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「人の評価ではなく、自分の評価に合わせて生きていく」樹木希林さんが最後のインタビューで語ったこと

プレジデントオンライン / 2022年11月21日 10時15分

南仏カンヌで開催中の第71回カンヌ国際映画祭で行われた、映画『万引き家族』のフォトコールに臨む樹木希林=2018年5月14日 - 写真=ABACA PRESS/」時事通信フォト

自分らしい生き方をつらぬくには、どうすればいいのか。在米邦人向けメディア「ニューヨークBIZ」の高橋克明さんは「2018年に亡くなった女優・樹木希林さんは、生前最後のインタビューで『人の評価に合わせるのではなく、自分の評価に合わせて生きていく』と語っていた。私もそれに尽きると思う」という――。

※本稿は、高橋克明『NYに挑んだ1000人が教えてくれた8つの成功法則』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「役者を生きるのでなく、人間をやるために生きている」

「役づくりで、いちばん気をつけていることは何でしょう」。過去1000回はされたであろう、こんな質問にさえも女優、樹木希林さんはすべて笑顔で受け止めてくれた。

2018年、彼女が北米最大の日本映画祭「JAPAN CUTS(ジャパン・カッツ)」に招待された時のことだった。

「それはね、演技をやるために役者を生きるんじゃなくて、人間をやるために生きているということなの。生きていく中のひとつの生業として、役者っていう職業に就いただけなんです。まずは人間として、自分がどう生きるか。大切なのはそれだけね」

どういった職業の人であれ、どんな環境の人であれ、まずは人間として自分らしく生きること。おだやかに話す希林さんだが、そのセリフひとつひとつが後世に残したいほど貴重で、大女優っぽい「いい言葉」の言い回しはしない。ド直球な質問だからこそ、彼女はド正面から答えてくれたのだと思う。

■「あの役を演じて評価されたいとか、そういうのは一切ない」

「なので、演技を見つけていくんじゃなくて、人としてどう生きるかを見つけていくの。私にとっての役づくりはそれに尽きますね」

役づくりとは、すなわち、自分の人生をどう生きるか――。

誰の真似でもない、誰とも同じでない。希林さんだけの言葉に、そして希林さんが人生を捧げた女優という職業にシビれさせられた。

では、女優という職業を選んでよかったと思う瞬間はどんな時でしょう。過去、日本映画の多くの賞を総舐めした女優の喜びとは。

「賞や評価のために、演じるってことはないですね。あのね、今まで身過ぎ世過ぎで演じてきたからあの役を演じて評価されたいとか、あの役を仕留めて認められたいとか、そういうの一切ないんです。いただいた仕事で自分が演りたいと思ったものだけ、って感じ。人の評価に合わせるのではなくて、自分に合わせていきたいの」

■人の評価に合わせるのではなく自分に合わせて生きていく

人の評価に合わせるのではなく、自分の評価に合わせて生きていく。そう言っておだやかに笑った。

もちろん、半世紀、女優として生きてきた希林さんだからこそ、たどり着けた境地。それでも、空気を読んだり周囲の顔色を窺ったりしている僕たちに対して、「大切なのは、他人と歩調を合わせることだけではない」と教えてもらえた。

そのインタビュー記事が紙面に掲載されたのは2018年9月14日。その翌日、希林さんは息を引き取られた。

今振り返っても至近距離で対面に座った希林さんからはそんな兆しはまるっきり感じられなかった。前夜にニューヨークに到着され時差でお疲れになっているのに、僕の「お元気そうですね」という言葉からインタビューは始まった。

■世界のどこの映画祭に行っても観客の反応は変わらない

「もうね、風前の灯火(笑)。ただ、息をしているだけって感じです」と笑うも、「でも、お顔の色艶もよくて」と返した。「化粧してないからね」と彼女は再び笑った。

ただ、当時のインタビューを改めて読み返すと、彼女の言葉の節々には人生の終活に向けて、どこか達観したようなセリフが点在していることに気づく。

世界中の国際映画祭に出席されて、国によって観客の反応の違いを聞いた際も、「違いはないですね。みーんな同じ。人間は国や社会の仕組みが違っても、結局、根本的に感じるところは同じなんだなって確信しました。それがわかっただけでも、行ってよかったなと思います」

■日本人は精神的な意味で世界を牽引していくべき

ニューヨークという街の印象と、ここで暮らす日本人にメッセージをいただいた際も、

高橋克明『NYに挑んだ1000人が教えてくれた8つの成功法則』(KADOKAWA)
高橋克明『NYに挑んだ1000人が教えてくれた8つの成功法則』(KADOKAWA)

「すごい都会で、アスファルトジャングルって印象ね。日本から来て、ここで生きようとする人の強さは私には想像つかないくらいすごいと思うんです。本当にタフだなぁって。でも、だからこそ、その人たちには日本のよさを世界に伝えてほしい。これからの世界で、日本人が果たさなきゃいけない役目ってあると思うんですね。精神的な意味で、世界を牽引していくべきじゃないかなって。なので、この国で暮らしても日本のよさを忘れないでほしい、伝えてほしい……私はもう伝えることができるわけじゃないからね……でも、それにしても……」
「それにしても……?」
「みんなタフですね。ニューヨークにいる人は(にっこり)」

はからずも、僕は、生前の彼女の言葉を収録した最後のインタビュアーになった。

希林さんとのインタビューの思い出は、僕の宝物。お会いできてお話を聞けて僕は幸せだった。

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高橋 克明(たかはし・かつあき)
「ニューヨークビズ」代表
1973年生まれ。岡山県出身。在米邦人向けメディア「ニューヨークBIZ」のインタビュアーとして、アメリカ合衆国大統領、メジャーリーガー、ハリウッドスターなど多くの著名人にインタビュー。著書に『NYに挑んだ1000人が教えてくれた8つの成功法則』(KADOKAWA)、『武器は走りながら拾え!』(ブックマン社)。

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(「ニューヨークビズ」代表 高橋 克明)

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