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「口元への手皿は上品」と勘違いしていないか…知らないままだと恥をかく「食事のお作法」

プレジデントオンライン / 2022年11月28日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kwangmoozaa

正しい食事の作法とは、どういうものか。企業やテレビ、映画、ドラマなどでマナー指導を行うマナーコンサルタントの西出ひろ子さんは「醤油などが垂れないように『手皿』をする人がいますが、これは控えた方がいいですね。大切なことは、お刺身の盛り方や天ぷらの揚げ方に込められた料理人の考えに寄り添う食べ方を心得ていること。それを実践なさる方は素敵です」という――。

※本稿は、西出ひろ子『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

■「会席料理」と「懐石料理」の違い

和食には「会席料理」と「懐石料理」があります。これらは「カイセキ」と同じ読み方をするのですが、両者には違いがあります。

日本食の中でも「会席料理」は、正式な日本料理の「本膳料理」を簡略化したものです。現在の会食における和食は、会席料理が出てくるケースがほとんどです。

一方、「懐石料理」はお茶会の流れの中で出される、一汁三菜を基本とした料理のことです。それぞれのルーツを反映するように、「懐石料理は最初に汁物とご飯」「会席料理は最後に汁物とご飯」といった違いがあります。これらの違いを知った上で、実際の会食での食べ方をマスターしておくと、いざというときに安心して召し上がることができるでしょう。

会席料理ではお刺身や焼き魚など、魚料理が数多く出てきます。これらを見事な箸使いでキレイに食べると、周囲の見方も変わることでしょう。

■刺身は「左手前から時計回り」に食べる

会席料理における一人前のお造りは、立体的に盛り付けられることが多くあります。そこで、左手前のお刺身から、時計回りに食べていくと、盛り付けを崩さずに、美しく食べていけるといわれています。

料理人にもよりますが、左手前に淡白な魚を盛り付けて、時計回りに濃い味の魚を盛り付けることが一般的です。こうすることで淡白なお刺身からスタートし、徐々に濃厚な味わいを楽しめるからです。

【図表1】お刺身は左手前から時計回りに食べる
出所=『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』

■盛り付けを壊さないよう、取り分けは丁寧に

ただし、料理人の考え方によっては、「淡白、濃い、淡白」と交互に盛り付けたり、これらの順にこだわることなく、美意識の感覚で盛り付ける場合もあります。いずれにしても「刺身は左手前から時計回りに食べる」と覚えておけば、恥ずかしい思いはしません。

複数人でいただく舟盛りの場合、主賓である招待された側から先に取ります。その場に置いて地位の高い人や年長者からという順番になることが多いですね。お造りと同様、左手前にある淡白なものから、お味の濃いものに移動していくのが基本的な流れです。

自分の分を取るときは、取り箸を使って、自分のお皿に2~3種類の刺身を置きます。盛り付けを壊さないように、丁寧に取り分けることを心がけます。万が一、盛り付けが崩れても慌てずにそのままにしておきましょう。自分が取るお刺身以外には触れないのがマナーです。

取り箸が用意されていない時は、お店の人に取り箸を持ってきてもらいましょう。お刺身を取るときは、隣のお刺身に触れないように意識しましょう。

■「手皿」は上品! は実は勘違い

お刺身は可能な限り、一口で食べきることをおすすめします。大きなお刺身の場合は、途中で噛み切るしかありません。この場合は、噛み切ったお刺身をお皿に戻さないように。噛み切ったお刺身は、そのままお箸で持ち続けます。そして、一口目を食べ終えたら、すぐに二口目としてそれを口に入れ食べます。

お刺身を口に運ぶときは、醤油が垂れないように「手皿」をしたくなります。しかし、これは行わないように意識しましょう。お醤油が垂れてしまったら自分の手を汚すことになります。その手を清めるものがなければ、お店の人を呼んだり、席を立って清めたりしなければならなくなります。

お醤油が垂れるのが不安なら、その醤油が入っている小皿ごと持ち上げましょう。これなら垂れてしまっても、小皿で受け止めることができます。

茶道などで使う「懐紙」が手元にあれば、それを小皿代わりに使ってもいいでしょう。懐紙を常備携帯している人は、男女ともに準備力があり、かつ、奥ゆかしさを感じさせて、素敵です。

