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「結婚したくてもできない」時代は終わった…この5年で激増した"そもそも結婚する気がない"人たちの胸の内

プレジデントオンライン / 2022年11月11日 11時15分

現代の独身男女の結婚観はどう変化したのか。統計データ分析家の本川裕さんは「かつては『結婚したくてもできない』派が多かったが、今はそもそも『結婚する気がない』という層も増えた。相手に求める条件も変化し、男性は、以前は女性に専業主婦を期待する人が多かったが、今は育児・仕事の両立を強く求めている」という――。

■そもそも「一生結婚するつもりはない」率が男女で急増

生涯未婚率(50歳段階の未婚率)が大きく上昇し、日本の“皆婚社会”が崩壊に向かっている――。2020年の国勢調査で明らかとなったこの点については本連載の1月連載分で触れたが、先日、新たな興味深いデータが発表された。

それは、2021年に行われた出生動向基本調査(社会保障・人口問題研究所)や社会生活基本調査(総務省統計局)である。これにより、日本人の男女関係のあり方や男女の結婚観が大きく変容していることが具体的にわかった。

出生動向基本調査(社会保障・人口問題研究所)では、結婚前の18~34歳独身者を対象にした実態調査をほぼ5年おきに行っている。その結果から、まず、結婚するつもりがあるかないかという基本的な意識の変化について、図表1に掲げた。

最も驚くべきポイントは、これまで、「一生結婚するつもりはない」と回答した独身者の割合は調査のたびごとに増えてきたのだが、2015~21年の増加が、男女ともにこれまでの増加幅をかなり大きく上回ったことだ。

男性は12.0%から17.3%への増加、女性は8.0%から14.6%への増加となっており、特に女性の増加が著しかった。

また、「いずれ結婚するつもり」という回答の割合は、1982年から97年にかけて低下した後、97年から前回調査の2015年にかけては、男は85%前後、女性は90%前後でほぼ横ばいであったのだが、最新の2021年には男が81.4%、女が84.3%とこれまでになく大きく低下している。

こうした動きから、結婚観はこの40年間に次のような3段階で変化しつつあると考えられよう。

① 1982~1997年 結婚しなければならない → 結婚しなくてもよい
② 1997~2015年 結婚したいけれどできない、あるいはしない
③ 2015~2021年 結婚したい → 結婚する気がない

このように、少し前までは、結婚したいけれどできない、あるいは結果としてしないという状況だったのが、今や、結婚したくないからしないというパターンがかなりの数を占めるようになったのである。この点は、態度の決まらない「不詳」の割合が急減していることからも裏づけられる。

以上、我が国の皆婚習慣が崩れつつあることが意識面からも明らかとなった点が注目に値すると言えよう。

■専業主婦志向からキャリアウーマン志向へと大転換

次に、同調査が調べている、男性が期待する「女性のライフコース」と、女性が予想する「女性のライフコース」についての結果の推移を見てみよう(図表2参照)。

【図表2】専業主婦志向は男女とも少数派、そして結婚しないで就業継続が女性の首位に

2015年までは、男性が女性に期待するコース、女性の自分について予想するコースともに、「子育て後の再就職」コースが最も多かったが、2021年には、「結婚・子育てと仕事の両立」が最多となった(女性の「非婚就業」を除く)。やはり子育て後の再就職の就業条件の不利な状況がより意識されるようになっていると思われる。男性も近年は給与が伸び悩み、俺に任せておけとは言えない状況になり、両立志向への転換が多くなったと考えられる。

専業主婦志向は、男女とも、低落を続けており、特に、男性の意識変化の幅が大きい。男性は、かつては女性よりかなり高い専業主婦期待があったが、今では、女性の予想と同レベルの専業主婦期待にまで急落した。代わって、増加しているのが、キャリアウーマン・コースとも呼ぶべき「結婚・子育てと仕事との両立」なのである。妻の能力を家庭に閉じこめておけないという意識が強くなった面もあろうが、同時に、女性にも働き続けてもらわないと家計が維持できないというのが男性にとっても偽らざる気持ちになったのだと考えることができる。

