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「私はこうやって筑紫哲也さんへ電話攻撃をした」元信者が語る旧統一教会の"抗議電話"の手口

プレジデントオンライン / 2022年11月14日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SvetaZi

なぜ、政治家は最初から旧統一教会と手を切ると言えなかったのか。元信者でジャーナリストの多田文明さんは「旧統一教会の側についておかないと、選挙においてどんな組織的な妨害工作を受けるかわからない恐怖心がある。私もかつて教団の責任者の命令で、故筑紫哲也さんがキャスターを務めた番組の放送局に対して組織的にクレーム電話をかけた」という――。

※本稿は、多田文明『信じる者は、ダマされる。』(清談社Publico)の一部を再編集したものです。

■なぜ、政治家は「関係を断ちます」と明言できないのか

激しい言葉で威圧されたり、脅されたりすれば、当然恐怖心を抱きます。しかし、こんなことをしたら、すぐに警察に通報されて逮捕されることになるでしょう。したがって、巧みな者たちは、直接的ではないかたちで恐怖心を与えるような言葉を発します。

まさに、旧統一教会で教えられる「教えに背いた行動をすると、地獄の地獄に行く。悪霊がとりついて事故にあう、病気になる、家族に不幸が訪れる」は、マインドコントロールをする言葉といえます。

いま、政治家と旧統一教会のつながりが次々に明らかになってきています。なかには、旧統一教会の関連団体のイベントに参加し、信者の前で教団の活動をほめ称えるような話をする人もいます。すでに教団の関連団体から選挙協力も受け、教団の組織票の配分まで受けていた議員の話まで出てきています。

そのなかには、過去に霊感商法の手法で物品を売り、多額の献金をさせて家庭崩壊までいたらせてしまうような活動実態があることを知りながらも、今後も教団関連の団体からの支援を受けていくかについては、一部の政治家は「慎重に検討する」「軽々(けいけい)に答えることはできない」と答えた人もいます。

なぜ、きっぱり「教団との関係を断ちます」「二度とかかわりません。手を切ります!」と言えない人が多いのだろうか。そう思われている方も多いでしょう。

ここには二つの恐怖心で教団に支配されていることがあると思っています。元信者の私の目には、歯切れの悪い言葉を発する議員たちの姿が、どうにも旧統一教会の教えに疑問を持ちながらも、長年、教義にどっぷりハマってしまったために、なかなか脱会し切れない信者の姿に重なって見えてならないのです。

先にも述べたように、信者は教団の教えに背いた行動をすれば、「地獄に行く」「悪霊にとりつかれる」など気づかぬうちに恐怖心を植えつけられ、行動を支配されています。もしかすると、議員たちも知らないうちに不安と恐怖心を旧統一教会に抱かされ、毅然(きぜん)とした態度がとれない可能性があります。

■私も関与した筑紫哲也さんへの電話攻撃

旧統一教会では自分たちに味方しない人たちや批判する側の人たちを「サタン」と呼び、徹底した組織的攻撃をしかけてくることで知られています。すでに批判的な報道をするテレビ局や弁護士などへの執拗(しつよう)な抗議電話などの行為は明らかになっています。

もし、旧統一教会の側についておかないと、選挙においてどんな組織的な妨害工作を受けるかわからない恐怖心があるために、「関係を断つ」と明確に言えないことが考えられます。

私も信者時代に攻撃にかかわるように指示を受けました。

1992年に合同結婚式のニュースなどが騒がれた時代、旧統一教会に批判的な報道するひとりに、テレビ番組のニュースキャスターを務めていた筑紫哲也(ちくしてつや)さんがいました。

政府の「犯罪被害者等基本計画」案に関する声明について会見するテレビキャスターの筑紫哲也さん(TBS)(=2005年12月8日、東京都内のホテル)
写真=時事通信フォト
政府の「犯罪被害者等基本計画」案に関する声明について会見するテレビキャスターの筑紫哲也さん(TBS)(=2005年12月8日、東京都内のホテル) - 写真=時事通信フォト

「私はこの団体が大嫌いです」と番組で発言されたこの言葉を、当時の信者として覚えています。連日、霊感商法問題などを報道するこの局に対し、私が所属する部署の責任者から次のような指示がありました。

「テレビ局にクレーム、文句の電話をかけろ!」

です。責任者が見守るなか、私たち信者は、一般人のふりをして、

「こんな偏向報道はやめろ!」
「個人的な感情をぶつけるな!」
「ウソばかりの報道で、真実を伝えていない」

などと電話をかけ続け、組織的な攻撃をしかけました。

いま振り返れば申し訳ないのですが、当時の責任者の言葉は神さまの言葉ですので、従わなければなりません。筑紫さんたち批判するマスコミの発言を、サタンの側の人間と見て行動していたのです。当時、報道各社には、かなりの数のクレームや無言の電話がかかってきたのではないでしょうか。

このように、旧統一教会は相手をサタンの側と見て敵対視すると、組織的な攻撃をしかけてくるのです。

■教団からの「暴露」の恐怖から逃れるには

しかし、これだけではありません。二つ目の恐怖心こそ、もっと怖いものです。それは、恐ろしいまでに徹底された報連相です。すでに述べたように、教義において神さまの前にいっさいの隠しごとをしてはならず、報連相は必須です。

