1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「資産を増やせる人・一生できない人」が一瞬でバレる…金融リテラシーが丸見えになる"簡単な質問"

プレジデントオンライン / 2022年11月4日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LeoPatrizi

3カ月で利回り5~7%、中には10%超も……。そんな触れ込みの金融商品「仕組債」。その販売を巡って証券会社や金融機関への苦情や訴訟などのトラブルが多数報告され、販売停止するケースも続出している。金融アナリストの高橋克英さんは「購入する側もハイリスク・ハイリターンの商品をつかまされないように3つの鉄則を最低限知っておくべき」という――。

■「資産倍増計画」どころか目減りリスク大の金融商品

資産運用に関する人々の関心が高まっている。

政府は、「貯蓄から投資」に回すことで「資産倍増計画」を掲げているが、多くの日本人はなんとか所得や資産を増やし、高い金利や配当を得られないか、と日々思案している。

昨今の円安・物価高による実質資産や所得の減少に加え、国民年金の納付期間延長論も持ち上がったことも、そうした気持ちを後押ししている。

そうした中、証券会社だけでなく、メガバンク・地方銀行・IFA(独立系資産運用アドバイザー)が顧客の「健全な資産形成」支援の名の下に、こぞって投資信託、外国債券など金融商品を提案し販売することに注力している。

■仕組債が販売停止に

そのなかで、いま世間を騒がせているのが、「仕組債」だ。

仕組債は、オプション取引というデリバティブ(金融派生商品)を使い、国債や社債より高い利回りが出るよう設計された金融商品である。一方で、あらかじめ定めた水準(ノックイン価格)を下回ると、償還時に元本割れしたり、早期償還されたりしてしまう。

つまり、ハイリスク・ハイリターンの商品だ。もともとは、複雑な仕組みを理解し、リスク許容度も高い機関投資家や事業会社向けの商品だったが、いまでは最低購入金額100万円から個人も購入できる。

仕組債のなかでは、特に、EB債(他社株転換社債)や日経平均リンク債といった商品が売れ筋であり、これら仕組債の利回りは、例えば、期間3カ月で5~7%、商品によっては、10%を超えるものまである。

それぞれの指で重ねたコイン、左右には差がある
写真=iStock.com/AndreyPopov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

しかし、損するケースも少なくない。

ハイリスク・ハイリターンの商品にもかかわらず、証券会社や銀行などによって、投資経験が乏しい高齢者や、金融知識が豊富とはいえない顧客への勧誘や販売もあったとされ、仕組債販売を巡って金融機関への苦情や訴訟などのトラブルも報告されている。

金融庁の調査では、仕組債のひとつであるEB債を購入した個人顧客がわずか3カ月で元本の8割も毀損(きそん)した例もあったという。このため、金融庁では、2022年8月に発表した「金融行政方針」にて、金融機関の経営陣に仕組債の販売を継続するのか、停止するのかヒアリングすると表明した。

こうした動きを受けて、2022年7月に三井住友銀行が、仕組債の勧誘や販売を停止したのに続き、三菱UFJ銀行、千葉銀行、横浜銀行、広島銀行、大手証券では野村証券、大和証券、みずほ証券、ネット証券の楽天証券やSBI証券などが、販売や勧誘の停止や一部停止に踏み切っている。

また、日本証券業協会は、年内にもガイドラインを改定して「退職金運用」や「証券口座を開設したばかりの人」を仕組債の販売対象外とする方針である。さらに、金融庁の指摘もあり、仕組債だけでなく、ファンドラップと外貨建て一時払い保険についても、金融機関側でその実態を調査する動きもある。

■「いたちごっこ」が延々と続く

ここ数年、外貨建て変額保険、分配型投資信託、シェアハウスローン、アパートローン、仮想通貨、仕組債と、顧客の不利益になるからとの理由で金融商品やローン商品がやり玉に挙がり、金融庁など規制当局が「指導」し、金融機関側や業者側が「自主規制」するという構図が続いている。

無論、善良なる個人顧客の保護が第一義である。金融機関の法令違反や営業員による違法行為や強引な勧誘などは論外であり、強く批判され罰せられるべきである。

銀行の看板が並ぶ通り
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

一方で、これまで金融機関の販売姿勢に対する批判が繰り返され、法令や自主ルールが整備されるなか、いまだに杜撰かつ悪徳な営業を行っていたとは考えづらい、といった声もなくはない。信用第一を是とする金融機関である。大多数の営業員は、法令にのっとり顧客に誠実に日々対応しているはずだ。

