サンドイッチは分解して食べたほうがいい…科学的に正しい「どんどん健康になる食べ方」とは
プレジデントオンライン / 2022年11月5日 18時15分
※本稿は、ジェシー・インチャウスペ『人生が変わる 血糖値コントロール大全』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■心身のあらゆる場所に影響を与える血糖値スパイク
わたしたちはよく、「何を」食べるべきか、また、食べてはいけないかに注目する。でも、「どのように」食べるかは考えているだろうか? じつは、食べ方こそが血糖値曲線に大きな影響を及ぼすのだ。
同じ食品からなる食事(つまり栄養もカロリーも同じ食事)が、食べ方によってまったく違う影響を与えることがある。それを証明した論文を読んだとき、わたしは驚愕(きょうがく)した。2015年のコーネル大学の非常に画期的な論文だ。デンプン、食物繊維、糖、タンパク質、脂肪を、正しい順番で食べると、全般的に血糖値スパイク(血中のブドウ糖=グルコースの濃度である血糖値が急激に上昇すること)が73%も減り、インスリンスパイクも48%減った。これは糖尿病の人にも、そうでない人にも当てはまる。
血糖値スパイクは、気分や、睡眠、体重、肌の状態、免疫システムの働き、心臓病のリスク、受胎率まで、あらゆることに影響するため、糖尿病の人だけでなく健康やダイエットに関心のあるすべての人にとって重要な指標だ。
では、食事の正しい順番とは? まず食物繊維、次にタンパク質と脂肪、最後にデンプンと糖である。
■食べる順番を変えるだけで糖尿病の症状が改善
研究によれば、この順番による効果は、糖尿病患者の血糖値スパイクを減らすために処方する糖尿病薬に匹敵する。2016年の注目すべき研究で、さらに決定的な結果が出た。2型糖尿病患者をふたつのグループに分け、標準的な食事を8週間、ひとつのグループは正しい順番で、他方は好きなように食べてもらった。
すると、正しい順番で食べたグループは、HbA1c値(糖尿病患者にとってはおなじみのヘモグロビンA1c検査)が著しく下がった。2型糖尿病が改善しはじめたということだ。その一方で、同じ内容で同じカロリーだが、好きな順番で食べたグループには、症状の改善は見られなかった。まさに目をみはるような発見だ。
■その秘密は消化管のメカニズムにあった
この驚異的な効果の背景には、消化管の働き方が関係している。わかりやすいように、胃をキッチンのシンクに、小腸をその下につながる排水管にたとえて考えてみよう。
食べたものはすべてシンクに入って、排水管へと流れていき、そこで分解されて血流に吸収される。平均して毎分約3キロカロリーの食物が、シンクから排水管へと滴るように流れていく(このプロセスを「胃内容排出」という)。
もしデンプンや糖が最初に胃に入ったら、すぐに小腸にたどりつく。そして小腸でグルコース分子に分解されるので、またたく間に血流に入る。これが血糖値スパイクを引き起こすのだ。炭水化物をたくさん食べるほど、また、速く食べるほど、大量のグルコースが現れて、大きな血糖値スパイクが起こる。
たとえば、お皿にパスタと野菜(ブロッコリーにする? わたしの大好物だ)がのっていて、先にパスタを食べてからブロッコリーを食べるとしよう。パスタはデンプンだから、すばやく消化されてグルコースになる。そのあいだブロッコリーは、パスタの上に「のったまま」排水管へたどりつくのを待っている。
反対に、最初に野菜を食べ、次に炭水化物を食べると、まったく違うことが起こる。まず、ブロッコリーから食べはじめよう。ブロッコリーは野菜だ。野菜にはたくさんの食物繊維が含まれている。食物繊維は消化管に入ってもグルコースに分解されない。かわりに、そのままでゆっくりとシンクから排水管へ……そして下水へと通り抜けていく。
■食物繊維がもつ3つのスーパーパワー
食物繊維には3つのすばらしい力がある。
第1に、デンプンをグルコース分子に分解する酵素、α-アミラーゼの活動を抑える。第2に、胃内容排出速度を遅くする。食物繊維があると、食物がゆっくりとシンクから排水管に流れるようになるからだ。最後に、小腸内に粘着性のある網をつくる。この網はグルコースが血流に入るのを妨げる。
このようにして、食物繊維はシンクに入ったグルコースの「分解」と「吸収」の速度を落とし、血糖値曲線を平坦にする。デンプンと糖は、食物繊維の後に食べると、体に及ぼす影響が小さくなる。食べる喜びは変わらないままで、害を減らせるのだ。
次はタンパク質と脂肪だ。タンパク質は肉、魚、卵、乳製品、ナッツ、豆などに含まれている。タンパク質を含む食品には脂肪も含まれていることが多い。またバター、油、アボカドには脂肪のほうが多く含まれている(ちなみに、脂肪にはよい脂肪と悪い脂肪がある。悪い脂肪は避けたほうがいい。悪い脂肪が含まれているのは、菜種油、コーン油、綿実油、大豆油、紅花油、ひまわり油、ブドウ種子油、米油など、水素化された調理用精製油だ)。
脂肪を含む食品も胃内容排出の速度を落とすので、炭水化物の後より、前に食べるほうが、血糖値曲線を平坦にするのに役立つ。つまり、ほかのものをぜんぶ食べた後で、炭水化物を食べるのがベストだ。
