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20代のころは人事評価トップ5%だった一流大卒が、40代で急失速…年齢とともに行き詰まる人の特徴

プレジデントオンライン / 2022年11月11日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

各社で「人事評価トップ5%」の評価を得て活躍する人は、20代30代から明らかにほかとは異なる素養があるのか。AIを用いたデータ収集・分析を行い、『29歳の教科書』を刊行したクロスリバー代表の越川慎司さんは「5年におよぶ調査の結果、トップ5%と下位20%を分ける行動習慣のちがいが観察できた」という──。(第1回/全5回)

■2万人調査でわかった「トップ5%社員の共通点」

働き方改革を支援する「クロスリバー」を立ち上げ、各社の「人事評価トップ5%社員」(以下、「5%社員」)の言動データの収集・分析をスタートして5年が経ちます。調査対象者は延べ2万人を超えました。

現在、ビジネスの最前線で活躍し続けている5%社員は、いったいどのような20代を過ごしたのでしょうか?

各社の5%社員の行動を調査、ヒアリングをすることでわかった「意外な共通点」を紹介します。

■【行動習慣①】自分の「弱さ」をさらけ出す

あなたが信頼している人を思い浮かべてください。

信頼する家族、パートナー、同僚、先輩、上司……そうした人たちはおそらくみな、自分の「弱さ」をあなたに対し示してくれているのではないでしょうか。

とくに家族は、お互いの「強み」と「弱み」を理解している。だからこそ、信頼し合えるのです。

■自己開示と返報性の原理

20代でまだ成熟していないビジネスパーソンの中には、強がって自分の得意な部分ばかりアピールする人がいます。

20代から成果を出していた5%社員は、なおさら自分の功績をアピールするような人々なのかと考えたところ、実際は逆でした。むしろ、「自分の弱さ」を積極的に披露していたのです。

「自分に自信が持てないから、プレゼンが苦手なんです」
「データ分析はできるけど、文章を書くのがへたで……」
「朝がホント弱くて、夜遅くになってようやく頭が冴えるんです。社会人としてまったくなってないなって、自己嫌悪ですよ」

自分が弱みをさらけ出すと、相手もさらけ出してくれます。「返報性の原理」が働いて、相手が腹を割って話してくれたら、自分もお返ししようと自己開示をしてくれるのです。

5%社員は20代のころから自分のダメな点を自己開示することを恐れず、そのため周囲の先輩、同僚たちも心を開いてくれるようになって、結果良い関係性を築いています

■それぞれの「強み」と「弱み」を掛け合わせる

たとえ業務処理能力の高い人でも、一人でできることには限りがあります。まして、多様化が進み、変化の激しい現代は、自分一人の力で成果を出し続けることは至難の業(わざ)。

複雑な課題をスピーディーに解決するには、組織(チーム)の力が必要です。チームメンバーの強みと弱みを掛け合わせて、個人では解決できない問題を解決していく必要があります。

そんな現状を反映してか、5%社員の71%が「自分の弱みを見せることに抵抗がない」と答えています。

若いときはもちろんのこと、年齢を重ねても、「自分にできないこと」「弱点」を相手に見せることに躊躇(ちゅうちょ)せず、それでかえって周囲からの信頼を得ているのが5%社員です。

■「プライドはダサい」

誰しも、周囲に対して「優れた自分を見せたい」という気持ちがあるものでしょう。中には、入社して数年経ち、業務処理能力が上がったことで自信をつけ、それですっかりプライドが高くなってしまう人もいます。

プライドはときには必要になることもありますが、周囲のメンバーと切磋琢磨(せっさたくま)していく場合は、往々にして無駄になることのほうが多いものです。

プライドが高くて強がりな社員は、人に頼ることを嫌がります。しかし、本当に優秀な若手社員は人に頼ることが多く、同時に相手から頼られることも多いのです。

5%社員の中には、「プライドは人を遠ざける。プライドを持っているのはダサい」と発言する人もいました。

ここからわかるように、20代では不要なプライドを捨てて弱さをさらけ出すことで、周囲と「頼り、頼られる」関係性を築いておくべきなのです。

■【行動習慣②】やる気をあてにせず「初動」が早い

5%社員は、20代のころから、先輩や上司に何かを依頼されたらすぐに行動に移しています。どんな仕事でも取り掛かる初動が早く、テキパキと依頼ごとをこなします。

というのは、タイミングを逃すとうまくいかなくなることに気づいていて、そのため、若いうちから意識して「すぐ行動に移す」ことを心掛けているのです。

逆に、伸び悩む若手社員は口先だけでなかなか動きません。調子のいいことを言って仕事を引き受けることはありますが、ぐずぐずしているばかりで、いっこうに取り掛かりません。