■醤油にわさびを溶かすのは残念な理由

マナーにはそもそも「相手の立場に立つ」という大前提があります。このお醤油にわさびを溶かす溶かさない問題に関しては、わさびの成分を考えるところからはじまっています。本わさびのからみ成分は揮発性。これはお醤油と混ぜると水分に溶け込んでしまい、風味が損なわれてしまいます。そのため、特に高級料亭などで出てくる本わさびを、お醤油で溶かすのは残念なことになりますね、ということなのです。

わさびとひと言で言っても、さまざまなわさびがあります。また、その食べ方は本来は自由と言ってもいいでしょう。しかし、その立場に立ったときに、その特性を生かした食べ方をしようとするその配慮があるかどうかがポイントとなるわけです。このような理由から、わさびはお醤油で溶かずに、お刺身に適量を直接付けて食べることで、わさびに対する配慮を感じられ、素敵な人だな、と思ってもらえるわけです。

さらに、自分は好きに食べてどう評価をされても自業自得ですが、これが仕事関係者や家族との大切な会食の場面では、同行者に恥をかかせてしまうことになりかねません。自分以外の人や物への配慮からなるマナーだと心得ていれば、どんなときにも迷うことなく対応できます。

「和食」はユネスコの無形文化遺産に登録されています。マナーの型以前の本質を知ることで、納得することもありますね。

■お寿司を食べるときは手でもお箸でもOK

家族や同僚と一緒だと気軽に食べられる、お寿司や天ぷらや串物。ところが、いざビジネスシーンで取引先と食べるとなると、正しい食べ方を知らなかったゆえに、恥ずかしい思いをすることもあります。

子どもの結婚相手のご家族との会食などでも、同じような場面があるかもしれません。お相手がマナーを重視するご家族なら、こちらの食べ方もチェックされています。自分だけならまだしも、子どもに恥をかかせる事態は避けたいものです。

お寿司は、手で食べるのか、お箸で食べるのか迷うことでしょう。

結論から言えば、その型はどちらでも構いません。しかし、会食シーンでは「相手に合わせる」というマナーの真髄がとても大切です。周囲の方が手で食べていれば手で、お箸で食べていればお箸でといった具合に、食べ方を使い分けましょう。

【図表2】お寿司の食べ方
出所=『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』

■シャリに醤油を付けないように注意

どうしても一口で食べきることが難しいときは、途中で噛み切ってしまうのも仕方ありません。ただし、噛み切ったままのお寿司はお皿に戻さず、そのまま持ち続けるのがマナーです。一口目を食べ終えたら、すぐに残りを口に入れましょう。

お寿司をお箸で食べるときは、お寿司の両脇をお箸で挟んで持ち、少し斜めにして、ネタの先端に醤油を付けて食べます。醤油が垂れないように、小皿か懐紙を下に添えて、できるだけ一口で食べます。

お寿司を手で食べるときは、利き手の親指と中指で、お寿司の両脇を持ちます。そして人差し指を上に添えて、ネタの先端に少しだけ醤油を付けてから食べます。シャリ(ご飯)を醤油に付けないように注意してください。ポロポロとシャリが崩れ落ちる可能性があります。

もちろん手は清潔にしておきましょう。

■天つゆを付ける量は「食材の3分の1」

天ぷらが複数盛られている場合、一番上か左手前から食べていきます。盛り付けを崩さないことがポイントです。取りやすいほうから食べていきましょう。

天ぷら
写真=iStock.com/MarussiandNatashaNaSt
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MarussiandNatashaNaSt

天つゆを付けるのは、基本的にはお好みですが、すべてをどっぷりと浸けてしまうのは控えます。浸ける位置は全体の3分の1程度までに控えましょう。天つゆで食べるときは、つゆが垂れないように、天つゆ入りの器を持ち上げて召し上がって構いません。違和感のある人は、懐紙を受け皿代わりに添え持ちます。