それに、神さまに近い上の存在(アベル)から与えられた命令は神さまの言葉と思っていますので、教団から与えられた使命に対しては信者は手を抜くことをしません。議員たちは自分のために必死になって選挙活動をしてくれる彼らを見て感動することでしょう。

内部にいたころ、教団の集会に訪れた議員の話や幹部からの「選挙応援を受けた人たちは、本当に教会員の人たちの活動に感動している。それで統一原理が本当にすばらしい教えだと思ってくれている」という話も聞いています。当時、それを聞き、日本の政治家たちが統一教会の教えを受け入れており、政治と宗教がひとつになる神の国の実現の日も近いという希望を抱いたものです。

しかし、ここで考えてほしいのは、彼らは指示に忠実であるとともに、報連相における報告も忠実なのです。報告とは自分のことだけでなく、身の回りで起きたことすべてを報告します。つまり、政治家がより多くの信者スタッフや信者秘書を受け入れれば受け入れるほど、その議員の性癖や人間関係、さらに表には出せないような裏の情報のすべてが収集されてしまうのです。

マインドコントロール
写真=iStock.com/undefined undefined
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/undefined undefined

一見すると、彼らは口が堅く、人がいいように思えるかもしれませんが、それは表向きだけで、裏ではすべての情報が報連相によって教団側に流れています。だから、旧統一教会の信者団体とのつながりが長く、深い議員の事情などは、より知られている恐れがあります。

内情を知られているために、教団側からの暴露を恐れる気持ちもあり、きっぱり「縁を切る!」と言えない歯切れの悪い言葉につながっているのではないかと私は見ています。これが二つ目の恐怖心です。

私たち信者も、旧統一教会を離れて教義を捨てれば、「事故にあう」「病気になる」「地獄に行く」などと言われて恐怖心を持たされました。しかし、自分がしてきた過去の出来事に向き合い、教団が教え込んできた恐怖心と戦いながら、なんとかそれらを乗り越えて脱会を果たしています。

かたちは違えども、教団と決別することへの恐怖心が議員たちにあるとすれば、それを払うことは容易ではないことはわかります。しかし、それに蓋をすればするほど、教団の思う壺にハマってしまうことになります。

恐怖心を払うためには、被害を受けてきた人たちの姿をしっかり見ることです。おそらく政治家の地元にも、必ず霊感商法の被害者がいるはずです。また、違法伝道によって信者になった人もいるでしょう。まずは、そうした被害者の声に耳を傾けてください。そして、自分がかかわってきたことにより、どれだけ多くの人の被害拡大につながってしまったのかを認識してください。

■議員たちに当選という恩を売って信者にさせようとする

政治家たちは、一心不乱に活動する信者を見て、すばらしい団体と思うかもしれません。しかし、そう思わせられている事実に気づかなければなりません。議員たちに恩を与えて教団に取り込むことを目的にしているからです。

もしかすると、教団の組織票を得て当選した国会議員、地方議員のなかには、教団への感謝の念を抱いている人もいるかもしれません。しかし、その背後で犠牲になってきた人を見てほしいのです。

議員のもとで活動していた彼らは、そのときには神のため、教団のためと思い、必死に働きました。しかし、その多くの信者はやめています。自分たちが教団から正体を隠して伝道などで入信させられるなどして、心がマインドコントロールされて活動し、多額の献金などをさせられていたことに気づいたからです。

こうした人たちは、貴重な自分の時間を教団に奪われ、青春時代を棒に振ったような状況です。もちろん報酬もほとんどないなかで活動させられています。こうした元信者の犠牲のうえに票が積み重ねられ、当選できたのです。教団への感謝より、どうかこうした人たちの被害にも目を向けてほしいのです。

多田文明『信じる者は、ダマされる。』(清談社)
多田文明『信じる者は、ダマされる。』(清談社Publico)

これまで旧統一教会の勧誘の手口を見てきて、議員たちへのアプローチのしかたや、賛同会員、信者議員にするために統一思想を学ばせるステップは、ある程度はマニュアルになっているはずです。

実際に、教団関連の団体に当選後に誘われ、議員と秘書が1泊2日の研修を受け、旧統一教会の教えの講義を受けたという話も出てきています。まさに、議員たちに当選という恩を売って信者にさせようとする思惑も見えてきています。

これから先、日本の行く末を真剣に考える、たくさんの新しい政治家が生まれてくるでしょう。その人たちが、こうした教団の罠にハマらないためにも、しっかり議員自身が受けた経緯を赤裸々に知らせるべきだと思います。それこそが、次の政治家たちへの大きな橋渡しとなるのではないでしょうか。

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多田 文明(ただ・ふみあき)
ルポライター
1965年生まれ。北海道旭川生まれ、仙台市出身。日本大学法学部卒業。雑誌『ダ・カーポ』にて「誘われてフラフラ」の連載を担当。2週間に一度は勧誘されるという経験を生かしてキャッチセールス評論家になる。これまでに街頭からのキャッチセールス、アポイントメントセールスなどへの潜入は100カ所以上。キャッチセールスのみならず、詐欺・悪質商法、ネットを通じたサイドビジネスに精通する。著書に『サギ師が使う交渉に絶対負けない悪魔のロジック術』、『迷惑メール、返事をしたらこうなった。』、『マンガ ついていったらこうなった』(いずれもイースト・プレス)などがある。

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(ルポライター 多田 文明)

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