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「朝食に甘いシリアル」は科学者から見ればNG…食べ物を「カロリー」だけで判断してはいけないワケ

プレジデントオンライン / 2022年11月6日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/WillSelarep

食品には「カロリー」が表示されている。これは何なのか。血糖値の研究者ジェシー・インチャウスペさんは「カロリーは発生する熱を測ったものにすぎない。同じカロリーでも、果糖と脂肪とタンパク質の作用はまったく違う。食品のカロリーは減量や健康の指標にはならない」という――。

※本稿は、ジェシー・インチャウスペ『人生が変わる 血糖値コントロール大全』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■「カロリー」とはそもそも何なのか

もし、あなたがいまだにカロリー計算をしているのなら、摂取したり燃焼したりするカロリーのタイプについて、もっと理解する必要がある。

たとえばドーナツのカロリーを測りたいなら、次のように行う。ドーナツを乾燥させ、容器に入れて水槽に沈める。それからドーナツに火をつける(もちろん、本当だ)。そして、まわりの水が何度上昇するか計測する。温度変化と、水槽の水の量、水のエネルギー容量(1グラムを1度上げるのに必要な熱量で、水の場合は1カロリー)を掛けあわせれば、ドーナツのカロリー数がわかる。

だから、「このドーナツと、このギリシャヨーグルトのカロリーは同じだ」と言うとき、本当は「このドーナツと、このギリシャヨーグルトは、燃やしたときに水を同じ温度まで上げる」と言っているのである。

この装置は熱量計と呼ばれ、1780年に発明された。これを使って、あらゆるもののカロリーを測ることができる。蒸気機関車でおじいさんが火にくべていた石炭は、0.45キログラム(1ポンド)当たり、なんと350万カロリーにも達する(ゆっくり燃えて、たくさんの熱を出すからだ)。一方、500ページの分厚い本は、水を温めるのにたいして役に立たない。含まれるカロリーは、たったの0.5カロリーである(本はあっという間に灰になるし、その過程であまり熱を出さない)。

いずれにせよ、カロリーは発生する熱を測ったものにすぎない。

■同じカロリーでも体にいい「分子」と悪い「分子」がある

食品をカロリー含有量で評価するのは、本をページ数で評価するようなものだ。100カロリーの果糖、100カロリーのグルコース(ブドウ糖)、100カロリーのタンパク質、100カロリーの脂肪は、燃やせば同じ量の熱を出すかもしれないが、体への影響は大きく違う。それは「分子」が違うからだ。

【図表1】カロリーは同じでも体への影響はまるで違う
出所=『人生が変わる 血糖値コントロール大全』

2015年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームは、まったく同じカロリー量を食べていても、食べる「分子」を変えると病気を治すことができると証明した。たとえば、果糖のカロリーは、グルコース(ブドウ糖)のカロリーより体に悪いことがわかった(果糖はグルコース以上に炎症を引き起こし、細胞を老化させ、しかも脂肪に変わりやすい)。

この研究には、肥満のティーンエイジャーの被験者もいた。彼らは果糖のカロリーをグルコースのカロリーに置き換えて食べるよう指示された(つまり、ドーナツのような果糖を含む食品のかわりに、ベーグルのように果糖を含まずグルコースを含む食品を食べた)。摂取するカロリー量は変わらない。すると、彼らの健康が改善したのだ。血圧が改善し、中性脂肪とHDLの比(心臓病の重要な指標)も改善した。そして、脂肪肝や2型糖尿病もよい方向へ進みだした。健康上のこの大きな変化は、たったの9日間で起こった。

結果は決定的だった。100カロリーの果糖は、100カロリーのグルコースより体に悪い。つまり、常に甘いものよりデンプン質のものを食べるほうがいい。

もしこの研究で、果糖をタンパク質や、脂肪、食物繊維に変えていたら(たとえば、被験者がドーナツのかわりにギリシャヨーグルトや焼きブロッコリーを食べていたら)、もっと大きな効果が出ていたことだろう。

■カロリーより「血糖値曲線」に気をつけたほうがやせられる

これでもう、わかってもらえたはずだ。カロリーを減らせば健康になるというわけではない。同じカロリーを食べていても、その分子を変えると、体調はよくなっていくのだ。

では、減量については? 減量こそがカロリー制限の目的だろう。だれもがそう思ってきたはずだ。ところが、この神話も崩れさった。さきほどの研究にそのヒントがある。何人かのティーンエイジャーの被験者が、以前と同じカロリーをとりながら体重が減りはじめたからだ。ありえないって? いや、長年聞いてきた話には明らかに反するが、実際に起こったのだ。