つゆを付ける量は、食材の3分の1程度と心得てください。付けすぎてしまうと、衣が水分を吸って風味が失われるからです。料理人は揚げたての一番美味しい状態で、天ぷらを食べて欲しいと思っています。その気持ちに寄り添っていただきましょう。

■天ぷらだから許される「しのび食い」

天ぷらも、お寿司と同様に、できれば一口で食べられると良いです。しかし、それが難しい大きめの天ぷらはお箸で一口大に切り食べていきます。

ところが、レンコンなどの固い食材だと、お箸でうまく切れない場合があります。その場合は、直接口に運ぶしかありませんね。一口で食べきれないときは、お寿司などと同様に、噛み切ったあとは、お皿に戻さずそのままお箸で持ち続けます。

一口目を食べ終えたら、二口目を食べます。

しかし、油で揚げた天ぷらを連続で食べ続けることが難しいときもあるかもしれません。そのときには、「しのび食い」という作法を使えば、噛み切ったあとに、一度、お皿に戻してもよいとされています。

「しのび食い」とは、噛み切った断面の出っ張った部分を、小さく噛み切ることによって、歯形の凸凹を小さくするというテクニックです。小刻みに噛むことで断面がキレイになれば、お皿に戻してもよいとされているわけです。

■串物では懐紙か紙ナプキンの用意を

串物はその名の通り、串を持って食べることが前提です。しかし、串を持って食べるという行為に、抵抗を覚える人も少なくないでしょう。特に女性はその傾向が強いと思われます。串物は奥に刺さった食材ほど食べづらく、手や口が汚れやすいものですからね。

男性であっても、「会食のようなかしこまった場でも、串を持って食べていいの?」と、不安を覚える人もいるかもしれませんが問題ありません。

このように串物は、会食の場で手に持って食べても、まったく問題はありません。

西出ひろ子『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』(ワニブックス)
西出ひろ子『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』(ワニブックス)

特に前菜などで供される串物は、小さく食べやすく作られています。手や口をほとんど汚さずに、食べきることができるでしょう。

焼き鳥も、料理人は串に刺さった状態を前提に調理しています。やはり手に持って食べていい食べものです。

手が汚れることが不安なら、あらかじめ懐紙を用意しておいて、串の手元を包めば汚れません。お店に紙ナプキンがあれば、それを使用してもいいでしょう。しかし、一般的に、串物は串に刺していることで手を汚さないで食べられるように作られていますから、あまり神経質にならず、食事を楽しむこともマナーです。

■串から外したら、先端の具から食べる

女性は、「串に刺さったまま食べる姿を見られることが恥ずかしい」と思う方が多くいらっしゃいます。そうであれば、先に串から外して食べても構いません。会食で人目が気になるのは自然なこと。運ばれてきて温かいうちにお箸を使って外せば、スムーズに取り外せます。冷めると外しにくくなりますから要注意です。

串から外した後は、先端の具から食べることを忘れずに。串物は先端から奥に向かって、味付けを薄くなるように、あるいは濃くなるように、それぞれの料理人の考えに応じて作られていることがほとんど。串に刺さった状態と同じ順番で食べるのも、料理人への配慮となります。

また、外した具を同席者とシェアするのは、感染症対策などの観点からも、控えます。どうしても一品をシェアしたいときには、お店の人にあらかじめ、個別のお皿にシェアしてもってきてもらえばスマートです。

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西出 ひろ子(にしで・ひろこ)
マナーコンサルタント
ヒロコマナーグループ代表。ウイズ株式会社代表取締役会長。HIROKO ROSE株式会社代表取締役社長。一般社団法人マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会代表理事。大妻女子大学卒業後、国会議員などの秘書職を経てマナー講師として独立。31歳でマナーの本場・英国に単身渡英し、現地にてオックスフォード大学大学院遺伝子学研究者(当時)と起業。帰国後、大企業300社以上のマナー・人財育成コンサルティング、延べ10万人以上の人材育成を行う。著書・監修書は『あなたを変える美しい振る舞い』(ワニブックス)、『ビジュアル版ビジネスの基本とマナー』(学研プラス)、『入社1年目ビジネス文書の教科書』(プレジデント社)など多数。

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(マナーコンサルタント 西出 ひろ子)

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