■空腹を知らせるホルモンの分泌にも違いが出る
グルコースが血流に入る速度が遅くなるほど、血糖値曲線は平坦になり、気分もよくなる。まったく同じものを食べても大丈夫。ただ炭水化物を最後に食べれば、心身の健康に大きな違いをもたらすことができる。
そのうえ、正しい順番で食べると、すい臓がつくるインスリンの量も減る。そして、インスリンが少なければ、すばやく脂肪燃焼モードに戻ることができ、さまざまなプラス効果が生まれる。体重減少もそのひとつだ。
減量のためにこのテクニックをためした57歳のバーナデットは、血糖値スパイクが小さくなり、血糖値の下がり方がゆるやかになった。午後の空腹感や疲労感もなくなった。ジェットコースターがゆっくりと止まったのだ。
空腹感の改善については科学的に説明できる。コーネル大学の研究チームによれば、よくない順番で(デンプンや糖を最初に)食べると、空腹を知らせるホルモンの「グレリン」が、わずか2時間後に食前の値に戻るという。しかし、正しい順番で(デンプンや糖を最後に)食べると、グレリンは長時間抑えられる(研究チームは3時間後までしか測定しなかったが、その推移から、5~6時間抑えられると考えていいだろう)。
■「分解サンドイッチ」で心身ともに快調に
更年期の女性の場合、血糖値スパイクを抑える食事によって、不眠症が減ることも研究でわかっている。そのうえ、よく眠れると、よい選択ができ、自分のためになることをしたいと思うようになる。バーナデットも同じで、午後の散歩までするようになった。
バーナデットのやり方はこうだった。たとえば、サンドイッチは分解して皿に乗せ、最初にサラダとピクルス、次にツナ、それからトーストを食べた。夕食のメニューはいつもステーキ、野菜、パスタと決まっていて、野菜と肉を先に食べ、パスタを最後に食べた。食べる量はまったく変えず、食べる順番だけを変えただけだ。
これまででいちばん楽なダイエットを始めて9日後、バーナデットはジーンズがゆるくなったことに気づいて、体重計に飛びのった。驚いたことに、約2キログラムも減っていた。ほんの1週間強で、更年期以降についた体重の約3分の1が、努力もせずに落ちたのだ。
体という操縦室では、グルコースのレバーを正しい位置にすることが、わたしたちにできる最強の解決策だ。効果はてきめんで、思いがけず減量できることもある。もうおわかりのように、それは、正しい順番で食べるというごく簡単なことから始められる。
■食べる順番による血糖値コントロールについてのQ&A
ここで、いくつかの疑問に答えていこう。
Q.それぞれの食品を食べる間隔は?
臨床の場で、さまざまな場合が検証されている。0分、10分、20分あけるなど、どれも効果があるようだ。デンプンと糖を最後に食べるかぎり、続けて食べても血糖値曲線は平坦になるだろう。わたしはひとつの食品群を食べたら、すぐに次を食べている。
Q.食事にデンプンや糖が含まれていなかったら?
食事にデンプンや糖が含まれていなければ、もちろん血糖値の上昇はゆるやかになる(タンパク質もいくらかグルコースに変わるが、炭水化物よりずっと少ない)。それでも、先に野菜を食べて、次にタンパク質と脂肪を食べるほうが体にいい。
Q.いつも正しい順番でなくてはいけない?
本書のテクニックをどう使うかは、あなた次第だ。わたしの場合、やりやすいときは正しい順番で食べている。でもカレーやパエリアなど、野菜、タンパク質、脂肪、炭水化物が混ざっていて、分けるのが難しいときは気にしない。先に野菜を数口食べてから、後はそのまま一緒に食べることもある。
大事なのは、デンプンと糖をできるだけ後のほうで食べるのがベストだということだ。そして、少しくらい変えてもかまわない。まず野菜を食べ、次にデンプンとタンパク質と脂肪を一緒に食べても効果があるし、野菜を最後に食べるよりはずっといい。
グルコースを最後に食べるのがいちばんいい。お皿にのっている野菜から始めて、次に脂肪とタンパク質、最後にデンプンと糖を食べよう。お腹がすいているときは、すぐに炭水化物に手を伸ばしたくなる。でもこのテクニックを使えば、やがて渇望を抑えられるようになる。
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ロンドン大学キングス・カレッジで数理科学学士、米ジョージタウン大学で生化学修士の学位を取得。シリコンバレーにある遺伝子分析の新興企業での仕事を通じて、遺伝子より食習慣のほうが健康には重要だと気づく。血糖が心身にもたらす大きな影響を紹介し、好きなものを食べながら血糖値を最適にするテクニックを伝授するインスタグラムが世界中で話題に(105万フォロワー、2022年9月現在)。
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(生化学者、著述家 ジェシー・インチャウスペ)
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