■「やる気」に頼らない

ポイントは、「やる気の有無にかかわらず行動を開始する」ところにあります。

越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)
越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)

ある5%社員は、20代のころ、「仕事ルーティン」を作っていたそうです。仕事を始める前の儀式を習慣化していたのです。

たとえば、出社してコーヒーを飲んだらパソコンの電源を入れる。苦手な作業を開始するときは、大きく深呼吸し、すぐに取り掛かる。そのようにして自分の中の「仕事スイッチ」を入れていたそうです。

やる気が出たら作業を開始するのでは、成果にムラが出ます。5%社員は、やる気があってもなくても、お決まりの儀式をしたら反射的に作業を開始する。そのように「仕組み化」することで、やる気の有無にかかわらず初動が遅れることがないのです。

年齢を重ねた5%社員の活躍ぶりを見るにつけ、フットワークが軽く、すぐに対応する迅速さは、20代のうちに身につけておくべきものといえるでしょう。

■【行動習慣③】抜群の「巻き込み力」

5%社員はさらに、20代のうちに「巻き込み力」を身につけていました。

20代後半になると、新しい仕事をたくさん振られます。処理能力の高い優秀な若手社員でも、やがて疲弊してパンクしそうになります。それがわかっている5%社員は、20代のうちから周囲のメンバーを巻き込み、チームで仕事をするスタイルを確立していました。

「周囲を巻き込む」といっても、「はい、じゃあこれよろしく!」と誰かに“丸投げ”するわけではありません。

託したメンバーが取り掛かりやすいように事前準備を整えたり、手順書を作ったりと、完璧な状態で仕事を任せます。

■相手の行動のハードルを下げる「巻き込み構文」を活用

5%社員は、社内で全従業員へ依頼するときは「巻き込み構文」を使います。

たとえば、何か業務上の依頼メールを送るとき。「今後の経費精算では、承認者の氏名も教えてください。未入力の場合は支払いが遅れるケースがあります」などと、一方的に依頼するようなことはしません。

いきなり依頼せず、最初に相手のメリット、もしくは理由や背景を説明してから具体的な依頼をします。そして最後に、行動するための相手の心的なハードルを下げて、確実に相手に動いてもらうような一言を添えます

つまり、5%社員は、若いうちから相手に強引に言うことを聞かせようとしたりせずに、より多くの人を巻き込もうと、常に「Win-Winの関係」を意識して行動する姿勢が身についているのです。

■「間接承認」を巧みに使う

巻き込み力に関連してもう1つ。

5%社員は20代から「人を褒(ほ)めること」も積極的に行っていました。同期や同僚、ときには上司や先輩も上手に褒めていたのです。相手を心地よくさせながら、うまく巻き込んでいました。

とりわけ5%社員に特徴的な褒め方が「間接承認」です。第三者を介して相手を褒めるのです。

たとえば「人事部の採用面接の手伝いをするなんて感心だね」ではなく、「先週、採用面接を手伝ってくれたらしいね。人事の山田さんがすごく感謝していたよ」などと伝えます。

■第三者の名前を出して褒められると余計に嬉しくなる

「人事部の山田さん」という第三者を経由して間接的に褒めたほうが、結果的に相手を喜ばせます。「山田さんは私が手伝ったことに感謝してくれていたんだ」「私の努力を見てくれていたんだ」「ありがたいな」と、“嬉しい気持ち”が膨らんでいきます。

褒められてテンションが上がった相手の様子を見ることで、褒めた人もハッピーな気持ちになります。さらには名前を出された人(先の例なら“人事部の山田さん”)も、ハッピーに。間接承認を用いることで、関係した3人がみなハッピーになるのです。