この他、目立っているのは、女性の予想における「非婚就業」コースの増大である。2005年には、「専業主婦」コースを大きく上回る15.6%に至り、2015年にはさらに21.0%にまで上昇し、2021年には何と33.3%に急増し、他の選択肢すべてを上回ってしまった。図表1では、女性の「一生結婚しないつもり」は14.6%(2021年)なので、未婚の「意思」より、実際そうなりそうだという未婚の「予想」が倍以上と大きく上回っていることになる。

DINKS(ダブルインカム・ノーキッズ)コースは、2021年に男性の期待で5.5%、女性の予想で4.9%となっており、それほど多くないが、過去最多となっている。

まとめると、男女ともに専業主婦志向からキャリアウーマン志向へ転換してきたというのがこの間の大きな意識変化であり、最近では、仕事のためには非婚を厭わないという意識が大きく女性をとらえるようになったと言えよう。

■イケメン・イクメン志向…女性意識が大きく変化

さて、以上のような結婚観の転換の中で、男女が結婚相手に求めるものは、どのように変化してきているのであろうか。

図表3には、独身男女が結婚相手の条件として何を重視しているかについて調べたほぼ5年おきの結果をグラフ化した。

【図表3】結婚相手の条件として人柄、容姿、経済力、家事分担などの何を重視するか?

■【男女が“重視する点”の特徴】

時系列的な変化の特徴についてふれる前に、項目別の男女の意識について整理すると、次のようにまとめられよう。

●男女ともに「人柄」を重視する者の割合が最も多く、しかも、他の項目と異なり、単なる「考慮」は少なく、ほとんどが「重視」するとしている。当たり前に思われるが、やはり結婚相手はひと次第というのが最強不変の観点なのである。

●男女差がはっきりしているのは、「学歴」、「職業」、「経済力」の3項目である。すなわち、この3項目では、男性より女性の方が結婚相手の条件として重要視している。特に「重視」の割合で男女差が著しい。

●「容姿」、「共通の趣味」、「仕事への理解と協力」、「家事・育児の能力や姿勢」の4項目は男女でそれほど大きな違いはない。

●ただし、「考慮」ではなく「重視」に着目すると、「容姿」は男性の方がやや重視が上回る傾向(美人志向)、「仕事への理解と協力」、「家事・育児の能力や姿勢」の2項目では女性の方がより重視する傾向が認められる。

■【時系列的な変化の特徴】

次に時系列的な変化の特徴を見てみよう。これについては特徴点を図表3に赤字で示した。

●期待されるキャリアウーマン

男性も相手の「経済力」について考慮する割合が増加。夫婦共働きが増え、男性も相手の経済力を無視できなくなっているのであろう。「職業」についても同様の変化が認められる。つまり、男性は家計の維持などから、相手にますますキャリアウーマンを期待するようになったのである。

●イケメン志向

男性の方が重視する程度が大きかった「容姿」について、最近は女性も相手に期待する割合が増加しており、「重視」と「考慮」の合計では2021年調査ではじめて女性の回答が男性を上回ったのが印象的である。男女関係において最近は美人志向というより美男子(イケメン)志向が目立つようになっているのである。

●イクメン志向

イケメン(イケてるメンズ)にひっかけて、育児に積極的な男子をイクメン(イクジするメンズ)と呼ぶようになった。女性が結婚相手の条件として「家事・育児の能力や姿勢」を重視する割合は以前より高かったが、最近ますますその程度が高まっている。なお、女性が相手に対して、男性の家事・育児だけでなく「仕事への理解・協力」を重視する割合が上昇している点も見逃せない。夫婦関係における男女共同参画の意識は幅広く高まっていると言える。

●共通の趣味より各々の個性を尊重

すべての項目の中で重視・考慮する割合が明確に低くなっているのは女性の場合の「共通の趣味」の項目だけである。「共通の趣味」は男性より女性が重視する項目だった。女性は、年を重ねても相手と手をつないで共通の楽しみを享受したい。そんな男女関係にかつては大きな意味を見出していたのかもしれない。ところが、この項目を重視・考慮する割合は女性については低下を続け、男性のレベルを下回るに至っている。各々の個性、趣味を尊重し合う夫婦関係がよいとする自立尊重型の価値観に変化してきているのである。

●目立つ女性の価値観の転換

男性は「経済力」関連項目を除くとその他の項目の重視・考慮割合にあまり変化がないのに対して、女性については多くの項目で変化が見られる。女性の価値観の転換が最近の大きな特徴と言えよう。

