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「果物はヘルシー」というイメージは大間違い…「朝食にスムージー」が科学的に危険といえるワケ

プレジデントオンライン / 2022年11月9日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/luza studios

朝食はなにを食べればいいのか。血糖値の専門家であるジェシー・インチャウスペ氏は「シリアルやスムージーは大きい血糖値スパイクを引き起こす。血糖値曲線を平坦にする最善の方法は、甘くなくてもおいしい、体がよろこぶ朝食をとることだ」という――。

※本稿は、ジェシー・インチャウスペ『人生が変わる 血糖値コントロール大全』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■ボウル1杯のシリアルが起こす「糖尿病並み」の血糖値スパイク

スタンフォード大学には、持続血糖計測の研究を専門とする科学者たちがいる。2018年、彼らは糖尿病でなければ血糖値を気にしなくてよいという、一般的な考え方が正しいかどうか確かめはじめた。その次に、シリアルの朝食は体にいいというのは本当かどうかについて、調べることにした。

男女30人の被験者が採用された。だれも2型糖尿病と診断されたことがなく、空腹時血糖値は正常範囲だった(主治医による年1回の検査値)。平日の朝に研究室へやってきて、実験に参加した。持続血糖測定器を身につけて、ボウル1杯のシリアルを牛乳と一緒に食べるという実験である。

研究の結果は驚くべきものだった。健康な人たちなのに、ボウル1杯のシリアルで、糖尿病患者に特有だと思われていた調節異常の範囲にまで、血糖値が上がったのだ。30人のうち16人が、140mg/dL〔グルコース(ブドウ糖)調節に問題があることを示し、前糖尿病の指標となる値〕を超える血糖値スパイク(血糖値の急上昇)を起こし、なかには200mg/dL(2型糖尿病の範囲)まで上がった人もいた。

これは、被験者たちが糖尿病だということではない。彼らは糖尿病ではなかった。ただ、健康な人でも糖尿病と同じぐらい血糖値が急上昇することがあり、血糖値スパイクによる有害な副作用を被るということだ。これはめざましい発見だった。

■なぜ炭水化物が脂肪に化けるのか

ボウル1杯のシリアルが血糖値スパイクを起こすというのは、よく考えれば当然だ。シリアルは、精製したトウモロコシや精製した小麦穀粒を加熱し、押しつぶしたり膨らましたりしてさまざまな形にしたものだ。純粋なデンプン(植物がグルコースからつくるもののひとつ)で、食物繊維は残っていない。さらに、デンプンだけではそれほどおいしくないので、砂糖(グルコースと果糖でできるショ糖)が加えられる。ビタミンやミネラルも混ぜられるが、そのメリットはほかの成分のデメリットを打ち消すほどではない。

ジェシー・インチャウスペ『人生が変わる 血糖値コントロール大全』(かんき出版)
ジェシー・インチャウスペ『人生が変わる 血糖値コントロール大全』(かんき出版)

グルコースという同じ親をもつデンプン、食物繊維、果糖、ショ糖は、それぞれ性格の違う4人のきょうだいのようなもので、この家族の名前を「炭水化物」と呼ぶのが一般的になっている。

グルコースを食べると、インスリンの生成を促してしまう。インスリンはグルコースの猛襲から体を守ろうとして、グルコースを血流からとり除く。すると、新たに消化された分子が燃料として体中を巡るかわりに、グリコーゲンや脂肪として貯蔵されてしまう。

このことは科学的実験によって立証されている。2種類の食事を比べると、炭水化物の多い食事のほうが、消化後に血流内のエネルギーが少なくなった。朝食にたくさんの炭水化物をとればとるほど、使えるエネルギーは少なくなるのだ。

■糖やデンプン中心の朝食が一日を台無しにする

大きな血糖値スパイクを引き起こす朝食をとると、またすぐにお腹がすく。それだけでなく、朝食のせいで1日中血糖値の調節が異常になり、昼食や夕食でも大きな血糖値スパイクが起きる。いってみれば、血糖値スパイクを起こしやすい朝食は、グルコースのジェットコースターへの片道切符である。その一方で、血糖値曲線を平坦にする朝食をとれば、昼食や夕食でも血糖値が安定するだろう。

そのうえ、朝一番の空腹時は、体はグルコースに対してもっとも敏感になっている。シンク(胃)が空っぽなので、入ったものがすばやく消化される。そのため、朝食に糖やデンプンを食べると、その日最大の血糖値スパイクを起こすことが多い。

朝食は、糖やデンプンだけを食べるのに最悪のときだ。でもこのときに、ほとんどの人が、糖とデンプンしか食べていない。

あなたも、いつもの朝食の内容を書き出してみよう。どれがデンプン? どれが糖? 朝食に糖とデンプンしか食べていないのではないだろうか?

