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10万人の胃腸を診た専門医が勧める「飲んでも太らず、二日酔いにならない」最強のおつまみ

プレジデントオンライン / 2022年11月5日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

忘年会シーズン。お酒を飲んでも太らない、二日酔いにならない方法はないか。これまでに10万人の胃腸を診てきた消化器専門医・福島正嗣氏は「お酒を飲んで太るのは、アルコールによって刺激された食欲が暴走し、炭水化物を欲して食べてしまうため」で、問題は“おつまみ”だと指摘する。糖質の過剰摂取に警鐘を鳴らす著書『朝食にパンを食べるな』に書ききれなかった、肝臓にやさしいお酒の飲み方を特別公開する――。

■糖質制限を始めてから二日酔いがなくなった

飲み過ぎて次の日に二日酔いになるという経験は、多くの人にあるでしょう。翌日の仕事に影響したり、せっかくの休日を台なしにしてしまうため、極力避けたいのが本音です。

私もお酒が好きなので、これまでにお酒を飲み過ぎて体調を崩すという失敗を、何度も繰り返してきました。

ところが、10年前に「あるもの」をやめてから、状況は大きく変わりました。

あるものというのは、「炭水化物」です。

お酒の量は変わらない、もしくは増えたのに、飲酒中に糖質、炭水化物を食べないようにしてから、翌日吐くようなひどい二日酔いがなくなったのです。もちろん、飲み過ぎれば翌日にお酒が残った感じはあるものの、寝込むことはありません。

これには肝臓の代謝が作用していると考えられます。

■飲酒時の炭水化物が肝臓に負担のワケ

みなさんご存じのように、アルコールの分解を担っているのは肝臓です。この肝臓は、消化吸収した糖質をブドウ糖(グルコース)に分解し、脂肪として蓄積する働きも担っています。

しかし、お酒も加熱処理された穀物もなかった原始の頃の人間にとって、グリコーゲンを中性脂肪に変換する仕事もアルコールを分解する仕事も、本来は頻繁に行われるものではなかったはずです。

つまり、飲酒時の肝臓は、食生活の進化によって、かつてはそんなにしていなかった仕事を、大量にやらされている状態なのです。

このためアルコールを飲む際には、肝臓に負担をかけないためにも、炭水化物や加糖飲料などの糖質はできるかぎり控えるべきです。

人間にとってお酒は、糖質と同じように、大量に摂取することを想定されているものではありません。ですから、お酒を飲むのであれば、ルールを守ることで、飲酒のデメリットを軽減することはできます。

■お酒だけで太るワケではない

アルコールを飲むと空腹感が増すという経験は、誰にでもあると思います。「アルコールを飲むと太る」と考えている人は多いですが、実際はアルコールによって刺激された食欲が暴走し、とくに炭水化物を中心とした食事を欲して食べてしまうために太るのです。

では、なぜアルコールを飲むと食欲が増大するのでしょうか?

それには血糖値の低下と食欲をコントロールするホルモンが関連していると考えられています。

アルコールを飲むと、タンパク質や脂質など糖質以外の栄養素から糖をつくり出す「糖新生」が抑制されるために血糖値が低下し、その反動で食欲が増すとされています。

アルコールは肝臓でアセトアルデヒドから酢酸に変わり、最終的に二酸化炭素と水になります。この際に、アルコール脱水素酵素はNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)を補酵素として大量に消費します。

このNADが不足すると肝臓での糖新生のサイクルも抑制され、結果的に血糖値が下がります。血糖値が下がれば自然と食欲が刺激され、多食につながっていきます。

また食欲は、ホルモンによってもコントロールされています。

食欲に関わるホルモンには食欲促進系と抑制系とがあるのですが、飲酒をすると食欲促進因子のグレリン、ガラニン、オピオイドの分泌が促進され、食欲抑制因子のレプチン、インクレチンの分泌は抑制されます。

この作用により食欲は暴走してしまうのです。

つまり、「お酒を飲むと太る」というのは、アルコール自体のカロリーで太るというより、アルコール摂取により副次的に起こる血糖値低下や、食欲を司るホルモンバランスの変化によって多食になることで起こるのです。