どんな金融商品であれ、投資においては、顧客側にも自己責任が生じる。そのため自らの資産を守り、形成するためにもそれなりの“武装”は必要になる。具体的には、どうしたらいいのだろうか。

筆者は、基本に立ち返ることが重要だと考える。つまり、①そもそもマーケットは予測不能、②リスクとリターンは表裏一体、③基準となる金利水準がある、という3点を強く意識して判断することをお勧めしたい。

■【その1】そもそもマーケットは予測不能 

金融マーケットはトレンドも含め将来予測は困難であるケースがほとんどである。よって、「必ず儲かります、値上がりします」といった誘い文句はありえない。

人生そのものも予測不能だ。進学、就職、転職、結婚、引越、病気などを計画通りに進める者はまずいない。こうした予測できないライフイベントとマーケットの上に成り立つ金融商品を組み合わせた個人の資産運用はもともと非常に不安定なものにならざるをえない。

資産運用では長期計画が大事だが、同時に走りながらその都度考え即断即決する世界でもある。そうした一種の覚悟を持つことが投資をする上での前提となってくる。

右手はラップトップのキーボードに載せたまま、左手で持ったスマホでチャートの確認をする男性の手元
写真=iStock.com/xijian
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xijian

■【その2】リスクとリターンは表裏一体

金利リスク、クレジットリスク、為替リスク、流動性リスク、地政学リスク……マーケットには多様なリスクが存在する。リスクとリターンはトレードオフ(表裏一体)の関係であり、リスクを抑えてリターンを享受するのは、理想ではあるが虚構ともいえる。

ローリスク・ハイリターンとか、ローリスク・ミドルリターンとかいった「おいしい金融商品」は幻だ。リスクテイクをある程度認めてリターンを得る、ということになろう。

■【その3】基準となる金利水準がある

大多数の個人投資家が、①②を理解しているのに詐欺的な商品に引っ掛かり、損害を被るのはなぜか。筆者は、資産運用において、③基準となる金利水準がある、ことをよく認識していないことが原因だと考えている。

これはマーケットにおけるベンチマークとなる指標のことだ。日経平均株価や為替、NY株式市場、原油価格などがこれにあたるが、こと資産運用において最も重要なのは、「長期金利の水準」だ。具体的には、日本国債10年債だ。日本銀行による金融緩和策が続いていることもあり、その水準は、0.25%(2022年11月1日)だ。この長期金利が、住宅ローンの金利や、定期預金の金利をはじめ、わが国の金融市場や投資市場、あらゆる経済社会活動の基準になっている。

ちなみに、長期金利などを基準にして経費などが差し引かれたメガバンクの定期金利は現在0.002%であり、全国銀行協会によると、運用のプロでもある全国銀行110行の有価証券運用利回りは、実は0.71%に過ぎない(2022年3月期)。

こうしたなか、冒頭に紹介した仕組債では、3カ月で5~7%もの利回りが提示されている。定期金利0.002%と比べれば、2500倍から3500倍だ。いかにハイリスク・ハイリターンかが明らかになる。

■金融リテラシーを測る質問とは

筆者は、富裕層向け資産運用アドバイザーや金融コンサルタントの立場で、数多くの国内外の富裕層や個人投資家と接してきた。こうした経験則からいえる資産運用で大失敗しない人はみな、先に挙げた基礎の基礎である①②③を理解し尺度としている人たちだ。

実際に、金融リテラシーがあるのかないのかを測る簡単な質問がある。

例えば、今であれば、利回り2%程度の金融商品を紹介した場合、「えー、利回り2%しかないの! もっといい商品ないの?」という人と、「へー、2%ももらえるの。どういうカラクリなの?」という人の差だ。

今の基準となる金利水準を理解していれば、後者の反応になるはずであり、仕組債など高い利回りながらリスクも高い金融商品を選択肢から排除することができよう。

個々の金融商品の仕組みを理解することも大切だが、その前に、前述のシンプルな3つの基本を意識すること。それだけで「ハイリスク・ハイリターンの商品だと知らずに購入した」と金融機関にクレームしたり、大損したりするリスクは減らせるはずだ。

----------

高橋 克英(たかはし・かつひで)
株式会社マリブジャパン 代表取締役
三菱銀行、シティグループ証券、シティバンク等にて富裕層向け資産運用アドバイザー等で活躍。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。1993年慶應義塾大学経済学部卒。2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。日本金融学会員。著書に『いまさら始める?個人不動産投資』、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』など。

----------

(株式会社マリブジャパン 代表取締役 高橋 克英)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください