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GAFAMを超えるポテンシャルを持っている…メタバースを最もよく知る男が大注目している"日本企業の名前"

プレジデントオンライン / 2022年12月8日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wachiwit

拡大するメタバース世界を今後リードしていくのはどの企業か。メタバースについて詳しい米ベンチャー投資家のマシュー・ボール氏は「GAFAM以外で注目すべきはソニーだ」という。彼の著書『ザ・メタバース 世界を創り変えしもの』(飛鳥新社)より紹介する――。(第2回)

■GAFAに匹敵するソニーのポテンシャル

GAFAM以外で、注目すべきコングロマリットが1946年創業のソニーだ。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は独自規格のハードウェアとそのゲームに加え、サードパーティーが開発したもののパブリッシングや流通も手がけており、世界一の売上を誇るゲーム会社となっている。また、有料ゲームのネットワークも世界第2位(プレイステーションネットワーク)、ゲームストリーミングのクラウドサブスクリプションも世界第3位(PS Now)である。

写実的なゲームエンジンも各種展開していて、SIEの『ザ・ラスト・オブ・アス』、『ゴッド・オブ・ウォー』、『ホライゾン ゼロ ドーン』などは業界史上まれに見るほど迫真かつクリエイティブなゲームだと評価されている。また同社のプレイステーションは、第5世代、第6世代、第8世代、第9世代のコンソールにおいて一番売れた製品であるし、2022年にはPS VR2プラットフォームも発売する予定だ。

ソニー・ピクチャーズも売上で世界一の独立系映画スタジオであるとともに、テレビや映画の独立系スタジオとしても世界最大となっている。半導体部門はイメージセンサーで世界をリードしていて、その市場シェアは50%近い(最大の顧客はアップルである)。ビジュアルエフェクトやコンピューターアニメーションの世界で高く評価されているイメージワークス部門もある。

■スポーツ、音楽、アニメでも世界をリード

3Dシミュレーションによる再現で審判を支援するため、世界のプロスポーツで広く採用されているコンピュータービジョンのシステム、ホークアイもソニーの製品だ(サッカーチーム、マンチェスター・シティは、スタジアム、プレイヤー、ファンの様子をリアルタイムに再現するデジタルツインをこの技術で提供している)。

売上で世界第2位の音楽レーベル、ソニーミュージックもあれば(トラヴィス・スコットもソニーミュージック所属だ)、同じく傘下のクランチロールとファニメーションによってアニメストリーミングの世界をリードしているのもソニーである。これほどの資産やクリエイティビティがあれば、メタバース時代に大活躍できるはずだと思うだろう。ただし、課題もたくさんある。

■プレステ専用のメタバース

ソニーのゲームはプレイステーション専用ばかりで、SIEも、モバイルやクロスプラットフォーム、マルチプレイヤーのゲームでヒットを飛ばした実績がほとんどない。

ゲームのハードウェアやコンテンツには強いが、オンラインサービスへの対応は鈍いし、コンピュートやネットワーキングインフラ、バーチャルプロダクションをリードする立場にもない。日本は半導体に強い国であるにもかかわらず、有力と目される企業は出ていない。つまりソニーがメタバースに舵を切る際には、おそらく、GAFAMのサービスや製品を使わざるをえないわけだ。

ソニーは、2020年、ドリームズをリリースした。パワフルなIVWPでプロが制作したゲームが多数用意されていたにもかかわらず、ユーザーもディベロッパーもあまり惹きつけることができなかった。

これはUGC(ユーザー生成コンテンツ)プラットフォームの経験不足が原因で、ドリームズは最初から失敗が約束されていたというのが大方の見方だ。

IVWPは基本プレイ無料が普通なのに、ドリームズは最初に40ドルもかかる。ディベロッパーに売上の一部を還元する仕組みもない。また、ほかのIVWPはさまざまな機器で遊べるのに、ドリームズはプレイステーション専用だった。

■くり返される機会損失

GAFAMに比べると、ソニーはユーザー数も少ないし、エンジニアの数も少ない。研究開発費もGAFAMならせいぜい数カ月分か下手すれば数週間分が年間予算だ。そのせいか、ソニーは、機会損失をくり返してきたことで知られている。

たとえば、ウォークマンでポータブルな音楽デバイスの世界市場をリードしていたし、世界第2位の音楽レーベルも傘下に持っていたというのに、デジタル音楽という革命を起こしたのはアップルだった。

消費者家電にもスマートフォンにもゲームにも強いのに携帯電話事業では競り負けているし、スマートテレビでは波に乗り遅れている。また、ハリウッド大手のなかで唯一、従来型テレビを守る必要もなく、また、ネットフリックスがDVDレンタルからストリーミングに転換するのと同時期にストリーミングサービスのクラックルを立ち上げたにもかかわらず、成果を挙げられていない。

今後、メタバースで異彩を放つには、技術革新に加え、もともと横のつながりを強みとする会社に、とっても難しいレベルで部門間の協力を実現しなければならない。

また、いま、プレイステーションをはじめソニーのエコシステムはいずれも自社製品のみでかっちり組み上げられているが、今後はそういう縛りをなくし、サードパーティーのプラットフォームにも対応しなければならない。

■メタバース界の中心になっている「ある企業」

30年にわたり、グラフィックスベースのコンピューティングに特化して成長してきたNVIDIAのことも忘れてはいけない。

NVIDIAは、インテルやAMDといったプロセッサーやチップの大手と並び、増えていくコンピュート需要の恩恵を手にすることになる。アマゾンやグーグル、マイクロソフトなどのデータセンターはもちろん、我々が手にする機器も、このような企業が提供するハイエンドのGPUやCPUを使っているからだ。

NVIDIAのチップ
写真=iStock.com/Antonio Bordunovi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Antonio Bordunovi

だが、NVIDIAは、もっと大きなことを考えている。いま、NVIDIAの『GeForce Now』は、ゲームストリーミングのクラウドサービスで2番手につけている。そのシェアはソニーに対しても数倍、アマゾンのルナやグーグルのステイディアに対してはけた違い、リーダーであるマイクロソフトに対しても半分ほどだ。

また、異なるエンジンやオブジェクト、シミュレーションの相互運用性を高める3D規格を推進するプラットフォーム、オムニバースは、「デジタルツイン」や現実世界において『ロブロックス』的なものとなれる可能性を秘めている。

NVIDIAブランドのヘッドセットやNVIDIAがパブリッシャーのゲームが登場することはないかもしれないが、少なくとも2022年のいま現在、NVIDIAがかなりの部分を支えるメタバースに住むことになりそうな感じがするのはまちがいない。

■まだ影も形もない企業が出てくる

このようなとき、業界リーダー各社は未来に対応する準備が整っているように見えてしまうという問題がある。当たり前だろう。お金も技術も、ユーザーも、エンジニアも、特許も、コネも、なにもかも潤沢なのだから。

それでもなお、いや、そういう強みを持つがゆえに(強みに足を引っぱられることも少なくない)、つまずくところが出てくるのは、歴史が示すとおりだ。

マシュー・ボール『ザ・メタバース 世界を創り変えしもの』(飛鳥新社)
マシュー・ボール『ザ・メタバース 世界を創り変えしもの』(飛鳥新社)

しばらくすれば、いまは小さすぎたりたまたま著者の目にとまっていなかったりで本書に取りあげていないところがあちこち、メタバースのリーダーに名前を連ねているはずだ。それこそ、まだ影も形もないところもあったりするだろう。

いまは『ロブロックス』ネイティブの世代が大人になりかけている時代であり、同時接続ユーザー数千人、数万人のゲームやブロックチェーンベースのIVWPを作るのはシリコンバレーではなく、彼らであるはずだからだ。

ウェブ3という考え方に共感した、兆ドル規模とも言われるメタバースの市場規模に惹かれた、あるいは、規制によってGAFAMに買ってもらえなかったなど、経緯はいろいろとあり得るが、とにかく、GAFAM5社のどこかに取って代わるところが育つであろうことはまちがいない。

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マシュー・ボール 投資家
元アマゾンスタジオ戦略部門のグローバル統括責任者で、現在はエピリオン社CEO。ニューヨークタイムズ紙、『エコノミスト』誌、『ブルームバーグ』誌に寄稿もしている。メタバースをテーマに書いたウェブ記事が大きな評判となり、エピックゲームズのティム・スウィーニーやフェイスブック(メタ)のマーク・ザッカーバーグ、さらにはテンセント、コインベースなどテック界のトップも繰り返し引用。メタバースの概念を広めた第一人者として知られる。

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(投資家 マシュー・ボール)

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