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「急いては事をし損じる」は本当だった…「忍耐」と「我慢」の価値を知らない人は人生で失敗する

プレジデントオンライン / 2022年10月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Liubomyr Vorona

人生を成功に導くには、どうすればいいのか。全米ベストセラー『限りある時間の使い方』(かんき出版)著者のオリバー・バークマン氏は「誰もが急いでいる社会では、急がずに時間をかけることのできる人が得をする。現代社会では忍耐や我慢という言葉の価値が変わりつつある」という――。

※本稿は、オリバー・バークマン著、高橋璃子訳『限りある時間の使い方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■80歳まで「たった4000週間」という事実

突然だが、考えてみてほしい。

私たちの人生は、80歳くらいまで生きるとして、いったい何週間くらいあるだろうか?

答えは、たった4000週間だ。人間の寿命は、バカみたいに短い。

限られた人生の時間をうまく使うためには、まず「時間がある」という前提を疑い、忙しさへの依存を手放してスピード重視の生活を変えることが必要だ。

そうして、留まることで見えてくるものがある。

「忍耐」や「我慢」という言葉には、かなりネガティブな響きがある。

やりたくないことを我慢してやるのは単純に不愉快だし、何かに耐えるというのはあまりにも受動的な態度に思えるからだ。

たとえば夫が外で刺激的な生活をしているあいだ、家でじっと耐えるのが妻の美徳とされてきた。非白人は公民権を得るまでに何十年も我慢させられてきた。仕事ができても控えめで自己主張しない社員は、なかなか昇進できずに長い時間を耐えなくてはならなかった。

そういう場合、忍耐とは自分の無力さに甘んじる態度であり、いつか良い時代が来るのをじっと待つという受動的な生き方だったわけだ。でも社会が加速するにつれて、事情が変わった。

忍耐が強みになる場面が増えたのだ。

誰もが急いでいる社会では、急がずに時間をかけることのできる人が得をする。大事な仕事を成しとげることができるし、結果を未来に先送りすることなく、行動そのものに満足を感じることができる。

■忍耐を身につける3つのルール

日々の生活で忍耐力を発揮するには、いくつかのコツがある。ここではとくに役立つ3つのルールを紹介したい。

① 「問題がある」状態を楽しむ

僕たちは何か問題があると、すぐに解決済みのチェックを入れたがる。急いで問題を解決していけば、いつか「何の問題もない状態」に到達できるのではないかという幻想を抱いているからだ。

その結果、目の前の具体的な問題だけでなく、「問題がある」こと自体が問題であると感じられ、二重に苦しまなくてはならない。でも、何ひとつ問題がない状態なんて、もちろん不可能だ。なぜなら、問題のない人生にはやるべきことがなく、意味がないからだ。

そもそも「問題」とは何か? 一般化して定義するなら、それは自分が取り組むべき何かだ。そして取り組むべきことが何もなくなったとしたら、人生はまったく味気ないものになるだろう。

「すべての問題を解決済みにする」という達成不可能な目標を諦めよう。そうすれば、人生とは一つひとつの問題に取り組み、それぞれに必要な時間をかけるプロセスであるという事実に気づくはずだ。

■途中でやめることで忍耐の筋肉が鍛えられる

② 小さな行動を着実に繰り返す

心理学者ロバート・ボイスは、学者たちの執筆習慣を長年研究してきた。その結果、もっとも生産的で成功している人たちは、1日のうち執筆に割く時間が「少ない」という意外な事実が明らかになった。

ほんの少しの量を、毎日続けていたのだ。

彼らは成果を焦らない。たとえ1日の成果が少なくても、毎日コツコツ取り組んでいけば、長期的には大きな成果が出せると知っているからだ。1日の執筆時間は短ければ10分程度、長くても4時間を超えることはなく、週末はかならず休んでいた。

ボイスはこのやり方を博士課程の学生たちに教えようとしたが、みんなパニックに陥って最後まで話を聞こうともしなかった。締め切りは次々と迫ってくるのに、そんな悠長なことを言っていられない。とにかく早く論文を仕上げなくては、と。

その反応こそ、ボイスの主張を証明するものだった。学生たちは早く仕上げようと焦るあまり、適切なペース配分ができていなかったのだ。創造的な仕事には時間がかかるものだが、学生たちは実際よりも早く仕上げたいという欲求に駆られていた。

