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「どん底にも大地はある」事を成した人が人生の谷にいるときにしていたこと

プレジデントオンライン / 2022年11月9日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

誰にもやってくる「人生のどん底期」をどのようにしのげばいいのか。作家の松尾一也さんは「どん底を味わっているうちに、底打ちを感じることがあります。もうこれ以上は悪いことはないんじゃないか。少しずつ好転するかもしれないと思えるときが必ずやってくるものです」という――。

※本稿は、松尾一也『しなやかに生きる人の習慣 何があっても立ち直る50の秘訣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■運気が悪い時はじっと流れを待つ

今までの人生を振り返ってみて、「運気」というものがあることがよくわかります。

あの時はノリにノっていたなぁ。
あの時はなにをやってもうまくいかないことだらけだったなぁ。
あの時は長く停滞していたなぁ。

よく研修のプログラムで使われる「ライフライン」というものがあります。自分の人生を小さい頃にまでさかのぼって、現在までの人生の出来事とそれに伴う、自分の感情や感覚的な運気のアップダウンを一枚の図で表すものです。

ヨコ軸は時間、タテ軸は運気・感情です。やはり山と谷があり、長く生きれば生きるほど、その上下運動が多くなっています。

私も5回くらいの山を体験しています。山は人生の花と実を味わうような至福の時期です。

ここ数年の世界情勢では、多くの人が谷へ向け急降下しているかもしれません。誰にも文句を言えないツライ時期です。こんな時は悪い運が去るのを待つ力があるかどうかにかかっています。

松下幸之助さんも、

「悪い時が過ぎればよい時は必ず来る。おしなべて、事を成す人は必ず時の来るのを待つ。あせらずあわてず、静かに時の来るのを待つ」と語っています。

渦中にいると自分を見失いがちですが、いかに鳥の目(バードアイ)のように大空から俯瞰(ふかん)できるかが勝負の分かれ目です。

カオス状態の中でもすべてが悪いわけではなく、小さな希望や糸口を頼りに、一歩ずつ立ち直りの道を探します。

そんな時、灯台になる運の良さそうな人、運の良さそうなコミュニティを見つけることです。できるだけいい影響を受ける人と一緒の時間をもち、運気があがるのをじっと待ちたいものです。

ライフラインを振り返ってみてわかることは、ひとつの出逢いが人生を変えるということです。私も過去のどん底の時に、友人や仲間が根気づよくサポートをしてくれました。黙ってこちらの話を聴いてくれる人は宝物です。

人生は素晴らしい出逢いを待つ、ウエイティングゲーム(waiting game)なのです。「よき仲間を得ることは、聖なる道のすべてを得ることである」と仏陀も弟子のアーナンダに語っています。

<渦中から離れて「鳥の目」で見渡す>

■どん底に大地あり

私は旅が好きで、よく長崎へも旅行をしたものです。観光のついでに寄った如己堂(にょこどう)。

如己堂は『どん底に大地あり』の書を遺してこの世を去った永井隆博士(1908~1951)が起居した二畳ほどの小さな建物。

聖書の「己の如く隣人を愛せよ」を生きる指針としたことから命名されました。

永井博士は長崎医科大学で放射線医学を専攻、研究治療の影響で放射線被曝して慢性骨髄性白血病で余命3年と宣告されます。

不安な高齢者の手
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

そして長崎市に投下された原子爆弾で、妻を失い、本人も重傷を負いましたが、医者として被災者の救護活動を行います。

その後は寝たきりの状態になり、残された道は「書く」ことしかなく執筆活動を始めます。『長崎の鐘』『ロザリオの鎖』『この子を残して』など17冊もの本を書き上げて、その収入の大半を長崎市の復興に寄付されました。

