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歯周病は絶対に放置してはいけない…自覚症状がないまま全身をむしばむ「慢性炎症」の巨大リスク

プレジデントオンライン / 2022年11月9日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AH86

病気を早期発見するにはどうすればいいか。医師の今井一彰さんは「慢性炎症は自覚症状がないまま炎症が進行し、肝臓がんや胃がん、心筋梗塞などにつながるリスクがある。特に気をつけなければいけないのは、全身に炎症物質を広げる歯周病だ」という――。

※本稿は、今井一彰『名医が教える 炎症ゼロ習慣』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■自覚症状のない「サイレントキラー」

慢性炎症によって起こる病気はさまざまにあります。

まさに「炎」のようにボッと勢いよく燃えて鎮火も早いのが急性炎症なら、慢性炎症はボヤ(小火)のようなもの。火種がくすぶったままじわじわと広がるように体をむしばみ、最後にはおそろしい病気を引き起こします。

慢性炎症による病気のこわいところは、急性炎症のように強い症状がないところです。

そのため、なんとなく調子が出ないなと感じることはあっても、ほとんどの場合、自分では気がつきません。

自覚症状がないまま同じ場所で炎症が続いてしまって、いつのまにか細胞が壊され、臓器や血管などの機能が低下してからはじめて病気になっていることに気づくのです。

歯周病も、たまに出血したり、患部がうずいたりすることはありますが、初期には自覚症状がないことがほとんどです。歯周病が進行して、歯がグラグラになってから気づく人も少なくありません。

このほか、次に紹介する病気も慢性炎症が原因のもので、気づかないうちに進行して、命にかかわるような病気につながるリスクがあります。

そのため、慢性炎症は、「サイレントキラー」と呼ばれることもあります。

■慢性肝炎から肝硬変・肝臓がんを発症

肝臓の炎症が6カ月以上続いている状態を「慢性肝炎」と言います。その原因としていちばん多いのは肝炎ウイルスです。B型、またはC型肝炎ウイルスに感染すると、一時的な炎症(急性肝炎)で治ることもありますが、治りきらずに長引いた場合、慢性的に炎症が続くことがあるのです。

このほか、アルコールや食生活の乱れ、運動不足などの生活習慣が原因になることもあります。

肝臓で慢性的な炎症が起こると、肝臓の細胞が壊される→修復される→壊される→修復される……と破壊と再生が繰り返されることになります。すると、細胞が正常に修復されず、線維成分が蓄積して「線維化」が起こります。

結果、肝臓の組織の柔軟性が失われて硬くなり、肝臓の機能が低下することに。これが肝硬変です。肝硬変になると、肝がんを発症しやすくなることもわかっています。

■慢性胃炎に気づかず放置すると胃がんに

おもにピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)によって起こる「慢性胃炎」は、その名の通り慢性炎症による病気のひとつです。

多くの場合、ピロリ菌は子どものころに感染すると言われていますが、感染すると多くの人は胃炎を発症します。けれども、そのとき自覚症状がある人はほとんどいません。

胃炎というと、胃がキリキリ痛んだり、胸焼けや吐き気が起きたりといった症状を思いうかべるかもしれませんが、それは暴飲暴食やアルコールのとりすぎなどによって起こる急性胃炎(急性炎症)です。

ピロリ菌による慢性胃炎の場合は、胃もたれやむかつきなどの症状が出ることもありますが、強くなかったり、人によっては症状がないこともあるのです。

自覚症状がないなどの理由で、慢性胃炎の状態を放っておくと、慢性肝炎と同じように胃の粘膜の組織が変化して、うすくやせて萎縮する「萎縮性胃炎」になることがあります。さらに、胃粘膜の萎縮が進むと、そこががん化して胃がんになる人がいることもわかっています。

■血管の慢性炎症は心筋梗塞・脳梗塞のリスク

動脈硬化は、弾力があってしなやかな血管が、硬くもろくなることです。新品のホースはやわらかく弾力がありますが、古くなったホースが硬くなって破れてしまうようなものですね。

いままでは、血管の中に過剰な脂質がたまることが原因とされてきましたが、最近では、慢性炎症がその発症や悪化に関係していることがわかってきました。

動脈硬化
写真=iStock.com/jamesbenet
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/jamesbenet

内臓脂肪型肥満などによって血管に慢性炎症が起こると、血管の壁が傷つき、そこにコレステロールが入り込みます。すると、これを排除するために白血球が集まってきて、コレステロールを食べます。