■女性のイケメン志向に対応するように美容男性が激増

これまで調査結果を分析してきた出生動向基本調査(社会保障・人口問題研究所)とともに、最近、社会生活基本調査(総務省統計局)の結果も公表され、コロナ禍の影響など興味深い結果が明らかとなっている。

この調査は、国民の生活時間と生活行動について5年ごとに調べているが、私が特に注目しているのは、トイレ、入浴、身づくろい、化粧などの「身の回りの用事」の時間が増加しつつある動きである。これについては、一般には、あまり重視されていないが、私は、トイレなど本来の生理的な時間がそうのびていくはずもないから、身の回りの用事時間の長短で「おしゃれ時間」の長短が測れるのではないかと考えており、そうした観点から注目しているのである。

男女別に年代ごとの「身の回りの用事」時間を調査年次ごとにどう変化してきたかを示すグラフを図表4および5に掲げた。

【図表4】女性のおしゃれ時間
【図表5】男性のおしゃれ時間

女性のグラフ(図表4)を見ると、若い世代、特に20代でおしゃれ時間が長く、中年で一度短くなり、60代以降の高齢者ほど、再度、こちらはおしゃれだけでなく入浴、トイレなどの生理的な動作に時間がかかることにより、身の回りの用事時間が長くなるというのが世代構造の基本である。男性(図表5)は、女性よりおしゃれというより生理的な行動という側面が大きいため20代での突出がなく、ほぼ年齢とともに長くなる傾向が認められる。

生活が豊かになるとともに、入浴など清潔を保つための時間が延び、またおしゃれにも気を使うようになるので「身の回りの用事」の時間は年代を問わず、全般的に増加していく傾向となっている。男性の場合は、女性ほどこの傾向が顕著ではないが、入浴時間(週平均は何回入浴するかで増加する)などが同居する女性と連動することなどにより同様の増加傾向になっている。

変化の特徴として目立っているのは、女性の場合、20代の増加より中高年の増勢の方が著しい点である。美魔女という言葉から想像されるように、美容、おしゃれが若い世代だけでなく中高年へと波及してきたのである。

ここで注目したいのは、こうした一般傾向の中で、2011年の状況が示している直近の変化である。

女性の場合、2021年も基本的には上昇傾向にあるが、20代後半と30代ではこれまで最多だった2011年と比較して、むしろ、低下している。これはコロナ禍の影響でリモートワークする者の割合が特にこの年代で多かったためと考えられる。通勤が減ったのでその分、おしゃれに要する時間も減ったのである。

5年前の2016年まではあまり目立ったところがなかった男性の動きであるが、最新年については大きく変化しているのが注目される。すなわち、2021年については、コロナ禍で通勤が減っているにもかかわらず、男性の身の回りの用事時間は各年代でかなり増加となっており、女性の動きと比較しても違いが目立っている。

「美容男子」という言葉をはじめ、メンズコスメやメンズ脱毛なども浸透してきて、男性でも美容を意識する割合が上昇していると言われるが、まさにそれをデータで裏づける結果と言えよう。

上(図表3)でもふれたように、結婚相手の条件として男性だけでなく女性も「容姿」を重視するようになっているが、このことも美容男子増加の一因だろう。

20代までの男性の「身の回りの用事」の増加はこのようないわゆる「美容男子」化の影響とみられるが、さらに60代前半の高い上昇幅にも気づかざるを得ない。

この動きには、定年の延長や年金制度の変化で、この年代の就業率が上昇していることが反映していると思われる。職の保持や再就職のため若く見えるよう美容整形に走る中高年もいるときくが、そこまでしなくとも身づくろいに気を遣うようになったこの年代の状況変化がうかがわれるのである。

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本川 裕(ほんかわ・ゆたか)
統計探偵/統計データ分析家
東京大学農学部卒。国民経済研究協会研究部長、常務理事を経て現在、アルファ社会科学主席研究員。暮らしから国際問題まで幅広いデータ満載のサイト「社会実情データ図録」を運営しながらネット連載や書籍を執筆。近著は『なぜ、男子は突然、草食化したのか』(日本経済新聞出版社)。

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(統計探偵/統計データ分析家 本川 裕)

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