■二日酔いを防ぐために摂りたい栄養素とは

先ほど述べたとおり、アルコールと炭水化物を一緒に摂取すると、肝臓はブドウ糖(グルコース)から中性脂肪への変換とアルコール自体の分解の二つの仕事を行うことになります。

人体にとっては、高血糖もアルコール濃度が高い状態も、生命活動上すぐに対処しなければ命に関わる緊急事態です。この二つの緊急事態を一気に対処しなければならないため、肝臓には大きな負担がかかります。結果的に、アルコール分解が十分に行なわれなくなり、二日酔いになるわけです。

このため、二日酔いを予防するためにまず必要なことは、飲んでいる最中は血糖値を上げる糖質や炭水化物は極力避けること。そして、アルコールの分解を助けてくれるビタミンやミネラルを積極的に摂取することが重要になります。

■ビールがダメでワインはおススメのワケ

最初から最後までずっとビールを飲み続けるという人も少なくないと思いますが、ビールの飲み過ぎによる二日酔いは、ただごとではありません。なぜなら、ビールは糖質が多い飲み物だからです。

最近では糖質オフのビールもあるので、そちらを飲むようにするか、ウイスキーや焼酎をベースとしたハイボールやウーロンハイなどに変更したほうがいいでしょう。

醸造酒は一般的に糖質が多いため、日本酒などもできれば多飲することは避けたいお酒です。

醸造酒でも赤ワインは糖質が少ないのでおすすめですが、私の経験では白ワインも日本酒に比べれば影響は少ないようです。

実際、海外の研究では、ワインは血糖コントロールに有利という論文も発表されています。また、ワインを飲む際には、一緒に食べるつまみに野菜や鶏肉、チーズなどの血糖値を上げにくい食材を自然と選ぶようになるためお勧めです。

カクテルに関しては、アルコール以外の成分が重要となります。

とくにフルーツ系の果汁を含むカクテルは避けたほうが無難です。オレンジなどの果糖は血糖値を上げませんが短時間で中性脂肪になるため、飲酒時には肝臓に負担がかかります。お酒を割る場合は水やお湯、炭酸、ウーロン茶などがいいでしょう。

■積極的に食べたいつまみは海藻類や貝類

お酒を飲む際のつまみは、何を食べるかによって悪酔い防止にもつながるので重要です。低糖質のつまみを選ぶのは当然として、アルコール分解にともなうミネラル不足を補うために、積極的に摂取したい食材があります。

それは魚、貝類、海藻類です。

魚介類は牛肉や豚肉よりカリウム、マグネシウム、亜鉛などのミネラルが豊富に含まれています。これらのミネラルはアルコールを分解するために重要な要素です。

私自身はお酒を飲むときは、なるべく刺身、とくに青魚を中心に食べて、海藻類も積極的に摂取しています。アサリやハマグリのお吸い物や酒蒸しもお勧めです。

あわせて、野菜も積極的に食べるとカリウムも摂取できるので、さらにいいでしょう。

つまみの定番ともいえるスナック類は、糖質の摂り過ぎになります。とくにポテトチップスや柿の種などのスナックは、普段でさえ気がついたら想定以上に食べてしまう食べ物なのに、飲酒時に食べるとさらに食欲を暴走させます。このようなスナック類は、極力食べないことが重要です。

特にビールを飲むときには揚げ物やスナック類を選ぶ傾向が強くなるため、注意が必要です。

食感のいい食べ物が欲しいときには、ナッツ類やさきイカ、ビーフジャーキーなどがお勧めです。歯ごたえがあるので満足感もあります。

■〆のラーメン、そば、うどんは絶対にNG

飲んだあとの「〆」といえば、ラーメンでしょう。これこそ、背徳感の極致と言ってもいいかもしれません。

そもそも、お酒を飲んだあとに、ラーメンを食べたくなるのはなぜでしょうか?