スマホのアプリで血糖値を測定する人
写真=iStock.com/AzmanJaka
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AzmanJaka

それどころか、最近の研究で、血糖値曲線が平坦な人はカロリーをたくさんとっても、カロリー摂取量は少ないが血糖値曲線が平坦でない人より、脂肪が減りやすいことがわかっている。ミシガン大学の2017年の研究によれば、肥満の被験者のうち、一方のグループが血糖値曲線を平坦にするように努めると(他方より多くのカロリーをとっていても)、カロリー摂取量は少ないが血糖値を気にかけなかったグループより、体重が減少した(前者の約7.7キログラムに対し、後者は1.8キログラム)。

インスリンも関与している。血糖値が下がると、インスリンも下がる。減量に関する研究60件を分析した2021年のレビュー研究によれば、体重減少の前に、まずインスリン値が減少することがわかっている。

■怖がらなくていいカロリーもある

実際、血糖値曲線が平坦になるよう心がけていれば、カロリーをまったく無視していても体重が減るようだ。とはいえ、多少の分別はわきまえてほしい(もし1日1万キロカロリーのバターを食べたら、血糖値曲線が平坦なままでも体重は増えるだろう)。血糖値スパイク(血糖値の急激な上昇)を起こさないよう気をつければ、カロリー計算をせずに満腹になるまで食べても、体重は減っていく。

血糖値スパイクを抑えるカロリーなら、つまり分子が食物繊維や脂肪やタンパク質なら、怖がらずに食事に加えることができる。ドレッシングをかけたサラダを添えた場合、そのカロリーは役に立つ。血糖値とインスリン値を低く抑えるし、サラダの後で食べる食品のカロリー吸収も減らすからだ(食物繊維がつくる網のおかげである)。結果として、長時間お腹がすかず、たくさんの脂肪を燃やすことができ、体重も増えずにすむ。

この論理を裏返せば、食事にグルコースや果糖を加えると血糖値スパイクが増えるので、体重や炎症が増え、満腹感が減る。

■科学者から見ればNGな「朝食に甘いシリアル」

カロリーはみな同じではないという事実は、加工食品業界が必死でごまかそうとしていることだ。この事実はカロリー計算の陰に隠れてしまう。カロリー計算によって、大量の果糖から注意をそらすことができるからだ。果糖はグルコースと違い、筋肉のエネルギーとして燃やすことができず、消化後にほぼすべてが脂肪になる。

ジェシー・インチャウスペ『人生が変わる 血糖値コントロール大全』(かんき出版)
ジェシー・インチャウスペ『人生が変わる 血糖値コントロール大全』(かんき出版)

今度食料品店に行ったら、菓子の箱や袋に印刷された「キャッチコピー」を見てみよう。わたしの言っていることがわかるはずだ。食品メーカーは、カロリーはみな同じだと力説する。真実は彼らの利益を脅かすからだ。簡単なトリックである。

まさにこの方法で、スペシャルK(アメリカのケロッグ社のシリアル)は商業的に成功し、典型的な減量シリアルとして消費者に受け入れられた。パッケージには誇らしげに「たった114キロカロリー!」と宣伝文句が書かれている。

わたしたちは、それについてよく考えもしなかった。また、スペシャルKはカロリーが比較的少なくても、砂糖がコーンフレークのようなほかのシリアルの2倍も含まれていることを知らなかった。114キロカロリーの糖とデンプンが、血糖値スパイクやインスリンスパイクを引き起こし、卵やトーストの114キロカロリーより体重を増やすことも知らなかった。そして朝食のスペシャルKの114キロカロリーが、わたしたちをグルコースのジェットコースターに乗せ、1日中渇望をもたらすことも。

しかし今、持続血糖測定器と好奇心に満ちた科学者たちのおかげで、朝食のシリアルは間違いなく、絶対に、1日を始めるためのよい方法ではないという証拠を、わたしたちは握っているのだ。

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ジェシー・インチャウスペ 生化学者、著述家
ロンドン大学キングス・カレッジで数理科学学士、米ジョージタウン大学で生化学修士の学位を取得。シリコンバレーにある遺伝子分析の新興企業での仕事を通じて、遺伝子より食習慣のほうが健康には重要だと気づく。血糖が心身にもたらす大きな影響を紹介し、好きなものを食べながら血糖値を最適にするテクニックを伝授するインスタグラムが世界中で話題に(105万フォロワー、2022年9月現在)。

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(生化学者、著述家 ジェシー・インチャウスペ)

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