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「日本人には自由な精神が足りていない」安藤忠雄が世界とわたりあって知った"本当に大切なもの"

プレジデントオンライン / 2022年12月5日 10時15分

ファッションブランド「ジョルジオ・アルマーニ」が開催したファッションショー「GIORGIO ARMANI 2020 CRUISE COLLECTION」に来場した建築家の安藤忠雄さん(=2019年5月31日、東京都台東区の東京国立博物館) - 写真=時事通信フォト

自分のやりたいことをやれるようになるには、どうすればいいのか。在米邦人向けメディア「ニューヨークBIZ」の高橋克明さんは「建築家の安藤忠雄さんに『どうしたら安藤さんのように世界で活躍できるのか』と聞いたことがある。返ってきたのは『とにかく空気を読むな』という答えだった」という――。

※本稿は、高橋克明『NYに挑んだ1000人が教えてくれた8つの成功法則』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「ボクシングも建築も、必要なのは緊張感」

日本が誇る世界的建築家、安藤忠雄さんにインタビューしたのは2014年、ニューヨークで開催されたジャパンソサエティでの講演会直前だった。

本当の意味で、世界で名が知れ渡っている日本の建築家は“ANDO”ただひとりではないか。お会いする前は、なんというか天才肌の、それでいて気難しい方ではと勝手に身構えていた。

実際にお会いした安藤さんは、すべての質問にすべて正面から(すべてかぶせ気味に)答えてくれた。実直で、熱くて、それでいて無骨な芸術家。建築を独学で身につけ、元・プロボクサーという異例の経歴も関係しているのかもしれない。

「ボクシングはスポーツだからね。建築とはまったく異なる世界なわけだけれども、一点通じるところはあるんです。いずれも最後は自力で道を切り拓かねばならない真剣勝負、緊張感が必要だということ。その意味では、短い間でも、ボクシングに打ち込んだ経験は無駄ではなかったと思います」

■若い頃に勉強しておかないと思うような人生を歩めない

大切なのは「自力」だと強調する安藤さんに、それでは今の日本人が安藤さんのように国際的に通用するには何が必要だと思われますか、と聞いてみた。

「まぁ、日本人に限ったことではないのですが、若い頃にいかに『勉強』できるかということかな。多少、無理してでも頑張らないと。受験のための勉強だけじゃない、“自由な精神”を鍛える、生きていくための『勉強』ですよ」

“自由な精神”とは具体的に何なのか――。

「自由な精神とは、自分の頭で考え、自分の意志で行動する、自立した個人の力。それが今の日本にはないんですよね。これは教育制度の問題。まず、いちばん自由であるべき子供の時に、きっちり子供をする。そして、それぞれの道に向かって、知識と経験を積んでいく勉強。そうして自由な精神という人間の『芯』を育んでいく中で、自分の考えをしっかり発言できる強さが生まれるんじゃないかな」

僕が「『芯』がないから強い人間になれない、ということでしょ……」と続いて聞いた質問にも、かぶせ気味に、

「そりゃそうですよ。人間の『芯』にあるべき自由な精神とは、要するに自分なりの価値観で物事に感動できる感性、自分のやり方で、人生を生き抜く力。それがないから、周囲の目ばっかり気にしてしまう。自分がどうしたいか、何をしたいか、周りに気を遣いすぎて、わからなくなってしまう。これでは、思うような人生は歩めませんよ」

■日本人が目指すべきは自分の生き方を押し通す力を持つこと

僕の「自分の考えを通すと、日本では叩かれる風潮があるのかもしれま……」というこの質問にもかぶせながら、

「そこを通すのがいいんじゃないですか(笑)。そうやって鍛えられていく。そんな人間を育てるには、親がある程度の段階で、子供を放り出して自立心をトレーニングさせないと。福澤諭吉の言うところの、自立自存の精神ね。周囲は関係ない。自分の責任で歩くっていうこと」

安藤さんいわく、日本に比べると欧米の方が自立自存の精神があるという。

「今の日本には、それが足りてないというか、まったくない(笑)。協調性もたしかに大切だけれど、『世界』で戦おうと言うのであれば、それではやっていけないよね。今、日本人が目指すべきは、極端に言えば簡単に周囲に同調しない勇気、自分の考えを、自分の生き方を押し通す力なんじゃないかな」

マンハッタンの夜景
写真=iStock.com/Bim
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bim

■ニューヨークの街にはなぜ「出る杭」が集まってくるのか

世界は「出る杭」だらけ。特にニューヨークは市民総「出る杭」集団。むしろ出ないと誰にも気づいてもらえない。

しかも周囲が全員「出る杭」であれば、そこからさらに出ないと埋もれてしまう。出る杭の中からもっと「飛び出る杭」になる必要すらある。

「ニューヨーク、マンハッタンは20世紀を代表する“芸術”だと思う。一流の美術館がたくさんあるというだけじゃない。クライスラー、エンパイア・ステートみたいなアールデコの摩天楼から、現代の高層ビルまで、新旧の建築が競い合うように共存し、その中央にはぽっかりとセントラルパークみたいな余白の空間があって……その中で、多種多様な人種がひしめき合い、それぞれの夢を追いかけている。街の存在そのものが、ひとつのアートになっているんですよ。その新旧、東西の混成のエネルギーに惹かれて、(世界中から)人が集まってくるんですよね」

人を感動させ、人を惹きつけるマンハッタン。その街に住むニューヨーカーたちは存在自体がアート。叩かれても叩かれても、出る杭という存在は、生き方がすでに芸術なのだ。

■可能性は自分自身の中に見つけるものだと信じている

最後に、そのニューヨークで生活している日本人に向けたメッセージをもらった。

高橋克明『NYに挑んだ1000人が教えてくれた8つの成功法則』(KADOKAWA)
高橋克明『NYに挑んだ1000人が教えてくれた8つの成功法則』(KADOKAWA)

「やっぱり、最後まで諦めずに自分のやりたいことを成し遂げてほしい。周囲の顔色を窺ってるだけじゃ何も成し遂げられない。せっかく世界が開かれた時代に、誰にでもチャンスがある時代に生きているわけだから。自分の心に正直に、いくつになっても挑戦する勇気を持って人生を走り続けること。

私は大学にも行けず、師匠も持たないというハンディキャップを抱えたまま社会に出てきました。可能性は、自分自身の中に見つけるものと信じてやってきました。そんな図太さというか、明るさのおかげで、今がある(笑)。自分の人生を決めるのは、他人じゃない。自立した個人としての自分しかいないんです」

プロボクサーを経験し、世界中を旅し、独学で世界の建築家になった男がいちばん大切にしていることは、「出る杭」を通り越した「飛び抜けた杭」になること。限られた人生の時間、空気を読んでいる時間なんてあまりにもったいない。

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高橋 克明(たかはし・かつあき)
「ニューヨークビズ」代表
1973年生まれ。岡山県出身。在米邦人向けメディア「ニューヨークBIZ」のインタビュアーとして、アメリカ合衆国大統領、メジャーリーガー、ハリウッドスターなど多くの著名人にインタビュー。著書に『NYに挑んだ1000人が教えてくれた8つの成功法則』(KADOKAWA)、『武器は走りながら拾え!』(ブックマン社)。

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(「ニューヨークビズ」代表 高橋 克明)

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