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「セックスにおすすめなのは朝か昼」話題の奇書『射精道』を書いた不妊治療の専門医が断言するワケ

プレジデントオンライン / 2022年11月6日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/franckreporter

妊活がうまくいかないときはどうすればいいか。近著『射精道』が話題の生殖医療専門医・今井伸さんは「不妊カップルのなかには、そもそもセックスの回数が少なすぎる夫婦が意外に多い。改善に必要なのは医学的な治療よりむしろ、夜にこだわらず、朝や日中に機会をみつけてセックスをすること」という──。(第1回/全2回)

■「セックスは夜にするもの」という“思い込み”

僕はこれまで生殖医療の専門家として、たくさんのご夫婦の不妊治療に関わってきました。また、日本性科学会の認定セックスカウンセラーとして、セックスレスカップルのご相談に乗ることもありました。

そうしたご夫婦に共通して提案していることがあります。それは、「夜にこだわらず、朝や日中に機会をみつけてセックスをしてください」ということです。

そもそも、子どもができないのも、セックスの機会を失っていくのも、「セックスは夜にするもの」というバイアスが原因になっていることが少なくないからです。

■妊活夫婦の盲点「そもそもセックスが少ない…」

男性不妊、女性不妊、またはその両方など、子どもができない原因はご夫婦によってさまざまですが、意外な盲点となっているのが、そもそものセックス回数の少なさなのです。

診察室へやってきた不妊カップルは、当然ながらほぼ全員が「頑張って妊活しているのに子どもができません」と訴えてきます。ところがその割に、セックスの回数を聞くと「月に2~3回です」と答える夫婦がとても多いのです。

排卵のタイミングを狙いすましている、もしくは、「間を空けた(禁欲した)ほうが精子が濃くなるから」といった間違った思い込みで、セックスの回数を制限している夫婦もいました。

はっきりいって、月に2~3回のセックスで妊娠しないから「不妊治療が必要だ」と考えるのは、早計といえます。

■日本人の回数は世界平均の半分以下

もともと、日本人のセックスの回数は世界的にみてもたいへん少ないというのは、皆さんもよく耳にしていることと思います。

イギリスのコンドームメーカーのDurex社が行った「グローバルセックスサーベイ」(2005年)によると、日本人が1年間に行う平均性交回数は45回。およそ8日に1回でした。これは、調査対象41カ国中最低で、しかも世界平均は年に103回(およそ週2回)ですから、その半分以下という結果です。

しかも、その傾向は、妊娠を目指しているカップルでも同様です。

女性向け健康情報サイト「ルナルナ」が2015年に行った調査では、妊活中のセックスの回数で「月3~4回」と解答した夫婦が36.9%と最も多く、次いで「月5~6回」が21.6%、「月1~2回」が21.5%、「月7回以上」が17.7%でした。

■妊娠のためには週2回、月8~9回以上は“したい”

日本産科婦人科学会では、不妊症の定義を「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交しているにもかかわらず、一定期間(1年間)妊娠しないもの」と定義しています。

性交の回数については定義されていませんが、世界平均で考えれば週に2回、月に8~9回のセックスをしていなければ、「妊娠に向けてのセックスをしている」ことにはならないということになります。

ところが実際には、妊活カップルの8割がそれに足りていないという結果でした。

つまり、本当に夫、妻が不妊症かどうか判断をするのに十分なセックスの回数をしていない──“はてなマーク付き”の不妊症夫婦が多数存在しているということです。

■「週3回以上」で、半年後約半数の夫婦が妊娠できる

1953年に出版された『日本人の性生活』(篠崎信男著、文芸出版社)によると、当時の子どもの数は平均2.6人。そして、新婚カップルのセックスの回数は週平均3.9回でした。

