナウイルス対策の臨時給付金4630万円を誤って1人の町民に振り込んでしまう。同町はすぐに返還を求めるもその町民はそれを拒否。同町は返還請求の訴訟に踏み切り、その町民の氏名と住所を一般公開する。事態は紛糾し、誤送金からおよそ1カ月後、その町民、田口翔さんは電子計算機使用詐欺容疑で逮捕される。この模様はマスコミで連日報じられた。

そもそもの発端は同町の誤送金。また行政が個人情報を一般公開するというのは極めて異例だった。だから同町の対応を問題視する声も一部にはあった。とはいえ、誤送金と知りながら返還に応じず、しかもそれをオンラインカジノで使い切ったという田口さんに対する世間の非難はすさまじかった。

トランプやルーレットなどカジノで使用する道具とオンラインカジノが表示されたスマホ
写真=iStock.com/Bet_Noire
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bet_Noire

逮捕の2日後、オンラインカジノの決済代行業者から同町の口座に約4300万円が返還。さらにそこからおよそ1カ月後、田口さんは残りの340万円を返済する。代理人弁護士は「東京のほうのホワイトナイト」から借りたと説明。そのホワイトナイトの正体をめぐってさまざまな憶測が飛び交ったが、その正体はほかでもない、この僕だ。とある経緯があり、僕がホワイトナイトを買って出ることになったのである。

■救った動機はただ「世間の注目を集められるから」

同年8月1日、田口さんは逮捕から2カ月半ぶりに釈放される。当日、山口南警察署から出てきた田口さんは詰めかけた報道陣に深々と頭を下げ、すぐそばに乗りつけていた僕らの車に乗り込んだ。呆気にとられる報道陣を尻目に僕らは走り去った。

どうして僕が田口さんのホワイトナイト役を買って出たのか。どうしてユーチューバーが、ヒカルが、この件に首を突っ込んできたのか。だれもが疑問に思っただろう。

でもそこに深い理由はない。必然性もない。僕の動機はシンプルである。それは目立つから。話題になるから。世のなかの注目を集められるからだ。

釈放直後の田口さんの独占インタビューをYouTubeで配信しよう。田口さんは良くも悪くも時の人だ。彼の口からじかに語られる事件の説明、釈明、言い分、謝罪、不満。多くの人がそれを聞きたいはずだ。実際、山口南警察署には全国からマスコミが集まっていた。でも田口さんの声を伝えるのは彼らマスコミではない。いちユーチューバーのこの僕だ。そんなの前代未聞だろう。

■「賛否両論」というブランディング

とうぜんながらそのインタビュー動画はバズりにバズった。おかげでたくさんの広告収益が入った。こんなビビッドなことをやってのけるユーチューバーはほかにいないだろう。真似したくても真似できない。吹き荒れる賛否両論も覚悟しなくてはいけない。でも賛否両論は僕にとってブランディングだ。ヒカルはなにをやりだすかわからない――そんなブランディングである。

ヒカル『心配すんな。全部上手くいく。』(徳間書店)
ヒカル『心配すんな。全部上手くいく。』(徳間書店)

ようするに僕にとってこの件はメリットずくめだった。そしてそれは田口さんにとっても同じだ。田口さんはこの動画収益の一部を手にする。出演者なのだからあたりまえだ。今回の僕はホワイトナイトなのだから田口さんを支援する。彼はとうめん僕が出資する関連会社で働く。更生、社会復帰の第一歩だ。

もちろん彼が望むのならずっとそこで働いてもらってもいい。田口さんはまだ24歳と若い。自立し、しっかり稼ぎ、借金を返済して、だれよりも迷惑をかけたというお母さんを安心させてほしい。

そのための土台は用意した。メリットはしっかり示した。あとは田口さんしだいだ。

今回の事件で田口さんは精神的にもそうとう追い込まれた。世間からさんざん叩かれた。そして過去は消えない。でもそのマイナスをプラスに変えることはできる。もちろん平坦な道のりではないだろう。だからこそ大復活を遂げれば、そのぶんインパクトもデカい。だれかの励みにもなるかもしれない。なにより僕も鼻が高いのだ。

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ヒカル YouTuber
1991年、兵庫県生まれ。実業家。本名は、前田圭太まえだけいた。2013年、ゲーム実況チャンネル「Hikaru Games」を開設し、ユーチューバーデビュー。2016年、現在のメインチャンネルとなる「ヒカル(Hikaru)」を開設。テンポの良いトークと異彩を放つ企画で、たちまち大ブレイク。YouTubeチャンネル登録者数100万人/200万人到達の国内最速記録(当時)を打ち立てた。また、ユーチューバーグループ「Next Stageネクストステージ」を結成し、楽曲リリースやファッションショー出演など、さまざまなパフォーマンスを披露。2019年にはアパレルブランド「ReZARDリザード」を創業。若者を中心に人気を博し、実業家としても手腕をふるう。現在、「ヒカル(Hikaru)」のチャンネル登録者数は480万人、総視聴回数は42億回を超える(いずれも2022年8月時点)。国内トップクラスのユーチューバーとして活躍中。

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(YouTuber ヒカル)

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