“したたか”ともいえる褒め方の工夫が、周囲の人を惹(ひ)きつけ、チームで課題を解決していく雰囲気づくりに寄与します。

■試行錯誤を重ねながら正解に近づいていく

昔のように成果の出し方が画一的であれば、「言われたことを実直にやる社員」が重宝されたでしょう。

ところが、試行錯誤を重ねながら正解に近づいていく仕事のスタイルになった現代では、初動を早めて行動量を増やすことが求められるように変化しています。より複雑になっていくさまざまな課題を、チームで解決していくことが求められるようになりました。

だからこそ、若いうちに「巻き込み力」を身につけたほうがいいのです。

テクノロジーと環境変化が加速し、従来のようなキャリアアップの一本道はなくなりました。広大なオープンワールドで自分のキャリアを築いていくには、自ら動き出し、失敗を重ねながら修正していく。それによりレベルアップを果たすことができます。

■「できる」30代40代は、20代のうちに始めている

自己開示と初動力、そして巻き込み力──。

この3つの武器を20代のうちに装備した5%社員が、その後30代、40代になって大活躍しています。

握手する2人
写真=iStock.com/nimis69
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/nimis69

あなたも、20代のうちにこうした力を身につけておくことで、30代以降に「このプロジェクト、一緒に組んでやろう!」と社内外からお呼びがかかりやすくなります。そして、その後も継続して成果を出すことができるようになるでしょう。

■「同期トップ」から「下位20%」に転落したAさん

3つの習慣の有無は、想像以上にキャリア形成に大きな影響を与えます。実在するAさん、Bさん、2人の例を見てみましょう。

一流大学を卒業して大手メーカーに入社したAさん。20代のころは、持ち前のIQの高さと体力で「業務処理力は同期でトップ」と自信満々でした。

ところが40代を迎えた今、Aさんは「残業沼」から抜け出せずに孤軍奮闘する「下位20%」の一般社員のままです。

いったい何があったのでしょうか。

実はAさんは、周囲に弱さを見せることを嫌がって、強がってばかりいました。また、「同期トップ」だった自分の能力を過信し、体力とIQに頼るスタンスのまま成長しませんでした。

何事もこだわって考えるため初動は遅く、さらに、仕事を抱え込んで全部を自分でこなそうとするばかり。なかなか成果につながりません。

そうこうしているうちに、Aさんの周囲からは助け合える「仲間」はいなくなっていきました。そのまま年を重ね、現在ではすっかり「周囲から煙たがられる存在」になってしまったのです。

■「目立たない若者」から「300人組織のリーダー」になったBさん

一方、若いうちは“悪目立ち”するのを避けていたIT企業のBさんはどうでしょう。

Bさんは、学歴は高くなく、Aさんのように同期の中で目立つ存在でもありませんでした。

だからといってそれを卑下(ひげ)することはなく、20代のころから周囲の力を上手に借りながら自分なりのペースでコツコツ経験を重ね、実績を積み上げていきました。成果が出るようになっても、それで自分を過信するようなこともありませんでした。

そんなBさんは、30代後半にさしかかった現在、300人を超える組織のリーダーになっています。仕事はしっかりこなしながら、毎週末キャンプに行く“マニア”で、仕事もプライベートも充実しています。

■20代の「行動の差」が、40代で大きな「格差」に

AさんとBさん、2人のキャリアを大きく隔てることになった要因こそ、20代のころから3つの行動習慣(「弱さをさらす」「迅速な初動」「周囲の巻き込み」)を身につけ、実行したかどうかにあります。

実践したBさんは、周囲に仲間を増やし、その力を借りることで、リーダーとしての才能を開花させていきました。Aさんも実践していれば、残業沼にハマることなく、「自分が主役」のキャリアを自分で選択できるようになっていたかもしれません。しかし、残念ながら現状は難しい局面です。

キャリアアップとは、「自分で選ぶ権利」をみずから獲得することだともいえます。将来の選択の自由を手にするためにも、ぜひ5%社員の姿に学び、あなたも今日から「できること」を実践してみてください。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。

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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)

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