結果、コレステロールを食べて死んだ白血球の死骸と、残ったコレステロールがたまって、血管壁にコブ(プラーク)ができてしまいます。このとき、血管の線維化も起こって、血管が硬く、柔軟性がなくなってきます。

慢性炎症が続けば、血管にできたコブは大きくなり、動脈硬化が進行していきます。最終的にプラークが破裂すると、その傷口を修復するために血液の塊(かたまり)ができて、それが血栓となり、血管をつまらせてしまうことに。これが心臓で起これば心筋梗塞、脳で起これば脳梗塞となってしまうのです。

■炎症物質「サイトカイン」が悪さをする

慢性炎症が、知らず知らずのうちに、命にかかわるような病気を引き起こすリスクがあることをご理解いただけたでしょうか?

慢性炎症は、体の機能を低下させるため、すぐに病気にならなかったとしても、体の調子を悪くする原因にはなります。

医療施設では「どこも悪くない」と言われても、「なんとなく調子が悪いんだよな……」と感じたら、あなたの体の中では慢性炎症が悪さをしているのかもしれません。

もうひとつ、慢性炎症のこわいところは、炎症が飛び火して、さらに別の病気を引き起こすところです。

炎症が起こると、「サイトカイン」と言われる炎症物質がつくられるようになります。この物質は、体に異物が侵入してきたことを知らせて、炎症を引き起こすはたらきがあります。免疫機能に必要な物質なのですが、炎症が長引くとつくられすぎてしまい、さらに炎症を促進します。

さらに、サイトカインはそこだけにとどまらず、炎症でダメージを受けた血管に入り込んで、全身のさまざまな病気のもととなることがあるのです。

■炎症が全身に飛び火する歯周病

わかりやすいのが歯周病です。

歯周病菌に感染して慢性炎症が起きて歯周病になると、炎症物質が血液にのって全身に運ばれて、さまざまな病気を引き起こすことが知られています。その病気のひとつが関節リウマチですが、他にも有名なものとして糖尿病があります。

サイトカインは血糖値を下げるはたらきがあるインスリンというホルモンのはたらきを悪くします。そのため、血糖値が高くなりやすくなるのです。

反対に、糖尿病の患者さんが歯周病を治療すると、血糖値のコントロールがうまくいくという研究報告も多くあります。

そして認知症も、歯周病と関係していると言われる病気です。

■慢性炎症は全身の機能を低下させていく

アルツハイマー型認知症は、アミロイドβというたんぱく質が脳に蓄積されることで発症すると考えられていますが、なんと歯周病によって口の中に増えたサイトカインが脳に運ばれると、このアミロイドβが脳に増えることが報告されています。

マウスを使った九州大学の実験では、人間の年齢に換算すると40〜60代のマウスに3週間、歯周病菌を投与したところ、脳の中のアミロイドβが10倍に増え、記憶力が低下したそうです。

今井一彰『名医が教える 炎症ゼロ習慣』(飛鳥新社)
今井一彰『名医が教える 炎症ゼロ習慣』(飛鳥新社)

このほか、歯周病の慢性炎症が飛び火することでリスクが高まる病気には、動脈硬化や脳梗塞・心筋梗塞、関節リウマチ、肺炎などがあります。いずれも慢性炎症によって起こる病気です。

口の中で起こった慢性炎症が、体のいろいろな場所へと広がって、現代もっともこわいと思われている病気の原因になっていることがよくわかりますね。

ここまで慢性炎症によって起こる病気をとりあげてきましたが、これらはあくまでも一部の事例です。慢性炎症は、すべての内臓、器官、体のいたるところで起きています。

さらに炎症が全身に広がって、体の機能をどんどん低下させていくのです。

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今井 一彰(いまい・かずあき)
みらいクリニック院長
1995年山口大学医学部卒業。同大救急医学講座に入局し、集中・救急治療に従事する。2006年みらいクリニック院長に。学生時代より興味を持っていた、東洋医学の研鑽を積む。東洋医学会認定漢方専門医。NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長。加圧トレーニングスペシャルインストラクター。あいうべ体操(息育)、ゆびのば体操(足育)二つの「ソクイク」で病気にならない体つくりを提供している。著書に『足腰が20歳若返る 足指のばし』『免疫力を上げ自律神経を整える 舌トレ』(かんき出版)、『名医が教える 炎症ゼロ習慣』(飛鳥新社)など多数。

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(みらいクリニック院長 今井 一彰)

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