だいたい1日おきにセックスをして、子どもが2~3人いるというのが、「平均的な家庭」だったのです。

実際に、セックス回数が多いほど妊娠率は上昇し、週3回以上のセックスで半年後の妊娠率が50%を超えるという研究報告もあります。

排卵日を狙うことももちろん有効ですが、あまり気にせず、とにかく頻回のセックスをすることで、妊娠チャンスは格段に増えるということです。

■「夜は疲れて寝てしまう」「子どもが気になる」

僕がそうしたご夫婦に「もっとセックスをしてください。週に2回以上、1年以上継続することが必要です」とお伝えすると、ご夫婦共たいてい困り顔になります。

「わかっているけど、仕事で疲れていて、夜はすぐに寝てしまうんです」
「子どもが最中に起きてくるのではとヒヤヒヤしちゃって……集中できません」

最近は共働き夫婦が当たり前ですし、定時で帰宅して夜はのんびりした時間をたっぷり確保できるという家庭は少数派でしょう。

白いテディベア
写真=iStock.com/Lusyaya
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Lusyaya

また、小さい子どもがいる場合には、夜はもっと慌ただしくなりますし、最近の子どもは宵(よい)っ張りですから、寝静まるのを待っていると夜も更けて「明日の仕事もあるから早く寝たい」となっても無理はありません。

■セックスにおすすめなのは「朝」と「昼」

セックスレス夫婦も同様です。

実は、セックスレスの原因に「子どもが気になってできないから」というケースが少なくないのです。「子どもの声が聞こえたとたん、萎(な)えてしまって……」という悩みを抱る男性はたくさんいます。

そんなとき、僕はいつも「夜にこだわらず、朝や日中に機会をつくってください」とアドバイスしています。

意外なことに、「夜にするもの」と思い込んでいる人は意外に多く、そのために機会を失って、妊活どころかセックスレスに突入──となってしまうことにも。

■「思い込み」を捨てると楽になる

1日の疲れがどっとたまっている夜より、睡眠をとって疲れが回復した朝のほうが、実はセックスには向いています

休日の前夜は、それを楽しみに早めに夫婦で床に入り、子どもが起きる前にセックスをするのもおすすめです。また、子どもが遊びに行っている日中に、夫婦でラブホテルへ行くのもよいでしょう。

最近は夫婦でテレワークをしているケースもありますから、昼食後のリフレッシュとしてセックスを楽しむのも一案です。

いずれにしても、「セックスは夜にするもの」という思い込みを捨てると、意外に多くの機会がみつかるものです。時間に縛られずに、機会や環境を探してみてください。

■20~40代男性に多い「心因性ED」

EDは中高年に特有の問題と思われがちですが、若い世代でもEDに悩む男性は少なくありません。なかでも、20~40代の比較的若い男性に多いのが心因性EDです。

40歳以上のED患者は心因性EDが40.7%、器質性EDが59.3%であるのに対し、40歳以下の患者は心因性が85.2%、器質性EDが14.8%という調査報告があります。つまり、若い世代のEDの原因の多くは精神的なストレスだと考えていいでしょう。

仕事や家庭内でのストレスのほか、妊活中の男性の場合は「排卵日にセックスをしなければいけない」というプレッシャーが原因になることもあります。

意外と知られていませんが、男性の勃起(ぼっき)は、体がリラックス状態の際に働く「副交感神経」が優位のときでないと得られません。一般に、性的な興奮で勃起は起こるため、精神的にも肉体的にも攻撃的な際に働く「交感神経」が優位なときに反応が起きているように思えますが、実際は真逆なのです。

気持ちも体もリラックスさせることが、セックスには必須の条件であると考えてください。

■セックスは2人で楽しむもの

妊活に責任を感じている真面目な夫ほど、「必ずセックスをしなくてはいけない」と緊張してしまいがち。

今井伸『射精道』(光文社新書)
今井伸『射精道』(光文社新書)