はかなくも終戦から6年後に永眠。

私は「長崎の鐘」の歌を聴くと、とても切なく魂が揺さぶられる思いをしていました。

NHKの朝ドラ『エール』で永井隆博士と音楽家の古関裕而(こせきゆうじ)さんとのやりとりを観て、より深い生き様を知ることになります。

どんな思いで白血病と闘い、どんな思いで被爆した妻を送り、どんな思いで市民を看病し、どんな思いで執筆し、どんな思いで桜を植え続けたのでしょうか。

どん底にも大地はあるのです。

この言葉は永井隆博士ならではの表現だと思います。

私はたくさんの講演を聴いてきましたが、最も心に響き、心に残るメッセージは「あきらめない」ことと「立ち直る体験談」です。

「どん底」にはまった時は“人生のツルハシ”を渡されて「一度限りの人生、もっと深く掘ってごらんなさい」と神様から言われている気がします。

人間、落ちるところまで落ちないと本当に強くはならないものです。大地はいつもあなたの足下(あしもと)にひろがっています。

<まずはあきらめない心を取り戻す>

■底打ち、好転の兆しの感覚をつかむ

どん底に落ちていく感じはとてもつらいものがあります。足下の板子が外れて急転直下する自分をまるで離見しているように。ヤバいよ、ヤバいよ~。とつぶやくほかありません。

悪いことが起きると、二の矢、三の矢に撃たれることがあります。なんで今、立て続けに問題が起こるのか……。勘弁してほしい。

孤立してしまう恐怖や、損害がどこまで広がるかの不安など、悩みは尽きなくなります。

いつもなら楽しい仲間との食事も心ここにあらずで、メニューを見ても食欲はわかず、無理に流し込む感覚。電車や車に乗っていても自分の悩み、悲しみ、苦しみが頭にわいてきて暗い顔が窓ガラスに映ります。寝るときも、少しは忘れて楽しいことを考えて眠ろうとしても、気にしていることがどんどん上書きされていきます。

あきらかにまわりから見ても、苦悩を重ねているのだろうと心配される日々。

しかし、今までの経験からしても、どん底を味わっているうちに、底打ちを感じることがあります。もうこれ以上は悪いことはないんじゃないか。少しずつ好転するかもしれないと思えるときが必ずやってくるものです。

台風の激しい暴風雨が静かになってくる感じや、厳冬が過ぎて少しだけ頬をなでる風にぬくもりを感じる瞬間に似ています。

歌手の木山裕策(きやまゆうさく)さんの講演が大好きです。木山さんはサラリーマンをしながら4人の男の子を育て、35歳の時にマイホームを35年ローンで購入しました。

そんな時に、甲状腺ガンに襲われます。これから! という時に、運命を呪います。手術後は、患部が痛くて全然歌えなくなってしまいました。

本当に人生のどん底を味わうのですが、「もうこれ以上、悪いことにはならない」という一種の開き直りで、雑草魂に火がつきます。

すぐに落ち込むけれど負けず嫌いな気性で、出せる低い音程から練習をして徐々に歌声を取り戻します。

それからは人が変わったように、夢は「いつか叶う」ではなくて、「今やる!」にスタイルを変えました。

街のお祭りやコンテンストに次から次へと出場を重ね、歌手の道へと歩き出しました。

松尾一也『しなやかに生きる人の習慣 何があっても立ち直る50の秘訣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
松尾一也『しなやかに生きる人の習慣 何があっても立ち直る50の秘訣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

その結果、あるオーディション番組で有名な音楽家と出逢い、あの名曲「ホーム」が生まれて、紅白歌合戦に出場するまでになったのです。

しばしサラリーマンと歌手の二足のわらじをはいていましたが、2019年に本格的に歌手一本で独立しました。

そこにコロナ禍が襲ってきました……。

すべてのコンサートや講演会が中止になりまた絶望へと墜とされたのです。緊急事態宣言の最中はウツ気味にもなったそうですが、できることはゼロではない! とまた底打ちをして、自宅にあるパソコンとマイクとスピーカーを使い、YouTube で自身の音楽の配信を始めました。

すると次第にチャットで視聴者同士の交流も始まり、やがて全国の学校での演奏会の仕事へとつながることになりました。

思い悩んでいる生徒たちに、

「生きていればなんとかなる! まずは誰かに相談しよう!」

と必死に伝え続けています。

木山裕策さんのお話を聴いていて、人間どこかで必ず底打ちをしたら、徐々に昇っていくものなのだということを実感します。

底打ち、立ち直り、そして上昇する強いイメージをもつことが大切です。

<小さくとも好転の兆しを見つける>

(ルネッサンス・アイズ代表取締役会長 松尾 一也)

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