そして思い通りに進まない不快感から目を背けるために、ある日は書くのをサボり、ある日は焦って1日中ひたすら書きまくるという状態になっていた。

適切なペースをつかむためのコツは、1日に割り当てた時間が終わったら、すぐに手を止めて立ち上がることだ。

たとえエネルギーがあふれていて、もっとできると感じても、それ以上はやらない。あるプロジェクトに50分間取り組むと決めたなら、絶対に51分やってはいけない。もう少しだけやりたいという欲望は、ボイスに言わせれば、「終わらない状態への不満や、生産性が上がらないことへの焦り」を反映したものにほかならない。

途中で思いきってやめることで、忍耐の筋肉が鍛えられ、何度もプロジェクトに戻ってくることができる。そのほうが長期的に見れば、ずっと高い生産性を維持できるのだ。

テーブルを拭く女性の手元
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

■バスから降りずに乗り続けることが大切

③ オリジナルは模倣から生まれる

フィンランド出身の写真家アルノ・ラファエル・ミンキネンは、ヘルシンキのバスターミナルのたとえ話を使って、忍耐の大切さを語る。

ヘルシンキのバスターミナルには20数個のプラットフォームがあり、それぞれのプラットフォームから複数の異なる路線が出発している。そしてひとつのプラットフォームから出発するバスは、途中までまったく同じ道を走り、まったく同じバス停を経由する。

ミンキネンは写真を学ぶ学生たちに、それぞれの停留所を自分のキャリアの1年分と考えなさい、とアドバイスする。たとえば自分のアートの方向性をプラチナ・プリントのヌード写真に決めたとしよう。

コツコツと写真を撮り、3年後(つまり3つめのバス停)に、自分のポートフォリオをギャラリーへ持ち込んでみる。ところがギャラリーのオーナーは、「まるでアーヴィング・ペンの作品のコピーだね、独創性が足りないよ」と言って作品を突き返す。

「3年間を無駄にした」と落胆したあなたは、バスを降りてタクシーを拾い、もとのバスターミナルに戻る。今度は別のバスに乗り、別のジャンルの写真を撮ることにする。ところが、いくつか先の停留所で、同じことが起こる。新しい作品もまた、誰かのコピーみたいだと言われるのだ。

またバスターミナルに戻ってみるが、いつまでたっても同じパターンの繰り返しで、自分のオリジナル作品がつくれない。いったいどうすればいいのか?

「簡単なことだ」とミンキネンは言う。「バスから降りるな。バスに乗りつづけるんだよ」都市部をちょっと離れれば、ヘルシンキのバス路線は分岐して、それぞれのユニークな目的地へ向かう。そこからが個性的な仕事の始まりだ。

でもそこにたどり着けるのは、人真似だと言われてもくじけずにつくりつづけ、粘り強く技術を磨き、経験を積むことのできる人だけだ。初期の試行錯誤の段階で諦めてしまうようでは、けっしてオリジナルの作品はつくれない。

■現在地をゆっくりと楽しむ

クリエイティブな仕事に限った話ではない。人生のさまざまな局面で、僕たちは選択を迫られる。結婚するかどうか。子どもを産むかどうか。地元に残るかどうか。サラリーマンになるかどうか。

平凡な選択よりも、刺激的で独創的なことに挑戦すべきだというプレッシャーを感じることもあるだろう。しかし、平凡な道が平凡に終わるわけではない。

オリバー・バークマン著、高橋璃子訳『限りある時間の使い方』(かんき出版)
オリバー・バークマン著、高橋璃子訳『限りある時間の使い方』(かんき出版)

辛抱強くみんなと同じ道を歩んできた人だけがたどり着ける、豊かで独創的な境地というものもある。

まずは立ち止まり、その場に留まってみることだ。現実を速めようとするのをやめて、現在地をゆっくりと楽しもう。長く連れ添った夫婦のように誰かを理解するには、目の前の相手と長年結婚生活を続けなくてはならない。

ひとつの土地やコミュニティに深く根づく体験をするには、動きまわることをやめなくてはならない。

かけがえのない成果を手に入れるには、たっぷりと時間をかけることが必要なのだ。

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オリバー・バークマン ガーディアン記者
イギリスの全国紙ガーディアンの記者として、外国人記者クラブ(FPA)の若手ジャーナリスト賞などを受賞した気鋭のライター。著書『解毒剤 ポジティブ思考を妄信するあなたの「脳」へ』(東邦出版)が世界各国で話題を呼んだ。ガーディアン紙で心理学に関する人気コラムを毎週執筆中。ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルといったアメリカの有名紙、雑誌『サイコロジーズ』や『ニュー・フィロソファー』にも記事を寄せている。ニューヨーク在住。

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(ガーディアン記者 オリバー・バークマン)

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