そのため「排卵日はあえて気にすることはやめましょう。週に2~3回、ただセックスを楽しむようにしてください」と、僕はアドバイスするようにしています。

また、パートナーの女性にも「ピンポイントでセックスの日を指定すると緊張してしまうので、はっきり告げずに、排卵日前後の性交回数を自然に増やしていきましょう」とお話ししています。

また、もし排卵日にパートナーの男性がうまくセックスができなかったとしても、それを責めたり、嫌みをいったりすれば、男性はさらに緊張するようになってしまいます。

そうした場面では、「そういう日もあるよね」と穏やかにサラリと受け流すこと。そして、排卵日にこだわり過ぎず、チャンスがあれば2人のセックスを楽しむという余裕を、夫婦共に持ってほしいと思います。

■どんどん射精をするほうが良い精子になる

「そんなに回数を増やしたら、精子の数が減りませんか?」といった質問をされる方がときどきいます。しかし、実は「よい精子は頻回に宿る」というのが正解です。

先述したように、禁欲期間を長く設けたほうが「精子が濃くなる」と思い込んでいる人が意外と多いのですが、それは正しくありません。

延べ9489件の精液検査データを解析した研究によると、精子の数が少ない男性は禁欲期間を1日とした場合に最も精子運動率がよく、0~2日とした場合に正常形態精子が最も多くなりました。逆に、禁欲期間が11日以上になると、精子運動率と正常形態精子が共に低下したのです。

このことから、禁欲せずにどんどん射精をするほうが良い精子になる、と考えてよいでしょう。

■精子の質を悪くする習慣

ちなみに、精子に悪影響を与えるのは精神的ストレスに限りません。精巣を過度に温めることも、精子に悪影響を与える大きな要因になります。体に精巣を密着させるようなタイトなトランクス、サウナや長風呂、ひざ上にパソコンを乗せて作業するといったことは、妊活中は避けたほうが無難です。

また、近年は喫煙者がめっきり減りましたが、タバコも精子の質を悪くします。

不妊治療で僕のところに受診されたある30代男性は、自他共に認めるヘビースモーカーで、1日30本以上吸っていました。

この男性の精液を検査してみたところ、正常値1500万/mL以上といわれる精子濃度が、100万/mL以下という結果に。

正常値の15分の1以下という数字にショックを受けた男性は、すぐに禁煙をスタート。半年後の再検査では、無事、精子濃度が6000万/mLと正常レベルに回復していることが確認できました。

その男性は勃起には問題なく、セックスも普通にできていたため、「子どもができない原因がまさか自分にあるとは思わなかった」と話していました。

■不妊原因を持つ確率は男女でほぼ同率

このヘビースモーカーの男性のように、世間では「不妊」というと「女性に原因がある」と考えてしまいがち。しかしWHO(世界保健機関)の調査では、不妊原因を持つ確率は男女でほぼ同率であることがわかっています。

子どもがなかなかできないとき、たとえ男性の勃起や射精に問題がなくても、男性側に原因がある可能性も十分にあります。

不妊治療を始めるときは、夫婦共に検査を受けることが必須と考えてください。

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今井 伸(いまい・しん)
聖隷浜松病院リプロダクションセンター長
1971年島根県生まれ。聖隷浜松病院総合性治療科部長。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本性機能学会専門医・代議員。日本生殖医学会生殖医療専門医。日本性科学会幹事、同会認定セックス・セラピスト。日本思春期学会理事。島根大学医学部臨床教授。’97年島根医科大学(現・島根大学)医学部卒業後、同大学附属病院を経て聖隷浜松病院に勤務。専門は性機能障害、男性不妊、男性更年期障害。講演会や各メディアを通じ正しい性知識の普及に努める。共著に『中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド』(日本評論社)、『セックス・セラピー入門』(金原出版)、『中高年のための性生活の知恵』(アチーブメント出版)、監修に『シニア世代の愛と性セックス』(平原社)など。

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(聖隷浜松病院リプロダクションセンター長 今井 伸)

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