一つは、アルコールを飲むことにより、先述した糖質以外の栄養素から糖をつくり出す「糖新生」が抑制され、血糖値が低下傾向になることが原因です。もし炭水化物を食べずにアルコール(糖分の入っていない)だけを飲むと、肝臓でアルコールの分解が優先されるため、肝臓での糖新生が抑制され血糖値が下がります。この瞬間に激しく炭水化物を欲するようになります。

もう一つの理由は、アルコールには利尿作用があるため、多くの水分や塩分が失われるからです。脱水に加えてナトリウムの欠乏もあり、塩分が濃いスープを飲みたくなるのです。

ラーメンやそばは、どちらもその要望を満たす料理なので、欲しくなるのだと考えられています。

しかし、〆のラーメンの麺は胃での消化が悪いだけでなく、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」を引き起こすという意味でも最悪です。二日酔い防止を考えても、これだけは極力避けるべきです。

ただし、スープだけなら問題は少ないので、可能であれば麺はなしにしてもらうか、味噌汁を飲んで食欲を解消することをお勧めします。

鹿児島県の和食
写真=iStock.com/Pierre Aden
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pierre Aden

■お酒は体に悪いのか

「酒は百薬の長」という格言もある一方、お酒の飲み過ぎで肝臓がんや食道がんになって亡くなる人もいます。「お酒は体にいいのか、悪いのか」という議論は昔からありますが、ここでは生理学的な視点から考えたいと思います。

結論から言えば、「体に負担のない程度のお酒は体にいい影響があり、飲み過ぎれば悪影響しかない」が答えになるでしょう。

少量のお酒が体にいい理由は、先述した「糖新生」の回路を抑制する生理学的な事実に基づきます。

普段お酒を飲まない状況で食事をした場合、食事由来の血糖値の上昇と、タンパク質や脂質から糖をつくり出す糖新生という回路が同時に働いています。このため実際の血糖値は、純粋な食事由来より糖新生の糖質も加わって高めになります。

ところが、そこに若干のお酒が加わると糖新生が抑制されるため、血糖値の上乗せがなくなるぶん血糖値も穏やかになり、長寿のさまたげになる追加インスリン分泌も少なくなります。これが少量のお酒はむしろ体にいいという理由です。

これに対し、大量に飲酒した場合は、アルコール脱水素酵素が枯渇してしまいます。枯渇した場合、先ほどの軽めの飲酒のときのように糖新生が抑制されるため血糖値が上がりづらくなります。

しかし、軽めの飲酒時よりも糖新生が抑制されるため、体脂肪が分解されなくなるという事態も発生します。体脂肪が分解されないと、やがて脂肪肝になります。

まれに糖質制限をしているのに脂肪肝が改善しない人がいますが、その場合はアルコールの摂取量が多すぎる可能性があります。

■お酒を飲みたければ糖質をあきらめる

「酒は百薬の長」という格言は、けっして間違っているわけではありません。薬になるか毒になるかは、アルコールの量によります。もちろん、多ければ害にしかならないとわかってはいても、飲酒量をコントロールするのは簡単ではないでしょう。

とくに日本人は、仕事や家庭のストレスをお酒で発散するという考え方が定着しているため、お酒は健康のために飲むと考えているヨーロッパに比べると、飲酒量が多くなる傾向もあるようです。

福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)
福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)

このため、ある程度飲み過ぎても、体に負担をかけないように普段から血糖値を上げない食事をしたり、飲酒時に甘いお酒は避けたり、炭水化物の同時摂取を極力避ける必要があります。

私も患者さんには、「お酒が人生にとって大事なら、飲酒時には糖質をあきらめてください」と説明しています。それが守れれば、お酒の害は思ったほどひどくはありません。

ただし、日本人はお酒を分解する酵素が少ないというデータもあるので、飲酒して真っ赤になる人や、すぐに泥酔してしまう人は控えたほうが無難でしょう。

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福島 正嗣(ふくしま・まさつぐ)
医療法人社団正令会みらい胃・大腸内視鏡クリニック理事長兼院長
1993年、聖マリアンナ医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センター外科に入局後、主に消化管および肝胆膵の悪性疾患の手術を担当。2017年に内視鏡検査専門のみらい胃・大腸内視鏡クリニックを設立、現在に至る。これまでに消化器外科手術2000件、胃内視鏡検査6万件、大腸内視鏡検査3万件の実績を誇る。40歳から糖質制限を始めて肥満や脂質異常症を克服し、自身の体験もベースに多くの患者さんに薬以外の治療として食事指導を行なって成果を上げている。

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(医療法人社団正令会みらい胃・大腸内視鏡クリニック理事長兼院長 福島 正嗣)

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