■「果物はヘルシー」という思い込みは大間違い

果物ならヘルシーだろうと思っている人もいるかもしれない。

だが、その考えは、糖の性質を誤解していることになる。糖は糖だからだ。それがトウモロコシやビートの汁を結晶化した白い粉、すなわち砂糖であっても、オレンジを搾った液体、すなわち果汁であっても、まったく同じである。なかには、野菜(テンサイ)からつくられる砂糖もあるが、まったく違いはない。よい砂糖も悪い砂糖もないのだ。原料の植物に関係なく、すべての砂糖は同じである。

ミックスベリー スムージー
写真=iStock.com/VeselovaElena
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/VeselovaElena

どんな植物からできていようと、グルコースと果糖の分子であり、体への影響は変わらない。そして、ビタミンが含まれることを理由に、果汁が有害であることを否定するのは、論点をそらそうとする危険な策略だ。

ただし、いくらか糖をとりたいなら、果物を加工せずにそのまま食べるのがベストである。まず、そのままで食べると糖の摂取量が少なくなる。スムージーなら1回分にリンゴ3個やバナナ3本を入れられるが、1回の食事でそんなには食べられない。たとえ食べたとしても、スムージーにして飲むよりかなり時間がかかるだろう。そのため、グルコースと果糖がゆっくりと消化される。つまり、飲むより食べるほうが時間をかけることになる。

■スムージーにすると食物繊維の保護作用が無効に

次に、果物をそのまま食べると、糖と食物繊維が必ず一緒に含まれている。食物繊維は糖による血糖値スパイクを大きく減らすことができる。

果物をミキサーにかけると、食物繊維の粒子を細かく砕いてしまうので、保護作用が働かなくなる。ちなみに、これは噛んだときには起こらない。わたしたちの顎は力強いが、毎秒400回転する金属の刃ほどのパワーはない。ミキサーにかけたり、搾ったり、乾かしたり、濃縮したりして食物繊維を除いたとたん、糖はたちまち体に害を与え、血糖値スパイクを引き起こす。

■スムージーは甘いデザートと変わらない

果物の性質を変えれば変えるほど、体に悪くなる。リンゴのほうがアップルソース(リンゴを刻んで甘く煮たもの)よりいいし、アップルソースのほうがリンゴジュースよりいい。つまり、果物をジュースやドライフルーツ、缶詰やジャムにした場合は、ケーキと同じようにデザートと考えるべきだ。

1缶のオレンジジュースには(搾りたてでも、市販品でも、果肉入りでも果肉なしでも)、24グラムの糖が含まれている。これは、オレンジ3個分の糖を濃縮したもので、食物繊維は入っていない。そして、コーラ1缶の糖と同じ量だ。オレンジジュース1缶だけで、アメリカ心臓学会が推奨する1日の糖の摂取量(女性は1日に25グラム、男性は36グラム)に達してしまう。

じつはスムージーは、大きい血糖値スパイクを引き起こすのだ。

血糖値曲線を平坦にする最善の方法は、甘くなくてもおいしい、体がよろこぶ朝食をとることだ。実際、ほとんどの国にそうしたメニューがある。日本では、サラダがよく朝食に出される。トルコでは肉と野菜とチーズ。スコットランドでは魚の燻製(くんせい)。アメリカではオムレツ。

このテクニックはとても効果があり、体がよろこぶ朝食をとった日は、後で甘いものを食べても副作用が少なくてすむ。

■体が喜ぶ朝食メニューの基本的な考え方

血糖値を安定させる理想的な朝食は、十分なタンパク質、食物繊維、脂肪を含むもので、デンプンと果物はお好みで添える(できるだけ最後に食べること)。

カフェで朝食をとるときは、チョコクロワッサンやジャムトーストではなく、アボカドトースト、エッグマフィン、ハムとチーズのサンドイッチにしよう。

【タンパク質は必ずとろう】
タンパク質は、ギリシャヨーグルト、豆腐、肉、コールドカット(サラミ、ハム、ソーセージ、冷肉などの薄切り)、魚、チーズ、クリームチーズ、プロテインパウダー、ナッツ、ナッツバター、種子、そしてもちろん卵(スクランブルエッグ、目玉焼き、ポーチドエッグ、半熟卵)にも含まれている。

■朝食を上手に選べば一日元気に過ごせる

【脂肪を加えよう】
バターやオリーブ油でスクランブルエッグをつくって、アボカドのスライスを添えよう。または、ギリシャヨーグルトにアーモンドを5粒か、チアシードや亜麻仁を加えよう。ところで、無脂肪ヨーグルトは食べてはいけない。これではお腹がいっぱいにならない。ふつうの脂肪分5%のものか、ギリシャヨーグルトにしよう。

【図表1】朝から甘いものを食べると体内で何が起きるか
出所=『人生が変わる 血糖値コントロール大全』

【食物繊維を追加しよう】
朝に食物繊維をとるのは大変かもしれない。わたしはホウレンソウをスクランブルエッグに混ぜたり、トーストにのせるアボカドの下に入れたりするのがお気に入りだ。ホウレンソウ、マッシュルーム、トマト、ズッキーニ、アーティチョーク、ザワークラウト、レンズ豆、レタスなど、どんな野菜でも役に立つ。

【デンプンや、生の果物をお好みで加えよう】
オーツ麦、トースト、ごはん、ジャガイモ、生の果物(ベリー類がおすすめ)などを加えてもいい。

朝食を上手に選ぼう。そうすれば、1日中元気に過ごせる。活力に満ち、渇望が収まり、気分がよくなり、肌がきれいになるなど、さまざまな効果が見られるだろう。グルコースのジェットコースターに乗っているのではなく、自分で運転席にすわっているように感じるはずだ。

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ジェシー・インチャウスペ 生化学者、著述家
ロンドン大学キングス・カレッジで数理科学学士、米ジョージタウン大学で生化学修士の学位を取得。シリコンバレーにある遺伝子分析の新興企業での仕事を通じて、遺伝子より食習慣のほうが健康には重要だと気づく。血糖が心身にもたらす大きな影響を紹介し、好きなものを食べながら血糖値を最適にするテクニックを伝授するインスタグラムが世界中で話題に(105万フォロワー、2022年9月現在)。

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(生化学者、著述家 ジェシー・インチャウスペ)

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